クルミ「なーに暗い顔してんだよ」
るーあ「べ、別に~...」
「さっきのあれは、なにかな……?」
サキの笑顔が怖い。マイの目が笑っていない。夕暮れの公園、逃げ場のない砂場の前で、るーあは完全に包囲されていた。
「え、えーっと……。あれはね、その、最近流行りの『エクストリーム・美容・キャッチ』っていうスポーツで……ね、ミズキさん!?」
「え? ああ、そうそう! 逃げる美顔器を網で捕まえることで、女子力が爆上がりするっていう最新のトレーニングよぉ!」
ミズキが網鉄砲を担ぎながら無理のあるフォローを入れるが、サキたちは一歩も引かない。
「るーあ。あんた、さっきフェンスをバク宙で飛び越えてたよね? 運動神経壊滅的なはずのるーあが」
「それに、その持ってる変な端末……さっきからピコピコ『ターゲット捕捉』とか不穏な文字が見えるんだけど?」
るーあ(終わった……。これ以上嘘をついたら、友情どころか人間不信にさせてしまう……!)
冷や汗が滝のように流れ、るーあが観念して口を開こうとしたその時。
ドォォォォン!!
近くのビル建設現場から、凄まじい爆発音が響いた。
「きゃあぁぁっ! なに、今の!?」
「火事!? テロ!?」
パニックになる友人たち。るーあの端末が激しく振動する。
『緊急通報:墨田区建設現場にて武装集団による立てこもり発生。付近のリコリスは直ちに現場を封鎖せよ』
「……っ!」
るーあの顔から「平凡な女子高生」の仮面が剥がれ落ちた。
「サキ、マイ! 二人とも、今すぐここから離れて、駅の方まで走って! 振り返っちゃダメ!」
「えっ、るーあ!? 何言ってるの、あんたも一緒に――」
「いいから!!」
るーあの鋭い一喝に、二人が息を呑む。その瞳は、昼間のドジな友人ではなく、幾多の死線を越えてきた「狙撃手」のそれだった。
「ミズキさん、二人を誘導してください。……私は、あそこを黙らせてきます」
「……わかったわ。あんた、無茶しなさいよ!」
ミズキがサキたちの腕を引いて走り出す。サキは去り際、遠ざかるるーあの背中を見て、小さく呟いた。
「……るーあ、あんた。本当は何者なの……?」
建設現場の屋上。るーあは、瓦礫の陰に身を潜め、ライフルを組み立てる。
スコープの向こう側には、人質を取って気勢を上げる武装集団。
「……風速3.2メートル。湿度、やや高め。……距離、420。……。……あーあ。これで本当に、普通の高校生には戻れないかもなぁ」
引き金にかかった指に、微かに力がこもる。
「でも。……あいつらの平和な明日を守るのが、私の『バイト代』に見合う仕事ですから」
パァン――!
静寂を切り裂く一発の銃声。
それは、るーあが選んだ「友情」と「弾丸」の、決別の音だったのかもしれない。
追記ログ:ま~じでこれってもうバレてるよね?