「おいしぃ〜!!」
「でしょ!ぼくママのけーきもだいすきなんだ〜」
「「…」」
球界を代表する選手である2人は、同じソファに並んで座りながら愛息子たちの様子を微笑ましく眺めていた
「あの〜」
「「え…」」
香織の言葉でようやく我に帰る2人
「申し訳ない。私は向かいに越してきてたジョーギブソンと言う者だ。あちらにいるのが息子のジュニアだ」
「あらあら〜」
「さっきニュースで見ただろ?どうやらうちの向かいだったらしい」
「そうなんですね〜。ご家族の方は?」
「あぁ。家内はまだ産まれて間もない娘がいるもので自宅に残ってるんですよ。ちょっとこちらの手違いで息子を探していたところでーー」
「そうなんですね〜では、改めてご挨拶だけさせてもらいますね〜」
香織の言葉に畏るギブソンと言う本人を知るものならいかんせん信じ難い光景が広がっていた。
「はは…香織はああ言うやつなんだ。気にしないでくれ」
「…いや…良い奥さんだな」
「あぁ…次は他の家族も連れてこいよ」
「…あぁ…ありがとう」
2人が和やかな雰囲気に包まれるとーー
「「パパ!!」」
愛息子たちが揃って目の前に現れた
「ぼくたちねおなじチームにはいりたいの」
「うんうん!」
「「…ぷっ」」
現れた途端同じチームに入りたいと言い出す2人に思わず笑みが溢れた父親たち
「あぁ。いいぞ!でも1番近いベースボールスクールは6歳からだからもう少し我慢だな」
「「えぇ〜!?」」
ウィルソンの言葉に不満の声を垂らす2人
しかし
「大丈夫だ。その分パパたち2人がお前たちをみっちり鍛えてやる。なぁギブソン」
「あぁ。任せておけ」
球界を代表する投手と野手にマンツーマンで教えてもらえるのだ。普通なら大金でも積まれなければ取れない練習だろう。
それでも多少の不満を漏らす2人だったが今度はおもちゃに惹かれたのか、騒ぎながら二階へと駆け上がっていった
「…まさかジュニアがあそこまで懐くとはな」
「なんだ?人見知りなのか?」
「…てわけじゃないと思うんだが…いかんせんすぐには気を許したりしない子なんだ」
「…ふーん。まぁなんにせよこれからはよろしく頼むよ。チームとしても…ご近所としても」
(レオンはスクールでも友達が多い方だと思うからその辺の心配は俺には分からないことだな)
「ふっ…あぁそうだな」
そう言いながら持っていたグラスを合わせる2人であった。
◆
レオンがギブソン一家と出会ってから数週間後…
「いくよぉ〜!!」
「うん!いいよ!」
この日も2人はカーター家の自宅庭にいてベースボールごっこを行っていた。この日は…と言うよりも基本的にはレオンがバッター…ジュニアがピッチャーをやる事が多い。
理由は勿論、尊敬する偉大な父に憧れているからであるのは間違いないだろう
4歳児として体が出来上がる前だと言うのに2人は流石の運動神経で自然にカバーしその小さな体を目一杯使い躍動していた。
ちなみにこの2人、ジュニアハイスクールでも同じクラスであり出会って以来学校や休みの日も含めてほとんどの時間を一緒に過ごしている。
そして今日…この2人にとって…いや…2家族にとって運命の1日が始まろうとしていた
『こちらロサンゼルス・ダイナーズ本拠地スクエアフィールドにてワールドシリーズ第七最終戦が行われようとしています!』
『ここまでデトロイト・ライオンズとのワールドシリーズ、3勝3敗のどちらも譲れない互角の展開が続いており、今日の試合を持っていよいよ今年1番強かったチームが証明されようとしています!』
『まずコチラ先発マウンドに上がるのはーー』
カメラや応援団…大観衆の視線を一重に集めるのは青のユニフォームを纏った金髪長身のサウスポー
「「「うぉぉぉぉぉ!!!」」」
『シーズン終盤に衝撃の三対一トレードでダイナーズに加入した最強助っ人!!ジョー・ギブソンです!!』
『ワールドシリーズ第二戦では先発を任せれ、その期待に応える活躍で7回を零封して見せたその実力…この最終戦でも見られるでしょうか!!』
大観衆の視線をギブソンが独り占めする。
そしてそれは観衆だけでなく…
ここ、スタジアム上空の選手関連席でも
「パパ!!いっけぇぇぇ!!」
「おじさん!かんばれ〜!!」
金髪と黒髪の少年達2人が身を乗り上げて声を上げる
「…はぁ…」
「大丈夫よローラさん。旦那さんならやってくれるわ!」
「…香織さん」
少年たちの隣で大きく息を吐く赤子を抱いた金髪の婦人と黒髪の婦人。特にギブソンの妻…ローラは旦那がシーズンで最も重要な登板を果たすと言う事で気が気ではないようだ
ーードパァァァァァァァァン!
『さ、三振んんん!!ジョーギブソン!初回からエンジン全開の投球でライオンズを三者凡退に占めて見せました!!』
「パパ凄い!!」
ギブソンの躍動にはしゃぐ息子。…となるとコチラの息子も黙って見ていられるわけもなく
「うてぇ〜パパぁぁぁ!!」
相手のエースに1.2番を簡単に料理されてしまったダイナーズ打線…3番に座るはーー
『Now hitting, number 6
ーーーーWilson Carter!!!』
「「「うぉぉぉぉぉ!!!」」」
この日2度目の大歓声で迎えられる
『ツーアウトの場面で打席は立つのはロサンゼルスが誇る至宝・シーズン三冠王を達成したウィルソン・カーターが入ります!!』
バッターボックスに入る直前、ウィルソンは一瞬上を向き少し微笑むような仕草を見せた。
その僅かな仕草に気づいたのはスタジアムでおそらく1人だけ
「…パパ」
レオンだけが…レオン本人に向けられた視線に気づいていた
マウンド上の相手エースが大きく振りかぶり最速102マイル(約164キロ)を誇る剛腕を振り抜く
唸りを上げた鋭いボールはインコース高めへ
一回の裏…今日の初打席の初球…決して甘いコースではなく球速も初球から100マイルを計測している
しかし
ーーバギャァァァァァァァァァァン!!
『大きいぞ!大きいぞ!打ったウィルソンはすでにバットを左手で高々く掲げ確信歩きをしている!!入ったぁぁぁぁ!!』
「「「うぉぉぉぉぉぉ!!」」」
「初回の一回裏!!試合の開始の狼煙を上げるかのようや主砲の一撃!!ダイナーズ先制のホームランで試合がスタートしました!!」