それはマジでない。マジで 作:北海道に奴は居ない。寒いから
新聞 https://kyoko-np.net/2008112801.html
論文 https://dl.ndl.go.jp/view/prepareDownload?itemId=info:ndljp/pid/10507545&bundleNo=1&contentNo=1
今回の話のサブタイトルは『捨身我道』
逃げる、逃げる、逃げる。
ただ逃げる。
脇目もふらず。
術師の服やら大事な呪物やら呪具やら、大和男児の褌やらに染みついた呪力を吸収して増殖し続けた無数の式神たちを弾丸として、あるいは壁として、はたまた消失反応時の煙を利用したチャフとして。
そして弾丸が向かう先は、ブラフなどを除けばただひとつ。
それは人類、否。割と多くの哺乳類が抱える最大の急所。まぶたで守られる目ではなく。硬い頭蓋骨で守られた脳みそではなく。肋骨で守られた心臓でもない。
それはーーー股間である。
陸上での繁殖・生殖活動のために進化した結果、残ってしまった弱点*1
そこを狙わぬ道理などない。
かの偉大な漫画家は言った。
Q『何で海賊たちは玉を狙って戦わないのですか?』
A『今日も男達は互いの玉を狙い合う。見たい?そんな漫画』
ーーーと。(実話)
一通り笑った後彼女は思った。
『割と見たいかも。二次創作的な感じで』と。
というわけで実行した。
「鬱陶しいわ、カスが!‼︎」
さすが禪院家25代目。
『躯倶留隊の炳レビュー!!』で
『死んだ方が全体の利益 0』
『甚壱さん産まれる時、産婆が取り違えたんだと思う 0』
『これ以上のクズはいないと思う 0』
と直哉くんと同点を叩き出すだけはある、ということを実感させられるほどの戦闘能力。
キレるのも早い。
早い。
『頼りの反転術式が効かなかった』瞬間から、追いかける姿勢へと移行するのも。
速い。
『爛生刀を右肩にモロに受けた』瞬間、呪詛か何かの呪具だと看破し即座に反転術式で全身を覆うのも。
疾い。
『黒沐死が本気で逃げ出して』から、
否、少しずつ。少しずつだが。
彼と黒沐死の距離は縮まっている。導火線が火が灯り始めたように。
『捨身我道』
自身の体を燃やす。燃やす際に痛覚が無くなるわけでもなく、反転術式が元からついてくるわけでもない。
次弟のように使いにくいが便利な術式でなく。
末弟のように限定的な用法だが使いやすい術式ではなく。
本来の使い方であれば奥の手のように。『雷神』のような命の瀬戸際に使うような。他者を救うがために焚火に身を投げるウサギのような術式。
ただ、それだけの術式。
彼は、全てを焚火でなく自身に焚べ。
そして成った。
「虫ケラが。人間様に抗うんじゃねえよ」
業火。
否。火神。
人一人に凝縮された太陽が顕現した。
「飛んで火に入るなんとやら、ご自慢の部下もこの通りッ!」
燃える。
蹴り一つで。爪弾きで。息ひとつで。
呪力で強化されているはずのGが燃え、消える。
「さぁ、逃げるだけじゃドヴジャ‼︎⁇」
まあ、毎度爪が甘い。
そして今回の彼の敵は、ただの虫ではない。
反転術式の効かない新生・黒沐死(in 転生者)である。
『捨テレバ、行ケル、カ』
彼女が行ったのは、原作におけるとある一級術師が行なっていた技。
使役している存在の命から何に至るまで全てを使い果たし、突貫する『神風』。
Gたちに宿る呪力は微力であるが、かの毛利元就も『一匹のGは倒し…にくいが新聞紙で倒せる、しかし30匹のGはマジで倒せない。あ、見つけた。ちょ、誰かバルサンバルサン』と言っている。
三十匹の盾で一匹を覆い、弾丸を打ち込む。
特に名前なし。新技なので。
そうとわかれば話は早い。
方向を即座に転換し、弾丸を打ち込む。
特に股間に。
「温ン度あげリャええだけや‼︎」
禪院直満、さらに温度を上げる。子分たちから供給された呪力で自身の肉体を強化し、なお離れる彼女もまた、焼け焦げ始める。
『ナラ、喰イコロス!』
そして、彼女もまた。
地中から。空から。そして直満の背後から。先ほどの倍以上が押し寄せた。
導火線に、再度火が灯る。
ところ変わり高専。
「マジで悲惨だな」
「ああ」
彼らは補助監督Aと一般術師B。
先ほど緊急集令で近隣から急いできた者たちである。天元様の結界がある高専で呪霊など考えてもいなかった彼らにとって晴天の霹靂である。
そしてこの惨状。
「ああはぜってーなりたくねえ」
うめき声。
震える声。
そして全裸。
老若男女分け隔てなく。
女性の裸とか正直見飽きてはいるが、それはそうとして興味がかつ身である一般術師Bだが、9割は憐憫である。
残り?『割と抱きたくねえな』が1割。
これぞ一般呪術師クオリティー。
彼ら彼女らを救助する補助監督や呪術高専事務員。
そして緊急時用の毛布やら、スーツなどを羽織り保健室へと駆ける被害者たち。
いつもよりも必死に赤面した顔で走りようにも、いつも使う呪力は使えず、いつも通りの運転ができずに、こけながらも必死に見られたくなさで走っていく姿。
一般補助監督Aは思った。
女子呪術師のアレは割といけるな、と。
こんな事態にそんなことを考えた者は、総監部付補助監督並みクオリティーである。
そして『あ、おっさんは結構』と思った彼は割と善人より…、ではないか。
「で?どうするよ」
「どうとは?」
「いや、俺ら一応呪霊の対応で呼び出されてるじゃん?」
一般術師の持つ術式は追跡と封印。
戦闘一本よりも重宝される術式により、総監部で甘い汁を吸っている。
今日の『仕事』も似たようなものだった。
楽な仕事だったのに、とため息を二人で吐きながら向かえば割と笑えぬ大惨事。
追跡、といえど優れた術者であれば気づくし、さすれば逆探知さえありうる。
詰まるところ死ぬ危険のある仕事。ということである。
「しかもあそこに居るの内緒の密談で来られた禪院家当主どのでしょー?絶対声かけた瞬間に焼け死ぬって」
「焼死って溺死並に苦しい、って聞きますよ。それにもう一つも嫌ですし。俺やですよ、喰われ死」
「それって正式名称あんのかね。捕食死?」
「さぁ?」
彼らは目を下ではなくほのかに届く熱と、頭上になり続ける羽音が向かう方向に向けながら、談笑する。
下で行われている救助活動にも面倒臭いので参加はせず。
かといって
これまで二人でゆっくりと笑いながら、嘲笑いながら生きてきた。
でも総監部での甘い汁は吸い続けたい。
じゃあどうするか?
「怒られんように記録だけはするか…」
「へーい…、じゃあ俺結界敷くんでできるだけ近くまで行きますか。そっちの方が言い訳にいいでしょ」
「げ、めんど。ちゃんと隠蔽かけろよ?」
「日頃から使っているので得意ですよ」
悪人とは。
小賢しくなければ生き残れない者である。
とはいえ今回は他の観測手より近目で、かつできるだけ見る位置にて術式の応用と結界の隠蔽・守護で観測を始めた。
総監部の利益にならねば消されるのはこちらなのだ。
「「(まぁ、いざとなったらコイツを売るか)」」
両方裏切り画策。
似た者同士というべきか。目糞と鼻糞というべきか。
とはいえ彼らもまたプロフェッショナル。
落ちぶれようとも技術あり。補助監督はできるだけサイズを落として効果をあげた、身体能力向上と防御・隠蔽の結界、そして記録を。
術師は結界に術式を流用した防御・隠蔽をさらに上乗せして、かつ呪力で強化された目で観測を。
「えー、記録者■■準一級術師と■■補助監督。時刻は1900。本日晴天、曇りのち業火と蜚蠊により天候観測不可。雲3、赤3、黒4…、後で媚売り用に赤7に変更ー」
「はーい」
その視線の先には
轟轟と燃え盛る火の柱と。
それに無数に向かおうとする大量の虫の空だった。
導火線はもう少し。
空中から縦横無尽に動き回り、下からくる炎を避け続ける黒沐死。
そして向かってくるGを全て燃やし尽くす術師・禪院直満。
「ハッはァー!!こノ程度かぁ?!虫ケラァ‼︎」
『糞、ガ…!』
状況は黒沐死の劣勢であった。
相性がそもそも悪い上に、攻撃を通すためには30以上を犠牲にしてやっとである。
それも、今になっては犠牲となる数は上がっていく。
そして彼女自身にも問題はある。
転生してよりまだ半日も経っておらず、慣れていないという点。
カニバリズムは趣味じゃない、というプライドにより行わなかった人肉からの呪力供給。
そして本質的な根幹であるのが。
「年季ガァ!違ぇンだヨォ!!」
『炒襠蹤き』
周囲の布を、木々を炒るかのように燃やす広範囲の小技。
いくつかのブラフの間に加えた少ない本命。隠していた地下からの奇襲。
それが全て布切れが如く燃え消える。
『クソ、邪魔ダ!』
全てが無駄になったと察知し、空から羽音の塊を彼の直上に。
そして足止めの間に逃げるための目眩し。
突如高速で消え始める式神。
しかしそれは羽音と炎の柱の真ん中ではなく、ここと中央の直線上で。
「こんニチはぁ‼︎そして、シネェ‼︎」
出てくるのは体を燃やし尽くしながらも、反転術式で直しながら喋り、声帯が燃えている術者。
『太刀・待憑き』
御三家秘伝『落花の情』を彼なりに改良し、自身の腕を太刀に見立て。
そして自身から相手の肉体へと腕を突き立てる事で、強制的に発動されるフルオート。
そこに術式を重ね『消えにくい炎』が内部から燻る近接技。
『グ、ギィ……!(くそ、あいつ私の子分たちを足場にしてきやがった!しかも足を燃やすときに爆発させて加速してやがる!どこの宿儺だ!)』
落ちる。
本能ではなく、かといって理性ではなく。
半々で戦う半端者と覚悟が決まっている者。有利になるものがどちらになるなど明白であった。
落ちる。
彼女が増やし、そして集めた子分は今や最初の1割にも満たない。
自力で飛ぶよりも楽なため足場にしていた子分らは、ついでで放たれた炎で吹き飛んだ。
周りから集めるには時間が足りず。そして、空から降りてくる彼に邪魔される。
「はっ、聞いテタ割には没個性だな!なンせ増えルダけとは!前の奴らは虫ケラ以下か?」
彼女は呼吸を整える。
空から、地面からGたちを集め、呪力を自身の体に集めさせる。
さらに。集めて。焚き火を。叩き、切る。
胸から取り出すは、逃げる際にしまっておいた『爛生刀』。
生と死が交差する、魔剣。
『…』
「ハぁ?俺とヤリたいのか」
無言で構える黒沐死。
収束する黒色を見て、口角から煙を上がらせながら、正面で構える禪院直満。
導火線は、もう既に、尽きていた。
最初に動いたのは術者、禪院直満だった。
来る右拳。
刃で受ける黒沐死。
そのまま、切り裂かれるままに卵ごと体内で焼き払い腹に一撃。
二つの右腕で出す、G弾。
左腹部が消し飛べど、そのまま蹴り上げる。
四腕と二足。二腕と二足。
その差は技術と、年季で埋まってしまえほどの小さいものだった。
そして『爛生刀』が、砕ける。
『ギ、アァ!』
そしてヤケクソで振るわれた横なぎの攻撃ーーーと見せかけて。
振るわれた上左腕から飛び出した、自身の血肉から作った『爛生刀』。
その剣筋はそのまま彼の胴へと至り。
「呪力操作見エスぎ。ずっとそウダったで?お疲カレサん」
そのまま彼は地面にぺたりと。
大柄で筋肉質なその姿からは予想できない、柔軟さで。
黒沐死の足を穿った。
『臥魔血尽』
反転術式と、直接打つこんだ『消えにくい炎』に残る
呪霊には反転術式を。呪術師には呪力を。
そのまま火葬し、血を沸騰させる奥義。
「反転術式は効カない、やなくて
呪力操作もまともにできひん虫ケラに」
彼女はうめき声をあげる。
「おっ?そんじゃ、封印術者待つまでの暇つぶしに聞いてやるわ。なんてなんて?」
彼女の焼けこげた頭蓋を手に持ち、耳に当てる。
『…シ』
「はぁ?なんて?聞こえへんは、羽音が。もうちょっとブンブンなってくれへん?ほら早よ」
『ウシロ、ダ、バカメ』
突如湧き上がる背後からの爆発的な呪力。
集めたGを数万匹詰め込んだが如く、燃え上がる。。
まるで次の特級呪霊が生まれるような、導火線が引火したような爆弾のような。
そのような死の予感。
彼はそのまま、勢いに任せ、後ろ蹴りを放ち。
「は?死骸?」
それは山のように積もった。
呪力が篭っただけの死骸だった。
地面が割れる。
爆弾はそこに。
『私ハ‼︎鉄ノ味ガ‼︎好キダ‼︎』
「(まさか、分しーーー)」
人が反応できるではなく。
そのまま彼はーーー
「マダぁァァァヤァアアア‼︎‼︎‼︎」
『不卦間些鬼』
その日、大火が降りる。
爆心地は彼と呪霊。
咄嗟に放ったものでありながら、遠くで観測してた術師と補助監督を吹き飛ばす威力。
当然、残るは
「は、はは、俺、ノ”、勝ち”ダ…!」
大きく息を吐きながら、肩を上下する直満。
そして、一つの残骸と一つの死骸の山と、彼の足元には朽ち果てた残骸。
「ふ、ブグ、呪力”が足り”ン。早く。反転”ヲ”…!」
話は大きく変わるが、戦国時代、火薬というものの扱いに非常に困っていたそうな。
使われる導火線は現代のような塗装はされておらず、植物性の素材や油を使って作られていた。必然、湿気・虫食いなどが起こり、不発やら、
そしてこの油虫という害虫は厄介であり、死んだ直後に卵を残し、また増殖するなどして、当時の人々の頭を悩ませたという。
「…?なンや”、こ”の死骸。まるでーーー」
虫食いによって導火線が尽きれば使いたい時に使えないなど、困った時もあるだろう。
現代も、昔もまた。
悩むものは同じである。
例えばそう、偶然爆発しなかったと思っていた爆弾が、実は導火線が途中で噛み切られていただけだったとか。
そうそう、これまた奇妙なことに油虫とは当時の古名であり、色んな塗装の油を食うことから、または油のような光沢からこの名だったという。
そして現代では、また異なる言い方をする。
『ゴキブリ』と。
ーーーまるで小さいのが、雑に押し固められたような作りだ。
瞬間、背後で残っていた死骸の山から、再度呪力が迸る。
導火線は切られていて、そして本命の爆弾はもう一つ。
本来ゴキブリの体から、それより巨大な体躯のものが生まれることはない。
準備して産卵したものでもなし。
ましてや大きくなる貯蓄があるはずもなく。
しかしここに例外あり。
ゴキブリ数万匹の命を燃やし尽くし、それを全て単為生殖で作った最小の一匹に集め、術式権限の全てを移す。
戦っていたのは既に式神。
そして、最後の大火で再度死ねども。
その魂は特別性。
故に流転する。
『爛、生ッ‼︎』
「く”ゾ、ム!!」
構えは既に遅く。
生と死は交差した。
『刀ッ‼︎』
「グゾ虫、ガッ!、アギヤ」
東京都立呪術高等専門学校 天元結界外縁付近
特級呪霊『黒沐死』 VS 禪院家25代目当主「禪院直満」
『イロイロ、言イタイ事ハアルガ…』
時刻 1910決着 総戦闘時間40分
『助言アンガト、ヨ。ソレデ思イ付イタ。裏ノ裏ノ裏、サ』
決まり手 『死骸からの復活』、そして『爛生刀』股間への一撃
『後、虫ケラ舐メ過ギダ。玉無シッ!!』
「ア、ガ」
勝者 特級呪霊『黒沐死(in 転生者)』‼︎
『捨身我道』
兎はおじいさんの悲しみなど、罪悪感など考える事なく、されど他者のためにその身を火に焚べた兎は、おじいさんが痛ましく思い月に上げました。
しかし、ゴールの最後で寝るようなそんな油断をする、自身に全てを焚べた、他者を顧みぬ兎には誰か側にいるのでしょうか。私は知ったこっちゃありませんが。
後、彼が作中で使った技は全部元ネタあります。
次回予告。ネタバレ
「でん○ろう先生!研究は失敗です!」
『ダメダ!言葉ガ通ジナイ!』
「ダメよ、でんじ○う先生を倒すなんて‼︎」
『デハ、ドウシタラ…!?』
「おや、待たせたな…!」
「「『あなたは?!』」」
時はとび、2018年。
フシグロ・デ○ジロウ先生を止めるべく黒沐死と虎杖、釘崎は共闘していた!しかし誰も止めるための案はなく!しかしそこに来る影の正体とは?!
next 黒沐死’s ヒント! 「目隠し、白髪、セーラー服」
次回!『独立不羈』
多分続かない。