たきな「いえ、そんなことはないですね」
るーあ「来る日も来る日も任務かDAからなにか連絡があるんですけどォォ...」
たきな「それはるーあさんに問題があると思います」
(何も準備してないし、変な名前つけられているし、とんでもない日が続くなぁ……トホホ……)
るーあは、無機質なグレーの廊下を歩きながら、貸与された練習用の銃の重みを忌々しげに感じていた。
(なにがセカンドだ、なにがファーストだ。そんなレッテル張りながら生きていくのは癪なんだけど……店長……いや、司令とかいうやつ、何考えてるんだ? 私は『平凡な女子高生』でしょ、まったく……)
そんな彼女のぼやきを遮るように、重厚な電子音が鳴り、射撃訓練場の防弾ガラス扉が開いた。
「遅いぞ、4050番。……いや、『銀杏(ギナン)』と呼んだ方がいいか?」
正面に立っていたのは、腕を組み、鋭い眼光を向ける一人の教官。そして、その背後の射撃レーンには、すでに準備を終えた「ターゲット」がセットされていた。
まさかの「対人」シミュレーション
「……えっ? 的が、いつものパネルじゃない……?」
るーあが絶句した。そこに立っていたのは、最新式のホログラム投影機によって映し出された、「喫茶リコリコのメンバー」の姿だった。
「今回の適性検査は『識別と情愛の切り離し』だ。身内が敵に回った、あるいは人質に取られた状況を想定している。……まずは、その千束のホログラムの眉間を撃ち抜け」
「……はぁ!? 何言ってるんですか! 冗談でも撃てるわけないでしょ!」
「これは命令だ。撃たなければ適性なしと判断し、君の身分は即座に剥奪……リコリコへの出入りも禁止する」
教官の冷酷な言葉に、るーあの指が震える。
ホログラムの千束は、いつものように屈託のない笑顔でこちらに手を振っている。その隣には、無表情にこちらを見つめるたきなの姿まで。
「……。……。……ふぅ」
るーあは深く、長く息を吐いた。
震えていた指が止まる。視界が急速にクリアになり、周囲の音が遠のいていく。
「……リコリコへの出入り禁止、ですか。それは困りますね。あそこ、結構居心地いいんですよ。コーヒーも美味しいし」
るーあは銃を構えた。だが、銃口は千束のホログラムではなく、訓練場の天井の隅へと向けられた。
「おい、何を――」
――パンッ!!
放たれた一撃は、ホログラム投影機の主電源ユニットを直撃した。
バチバチと火花が散り、千束やたきなの姿が砂嵐のように消えていく。
「なっ……! 貴様、何を考えている!」
「『識別』は完了しましたよ、教官。……本物の千束さんなら、今の私の射撃に合わせて、投影機の影に隠れている『あなた』の足を払いに行ってます。……ホログラム相手に練習なんて、実戦派のリコリコには向いてません」
るーあは、空になった薬莢を床に落とし、不敵に微笑んだ。
「……それに、仲間に銃口を向ける練習なんて、私の『平凡な女子高生』としてのポリシーに反するんで」
―静まり返る訓練場
教官は呆然としていたが、やがて通信機から「フフッ……面白い子ね」という女性の低い笑い声が聞こえてきた。
「……合格だ、4050番。技術だけでなく、その『図太さ』……まさにリコリコのカラーに染まっているな」
「図太いって言わないでください! ……あーあ、また修理費とか請求されないよね……」
るーあが肩を落として訓練場を出ると、そこには壁に寄りかかって待っていたたきなの姿があった。
「……見ていましたよ、るーあさん。投影機を狙うとは、相変わらず効率的な解決策を選びますね」
「たきなさん! 見てたなら助けてくださいよぉ!」
「いえ、あなたの『覚悟』が見たかったので。……さあ、帰りましょう。千束がパフェの新作を作って待っています。……あ、もちろん試食担当は、合格したあなたですよ」
「……それ、絶対また変な色のパフェですよね!?」
本部の喧騒を背に、二人はいつもの「居場所」へと歩き出す。
るーあのリコリスとしての自覚はゼロのままだが、その腕前だけは、確実に伝説へと近づいていた。
追記ログ:二度と適性検査は受けるものかァァ!!
あっ、800UA突破ありがとうございます!?
本当に励みになります!!