リコリス新人アルバイト『るーあ』の観測日記   作:田上るーあ

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るーあ「さ!今日こそみんなに謝って、怒られますか...」
   「もうしないと約束をね」


第三十七話「二人の逃亡者、メニューは逃走と潜伏です!」

「私は事が済んだら、謝罪しに行きます。リコリコのみんなとDAにね。あんたはどうすんの? やっぱりニートにでもなるのかな(笑)」

 

るーあは、空になったアイスの棒を咥えたまま、隣のシンを茶化すように覗き込んだ。

「躍進」した観測眼で見れば、彼の未来の選択肢は霧に包まれているが、今の彼には「組織の犬」だった頃の殺伐とした気配はない。

 

「……ニートか。悪くない響きだが、お前のような騒がしい観測者に付きまとわれては、安眠もできそうにないな」

 

シンは自嘲気味に鼻で笑い、パーカーのフードを深く被り直した。

 

「謝罪、か。……DAはともかく、あの喫茶店の連中がお前の謝罪を黙って受け入れるとは思えん。特大のパフェか、あるいは実戦形式の『お仕置き』が待っているだろうな」

 

「うっ……。たきなさんのシリコン弾、地味に痛いんですよね……」

 

るーあは想像して身震いした。だが、その想像こそが、今の彼女にとって唯一の心の拠り所だった。

 

 

 

 

潜伏のプロと、観測の天才...一体どういう風の吹き回しだろうか...

 

二人は、追っ手の目を晦ますために街の地下深く、廃線となった古い地下鉄の連絡通路へと移動した。

 

「いいか、4050番。……るーあ。これから私たちがやるのは、単なる逃走ではない。『逆観測』だ。アランがこちらを追うための因果を、こちらから先に塗り替えていく」

 

「逆観測……。つまり、敵が『ここにいるはずだ』と思う場所を、あらかじめ『誰もいない場所』に書き換えるってことですね?」

 

「理解が早くて助かる。……だが、それにはお前の脳への負荷が懸念される。亜空間列車のような派手な真似は控えろ。……あれは、世界のバグを広げすぎる」

 

シンは手慣れた手つきで、持ち出した最小限の機材を壁に設置していく。

元・調整者。潜伏と暗殺のプロである彼が作る「安全圏」は、リコリコの賑やかさとは正反対の、冷たくて静かな場所だった。

 

 

 

 

メニューは「逃走」逃げるが勝ちということだそうだ。

「……ねぇ、シンさん。一つ聞いてもいいですか?」

 

「なんだ」

 

「どうして、私を助けるような真似をしたんですか? 組織を裏切ってまで」

 

シンは手を止め、暗闇の中で自分の掌を見つめた。

 

「……お前が、あまりにも楽しそうに『未来』を変えるからだ。……調整者は、決まった未来をなぞるだけの歯車に過ぎない。だが、お前は……数学Aが苦手なクセに、計算外の答えを叩き出し続けた」

 

「……あはは。褒められてる気がしませんね」

 

「褒めている。……崩壊しかけていた私の『均衡』を壊したのは、お前のその無鉄砲な躍進だよ」

 

シンがモニターを起動すると、そこには現在のリコリコ周辺の監視映像が映し出された。

千束たちが無事であることを確認し、るーあは小さく安堵の息を漏らす。

 

「……よし。休憩はおしまいです。……さぁ、私たちの『特別メニュー』の調理、開始しましょうか」

 

 

 

逃走と潜伏。

そしてその先にある、世界を裏側から書き換えるための反撃。

二人の逃亡者は、暗い地下道から、光り輝く地上の「システム」を見据えていた。




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