リコリス新人アルバイト『るーあ』の観測日記   作:田上るーあ

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クルミ「観測眼、一体どんなものなんだ...」
たきな「未来予測か、未来を作っているのか...」


第二十二話「姿なき狙撃手と、甘い罠」

幽霊(ゴースト)ってなんですか? そんなオカルトまがいなこと現実に起こるんですか? ……いや確かに、視線は感じますけど……」

 

るーあはクレープを頬張りながら、内心で激しくツッコミを入れていた。サキとマイは「このクレープ超美味しい!」と盛り上がっているが、るーあの脳内演算はフル回転している。

 

『オカルトじゃない。熱源探知にも、心音センサーにも、一切反応がないってことだ。……それなのに、物理的にそこに「いる」。光学迷彩の進化版か、あるいは――』

 

クルミの声が通信機越しに、かつてないほど真剣味を帯びる。

 

『るーあ、そのまま動くな。……そいつ、お前を狙ってるんじゃない。お前の「観測」を試してるんだ』

 

 

 

 

その瞬間、るーあの「観測眼」が強制的に発動した。

世界がスローモーションになり、無数の光の糸が駅前広場を埋め尽くす。

 

(……え? 糸が……交差してない?)

 

通常、未来の予測線は一つの事象に向かって収束するものだ。しかし、今るーあが見ている景色は違った。右から来る自転車、左から歩いてくる親子、そして上空を飛ぶ鳥。それらすべての「因果」が、ある一点を避けるように歪んでいる。

 

(そこに……「何か」がいる。空間そのものが、拒絶してる……!)

 

「るーあ? どうしたの、クレープ落としそうだよ?」

サキが不思議そうに顔を覗き込む。

 

「……あ、ごめん! ちょっと、あっちのショップに可愛いキーホルダー見えた気がして! 先に行ってて、すぐ追いつくから!」

 

「えー、また? 最近自由すぎだよー!」

 

友人たちを半ば強引に遠ざけ、るーあは路地裏へと滑り込んだ。

 

 

 

 

路地裏の静寂。

カツ、カツ、と自分の足音だけが響く。だが、るーあは立ち止まり、背後の「何もない空間」に向かって口を開いた。

 

「……躍進中につき、サインはお断りしてるんですけど。……出てきたらどうですか? ゴーストさん」

 

「……。……。……驚いたな」

 

空気が陽炎(かげろう)のように揺れ、そこから一人の人影が染み出すように現れた。

漆黒のタクティカルスーツに身を包み、顔はデジタルノイズのようなマスクで覆われている。その手には、音を立てずに獲物を仕留めるための、特殊なボウガンが握られていた。

 

「私のステルスを、視覚ではなく『因果の歪み』で察知するとは。……楠木が執着するわけだ、4050番」

 

「名前で呼んでください、失礼な。……で、あんたは誰? ロボ太の仲間?」

 

「……調整者(アジャスター)だ。この世界のバランスを損なう『過剰な観測』を間引くのが、私の役目だ」

 

ゴーストがボウガンを構える。矢の先端には、微かな紫色の液体が塗られていた。

 

「その眼……少しの間、休ませてあげよう」

 

 

 

 

シュンッ――!

 

発射音すらしない。因果の糸すら見えない「無」の攻撃。

るーあは直感だけで横に飛んだ。コンクリートの壁に突き刺さった矢から、ジュウ、と嫌な音が立ち上る。

 

「……っ、見えない!? 予測線が出ないなんて……!」

 

『るーあ、逃げろ! そいつ、自分の行動を「確率の揺らぎ」の中に隠してる! お前の観測眼の天敵だ!』

 

クルミの叫びが響く中、幽霊(ゴースト)は二の矢を番える。

躍進したはずのるーあが、初めて「視えるのに、捉えられない」という未知の恐怖に直面していた。

 

「……さあ、どうする? 観測者くん。……君の未来に、私の矢は映っているかな?」




追記ログ:どうやら観測眼に反応しない生命体がいるみたいだ
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