ミラクルトリガー   作:アルピ交通事務局

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第1話

 

 吾輩は黛、転生者である。

 ただの転生者でなく大抵の世界に転生してもなんも問題は無いように鍛えられている転生者であり、無限に転生する権利を持っている。転生先及び転生特典は基本的には選べない。

 

 ワールドトリガーの原作をざっくりと言えば異世界からの侵略者である近界民が三門市と言う街を襲来してきた。

 既存の軍事兵器では歯が立たない近界民達になす術が無いと思っていたら謎の一団であるボーダーが現れて近界民を倒した後に普通は国連の組織だろうと思える筈の民間組織、ボーダーを作り日夜近界民と戦ったりしている。

 

 主人公である三雲修が通っている中学校に転校生としてやってきた空閑遊真と出会ってから色々と始まる物語である。

 

 じゃあその世界でオレは何をしているのか?と言う話になるが、その世界のその物語に深く関わる特別な事はしていない。

 高校生クイズに出るレベルの頭良い学校に通えるぐらいの学力は普通にあるから、普通の高校に行って普通に勉強して三門大学に進学した。

 

 なんで物語に関わらねえんだよ?と言う疑問もあるだろうがそれについては幾つかある。

 色々とある内の1つは言うまでもなく、オレに才能が無いからだ。才能は開花させるもの、センスは磨くものと言う名言がある。それについては納得が行くが全員が全員、同じ才能があるわけじゃない。優劣や方向性は異なるものだ。

 

 野球の花形であるピッチャーも物凄い160kmの剛速球を投げる奴も居れば135〜140kmぐらいが限界だが恐ろしく精密に投げる奴も居るし、様々な変化球を駆使する奴も居る。それと同じでオレにはオレが求めている才能が無い。無論、死ぬ気で努力すればある程度は見繕えるだろうが、才能がある奴が同じ事をすれば軽々と抜かされる。

 

 それに関しては仕方ないとは受け入れている。所詮オレはその程度の奴だったで飲み込んでいる。

 人を成長させる為に用意されているカリキュラムがあって、オレはそのカリキュラムがあんまり合わないタイプだ。オレ専用に用意されたカリキュラムならともかく皆が平等に受けれるカリキュラムの中じゃオレは少し頭良くて体力作りでスポーツしてるだけの人間だ。

 

「コイツは当たりだな」

 

 別にその辺の事はあんまり期待してない。

 ラノベでよくある神様から貰ったチートのみに頼ってオレTueeeeeじゃなくて、個人でしっかりと物事を考えて転生特典云々に加えて自分の長所等を活かして云々がこの転生者業界の常識だ。その世界に存在している独自の技術を勝手に解析して頭や体に叩き込める奴も居るし、出来ない奴も居る。

 

 オレはと言えば大学の屋上でライトノベル片手に人生を満喫している。

 バトル物の世界は大体は月1の割合でトラブル起こるから時折イカれる奴を見るが修行とかそういうのを何もしないってのは割と大事だったりする。強くなる事への探究心とかそういう話じゃなくて非日常が日常化してしまうのがヤバい。

 

 望んでもいないのに行けども行けども殺人事件と言う名の厄介なイベントに遭遇し続けていたら何かが狂うって話だ。

 別に転生者だからとかそういう話じゃない。夏休みに規則正しい睡眠時間守らなくてニートのマキシマムドライブが起こり昼夜逆転からの昼夜逆転が起こったりして夏休み明けの数日間は体調不良を起こす奴は割と居る。転生者はちょっとそれの過剰なバージョンと思えばいい。

 

「やっぱりここに居たのね……わざわざ本を読むならここじゃなくてもいいんじゃないの?それこそ文芸系のサークルはあるんだし」

 

「ここがオレは好きなんだよ」

 

 人生に置いて学生生活なんてあっという間に終わってしまう。残りはクソ辛い社会人だ。

 学生生活の中で起きる非日常と日常の境界線、そこが屋上とも言えるべき場所でオレはそこでラノベを読むのが大好きだ。

 

 物語は物語、現実は現実だと押し付けてくれるからな。

 

「んで、なんか用事か?」

 

「あら、用事が無ければ来ちゃダメなの?」

 

「ダメだな」

 

 非日常に憧れる日常の中に居る凡才が、非日常の塊みたいな女に絡まれる。

 女の名は加古望、ワールドトリガーを知っている人ならば知っている原作キャラで……無駄に色気を持っているが生まれは普通の一般人。感性はアレ。要するに残念美人だ。

 

 出会いに関してはなにも特別な事は無い。

 大学の屋上でラノベ読んでるオレに偶然にも気付いた。そして驚かれた……ただそこで何かが引っかかったみたいで度々顔を合わせる。

 

「なら、貴方に会いたいって理由はどうかしら?」

 

「他の奴に言ってやれよ、外面だけは完璧なんだからよ」

 

 まぁ、自分で言うのもなんだがオレは変な人間だろう。

 磨けば光る才能があるとか、磨かなくても勝手に輝いている天才とか、そういう立ち位置の人間じゃねえ。ここが物語の世界ならば秀才と呼ばれる者や天才と呼ばれる者達が主要人物であり、凡人が出てきても物語の序盤だろう。

 

 この加古望と言う女は才能がある奴が好き、別にそれに関しては普通な事だ。

 オレはそれに該当しない。該当しない、だからこそオレに興味を抱いている……自分が見ていない関わり合いを意図的に持たない様にしている変なの、その変なのが変なのだからこそ持てるトンチキな技能を持っていて見せてくれる。コレは面白い、そう思っているだけだ。

 

「ひっどーい」

 

 別にそういう風に思われる事については今更な話だろう。

 バトル物の世界において戦闘能力から色々と評価するバカはアホほど見てきた。事務処理能力とか技術開発力とか指導力とかそういうちょっと評価をするのが難しい能力なものの組織運営する上で必要不可欠な能力を全くと言って理解も評価もしてねえバカばっかりで、その手の奴等にとって変な方向に居るオレはある意味、面白い存在だろう。

 

「自分でもそういうのを理解してるくせにかまととぶるな」

 

 外面だけはいい発言をハッキリと言えば棒読みで返した。

 自分でも外面だけは完璧な人間なのは理解している。望んで手に入れたわけじゃないのも含めて理解してそれを面白おかしく使っている。普通にオレに無い能力を持っているのでムカつくが羨ましいとは思わない。

 

「まぁ、いいわ……今年に入ってからスゴく誕生日を聞かれることが増えたのよ」

 

「留年してなきゃ今年で表で堂々と酒が飲める様になるから、その誘いじゃねえの?」

 

 一連のやりとりを終えたら、何事もなく話題に入る。

 話題は誕生日、なんで誕生日について聞かれるかという事に対してオレ達は今年に酒を飲めるという大学生らしい真っ当な答えで返す。

 

「その言い振りだと」

 

「親戚一同が集う正月で子どもがいない無責任な親戚の緩いおじさん辺りが勧めてくるところは今でも普通にあるし、学校だから上下関係がクソめんどくさい。三門大学は特にそういう一面を持ってねえがスポーツが強い大学だったら酒だ煙草だドラッグで数年に1回は確実にニュースになる」

 

 飲んでるのね?と言われる前によくある話をした。

 別に過去にそういう場で飲んだりしてませんと言えば嘘になるが、そういう事をしてくる場所は普通に多い。ここは大学とは言え学校だからそういう事に関しては尚更だろう。

 

「誕生日が言いたくない日だから聞かないでとか適当に言って誤魔化しとけ」

 

「そういうのもありね……因みに黛くんは?」

 

「3月1日だ」

 

「………………………………………そう」

 

 外面だけはいい方で愉快な人と言える加古を飲みに誘いたいんだろう。

 そういうお年頃だったりするから普通の思考で誕生日が前にクリスマスと言っていたから聞くだけで地雷案件的な事を言って適当に誤魔化せばいいと適当にフォロー入れとけば返ってきたので普通に答えれば面白くない答えが返ってきたとつまらなさそうにする。

 

「お前は解禁されても暫くは飲みに行くのめんどくさいシーズンだから気をつけとけよ」

 

 クリスマスなので居酒屋が混む、年末年始なので居酒屋が混む。

 所属している組織のボーダーは中学生から大学生が多くて下手に酒を飲む場所は作ることは出来ない……なんかが原因で未成年の飲酒がバレたら、ボロクソに叩かれるからな。

 

「お〜い、加古。端末忘れてたぞ」

 

「あら……ダメね。スマホと2台持ちになってるって意識が中々につかないわ」

 

 顎髭を生やした男、太刀川慶……一応はボーダーの隊員で一番強い。レートだけで見れば総合1位の男だ。

 ただまぁ、オレにはそこまで関係無い話だ。ボーダー隊員じゃない太刀川は加古同様にスゴく残念な人だからな。

 

 ボーダーから支給されているボーダー独自の端末を忘れてたらしい。見た目がスマホで出来ることも大体はスマホ。

 基本的にスマホは1台持ちで他に色々な機能を持っているアイテムをって時代は通り過ぎている……ペンチメンタルはガラケー?知るか。

 

「なんかさっきメール来てたぞ」

 

「体調不良者が出て欠員が出たから深夜の防衛任務に入れないか、ね」

 

 一応は地球に侵攻をしてくるので24時間体制で防衛任務をしないといけない。

 深夜も当然、と言うかむしろ軍事的な話をすれば夜の方が狙いやすい。トリガーの便利な機能を使えば夜の見えないところの移動とかそういうのをどうにか出来るし。だからまぁ、夜も防衛任務があるがボーダー隊員の大半が中高生、民間組織なのに労基法の10時過ぎの労働を認められる。しかし確実にクレームが来るから加古みたいな深夜に働いても問題無い奴に話が回るってとこか。

 

「コマは……」

 

 大学なので講義は選べるが単位とかの関係上受けなきゃいけねえ授業は普通にある。

 24時間体制の防衛任務だから変な時に呼び出される事とかは普通にある、講義の確認は大事。特に今回みたいに予定に無い防衛任務なら尚更だろう。

 

「黛くん、ちょっと気になる講義があるのだけれど深夜明けは流石にキツいから記録してくれないかしら?」

 

「黛?お前なにを、うぉ!?」

 

 講義のスケジュールの確認の後に気になる講義があるから内容だけでもいいから聞いといてと頼まれる。

 太刀川がなにを言ってんだ?と言う顔をするが、ここでオレの存在に気付いてビクッと反応をした。

 

「お前、何時からそこにいたんだ!?つか、誰だ!?」

 

「黛くん、文学部の文化・歴史学科の生徒よ。そして最初から居たわ」

 

 オレと会う奴の大抵はこういう反応をする……既に何人かボーダーの人間に会ってるが、基本的にはこの反応だ。

 

「ジャンルが違う奴は……見ない顔だな」

 

「加古がキャラ濃すぎるからアレだが、オレはボーダー隊員じゃねえよ」

 

 学部が違う奴に知り合いは居ないからと言う反応をし、見覚えがないと言う。

 そもそもでオレはボーダー隊員じゃねえことを告げれば驚かれる……別にボーダー隊員だけが三門大学に通ってるわけじゃねえんだぞ。

 

「加古に……一般人の知り合いが居たんだな」

 

「太刀川くん、それどういうことかしら?」

 

「いやだって、お前のプロフィールに才能ある人が好きって書かれてるからさ」

 

「勘違いされることが多いけれど私は一般人よ」

 

 加古に一般人の知り合いが居たことを太刀川は驚いているが加古は若干不機嫌そうにする。

 才能ある人が好きと公言している人が一般人と知り合いだったのかと言うが、加古も一般人だ。

 

「オーラが違うな」

 

 太刀川はオレと加古を見比べる。

 特に何かしているわけでもないのに幸薄いオレと特に何かしているわけでもないのにゴージャスな加古、比較してしまうのは必然だろう。

 

「なにを出ろと?」

 

「コレよ」

 

「ああ、コレか……単位にはならないが面白そうではあるから受けようとは思っていたな」

 

 近界民の存在で異世界の存在を証明した。では◯◯とは実は近界民だったんじゃないのかとかトリガーの力じゃなかったのかとか言う地味に面白い講義だ。単位にはならないが受ける奴は受ける……ただまぁ、ボーダーと言う組織が技術関係の研究機関じゃなくて防衛機関だから実は古代の◯◯って近界民とかトリガー使ってたんじゃないのか?とか言うのを調査する方法とか金が無い。

 

「面白そうなのがあったら聞かせてね。私、今から深夜に動けるように体内時計弄くらないといけないから」

 

 普通に身体に悪いな。

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