「えっ………ちょっと、なんの騒ぎ?」
「あぁ………そのね、見てよアレ」
「……………ど、どうしたんだろう……凄い、人だかりだけど」
四時間目終了後、三者懇談期間につき下校時刻となった梶葉高等学校の廊下は騒然としていた。
「あの赤毛の彼………たしか二年の中村って子よね?」
「えぇ。校内有数の不良くん、って聞いてるけど………なんか、今日は凄く怒ってるみたい。歩き方が、なんかヘンよ」
騒ぎの元凶はこの俺だった。
それはそうだ、今から苑持寺高校、つまり因縁の相手である颯の通っている学校に行くんだから。
今からアイツをボッコボコにしてやれると思うと、今までに抱えてきた苛立ちが全部表に出てきた。
思わず不機嫌になるのもしょうがないというものだ。
「ね、ねぇ中村くん、今日四時間授業じゃない………それで………ちょっと、放課後空いてる?」
廊下を歩いてる途中、正面から同学年の女子が声をかけてきた。
「────あ゙ぁん……?」
不機嫌の絶頂にいる俺は、自然と周りに対する対応が横暴になってしまっていたようだ。
怒りのスイッチが入ると周りが見えにくくなってしまう癖があるが、これは直したほうがいいだろう。メイドたちにも知らぬ間に厳しい態度に変わってしまっていたかもしれないからな。
「………はぁ。だから言ったじゃない、怒ってる時の中村くんは話聞いてくれないよ、って」
「そうだね…………」
「オイ中村!テメェ、この前の借り、返させて貰うぜこの野郎!」
「どけ、誰だテメェ帰れ」
「どぉっ!?て、テメェ突き飛ばしやがったな!」
「素敵…………ねぇねぇ、中村くんやっぱあたしに気があるんだよ!あたし、睨まれはしたけど突き飛ばされなかったもん!」
「あーはいはい、そうですね………」
「……………苑持寺、ここか」
ここが苑持寺高校………公立のいちおう進学校の部類には入る。
いや、ジバ高よりか一回り偏差値帯としては下か。
まぁいい、とにかく。俺たちにとって地元の高校と言っちゃ、こことジバ高の二択ってとこだ。
歴史的にはそこまでだ。
俺達はブレザーだが、この学校の制服は未だに茶色い学ランと紺色のセーラーだ。
颯が着ていた学ランも、ここのと同じ色だった。まず間違いなく、颯の着ていた制服はこの苑持寺高校のものと見て間違いないだろう。
「あっ、アルクェイド………」
しまったな、吸血鬼沙汰のことならアルクェイドを連れてくるべきだったか。
いや、アイツは今頃まだベッドで寝てるんだろう。それに、あんなの連れてこんなところへはこれない。
できれば颯と即座に交戦してボコボコにしてやりたいが、昨日の感じからしてたぶん正面切って勝つことはできない。冷静に考えると、今身体一つでやってきた俺は一体何だったんだろう。
「今はまだ授業中か、」
それだったら校門で時間を潰しておこう。
忍び込む必要はないし、見つかった時のリスクを考えるとそんな事をするほどのメリットがない。
俺は校門の前で壁に寄りかかり、残りの時間を待とうとした。
「よぉ、テメェ誰だよ」
「……………………………………………………」
校門の向こうからなにやら声がしてきた。
俺がそっちのほうを向くと、制服を着崩した男たちが何名か、こっちのほうまでやってきた。
公立の高校生とは思えない奇抜な髪型や、髪を染めてる奴もいたりと少なくとも優等生という部類ではなさそうだ。
「その制服、ジバ高だろ?何の用でここまで来たんだよ、」
「別に、人を探してるんで来ただけだ」
関わりたくないので黙っていようと思ったが、いちおう苑持寺生、つまりここは彼らの庭だ。不審に思われないためにも目的は明らかにしておくべきだと思い、俺は口を開いた。
「人探しだぁ?こんな真っ昼間にここへ来るやつなんて誰がいるかよ、」
「……………………………………………………」
「へへっ、つーかコイツの髪色キモいなオイ。マジでなんか、熟れたトマトみてぇな色してんな」
「……………………………………………………」
まずい、今めちゃくちゃ不機嫌なの忘れてた。
なんか、ほんとにちょっとしたことでいつでも爆発する自身がある。
「よぉ、ダッセェ髪の毛チラつかせて平日の授業中に他校へお出ましって、もしかしてイマドキ喧嘩自慢にでも来た感じか?」
俺一言も発してないのに勝手に解釈された。
「へぇ、根性あんなァお前ぇ。オレたちが誰か知ってるか?まぁ、素人にゃあ分からねぇよな、教えてやるよ、天下の「苑持寺連盟」様だぜ」
それ、けいねぇが名代張ってるヤンキー部族じゃねーか。そっかよく考えたらここけいねぇの学校でもあんのか、それだったらけいねぇに会えばよかった。
「その天下の苑持寺連合さんにお聞きしたいんだがよ…………髪の毛が緑のキノコ頭知らねぇか。お宅の制服着てたんだがよ、阿良句颯って言うんだが」
「さァ?誰だろーなァ。聞きたいことがあんなら、なんか誠意とかないんか?」
不良たちはさも当然のように金をせびってくる。
ふん、金もないのに番張ろうなんざ経験値が、100万年早いっての。
紀庵と福原さんトコの俺がそうであるように、金があるやつが一番陣営では力持つんだよ。
お前らみたいにいちいち金を巻き上げないとやってけねぇ野郎が、天下の苑持寺連盟がうんたらかんたら抜かしたって、なんの圧にもならねぇんだって。
こういう奴に限って組織の一番下っ端なんだよ。
「やっぱいいわ、もっと話の通じそうなやつに聞くわ。時間食わせて悪かったな、」
俺はこれ以上相手にする意味がないと思って奴らの前を横切った。
だって本当に無意味だからだ。こいつらの冷やかしに耐えて、仮に百万円手渡した所でコイツらは阿良句颯のことを知らないんだ。
なら、こいつらと会話するメリットはない。
だからせっせとこの場を去って、教室のなかにでも入り込んでその変にいる情報通そうなやつを探そうとしていたんだが………
「オイ待てよ、よそモンなんだったら、校内はいるのに通行料くらい置いてきな」
俺の肩に馴れ馴れしく、背後からポンと手を置いてくる不良だった。
俺は手を払いのける。
「お前らの学校じゃねーだろここ。まして公立とかマトモに国のやつだろうがお前らに金せびられる理屈はねーよ。俺急いでんだ、お前らの相手してらんないんだよ」
「ははぁん……ちなみになんで金払えねぇんだ?」
「は?どうだっていいだろんなもん。金払うだけの理由がねーからだ、って言ってんだよ」
どうしたんだコイツら。急にテキトーな因縁つけて俺に喧嘩売ろうとしてるのか?
なんだ?どういうことだ、アレか?頭の中でカップラーメンでも沸かしてるのか?
「はぁはぁはぁはぁ。なるほどよーくわかったわ、んじゃまぁ金払えない分は稼ぐしかないわはァ」
「はぁ?何言ってんだ、だから俺にここ通るのに支払い義務なんて────」
俺が言い終わる直前、目の前の不良の足元から蹴りが跳ね上がってきた。
「…………………っ!!」
俺は片足を上げながらガードし、そのまま飛び退いて即座に距離を取った。
「……………随分とご立派な挨拶だなおい、」
「払える金がねぇなら、払えるように稼がせりゃいい。あいにく、俺たちゃ物欲ねーもんでな。特にお前に何かして欲しいとかねんだわ。だったらせめて、ここで俺ら専用のパンチングマシンにでもなってくれや」
「歓楽街とか行ったら時々見かけるだろ?乞食がやってる『殴られ屋』ってやつだ」
「オイオイ冗談言うなよ。殴られ屋ってのはホントはスタントマンだぜ。そっちの殴られ屋は、ほんとに殴られてるだけだぜ?」
「そうか、そうだったかもなァ!へへへへへ!」
やれやれ…………なんでいつもこうなるんだか。
なるならなるで、最初っからめんどい御託とか茶番は置いておいてさっさと殴りかかってきたほうがまだ助かるんだが。
「あのなお前ら、一個勘違いしてるみてぇだが、確かに俺はよそ者だが、一応わざわざ学校を訪れたお客様だぞ。これが天下の苑持寺連盟流のおもてなしか?蹴りの姿勢もなってねぇ、」
脚技で姉貴の横に並ぶ奴なんていない。
そんな姉貴としょっちゅうドつき合いになるこの俺が、今更素人の蹴りなんざ食らうかよ。
「俺の知ってる苑持寺連盟の奴は、もうちょっと正義感あって常識的だが、お前らはそれもない割には頭も少々足りてない。挙句の果てに、相手を見ずに喧嘩売る感じも素人感が剥き出しで鼻につく。天下の苑持寺連盟とやらの名が、お前らのせいで泣いてんぞ」
俺は黙って足元を直し、近くの柱に鞄を置く。
「お?なんだなんだ?お前、案外気合入ってるんジャン」
舐めてるな、完全に俺のこと。
普段ならもっと上品にあしらうんだが、今の俺は血反吐を吹きそうなほどムカついてるため、いつコイツらをぶっ飛ばしてもおかしくない。
「バットとか持ってるんなら先に出しときな。始まってから出そうとしても間に合わねぇぞ」
「3対1だぜ………どうなってもしんねぇぜ?」
「おうよ、やっちまおうぜ!!!」
というわけで、俺の正面からまず一人、素手で来る。
随分と正々堂々しているのはさておき、だからといったってたちの悪いチンピラに武器の有無はまったく関係ない。
おっしゃるとおり、誰だって3対1はめんどくさい。
なので、とりあえず一人一撃で仕留めようと思います。
「オラ────」
「どけぇぇぇぇっ!!!!」
「グフぇぇぁぁぁぁぁーっ!」
俺の強烈な右拳が顔面に突き刺さり、一人は校門のほうまでふっ飛ばされていった。
「そぉぉら─────よ、っ!!!」
「ヴェエエア……っ!!!」
そのまま全速力で駆け抜け、校門を背に、壁に打ち付けられた不良に駆け寄り、勢いよく跳躍し、
靴裏を勢いよく頭に叩きつけてやった。
俺の走力が乗った蹴りと壁に挟まれて、あっという間に一人撃沈した。
「て、テメェ…………っ!!!」
金属バットを振りかざして残り2人がやってきた。
「オラァァァァァー!!!」
またまた、真正面からそんな何も考えずに突っ込んじゃって。
「死ねぇぁっ!」
だから、死ねってトドメ刺す時に使うんだよ。
当たらねぇもん振りながら死ねとか言うな無意味だから。
横薙ぎに振るわれたバットだが、俺はその下をくぐり抜ける。
俺を外したバットは校門の壁に打ちつけられる。
反動で一人が一瞬だけ行動不能になる。
その隙に、裏に回った俺の強烈な回し蹴り一閃。
「オラァっ!!!」
「ぐぇぇぇぇっ、」
また俺の靴裏と壁に挟まれて一人撃沈。
こっちは痛そうだ。壁バットで殴って向かい合ってる所を回し蹴り食らって顔面壁にぶち当てられたんだからな。
「ひっ………な、なんなんだよお前!!!」
最後の一人に至ってはバット盾に振り下ろしてきた。なにやってんだ日本刀じゃねぇんだぞ。
バットが空振って地を叩いた瞬間に俺は両脚でバットを挟み込む。
「ふん、」
そのまま両脚を激しくねじり、握っていたバットを引きはがす。
「3対1がなんだって?」
「ごふっ………!!!」
そのままターンしつつ腹に正拳突きをぶち込む。
耐えられるわけもなく腹を抑えてくずおれる。
俺はバットを拾い上げた。
「さーて………お前せめてバットの振り方くらいちゃんとやれ。バットはこうやって振るんだよ」
ほんで、無防備なケツに向かって現役バリバリの頃から幅利かせた全力フルスイング一閃。
「ゴラァァッ!!!」
「ギァァァァァァァーッ!!!!」
なんか、取り返しのつかなそうな音がしながらも、最後の一人も勢いよくぶっ飛ばされていった。
3人共に再起不能。
なんか余計な時間食らっちまったなクソ。
「はぁ…………なんか変な時間食ったわ、」
「よぉ………やるじゃねぇか、アンタ」
その時、入り口前の柱から一人の影が現れた。
「アンタ、腕っぷしは確かなようだが、もう今からアンタはここからお家に帰れねぇぜ」
─────現れたのは、空色の髪をした大柄な少年だった。
俺よりも一回り大きいので、身長にして180?
かなりガタイがいい奴が現れてきた。
不良集団のリーダーにふさわしそうな体型とは裏腹に、髪色以外に汚らしさはあまりなく、アンダーグラウンドな感じを感じない、一見すると好青年のような人物だった。
例えるなら、柔道部の気の置けない陽気な友達というか。
腕組みしながら現れた、この時期に学ラン羽織らずに長袖シャツ1枚のそいつはゆっくり俺の前にやってきた。
「なんだ、新手か?もういいだろ、」
「ひひっ。新手、か。まだオレなんもしてないのに、完全にアドレナってるじゃんか、アンタ」
気がつくと、俺の周りは不良集団に囲まれていた。
「兄貴!兄貴!」
「やっちまえ兄貴!」
「苑持寺連盟の力を見せてやってくだせぇ!」
なんだか、よくわかんねぇが…………こいつは連盟のカリスマらしい。
確かに、他の素人に毛が生えたみたいなやつと比べたら、知性は感じるしまだ会話は通じそうな感じはするが………
どちらかと言うと、それこそけいねぇとかソッチ系だ。
いやそんな事より俺が驚いたのは、その数だ。
校門の塀や、そこらへんの地面、花壇の縁に座ってどよめく観衆そのすべてが苑持寺連盟の連中だというのなら。
この場にいるだけでも、ざっと3、40人………もしこの場にいるのが全員じゃないなら下手したらもっといるぞ。
いつの間にこんな人数………?
「んで。アンタがこの惨状の元凶か。なんでも、見張りのヤツが、ヤバいのが来たんだって聞いてみれば、こりゃまたスゲェのがいるじゃんか」
その割には随分と余裕そうな表情をする少年だ。
だが、見た目はとてもではないが、直感では俺と同学年だな………
「あ、兄貴………!ソイツ、マジのマジで強いっす………!」
「俺たちじゃ………手も足も出ねぇ………!」
「気ぃつけてください、兄貴………!」
だらしねぇ奴らはなんでそんな声が上ずってんだよ。
負けた途端すぐこれだ。兄貴ばっか頼ってねぇで自分強くなれって話だよな。
「ったく、お前らもバカな事したな。もしかして、こいつが誰なのか、分かってなかったってのか?」
少年の言葉に現場は騒然とする。
あ、相当誰も知らないんだ。
なんか、別に知られる噂もなけりゃ有名になりたいという気持ちもないが、それはそれで嫌な気分だな。
「コイツは赤毛の悪魔でお馴染みの中村白夜だ。ほら、あったろ?去年だったかな、高校球界を追放されたって噂のアイツだ。─────ピッチャー返しの事故で、投手に全身麻痺を負わせた殺人バッターってのは、この中村さんのことだ」
殺人バッター、その言葉で現場は再び騒然とする。
そっちの名では十分に通っているらしい。
こっちとしては、掘られたくもない過去を部外者に掘り返されて心底不愉快だ。
「能書きはいらねーからさっさとここ通せ。俺はここで人探し今からすんだよ」
「まぁそう言うなって殺人バッター。…………ま、こんな軽い挑発には乗らねーよなぁ。高校球界から落ちたあとどうしてっか疑問だったが、まさか喧嘩屋とはなぁ。アンタも随分と堕ちたじゃんか」
「俺はお前のこと1ミリも知らねぇが随分とそっちは俺のこと調べてるようだな」
「まぁな。いちおう、同郷のよしみだ。地元のスター高校生ってことで俺は現役時代は応援していたんだぜ?ま、オレは今も柔道部だがな」
「そうかよ、んで。お前誰だよ。ファンの選手と腹割って話すのが目的なら、せめてお前から名乗れよ」
へへへへへへっ…………と青年は豪快な笑いをする。
「よく聞いてくれたな。オレの名前は
─────いや俺、ナンバーツーと知り合いなんですけど…………
「ま、そんなお偉いさんがわざわざここに来るってことはどういう意味かは、わかるよな?」
「なんだ?子分の敵討ちにでも来たか?」
「へへっ、そーいうこった。いくら下っ端だらうと、よそ者1人に大勢かかってこんな瞬殺されてお帰りになられたんじゃ、天下の苑持寺連盟が舐められるからな。その前にひとつ、オレらという組織の恐ろしさを体験してから帰って貰おうと思ったんだ」
なんだ、見直して損した。
結局コイツも、他のバカ共やそこの情けないザコ共と変わらない、喧嘩大好きしか頭にないチンパン野郎じゃねぇか。
「さぁ、やろうぜ中村!タイマンの喧嘩は漢の花道ってやつだ!お前から来な、お前がオレの顔をぶん殴ったその瞬間からデュエルスタートだ」
西尾は俺の目の前までやってくると、拳を打ち鳴らしてこっちを挑発してくる。
俺としては相手にしたくない。
そのため、西尾の瞳をただ覗き込んで睨みつける。眼光だけで勝ってやる。
「────────────」
「────────────」
だが、俺が圧をかけても西尾はびくともしない。
なるほど………そのへんの素人とはひと味もふた味も違うらしい。
「どうした?来ないのかよ?」
「そっちから来いよ、俺から行ったら弱いものいじめになるだろうが。そっちから来たら正当防衛だけどよ」
「へぇ、オレに勝てるとか?でも口ではそう言いながらぜんぜん来ねぇよなぁ?」
「当たり前だろ、ホントに強いやつは無闇やたらに戦わねぇんだよ」
「くぅーっ!そうかそうか、まさかお前がオレを前にビビる腰抜けだったとはなぁ!」
─────おい待て、それは話変わってくるぞ。
「…………………あ゙?」
「おいお前ら!みんな見てくれ!コイツが、殺人バッター・自称最強の喧嘩屋でお馴染みの中村白夜さんだ!そんな最強さんも、オレの前に出てくりゃこうして何も言えず戦えずガタガタ震えることしかできねぇらしいな!」
「───────オイ、」
誰が、なんだって?おい、この野郎。
「これが苑持寺連盟のエース西尾宝介の圧倒的な力だぜ。なぁ?これが天下に名だたるオレたちの力だ!」
「ウォォォォァーッ!!」
「さすが兄貴ぃぃっ!!」
「やっぱなんだあの赤毛は、腰抜けじゃねぇか!!」
「───────────────」
「どうしたどうした?悔しかったら攻撃してこいよアンタから、オレはもう何やってもアンタと戦うって決めてんだ。さっさと来ねぇと、ずっと一生こいつらに笑いものにされるぜ?もちろんジバ高にも広めてやるぜ」
「は?」
「だからオレが真の最強っ!中村ちゃん残念でしたー!うぃー!いぇーい!そして──────」
「ゴラァァァァァッ!!!」
ブチギレた俺の拳が西尾に向かって炸裂した。
流石に我慢の限界だった。
決してこいつの安い挑発に乗ったわけじゃない。
こいつの、わざと口調を変えた、わざとらしい、子供騙しの、安い、雑い、クソみたいなショボい挑発にムカついたわけでは、決してない。絶対に、絶対に、ぜーったいに。
俺はキレてない。俺キレてない。俺は大人だ。
こんな挑発には乗ってない。
颯にムカついてるだけだ。それをこいつらが火に油注いだだけだ。
………怒ってねぇつってんだろ!!!クソが!!!
「おぉっと!その手には乗らねぇぞ!」
俺の神速のパンチを、西尾は軽く受け流して躱した。
「なんだよその腑抜けたパンチ────」
「ゴラァァァッ!!」
「ゴ、ッフ……………」
舐めたことしてるから、パンチと同時に合わせて流れるように放たれた膝蹴りが脇腹に突き刺さった。
「ちょ…………タンマ…………脇腹、膝入った…………」
西尾は脇腹を抑えてヨロヨロ後退する。
「──────オイ、ガキ」
「えっとな………その、」
「ゴララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララ────ッ!!!!!!」
「グフゥェェェェェァァァァァァーッ!!!」
ブチギレた俺に死ぬほど連続でぶん殴られた西尾は大きくふっ飛ばされ、自転車置き場に並んでいた自転車を何台かぶち壊しながら飛んでいった。
「はぁ………はぁ………はぁ………はぁ…………」
久しぶりにこんなクソキレた。
颯よりキレるものこの世にあったんだちょっと驚き。
コイツが悪い、俺がただでさえ不機嫌な時に地雷死ぬほど踏みまくったんだからな。
「ごふ…………や、やるな…………ちょっと、さすがに侮ってたぜ…………」
だが、西尾も間違いなく手練れだ。
手応えはあったが、直感で撃沈させる確信は起こらなかった。
実際、こうしてタフにも起き上がったんだ。
「へっ………やるじゃんか、でもこっからが本番だぜ…………言ったろ?アンタがオレを殴ってからが勝負だってな、」
「うるさい黙れムシケラが。テメェは俺が読んでた漫画みてーに、撤退的に全身にラッシュ叩き込んでブチ飛ばす」
「おうよ!やってみせな!さっきのも上回る、最高のパンチをよぉ!!!!」
こうして、総勢50もの大群に囲まれながら、俺と西尾宝介の一対一の大決戦が始まったのだ。