リコリス新人アルバイト『るーあ』の観測日記   作:田上るーあ

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るーあ「温泉楽しみ~!」
クルミ「いやこの後ふつーに(ry」
るーあ「はい!それでは第五話スタートです!!!」


第五話「湯けむり!? 露天風呂は弾丸の雨じゃァ!」

「...530m付近、高さここより300mほど上にスナイパーと思われるスコープ確認……。―風速0.7m、風向北北東」

「寒いです。温まりたいです...」

 

るーあの声は、もはや悟りを開いたかのように静かだった。

露天風呂の湯気に巻かれながら、バスタオル一枚で岩の影に潜む。手元にあるのは、ミカから「一応持っておけ」と渡された折り畳み式の狙撃銃だ。

 

「……るーあさん。入浴中に弾道計算まで済ませるとは、やはりあなたはリコリコの適性がありますね」

 

すぐ隣の岩影では、たきなが髪をアップにまとめ、同じくバスタオル姿でハンドガンを構えていた。

 

「褒めてないですよね!? そもそも、なんで露天風呂で狙撃戦が始まってるんですかぁ!」

「あと服着てきていいですね!?!?そんなバスタオル一枚じゃ死んじゃいますよ!!」

 

 

パァン! と乾いた銃声が響き、るーあがさっきまでいた場所の岩が削れる。

 

「あわわわ! 当たってます!風向き計算したけど、相手が修正してきたら終わりますって!」

 

「大丈夫だよるーあちゃん! 私が囮になるから、その隙に仕留めちゃって!」

 

ザバァッ! とお湯を跳ね飛ばして立ち上がったのは千束だ。彼女は飛んでくる弾丸を、まるで見えているかのように最小限の動きで回避しながら、石畳の上を華麗にステップを踏んで移動する。

 

「千束さん危ないっ! ……って、避けてる!? なんでお風呂場で弾丸避けてるんですかあの人!」

 

「あれが千束です。るーあさん、ターゲットの座標を修正。……今です!」

 

 

 

 

るーあは、濡れた指先でトリガーに触れた。

湯気で視界は最悪。だが、脳内のレーダーには相手の位置がはっきりと刻まれている。

 

「……もう、これ終わったら絶対に美味しいもの奢ってくださいよ!」

 

――ドンッ!

 

重厚な発射音と共に、るーあの放った一撃が530m先の急斜面に突き刺さる。相手のスコープが火花を散らして弾け飛ぶのが見えた。

 

「目標、無力化……。ふぅ……」

 

「ナイスショット、るーあちゃん! さっすがリコリコの秘密兵器!」

 

千束が親指を立てて笑い、たきなも「……85点。湯気による屈折率の計算をもう少し詰めれば満点でした」と、相変わらず厳しい評価を下す。

 

 

 

 

―数分後、旅館の広間。

そこには、何事もなかったかのように豪華な舟盛りの前でビールを煽るミズキの姿があった。

 

「あー、いい湯だったわねぇ! るーあちゃんも、一仕事した後のご飯は格別でしょ?」

 

「ミズキさん……あの、外で銃声とか聞こえませんでした?」

 

「え? ああ、野生の鹿でも出たんじゃない? 山だし」

 

ミズキの適当すぎる返しに、るーあは力なく畳に突っ伏した。

隣では、ミカが「るーあ、今回の狙撃は良かったぞ。……だが、次は『サウナの中』でも同じ精度を出せるようにならんな」と、恐ろしいことを口にしている。

 

(……この社員旅行、まだ初日なんですよね……?)

 

窓の外では、箱根の静かな夜が更けていく。

しかし、るーあの耳には、まだどこかでカチリと安全装置を外す音が聞こえたような気がして、夜も眠れそうになかった。

 

 

 

―静かな夜、辺りは虫の鳴く声が響き渡る

「……ねぇ、たきなさん。一般的に『社員旅行』っていうのは、バスの中でカラオケしたり、お土産を選んで盛り上がったり、のんびり温泉に浸かって日頃の疲れを癒やす……そういう平和なイベントのはずですよね?」

 

旅館の縁側。るーあは、風呂上がりの牛乳を片手に、遠い目で夜の山を見つめていた。その手には、先ほどの戦闘でついた硝煙の匂いが微かに残っている。

 

「定義としてはその通りです。親睦を深め、士気を高めるための行事ですね」

 

隣で同じく牛乳を飲み干したたきなが、至極真っ当な顔で頷く。

 

「じゃあ、なんで私たちはバスタオル姿で狙撃ポイントの奪い合いなんてしてたんですか!? 親睦を深めるどころか、命の削り合いじゃないですか!」

 

「……。るーあさん、勘違いしないでください。あれは『アクティビティ』の一環です。千束も楽しそうに避けていたでしょう?」

 

「あんな弾丸ダンス、アクティビティって言わないからァァ!!」

 

 

広間の方からは、千束の「あはは!次は卓球で勝負だよ、たきな!」という元気な声と、ミズキの「ちょっとぉ!地酒おかわりー!」という、ある意味いつもの声が聞こえてくる。

 

「……士気を高める、かぁ」

 

るーあは、自分の隣に置かれた狙撃銃をポカポカと叩いた。

 

「でも、不思議ですよね。あんなに無茶苦茶だったのに……こうして皆で集まってご飯を食べてると、なんだか『あぁ、私、本当にこの店の一員なんだな』って思っちゃうんです。……毒されてるのかな、私」

 

「毒されているのではなく、適応しているんです。……るーあさん」

 

たきなが少しだけ声を和らげて、るーあを見た。

 

 

 

「昨日の銀杏も、今日の湯けむりの中の狙撃も、あなたがいたから被害ゼロで終わりました。それは、私や千束だけではできなかったことです。……親睦、深まっているんじゃないですか?」

 

「……たきなさん」

 

珍しくデレた(?)たきなに、るーあが感動しかけたその時。

 

「おーい!二人ともー!卓球大会始めるよー!負けた方は明日の朝ごはんの配膳係ねー!ちなみにラケットの代わりにフライパンと鍋蓋使うからねー!」

 

千束が、手になぜか防犯用の盾と巨大なしゃもじを持って乱入してきた。

 

「……るーあさん。行きますよ。配膳係は免れたいです」

 

「たきなさん!? 目がマジですよ! ていうか待って!?私は普通のラケットでやりたいです~!!」

 

(……やっぱり、この人たちの『普通』を信じた私がバカだった……!)

 

 

 

 

社員旅行の夜はさらに更けていく。親睦という名の「新たな戦い」の音を響かせながら。




追記ログ:見かけに騙されないようにしようっと...


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