全てを押し流すトンチキスキル ~奴隷しか抱けない男は女を所有する~ 作:ケ・セラ・セラ
第十八話 出発
「金! 金! 金! 騎士として恥ずかしくないのか!」
――ロマンシング・サガ――
「良かった、まだ出てなかったか!」
翌日、出発する直前にザイオン次官が駆け込んできた。
どうしました?
「昨日話をした後に、
たった今返信が来て、外務省がニコロデのドロシュ辺境伯と連絡を取ったそうだ。
それならばと言う事で、君に先方との会談を任せたいと」
なるほど。
どのみち向こう側の領主には話を通さなきゃいけなかったから渡りに船だ。
しかし外務省か。あの連中もちゃんと仕事はしてたんだな。
そう言うとザイオン次官が苦笑した。
「まあ、あの会議は酷かったがね。
彼等も彼等で頑張ってはいるんだ、それは認めてやってくれ」
はいはい。
それで俺が気を付ける事は何かありますか?
「届いたメッセージはこれだ。目を通してくれ」
便せん二枚ほどの紙にびっしり書かれた文字に目を滑らせる。
内容は外交儀礼の基本とか今回の件に関する確認事項とか、まあお使い程度の話である。
外交上はそのお使い程度の確認が結構重要だったりするのだが。
つまり各街の神殿に《
この中世ファンタジー世界ではほぼ唯一の高速通信網である。
ただ稀少な魔術僧侶や魔道具を使うだけあって当然高額で、俗に王都から国境までメッセージ一行送るのに金貨十枚と言われる。
江戸時代の江戸から大阪まで一言の手紙を送るのに小判一枚って感じ。
それでも商人とか貴族とか使う奴は使うのだが、この紙切れ二枚でどれだけのお金がかかってるのかねえ・・・
「今回は国難だと神殿の方々も認識してくれてる。実費だけで動いてくれてるそうだよ」
俺の表情がよほどしみじみしてたらしい。またしても苦笑するザイオン次官である。
うんうんと頷き合う俺達。うちは恵まれてる方だが、それでもやりくりに苦労しない貴族ってのはほとんどないからね、しょうがないね。
ともかくニコロデのドロシュ辺境伯でしたっけ。
マット村の国境沿いというか、ニコロデ王国のディテクと接触する国境地帯はほとんどこの人の領地だったはず。
「そのとおり。ひょっとして交流があったのかね?」
いいえ?
ご存じの通り、国境地帯のこの辺には広大な不毛の荒れ地があるから、今まで接触みたいなものはありませんでしたよ。
クワも通らない固い土で、ほとんど岩石砂漠一歩手前。ディテクもニコロデも欲しがらない土地だったから、自然国境みたいになっていたのだ。
ただ、最近マット村がというか俺がガンガン開拓を進めてるからな。
そのうち向こうの村と境を接するかもしれない。その時のことはちょっと考えておいた方がいいかもな。
「ふむ。それはまあ重要だが、出来れば今回は話題に出すのも避けてくれ。
微妙な問題で協力態勢にヒビをいれたくはない」
わかってますよ。それじゃ行ってきます。
「この現象が自然現象なのか、それとも何者かの思惑があるのかはまだ分からない。
『飛竜殺し』に言うのもおこがましいが、くれぐれも気を付けてくれ」
ご助言、胸に刻みます。
俺は頷いて次官と握手すると、ジローに後を頼んで北に出発・・・するのだが、その前に一悶着あった。
「私もお供します!」
なんでロビンがついてくるの!? 大人しく留守番してなさい!
「ほら、
先ほどの
《
それが?
「領主様に、フジさんに、シル様に、ジューニャさんに、エフティさんに、タチバナさん。
それを使える人がいますか?」
いや、ジューニャは腐っても飲んだくれでも社会生活不適合者の駄エルフでもエルフの大魔術師だぞ? 人間が扱える程度の魔道具なんか・・・
「腐ってるとか飲んだくれとか、その形容詞いりませんよね!?」
いやいるだろ。逃げるなぁぁぁ! 事実から逃げるなァァァァ!
プルプルと顔を引きつらせながらも、ジューニャはその点については無視する事にしたらしい。
「・・・それなんですけど、その魔道具私には使えないかもしれません」
パードゥン?(無駄にいい発音)
「確かにこれはどう動くか、どう使うかは分かりますが、《
使うだけなら可能ですけど、うまく使えるかどうかはわかりません」
「うちの工房は
ジューニャは無線機を作ったり修理したりは出来るけど、チューニングとかの専門技術は習得してないって感じか。
だが危険だぞ。守ってやれるとも限らない。
俺としては余りお前を危険にさらしたくはないんだが。
「領主様の成果にマット村の人たちの命がかかってるかも知れないんでしょう?
だったら私もやります! 私も今はマット村の住人ですから!」
まっすぐな目で言い切るロビン。ええ子やなあ・・・(ほろり)
「それに、領主様には家族を助けて頂いたご恩があります。
それをお返ししたいんです!」
・・・わかった。だがいざというときは自分の身は自分で守れ。
指示に従い、危ないときには逃げるか隠れるかしろ。いいな?
「はい!」
満面の笑顔でロビンが勢いよく頷いた。
この世界では僧侶も魔法を使えない人が大半です。