全てを押し流すトンチキスキル ~奴隷しか抱けない男は女を所有する~ 作:ケ・セラ・セラ
「『
毎日
いえ、遅くとも今日の昼頃には到着予定ですが。
「「えっ」」
ザイオン次官とケイロン爺さんが星空背景の猫みたいな顔になる。
いや実際そうなんだからしょうがない。
『
今いるカピラ・ダンジョンはその真東あたり、ドロシュ辺境伯の城館は西南西あたり。
周辺をぐるっと回れば約240kmだが、街道を通るとなると少し遠回りで300kmほど。
馬で行く前提だと余裕を見て一週間というのは常識的な判断だ。
問題は俺達がこれっぽっちも常識的ではない事であって。
ともかく恐らく11時頃には到着しているので、その頃に《
「わ、わかった。移動手段については」
ジューニャの魔法によるものとだけ。
「そうか・・・」
と、ザイオン次官はそれで引き下がってくれたのだが。
「知りたい。知りたぁぁぁぁい! なあ、いいじゃろ、ワシとお主の仲じゃ! 絶対に! 絶対に漏らさないから教えておくれよぉ!」
ええい、気持ち悪い口調になるな大魔術師!
俺とあんたがいつそんな深い仲になった!
大体絶対漏らさないって信用できんわ! どうせ覚え書きとかに書き残して後で問題になるパターンだろ!
「そんな事はせんわい。解析して論文書いて魔法学会に発表するだけじゃ」
キリッ。という擬音が聞こえて来そうな真顔。
思わずこのマッドを殴り倒した俺は悪くない(天丼)。
森の中を疾風のように走る。俺、フジ、エフティ、タチバナの高速移動出来るメンツが生身で走り、シル、ジューニャ、ロビンは例によって吹き流し状態。
一番遅いエフティに合わせてはいるが、それでも時速150kmほど。
森を抜ければ国境地帯は荒野なので道もないが障害物もなく、俺達は予定通りにドロシュ辺境伯の城館に到着。かなり大きめの城塞都市のはずれに無骨な城館が立っている。
《
「それにしてもお早いお着きでしたね。ひょっとして噂の
さて、そのへんは口にする訳には行きませんので。
「それは残念。それではこちらへどうぞ」
にっこり笑って扇を閉じる。
領主の名代と名乗って俺達を出迎えたのは、14歳くらいの少女だった。
茶髪縦ロールに、ツリ目三白眼そばかす貧乳デコ広のお嬢様。
赤いドレスに身を包み、扇を手に持つ姿が中々様になっている。
それでご令嬢。
「辺境伯の長女ミナ・イオリ・ドロシュと申します。どうぞミナとお呼び下さいな、ニシカワ卿」
結構、では俺の事もカエラと。
「心得ましたわ。それではお仕事の話に移りましょうか。
わたくしはドロシュ辺境伯名代として、この件に関する全権をニコロデ王家より預かっております」
へえ。
とは言え辺境伯というのは元々そう言うものだ。
国境でよその国とのトラブルがあった場合、いちいち中央と連絡を取るには手間暇がかかりすぎるから、国境を守る大貴族にある程度の内政権・外交権を与えて対処させるのだ。
昔の日本で言えば大宰府とか奥州探題とか関東公方とかがそれに該当する。
征夷大将軍というのも本来はそうした朝廷の出先機関的性格を持っていたのである。坂上田村麻呂とか。
それを源頼朝が悪用して・・・
「情報提供感謝いたします」
まずはこちらが調べた情報を提供し共有する。
ディテクが総力を上げて調べた情報である。
本来はこんなに大盤振る舞いすることもないのだが、今回は事が事だ。
向こうに事の深刻さを理解して貰う必要があった。
ジューニャの見たものが正しければ、この件の原因はニコロデ王国側にある「何か」だ。
自由な調査を許して貰えなければ解決に時間がかかり、その結果最悪の状況が生まれるかも知れない。
そのためには貴重な情報の提供もやむを得ない。もちろん王都にも許可を取ってる。
まあニコロデは小国だから、舐めた真似したらぶっ潰される事は向こうも理解している。そうそう不義理はしないだろう。
「それにしても『
概要を読み終えたミナが深く深く溜息をつく。
まあ気持ちは分かる。
台風並の巨大な魔力嵐なんて人間の力を越えた天災だ。
「マット村は完全に飲み込まれてしまったのでしたね。お見舞い申し上げます。
わたくしどもドロシュ辺境伯領も東半分ほどを飲み込まれてしまいまして・・・
国境沿いの城館におりました叔父一家も消息不明です」
お見舞い申し上げる。
ただ、概要にもあったと思いますがあの黒い嵐は突破出来ずとも、中の森は無事でした。
叔父上ご一家もご無事である可能性は高いと思われます。
「ありがとうございます」
これに追加してそちらから何かありますか?
そう言うとミナが眉を寄せて沈黙した。
眉間に一本深い線が刻まれてる。
この人はこの表情をしょっちゅうしてるのではないかという気が何となくした。
「・・・」
しばらく待つ。
「・・・そうですわね。ここまで開示して頂いたのですし、こちらも知る事全てをお伝えするのが誠意というものでしょう」
恐れ入ります。
頭を下げて礼を言うと、ミナが立ち上がった。
「どうぞ皆様こちらへ。ただ、我が家の恥でもありますので、しかるべき筋以外には公言しないとお約束して頂きたいのです」
それは無論の事。
俺は立ち上がって頷いた。
地下。厳重に警備された一室に「それ」はあった。
両手を大きく広げ、歓喜の表情を浮かべた身なりのいい男の彫像。
それも頭からつま先まで全て黄金色。金メッキにしても大したもんだが、それ以上に表情が真に迫っている。
恐ろしいほどに写実的で、彫刻としては素晴らしいできだ。
ミナ、これが一体?
「・・・これ、父さまです」
兜に入った母親の生首を見せるような口調でミナが言った。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい?
>これ・・・母さんです
Vガンダム最高のトラウマセリフ。
厳密にはパロ漫画の方のセリフなのだが。