それはマジでない。マジで 作:北海道に奴は居ない。寒いから
地球上にとある生物が存在する。
そいつは核爆弾による放射能にも生存しうる生命力を持ち。
人間換算での速さは時速300kmに相当し。
約300000000年以上もの間、姿を変えず現代まで生き残り続け。
実はあんなに奴を嫌う民族は日本人ぐらいであり、海外の一部地域ではcoolなペットとして飼う人や、食用として食べる人もいるという黒いあれ。
ちなみにエビみたいで割と美味い。
そんな日本国内に236億匹*1は生息しているという、『台所裏の支配者』とまことしやかに噂されている黒いGとは何か。
私はその謎を解き明かすべく、炬燵型ダンジョンの奥地へと飛び立った
ガンガン、ガンガンガンッ!!
ーーー第
古臭く、まだ改革も行われていなかった東京呪術高専。
故に伝達方法は、近代であるが鐘と人声で行っていた。実のところ呪力で強化された声と、遠くへ音を届かせる呪具により、常時においてはさほど問題ではないのだが。
今回はその呪力が問題だった。
ガサガサガサガサと、何かが蠢く音がする。
鐘を鳴らすその男の視界の端には黒色の塊、ーーー否、黒い群れ。
それを認知していながらも、彼は鐘を鳴らし続ける。仲間たちに伝えるために。
「第
突如背後から一匹が襲いかかる。
呪力で強化された手で叩き落としても、また一匹。術式で潰し殺しても次は100。
尽きず、満たされず、飢え続ける。
昭和の高度成長期に伴い、人類の生活へ適合したことにより爆発的な繁殖を果たした。
嫌悪と忌避から生まれたそいつの術式は『無数の増殖と単為生殖による擬似復活』。大量消費社会にとってそれは天敵とも言えた。
故に前々東京呪術高専校長と、当時の特級術師により高専の一部に封印。
正史においては
「が、アァ!!ッ繰り返す!!脱走した呪霊の名称はーーー」
彼は使命を果たす。
ここで必ず死ぬかも知れないとしても。
最後まで他の術師に欠片でも貢献できうる行動を、と。彼は叫ぶ
「特級『黒沐死』!」
短期間で何度も復活する。術式の特性上倒せない。複数の時代で同じ姿・術式で現れたなど。
極めて千差万別な呪霊において、
登録済みの特級呪霊、16のうちの1。
特級呪霊『黒沐死』。
全てを食い殺す、悪魔の名である。
「(なんで私が黒沐死になってんだ!!あのク◯神が!次あった時には〇〇して〇〇に〇〇○ぶち込んでやる!あと術師君、君のことは殺してないよ!ただ口の中いっぱいにGがいて叫べないし動けないだけで!)」
中身はただの転生者である。
何故彼女は黒沐死になってしまったのか。そして何故このような脱走劇を繰り広げているのか。その複雑怪奇な事情を全て書くにはページの余白が少し足りない。
故にことの経緯は少し時を遡る。
ーーー『君死んだ。好きな作品の世界に転生おk』
ーーー『やったね。呪術廻戦で』
ーーー『憑依で良き?』
ーーー『おっけー。さっさと始めてもろて』
ーーー『あらほいさっさー』
ーーー『ふぁ?!黒沐死じゃん。羂索に調伏されちゃう』
ーーー『でも何か封印されてるし、出られないなぁ』
ーーー『よっしゃ、エピソード記憶八割犠牲にして脱出すんべ』
ーーー『……私ハ、血ノ味ガ! 大 好キダ!!!』
以上である。
脱出の際に上位次元とも言える場所のエピソード記憶八割を犠牲にしたおかげで、自由と引き換えに何か大切なものを失った気がするがそれは一切気にしていない新生・黒沐死。
略してシンクロ/SINQLO。
どこか某洋服店にかするようなかすらないような名前の彼女は、呪具や術師に宿る呪力を啜るような形で配下でもあるGたちを増やしていた。
ただし彼女は寛大な心と呪霊となってもなお失われることのない強靭な心、そして美しい人間性を持っていた。
故に殺すようなことはしない。
ただ体液やらなんやらを直接啜ったり、体表に張り付きながら表面に貼られた呪力の膜を吸ったりするだけである。
式神で。つまり、大量のGで。
「ッッ 、ーーッ!!???!」
『(いや、ごめん。悪気はないんよ。ただ脱出が最優先事項にあるだけで)』
彼女は封印されていた結界を食い破って脱出していた。
その時に学んだ呪力の直接捕食。
黒いアレが持つ脅威的な生存能力が反映された結果、結界術の基礎よりも先に応用を会得した。
さすがに術式を通して確立した現象までは対応できないが、他にも食らうものはある。
結界。呪具。木製の建造物。果ては倉庫に置かれた備蓄品や、訓練用の躾けられた呪霊まで。
食べれない無機物は呪力を啜る。呪術師はとらえて生き残る程度に啜る。…啜る。
監禁されていた呪詛師はもっと啜る。
もちろん術師の服なども植物性だったりするし、日頃から呪力で強化されているので捕食する。
そうなるとどうなるか?
悲鳴である。
食い荒らされた後にはパンツ一枚残らず、…と言いたいところだったが彼女はコンプラにも対応できる新世代のゴキなので、上下の下着は残してあげていた。
しかしそのような姿に他の者たちは欲情など抱けるわけもなく、運よく逃れたものは安堵と『次は自分かも知れない』という恐怖。
喰らってしまったものはトラウマと『もう二度といやだ』という割と洒落にならない恐怖。
しかし彼女はコンプラにも(以下略)。
途中で見つけた
そちらをぶち込むことでトラウマは半減!
割とヤバめの被害を受けたのは医務室にたどり着く前に被害を受けた、呪詛師とたまたま視察にきていた総監部のおっさん+その護衛だけで済んだ。
君らの犠牲は忘れないと言い残し、鐘の塔にたどり着く頃にはすっきりさっぱり忘れていた彼女は呑気にも『(鉄の処女あるとか呪術高専凄いな)』と思っていた。
瞬間、塔の屋根の上で逃走経路を考えていた黒沐死の元に、一つの呪弾が飛んでくる。
数十体の黒いアレを壁にすることで防御し、射手を見据える。
神社の鳥居、その上に腰掛けている彼は黒髪、されど少しばかり地毛の赤、そして白髪が混じり始めている着物を着た壮年の男。
二代目黒沐死は知らぬことではあったが、彼は禪院家26代目当主『禪院直満』。
田舎にして不遜にも『日本の都』を自称している僻地に、彼は総監部の一人と割と碌でもない企み事を話すためにここにはるばる来ていた。
投獄されていた呪詛師を使って天元様の結界の不備だと言って関係の強い最近調子に乗っている五条家の影響力を弱めると同時に総監部にとって邪魔な一般出の術師を殺して死体を呪術に利用し、遺族から『警備主任であった彼への責任追及』の名目で損害費巻き上げ、ついでに呪詛師脱獄の手引きをしたのは禪院家当主の次弟と末弟による当主陥落及び天元様殺害の画策だと総監部に告発して呪詛師認定させるつもりなど決してなかった。
そして彼はこの瞬間、予定とは違ったが自分が黒沐死を祓徐することで、さらに利用できると皮算用していた。呪霊脱走については適当な術師に罪を被せて、ついでに弟たちを嵌める。そして東京校側に恩が売れるので一挙両得どころか一石三鳥である。
まぁ相方の総監部の一人は地下牢のあたりで失神しているので、すでに失敗は確定していたりするのだが。
ついでに次男に全部バレてるし、トラップ置かれてるし証拠も既に全部握られている。
三男は気づいてすらいない。
「ふむ、一撃を打たれても直接向かってこない理性。自身では受けずに式神で一度試す用心深さ。そして相手を観察するような目線。
虫ケラとは思えんな」
裏で行われていることを知らぬまま、彼は思考する。
黒いアレ的な昆虫から生まれた呪霊である黒沐死。
当然少しは禪院家には出てくるが、昔稀に出てきた時は厨房に立つ女どもを全員折檻し、全て雌どもの身で三日三晩寝させずに手や雑巾などのみで掃除させ、疲れて倒れた役立たずにはそれ以外への罰という形で仲違いを増長させ、見目がいいやつがいた時には『罰だ』と言って寝屋に強制的に連れ込んだりしていた。
そして暇な時には外で拾ってきたGの死骸をいい感じのところに置く程度には模範的な呪術師である彼にとって、目の前にいるそれは恐怖に値する存在ではなかった。
「だが、結局は虫ケラ
術式など使わずとも
そう言い彼は右手に白色に淡く光る呪力を纏う。
通常の呪力を正に持っていく呪力操作の高等技術、反転術式。そのさらに上である
事実、彼は天才である。
その悪事の巧妙さと反転術式という希少性、そして単純に強さという観点より禪院家の当主の座を持っていた。ついでに家では反転術式で増産して腰を振ったり、下人を殴って直すという遊びをしていた典型的呪術師である。
彼の人間性はさておき、呪詛師は術式と体術で殴り、呪霊は反転術式で祓い。
事実、現代最速と名高い禪院直畏人が実力でなく搦手を選ばざるを得なかった時点で、その実力は現代最強*2なのだ。
まあ毎度詰めが甘いし、今回相対するのは黒沐死(in 転生者Soul)なので反転術式は効かないのだが。
鳥居の上で余裕を見せて腰掛ける彼に対し、ニュー黒沐死は高専中で呪力収集をしていた式神を集める。
高専中に回っていたが故に、呪具・術師への被害は甚大。
呪具を喰らっていたもの。術師を直接すすっていた者、建造物を食い荒らしていたものから、木々を平らげたもの、フンドシを食べてきたもの。
…ん?
彼女は式神に確認し、肉までは食べていないことを確認。
今後は一層部下(式神ゴキ)への教育体制を一新すると表明した。彼女はそんじょそこらの呪霊とは違う、反省できる新時代の呪霊なのである。
被害者への対応?呪霊なのでそんな難しい言葉は知りません。
黒沐死・新は塔を降り瓦屋根をつたい、禪院直満の正面に位置する賽銭箱の前に着地した。
背後には黒雲の如き蟲の大群。
相対するは赤・黒・白の三色髪の男。
『…呪術師。何故、私ノ邪魔ヲスル?』
「ほう喋れたのか、珍しい。…ふむ、掃除だな」
『…ソウカ』
術師はどうでも良さそうに。呪霊は至極冷静に。
そして彼女は体の内から一本の呪具を取り出す。
『爛生刀』
現れるは生と死の交雑する、魔剣。
『呪術師、私ハ、肉ノ味ガ好キダ』
「俺はそこまでだ。何せ呪霊は肉が残らん」
油断というべきか余裕というべきか。
少しながらも会話を行う直満。次男はやらなかったのに。そういうとこだぞ、長男。
術者の確勝への手筋(なお)はただ、触れること。故に手のひらを前に出し、受けの構え。
対して爛生刀を前に構え無数のGを覆うように、そして飛びかかるような攻めの姿勢。
緊迫の時間の後、呪霊が仕掛けた
『ソシテ!割ト野菜モ好キダ!』
「は??????」
奇襲。
予想していなかった言葉。そして予想していた効果が出ない反転術式。
この逃走劇、最後の一幕は、術師が一撃を喰らうことで開幕した。
それに対して困惑、そして逆に笑みが溢れる直満。
そして全力逃走する黒沐死。
「は????????????」
『私ハァ!去ル!(戦わずとも逃げりゃあいいんだよ、逃げれば!)』
事実、彼女はここで戦う必要性はない。
この天元による結界を抜け出して仕舞えば、その後は式神を四方八方に飛ばし自身は地面に潜り遠方へと逃げる算段である。
そして、彼女は信ぴょう性の割と低い転生をしてでも、そして脱獄の際引き換えにした中でも残り続けた強い思い出。
『(私は転生したら豪遊しまくると決めてんだ!呪術なんていう違法性どっぷりなのなんて金稼ぎ放題だぞ!?宿儺と羂索と五条からこそこそ隠れ続けてたら新宿決戦後には大金持ちだったのに!
クソあの邪神め!まずは脱走、そして人の姿を得てやる!)』
割と碌でもない記憶である。
『ハハ!!術師!サラバダ!』
「待てや糞虫!!」
これは彼女が人ならず身にして、人を目指そうと足掻くクソみたいな害虫の話。
そしてこれはその序章であり、劇の始まりである。
ここから下は次回予告。大分今後の展開についてのネタバレも含むため、自己責任にて視聴をお願いいたします。 by 筆者
混乱する東京呪術高専。
追う禪院直満と、逃げるニュー黒沐死。
しかし、黒沐死の前にはメイド服を着た若かりし頃の夜蛾正道!
突如始まるフロントのダブルバイセップス!
対抗する禪院直満のサイドチェスト!
負けじと意思を持って動き出す『爛生刀』によるモストマスキュラー!
なんか雰囲気で乗ってきた黒沐死によるサイド、トライセップス!
同盟はなく、拮抗した実力と錯綜した相性による、三竦みの四つ巴!
そこに加わるもう一人の姿とは?!
次回!
『捨身我道』
多分続かない!