リコリス新人アルバイト『るーあ』の観測日記   作:田上るーあ

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るーあ「特訓ですって!?何を特訓するんですか!?」
たきな「力の制御です。るーあさんの力は強大です。」
るーあ「私だってこの力なんで使えるのか分からないんですよ!?」


第二十五話「特訓! 予測不能を予測せよ」

「――あのですね千束さん! いくら私が『観測』をできるからと言ってもですね、できないことはできないんですよ!? 予測不能を予測するなんて、そんな夢みたいな話あるんですか!?不可能なことは不可能なんですよ!」

 

開店前の喫茶リコリコ。るーあの悲鳴に近い抗議が店内に響き渡る。

目の前には、なぜかテニスラケットを構えた千束と、ストップウォッチを手にしたたきなが仁王立ちしていた。

 

「えー、できるよ! るーあちゃんならできる! だって昨日の鉄骨、あれ完全に『予測不能』を味方にしてたじゃん!」

 

「じゃあ昨日の鉄骨の話はどうするんですか? 確率の揺らぎの中にいる敵を、物理現象の連鎖で引きずり出した。あれこそ『予測不能の制御』そのものです」

 

「たきなさん、それを言われると弱いのですが……あれは半分ヤケクソだったんですってば!」

 

るーあはカウンターに突っ伏した。

昨日遭遇した「ゴースト」の、未来が映らない不気味な感覚。あれを克服しない限り、次に出会った時はクレープどころか命まで危うい。

 

 

 

 

「いい? ゴースト君が『確率』で動くなら、こっちは『物量』で攻める! さあ、構えて!」

 

千束がテニスラケットを振り抜いた。放たれたのは、テニスボール……ではなく、クルミがどこからか調達してきた「不規則な回転をかける小型ドローンボール」

 

「ちょっ、速っ……!? 軌道が……視えない!」

 

空中を泳ぐように、急加速と急停止を繰り返すボール。るーあの「観測眼」は、その複雑すぎる挙動に演算が追いつかず、視界に赤く警告を吐き出す。

 

「止まらないで! 思考を止めた瞬間に『確定』を奪われるわよ!」

 

たきなが無情にも二球目、三球目を投げ込む。

 

「無理無理無理!! 軌道が枝分かれしすぎて、未来がスパゲッティみたいになってるんですけどぉぉ!!」

 

 

 

 

 

るーあは必死に避ける。しかし、一球が頬を掠め、もう一球が足元で弾けた。

脳が熱い。視界が白く染まりかける。

 

(……ダメだ。一歩先を読もうとすればするほど、選択肢が増えていく。……だったら……!)

 

るーあは、ふっと目を開けたまま、意識を「一点」から「空間全体」へと拡散させた。

 

(一瞬先を読むんじゃない。この空間にある『空気の流れ』『音の反射』……すべての『今』を、ただ受け入れる……!)

 

その瞬間、るーあの動きが変わった。

無駄な回避を止め、最小限の動きでボールの隙間をすり抜ける。それは予測というより、「最初からそこに当たらない場所を知っている」ような、神がかった挙動だった。

 

「……え。今、避けた?」

 

千束の手が止まる。たきなもストップウォッチを押すのを忘れ、目を見開いた。

 

「……はぁ、はぁ、はぁ……。……今、なんとなく……分かりました。未来を視るんじゃなくて、『今』の密度を上げればいいんですね……」

 

るーあは膝をつき、肩で激しく息をする。鼻の奥がツンとするのは、脳に負荷がかかっている証拠だ。

 

 

 

 

カウンターの奥で、その様子をじっと見ていたミカが、静かに口を開いた。

 

「……『躍進』とは、自分を削ることと同義だ。るーあ、お前のその使い方は、以前よりもさらに命を前借りしている。……忘れるな、お前はリコリコの看板娘だ。壊れてもらっては困る」

 

「店長……。分かってます。……でも、ゴーストに『調整』されるのは、もっと御免ですから」

 

るーあは、たきなが差し出した冷たいタオルを受け取り、顔を覆った。

 

「……たきなさん。次のセット、お願いします。……次は五球同時に」

 

「……。……強情ですね。いいでしょう、付き合いますよ」

 

たきなは少しだけ口角を上げ、新しいドローンを起動させた。

 

 

 

―喫茶リコリコの朝。

予測不能な敵に立ち向かうため、少女は自らの限界を、さらに一歩踏み越えようとしていた。




追記ログ:限界突破しました。主に因果観測が
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