全てを押し流すトンチキスキル ~奴隷しか抱けない男は女を所有する~ 作:ケ・セラ・セラ
地下室に隠された黄金の立像。
まさかこれ、お父上が黄金に変えられたとかそういう?
「はい」
噛みつかれると黄金になってしまう蛇とか、触れると何でも黄金になる王様の昔話とかあるけど・・・マジで?
「マジですわ」
いったい何が。
「まず大前提として、私の父であるバルティザン・ドロシュは辺境伯当主としての公務を弟と家臣に任せて道楽に打ち込む人でした。
若い頃からずっと領地内にあるという古代王国の財宝探しに時間と財産をつぎ込み、祖父は後を継がせるべきか随分悩んだようです。
家を継いでからも財宝探しや古文書集めに財産を注ぎ込み、家を傾けました。二年ほど前に初めて我が家の財務諸表を見せて貰いましたが・・・立ちくらみを覚えましたわ」
・・・。
「・・・」
「・・・」
「平たく言ってクソ野郎です」
何も言えない俺達である。
「深くご同情申し上げるんだよ、辺境伯令嬢」
「ありがとうございます、男爵令嬢」
訂正、シルだけは別だったようだ。
こいつもオヤジさんには苦労してるからなあ・・・
「それで先日、ついに伝説の古代遺跡を見つけたと狂喜乱舞して、領地の北西にある通称『魔女の山』に向かいました」
「カエラ君、それって」
ジューニャの見た白い魔法線の先と一致する。ともかく話の続きを聞こう。
「はい」
「それから数日して、『これ』が我が家に担ぎ込まれてきました。
遺跡の奥で魔法装置を起動させた瞬間、こうなったらしく。
強い魔力にさらされた影響ということですが・・・
運んでくれた騎士は重傷を負っており、『護衛の傭兵たちが裏切った』とだけ言い残して倒れました。
それ以来目を覚ましませんので、詳しい事情は分かりません。
調べようにも周辺は立ち入れないとか」
そこで彼女は溜息をついて黄金像を見上げた。
「いっそ鋳潰して叩き売れないかしらね、これ。
少しでも財政の補填になるでしょうに」
「分かるんだよ、辺境伯令嬢・・・いや、ミナ。
せめて多少なりとも埋め合わせをして貰わないと気が済まないんだよ」
「シル・・・」
「ミナ」
ピシガシグッグする二人である。
シルとミナはクソ親を持った娘という一点で心を通わせた。
思春期の娘にとってはそれほどまでに過酷な環境であったのだ。
まあそれはともかく。
「遺跡の調査ですわね? こちらこそお願いしたい・・・と言いたいところですが、今申し上げたように立ち入れませんで・・・」
それは遺跡の魔法装置が起動したから?
「いえ、それは昔からだそうです。
魔力のかかった霧が山一つを覆っていて、入ったら戻れないと地元の人間の間では有名だったとか」
お父上はどうやってその中に?
「古代王国期の乗り物を大枚はたいて手に入れたようです。
金貨十数万枚くらい」
ぶふっ、と吹く音が聞こえた。エフティである。
「わ、悪い・・・じゃなかった、すいません」
「いいのよ。道楽にそれだけつぎ込むと言われたらそうもなるでしょう」
ミナの目が死んでる・・・ちなみに日本円で十数億円。最新鋭戦車買えるぞおい。
いくら大貴族でも半端な額じゃねえ。ミナが改めて父親を見上げる。
「・・・本当にこいつ鋳潰して売り飛ばしてやろうかしら」
「体で払って貰うって奴なんだね、あはははは!」
「うまい事を言うわねー! あはははは!」
二人のテンションが高い・・・。ちなみに辺境伯の素の体重が80キロくらいとすると、それがそっくり黄金に変わったら金貨17,8万枚くらいになる。
フォローのつもりか、おずおずとロビンが手を上げた。
「その、古代王国期の遺物でしたらそれくらいは。中には金貨数百万枚以上になるものも・・・」
「凄い代物なのは理解しておりますわよ!
クソの役にも立たねーから頭抱えてるんですのよ!」
「す、すいません!」
本当に戦車か何かなら軍事的な価値もあるが、多分違うんだろうなあ。
それで、その乗り物は使えるの?
「それが壊れておりまして・・・魔道具の専門家もいたのですが、宝探しに同行して行方不明。うんともすんとも言わないので、正直どういう機能があるのか、どこが壊れているかも分からない次第ですわ」
なんとなあ。
こうなるとロビンが強引についてきてくれたのは幸運だったな。
頼めるか。
「はい、お任せ下さい!」
ロビンが勢いよく頷いた。
倉庫の中にあったのは10mほど、銀色のマヨネーズの容器を横倒ししたような二十世紀初頭のSF作品に出てくるような機体だった。
る、涙滴型宇宙船・・・未来隊長!
「カエラ様は何をおっしゃっているんです?」
「あー、取りあえず聞き流していいんだよ。カエラちゃんは頭良すぎて時々おかしいから」
「だよな」
シルの言葉にうんうん頷くエフティその他。
が、ただ一人だけロビンは驚いていた。
「領主様は凄いですね。涙滴型機動艇なんて、魔道具職人でも中々知らない単語ですよ」
え、本当にそう呼ばれてたの? ・・・まあ見たまんまか。
それでどうだ、直せそうか?
「ええっと。ざっと見た感じ、フレームや外装は問題なさそうですね。
操縦系統とかは動かしてみないとです。
問題は動力系統で、伝達ケーブルが焼き切れてる感じですし、メイン動力炉が反応しません。
ケーブルはどうにかなりますが、動力炉は下手すると丸ごと取り替えになりますね」
取り替えると言われてもな。部品あるか?
「・・・まず見つからないと思います。現代の術師の作る魔力炉では多分まるで出力が足りませんし、かと言って当時のものはあるとしてもとんでもない価格になるかと」
ですよねー。
蒸気機関の時代に核融合炉を調達するようなもんだ。
それが出来るならドラ□もんだってガンダ△だって作れらぁ。
「それと浮遊機能がかなり死んでます。脱出の時も、多分地面こすってきたんじゃないですか?」
「確かにそんな事を言っておりましたわね・・・そう言う乗り物なのかと思っておりましたが」
言われてみれば。不時着でもしたのかと思ったが、機体底面にこすれた後がある。
となると核融合並みの魔力を叩き出す魔力炉と、浮遊なり飛行なり地上移動なりの機能を肩代わりする何かが必要になるか。そんな都合のいいものが・・・。
あったわ。
「カエラちゃん?」
「なんですか?」
シルとジューニャが揃って首をかしげた。
>最新鋭戦車
自衛隊10式戦車の価格が15億円だそうです。
>未来隊長
キャプテンフューチャー。
スペースオペラの代名詞的作品。
伊東岳彦の「宇宙英雄物語」の元ネタで、作中の「星詠み号」がほぼキャプテンフューチャーのコメット号。イチジク●腸と言ってはいけない。
なおアニメの方のキャプテンフューチャーはコメット号のデザインから何から原作とは別物である(設定古すぎて脚本の人が頭を抱えたとか)。