目を覚ました。
私はベッドで寝ていて、とても薄暗い。それはビニールクロスの純白な天井ではなく、堅牢で冷ややかな印象を受ける丸石の連合だった。
どうもここは牢獄らしい。
少なくとも私は、目を覚ました直後の少し微睡んだ脳でそう判断できた。
天井が妙に近いと思ったが、どうも私は擦り切れた二段ベッドの上にいるらしく、とすると下にも誰がいるのだろうか。
薄暗い部屋にベッドのギシッと軋む音と私の声が微かに反響する。
机、鏡、石壁、鉄格子、見渡せば見渡すほど周囲を埋め尽くす鈍色がここは無機質な檻なのだと明示していた。視点が高いので周囲を見下ろすことができる。
一抹の不安と共に少しの安堵が喉に突っかかった緊張と鼓動を抑える。というか、色も空気も寒々しくて薄暗いし、格子の方から漏れ出る寒く変色した淡い光がより不気味な雰囲気を覚えさせて、正直この場所も気分が悪い。
そうこうとしていると格子の外から声が聞こえてきた。
外からこだまする困惑、説得、抵抗。私の他にも少女が監禁されているようだ。
外の様子を見るべく備え付けられたハシゴで上段から降りたところ、その下に同じく起き上がったであろう少女がいることに気づいた。
小さく呻き声を上げながらさめざめと泣いている、三つのばつ印が特徴的な純白の衣服をまとう少女がいた。
その特徴的な衣装は前世の記憶で覚えている。修道女と呼ぶにはいささか黒が少ないし、ウィンブルの形もどちらかというと花嫁などのベールに似ている。
徐々に抗議の声で騒がしくなっていく牢の外を後目に、私が天井隅のブラウン管とか、整髪用の鏡とか、牢内に備え付けられた様々なものを見渡していたところ、壁の方を向いていた少女はいつの間にか私の方を向いていて目が合った。
ちょっとびっくりした。
はっとした顔をしてから、その少女はやや申し訳なさそうに笑顔を浮かべてベッドから降りる。彼女は……この朧げな記憶に従うに、前世だとかなり重要な立場にいる人だった気がする。
いつもどこか臆していて泣いてばかりだが、感情の起伏が激しいだけでその実とても献身的かつ懇切丁寧な少女。名前……確か名前はメルルだ。
彼女を見てふと思う。
ここから確か、看守という化け物がやってきて私たちをラウンジに呼び込む展開が来る。
そう言いかけたと刹那、牢内から響くパチンという異音。
その音に驚いてお互いに肩をびくりと緊張してしまい、そのまま息を呑んで異音がした方向を見た。
ブラウン管が付いていて液晶からあのフクロウの化け物が映っていた。そういえばそうだった。
看守が無理やり連れて行く訳ではなく、その前にブラウン管からフクロウの化け物が私たち囚人たちに案内を送るのだ。
ブラウン管からくぐもった人間の声が聞こえる。どうもこれが、フクロウが本当に喋っているというのだから驚きだ。
どうもくだびれたような口調で話を取りまとめ、ブラウン管は再びパツンと暗くなる。
改めて体験すると、その妙に腰低い姿勢も気にならないほど威圧的な雰囲気だ。言葉を奪われてしまった。
そう説得するメルルが私が見つめる鉄格子へと歩いて行く。
目の前には2〜3mは届くあの死神然とした化け物がズリズリと音を立てて廊下を移動していた。
僅かに鍵が開く音がする。
私は呆けたような声で返事をするしかなかった。
カツン、カツン。
子気味の良い二人分の足音から集団のゾロゾロという姦しい足音の大群へ。
生命的な危機が勝った。完全に気圧された。
私はこの収監されたという事実とその先に起こる出来事の、朧げな記憶と共に、どうやって立ち回ればいい?
例えばこんな状態の【私】が物語のキャラクターの一人として振る舞うのなら……。
廊下の天井から光が漏れる。死神が先を歩いている。
なんて美しい光景なんだろう。でもこれは死への道。
この先の短い余生という受け入れ難い死への恐怖が、まるで宿主の生気を奪う寄生虫みたいに、私の身深くに至る肝を責め立て、毒し、侵し、そうして汚染するように凍てつかせていた。
特殊タグをセリフ時点で試しに使ってみる試み。見にくかったらちょっと考えます。
■追記■
特殊タグで作ったダイアログがPCでバグっているなんて…… そんなのは……【噓】。
プレビューで何度も確認しても……横幅は、必ず裏切るの。
ふとPCの方で確認して本当にメンブレするかと思いました…PCの皆さまには失礼いたしました…。
その他、編集に瑕疵がありましたら是非お伝えください。こんな悲劇は二度と繰り返してはいけない。