「本当の目的とは何なのでしょう?」
「――健康診断の代行は、許可しておりません! 」
駅前という状況を逆手に取った、るーあの意味不明なアナウンス風の声が響き渡る。
「何言っているんだ? 4050番は……」
困惑するゴースト。だが、るーあの「観測」はすでに現実の物理法則をさらに一歩踏み越えていた。
彼女が指をパチンと鳴らす。
「―上り、接近、確認」
――ファァァァアアン!!!!
突如として、何もないアスファルトの上に巨大な光のレールが出現し、銀色の車体が轟音とともに駆け抜けた。
「あ、よいしょっと」
るーあはひらりと跳躍し、その「幻影」とも「実体」ともつかない列車の後部デッキに飛び乗った。
「なっ……!? 何だ今の!? ここに線路なんてないぞ、なぜ電車が……!?」
ゴーストが呆然と立ち尽くす中、列車は空間を歪めながら加速し、そのまま空中に溶けるように消え去った。後に残されたのは、ただの静かな駅前広場だけだった。
―亜空間の車窓から眺める世界
ガタンゴトン、ガタンゴトン……。
規則正しい振動が、るーあの全身に伝わる。車窓の外は星空でも夜景でもなく、無数の幾何学模様が流れる不思議な光景が広がっていた。
「ふうぅぅ。危ない危ない(笑)。いざという時の亜空間からの列車の呼び出しは、便利だねぇ……」
るーあはデッキに座り込み、大きく息を吐いた。
「さてと、この空間なら誰にも邪魔されないから、ゴーストの正体でも調べますか……」
彼女が移動したのは、現実世界から隔離された特殊な位相空間。第一章での激闘や「躍進」の過程で、彼女の脳は因果を観測するだけでなく、微細な空間の歪みを固定する術さえ学習していたのだ。
「それにしても、異空間転移装置、作っといてよかったぁぁぁ……! 私ながらいいものを作りました! クルミちゃんに内緒でジャンクパーツをくすねて組み立てた甲斐がありました!!」
―解析を開始するるーあ。
るーあはポケットから小型のホログラムPCを取り出した。現実世界では遮断されていた「ゴースト」に関するノイズまじりのデータが、この隔離空間では驚くほどクリアに展開される。
「……ん? これ、ただのハッカーじゃない。バイタルデータが……人間じゃない? いや、半分は人間だけど、神経系が『外付け』されてる……?」
画面に映し出されたのは、ゴーストの骨格と、そこに張り巡らされた未知の電子回路の図解だった。
「……『アジャスター』の正体って、DAが捨てた『失敗作』の成れの果て、とかじゃないですよね……?」
るーあの瞳に、かつてないほどの緊張が走る。
自作のシェルターで一時的な安全を確保した彼女だったが、画面に表示された「ある一致データ」を見て、その指が止まった。
そこには、DAの極秘名簿に記された、聞き覚えのある「名前」が並んでいたのだ。
「……嘘。これ、ミカさんや楠木司令が隠してること……なんじゃないの?」
静かな亜空間に、列車の走行音だけが虚しく響く。
るーあは、知ってはならない「躍進の裏側」に、ついに触れてしまったのかもしれない。
追記ログ:これ以上の詮索は...してはいけないのかもしれない