たきな「未来予測か、未来を作っているのか...」
「
るーあはクレープを頬張りながら、内心で激しくツッコミを入れていた。サキとマイは「このクレープ超美味しい!」と盛り上がっているが、るーあの脳内演算はフル回転している。
『オカルトじゃない。熱源探知にも、心音センサーにも、一切反応がないってことだ。……それなのに、物理的にそこに「いる」。光学迷彩の進化版か、あるいは――』
クルミの声が通信機越しに、かつてないほど真剣味を帯びる。
『るーあ、そのまま動くな。……そいつ、お前を狙ってるんじゃない。お前の「観測」を試してるんだ』
その瞬間、るーあの「観測眼」が強制的に発動した。
世界がスローモーションになり、無数の光の糸が駅前広場を埋め尽くす。
(……え? 糸が……交差してない?)
通常、未来の予測線は一つの事象に向かって収束するものだ。しかし、今るーあが見ている景色は違った。右から来る自転車、左から歩いてくる親子、そして上空を飛ぶ鳥。それらすべての「因果」が、ある一点を避けるように歪んでいる。
(そこに……「何か」がいる。空間そのものが、拒絶してる……!)
「るーあ? どうしたの、クレープ落としそうだよ?」
サキが不思議そうに顔を覗き込む。
「……あ、ごめん! ちょっと、あっちのショップに可愛いキーホルダー見えた気がして! 先に行ってて、すぐ追いつくから!」
「えー、また? 最近自由すぎだよー!」
友人たちを半ば強引に遠ざけ、るーあは路地裏へと滑り込んだ。
路地裏の静寂。
カツ、カツ、と自分の足音だけが響く。だが、るーあは立ち止まり、背後の「何もない空間」に向かって口を開いた。
「……躍進中につき、サインはお断りしてるんですけど。……出てきたらどうですか? ゴーストさん」
「……。……。……驚いたな」
空気が陽炎(かげろう)のように揺れ、そこから一人の人影が染み出すように現れた。
漆黒のタクティカルスーツに身を包み、顔はデジタルノイズのようなマスクで覆われている。その手には、音を立てずに獲物を仕留めるための、特殊なボウガンが握られていた。
「私のステルスを、視覚ではなく『因果の歪み』で察知するとは。……楠木が執着するわけだ、4050番」
「名前で呼んでください、失礼な。……で、あんたは誰? ロボ太の仲間?」
「……
ゴーストがボウガンを構える。矢の先端には、微かな紫色の液体が塗られていた。
「その眼……少しの間、休ませてあげよう」
シュンッ――!
発射音すらしない。因果の糸すら見えない「無」の攻撃。
るーあは直感だけで横に飛んだ。コンクリートの壁に突き刺さった矢から、ジュウ、と嫌な音が立ち上る。
「……っ、見えない!? 予測線が出ないなんて……!」
『るーあ、逃げろ! そいつ、自分の行動を「確率の揺らぎ」の中に隠してる! お前の観測眼の天敵だ!』
クルミの叫びが響く中、
躍進したはずのるーあが、初めて「視えるのに、捉えられない」という未知の恐怖に直面していた。
「……さあ、どうする? 観測者くん。……君の未来に、私の矢は映っているかな?」
追記ログ:どうやら観測眼に反応しない生命体がいるみたいだ