全てを押し流すトンチキスキル ~奴隷しか抱けない男は女を所有する~   作:ケ・セラ・セラ

99 / 100
第二十二話 魔の山へ飛べ

 それでは出発する。

 

「ご武運を。

 加えて可能ならば他の者達の事もお頼み申し上げます」

 

 道案内をしてくれたミナの家臣が一礼する。

 彼もここから先は入った事がないので連れていっても意味がない。

 ので、ここで俺達を待つ事になっている。

 戻ってこなかった場合はそれを報告しに戻るのだ。

 もちろんそんな事をさせる気はさらさらない。

 全員助けて戻るから待ってろ。

 

「はい」

 

 魔女の山。

 一見すると森に覆われた普通の山だが全体にうっすらと霧がかかり、森の奥は全く見通せない。

 

「奇妙な魔力ですね」

 

 目をすがめたジューニャが言う。

 何かの超強力な術式か、これ?

 

「どうでしょう。むしろ何かの巨大な魔導現象の後遺症か、あるいは地脈や大がかりな魔法装置から魔法が漏れているような感じですねえ」

 

 魔導現象って・・・何か巨大な爆発とかか?

 

「そういうものであっても驚きません」

 

 やれやれだ。

 シル、地図は大丈夫か?

 

「概ねの位置は分かると思うんだよ。

 近づいたら私とジューニャ先生の魔力感知でもっと正確に割り出せると思うんだよ」

 

 よーしよしよし、よくやった。

 頭を撫でてやると嬉しそうな顔を見せる。

 昨夜、ミナのオヤジさんの残した資料をジューニャとシルと俺とで精査した結果、遺跡の大体の位置を割り出せた。

 タチバナと二人でナビは任せるぞ。

 

「OKなんだよ!」

 

 よし。出発!

 俺の号令に従ってMMR号が動き始める。

 ミナの家臣が深く腰を折って礼をする。

 姿が見えなくなるまで、彼はそのまま動かなかった。

 

 

 

 そろばんの車輪を鳴らしながら山の中を進む。

 操縦席から伺う限りでは本当に何の変哲もない山中の風景で、うっすらと霧がかかっている以外は全く異常が見あたらない。

 木も下生えも普通だし、時々ウサギとかが驚いて逃げていくから、動物も普通にいる。むしろ人が入らないせいか獣も鳥も多いかも知れない。

 見た感じは本当に普通の山の中だな。計器を見る限りはまっすぐ進んでるみたいだが。

 おい魔力炉、このまま進んで大丈夫そうか?

 

「誰が魔力炉ですか!

 ・・・人間の方だと濃密な魔力があるだけで魔力酔いになって正常な判断が出来なくなることもありますし、この山に漂う魔力は余り良くないものですから、余計に方向感覚や判断力が失われるのかも知れませんね」

「つまりお酒を飲まれたときのジューニャ様のようにですね?」

 

 にっこりと笑って寸鉄人を刺すフジ。

 

「うぐっ!?」

 

 ジューニャがやらかした時の後始末は大体こいつなので言う権利はある。

 お前もちょっとは懲りろよ、駄エルフ。

 

「と、ともかく!

 これに乗ってる限り、そう言う魔力の悪影響は受けませんので安心して下さい」

 

 ごまかしたな。まあいい。魔力を排除出来ればこれ無しでも問題ないんだな。

 

「はい。まあ高度な魔術か、高い魔力が必要になりますけど」

 

 それ以降移動困難な地形をちょっと浮遊して移動することは多々あったが、心配していたモンスターの襲来とか怪現象のようなものはなく、俺達は山中を進んでいった。

 

 

 

 交代で仮眠をとり、MMR号から出ずに野営して、翌日昼頃に問題の地域に到着。

 シル、ジューニャ、わかるか?

 いや、MMR号の計器を見た方が早いかな。

 

「私はちょっと濃すぎて分からないかな・・・ジューニャ先生、外出て大丈夫かななんだよ?」

「皆さんなら、しばらくでしたら大丈夫だと思います」

 

 じゃあ二人とも頼む。

 エフティも匂いを嗅いでみて貰えるか?

 音や超音波ソナーも。

 

「分かったんだよ」

「了解です」

「ん、わかった」

 

 注意してくれよ。騎士の話が本当なら、裏切った冒険者たちがまだいるかも知れない。

 ロビンも気を付けてくれ。

 

「はい」

 

 全員が神妙に頷いた。

 それから三人に魔力や匂いを探して貰い、午後一杯その周辺を探索する。

 あっちでもないこっちでもないとウロウロして、ようやく夕方にそれらしい場所を見つけた。

 黄金色に輝く、東西南北と中央に五つの尖塔を持った巨大な寺院。尖塔の高さは100m以上、建物の間口もそれ位はある。

 古代王国に特有の、ファンタジーとSFが融合したような独特の建築様式。

 

「おー。それっぽいな」

「間違いなく真なる魔法文明の時代、それも最盛期のものですね」

 

 上部ハッチから顔を出して周囲を警戒していたエフティが感心の声を上げる。

 解説はジューニャ先生。いや、確かにこれは一見の価値があるわ。

 だが周囲に敵がいないとも限らない。

 俺の波動感覚には反応無しだが、MMR号の構造材は魔力を阻害するため、中からだと限界がある。エフティ、どうだ?

 

「今のところは何もない・・・と思う」

 

 オーケイ。それじゃロビン、寺院の前につけてくれ。中に入って調査・・・っ!

 

「敵だっ!」

 

 エフティの叫び。

 操縦席から外を眺めていた分、一瞬察知が遅れた。

 

「ぐおっ!」

 

 エフティが艇内に叩き落とされる音。

 上部ハッチの閉鎖スイッチを反射的に叩く。

 鉄より遥かに固いアダマンタイト合金の軋む音。

 おい、嘘だろ! 古代文明の作った、今じゃ再現出来ない超硬合金だぞ!

 上にいる奴、それを素手でひん曲げてやがる!

 

「このおっ!」

 

 またしても破砕音が響いた。

 飛び出したエフティが、上にいる奴に体当たりしてはじき飛ばした音だ。

 ついでにハッチもさらに壊れたらしい。

 ええい、ままよ!

 

「カエラ様、先にわたくしが! フジは中の皆様をお守りしなさい!」

「はい、母様!」

 

 外でドサリと音。

 上にいる奴とエフティが落ちた。

 タチバナ、周囲から狙ってる奴がいる! 後方の森の中と左前方の寺院の奥!

 落ちた奴含めて全部で五人!

 

「はい!」

 

 返事と共にタチバナが右手をハッチから突き出した。

 

「ぎゃっ!」

「ぐわっ!?」

 

 まばゆい光と周囲から上がる悲鳴。

 詠唱無し、ノータイムの《閃光(フラッシュ)》の呪文。

 その時にはもう、タチバナは素早くハッチから飛び出して下に飛び降りている。

 続けて俺もタチバナほど華麗にではないが素早く上部デッキに出て周囲を確認。

 タチバナは寺院のほうに走り、エフティはフランケンシュタインみたいな巨漢と取っ組み合っている。

 なら俺は。

 そう考えた瞬間、反射的に脇差しの「クサナギ」を抜き打っていた。

 何かを切り裂く手応え。

 不完全に発動した術式が暴発し、俺のそばで爆発を起こす。

 燕返しにもう一太刀。今度は飛来した魔力光が切り裂かれ、雲散霧消した。

 

「!?」

 

 森から動揺の気配。

 そこかっ!

 クサナギによるフォノン・メーザー斬り。

 一文字に走る光の刃が木々を切り裂き、三十本ほどがまとめて倒れる。

 

「うおおおおおお!?」

 

 悲鳴を上げて隠れていた二人が飛び出した。

 金髪の優男とつば広帽子のひげ面。手には・・・銃!? 雷光銃か!

 

「飛ぶ斬撃だと!? チクショウめ! 何がなんでも俺達を殺したいか!」

 

 そりゃいきなり襲われたらな!

 寺院の方から再び《閃光(フラッシュ)》の呪文が閃いた。

 あれを連発するとは、あちらもかなりの手練れらしい。

 しかしこいつら・・・裏切ったにしては?

 

「おい! お前達調査隊の生き残りだろう! 話次第では連れて帰ってやってもいいぞ!」

 

 MMR号から飛び降りる。クサナギを下ろし、左手で二人を制止した。

 ちらり、と素早くアイコンタクトする優男とひげ面。

 寺院からも刃を交わす音が止まり、取っ組み合っていたエフティと大男も動きを止める。

 臨戦態勢のままではあるが、取りあえず話を聞く気にはなってくれたようだな。

 優男が口を開く。

 

「お前はあの辺境伯の・・・」

「ダメです! みなさん、戦いをやめて下さい!」

 

 ロビンが上部ハッチから顔を出したのはそんな時だった。

 戦いはもう止まってるんだが、それには気付かず、必死な顔で訴えかける。

 

「ジュカルさんも、ジャンゴさんも、ジョズも・・・

 きゃああああああああああああああああ!?」

 

 あ。

 

「あ」

「あ・・・」

 

 つるつるした表面を慌てて降りようとしたロビンは足を滑らせ、長く尾を引く悲鳴と共に落下する。

 ごつんと大きな音がして、ロビンは頭から大きな石に激突した。

 

「痛いです・・・」

 

 ・・・痛いで済んでよかったよ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。