ミカ「よく馴染めているぞ、るーあ」
るーあ「よかったです~...ただ仕事量が多いのはどうにかなりませんかね~」
ミカ「...それは難しい注文だね」
るーあ「ですよね~」
「るーあちゃん! DAの定期更新って行った?」
開店前の静かな店内に、千束の能天気な声が響く。モップがけをしていたるーあは、一瞬何を言われたのか分からず、動きを止めた。
「定期……更新? なんのことですか?」
「えっ、リコリスなら半年に一度くらい、本部に顔を出して適性検査と装備のメンテナンスを受けるでしょ? 今日がその期限だったはずだけど」
千束がスマホのカレンダーを見せながら首を傾げる。るーあは目を見開き、手に持っていたモップをガシャーンと倒した。
「行ってないですし、リコリスの一員になった覚えはないですが……!!」
「店長ーー!! これどういうことですか!?」
るーあがカウンターに詰め寄ると、ミカは新聞から目を上げず、静かにコーヒーを啜った。
「あぁ。例の査察の時、書類上だけリコリスの籍に入れておいたんだ。そうしないと、銃火器の所持や弾薬の補給が法的に説明つかないからな」
「法的って……! 私、女子高生ですよ!? 17歳の女子高生スナイパーなんて、どんな経歴詐称ですか!」
「大丈夫ですよ、るーあさん」
たきなが背後から音もなく現れ、るーあの首筋にピッと非接触型の体温計のようなものを当てた。
「すでにあなたの生体データはDAのデータベースに登録済みです。識別番号は『4050』。ランクは暫定的に『セカンド』……いえ、先日の功績で『ファースト』への昇格申請が出ています」
「勝手に昇進させないでください!! 赤い制服なんて着たくないですぅぅ!!」
「というわけで、サボると本部から『お迎え』が来ちゃうから、今から一緒に行こう! 私も更新だし!」
「えっ、今から!? ちょっと、私まだ掃除が――」
千束に腕を掴まれ、引きずられるように店を出されるるーあ。
リコリコのワゴンの後部座席に放り込まれると、そこにはすでに「更新」を終えたのか、不機嫌そうな顔をしたミズキが座っていた。
「……あーあ、るーあちゃんもついに『こっち側』ね。歓迎するわよ、地獄の定期検診へ」
「ミズキさん、目が死んでますよ! そもそもミズキさんはリコリスじゃないですよね!?」
「私は『元』よ! 更新に行かないと、年金の積み立てがややこしくなるのよ!」
―巨大な施設、DA本部。
無機質な廊下を歩くるーあは、すれ違うリコリスたちの鋭い視線に縮み上がっていた。
「(……みんな、私より年下なのに、目が殺し屋のそれだよ……)」
「お、4050番。ようやく来たか。……君が例の『銀杏使い』か?」
受付の職員にジロリと見られ、るーあは「ひっ」と短い悲鳴を上げた。
「あ、いえ……それは誤解で……」
「射撃テストの準備はできている。……おい、そこのセカンド。彼女を射撃場へ案内しろ。……あぁ、そうだ。るーあ。君の『特殊弾』、本部の開発部が興味を持っている。後で寄ってくれ」
(……もうダメだ。私の平穏な女子高生ライフ、完全に消滅した……)
千束の「頑張ってねー!」という声を背に、るーあは重い足取りで射撃場へと向かうのだった。
追記ログ:リコリスの一員なのは聞いてないって!?