「嫌だ」
「嫌です」
それは清々しいまでの満面の笑みだった。藤丸と橘高は笑顔で断った。
王子隊の隊長の王子とオペレーターの橘高、弓場隊の隊長の弓場と藤丸を呼び出した。初手で根付さんが青峰と付き合ってんの?とストレートに聞いて恥ずかしげもなく付き合っていると答えた。
これからプロバスケ選手として売っていくから、そっち系の不祥事はと言うが2人は笑顔で断った。
ボーダーは形式上は地球防衛軍なので他人の恋愛感情に首をツッコむのは流石に野暮だと言うものだ。
「のの、テメエに男が出来たことは嬉しい事だ。だがよぉ、羽矢さんと同じ相手でなんて聞いてねえぞ!」
「言ってねえからな」
「言ったら後ろめたいとでも思ってんのか!」
「んなわけあるか!彼氏として連れて来いっつったら迷いなく引っ張ってくる!」
「取りあえず、喧しいから静かにしろ」
弓場が彼氏が出来たのはいいが同じ相手なのは聞いていないと言う。
そりゃそうだろうな!とオレは内心で思っていれば、虹村が喧しいとハッキリと言った。
「虹村、お前は疑問に思わないのか!」
「……いや〜……青峰だし」
彼女が2人居ることは普通におかしい!と最もな考えを持っていて弓場は虹村に賛同する意見を求めるが虹村は軽く流す。
青峰もとい転生する度に諏訪部キャラになる男は……まぁ、女運に圧倒的に恵まれていると言えば恵まれている……なにがスゴいかって?最終的には諏訪部を共同財産として女側は思うことだ。
虹村は青峰だしで流す。
ぶっちゃけオレ達もなんも言えねえ……諏訪部の奴は基本的には欲望に忠実に生きていたりするしな……。
「まぁまぁ、弓場さん。落ち着いてください」
「王子」
「そもそもでなんでそういう関係性になったんですか。羽矢さん達は
「誰がグレンジャーだ……あれか?俺達をゴレンジャー呼ばわりか?|
弓場とは打って変わって酷く冷静と言うかこの状況を若干楽しんでいる王子。
灰崎の名前を呼べば完全に色呼ばわり……まぁ、奇跡の世代は色だから仕方がねえ。黛も黛色だな。
「アオミネンジャーとはどういう関係で出会ったんですか?」
「高校が同じでよ……コイツ、1年の頃で陸上の日本記録叩き出したんだ」
「日本記録?」
「彼は100mを9秒で走った。2年ほど前にニュースになっていた……のだがね」
根付さんは大きなため息を吐いている。青峰は天王寺と違うと認めているし性格的にもメディアに出るタイプじゃない。
青峰は……めんどくさがり屋。真面目にしてたらってなるが、コイツが真面目にしてたらしてたでそれはそれでクソだからな。
「そういえばそんなニュースが……もうちょい有名になってるはずだろ」
「いや、アオミネンジャーは確か三門市の予選の1回戦だけ走って帰ったんですよ」
「はぁ!?」
100mを9秒で走ったと言う事を思い出しているが、あんまり印象に無いとなる弓場。
王子は確か1回戦だけ走ってそのまま帰ったことを思い出して弓場は喧しい声を出した。
「学校の先生や陸上部の部長が勿体無いとか色々と言ってたけどそのまま帰って……そしたらそんなに足が速いなら他の部活でも活躍出来る筈ってなって他の部活が誘って全滅させたんだよ」
「全滅?」
「テニスや卓球をすればストレート勝ち、野球は全部ホームラン、サッカーもハットトリックを決めて……アレはエグかったわ」
「挑まれたからやっただけだ。オレはなんもしてねえよ」
青峰は他の部活動に誘われたら全員を尽く倒した。それも圧倒的な強さで。
青峰からすれば平常運転だが……あくまでも青峰からすればであり、同じ高校だった橘高と藤丸の脳裏には焼き付いている。
「あの時、他の奴等を絶望させてたのは覚えてるわ」
「手心は加えねえ……オレは何時も通りだ……」
「その何時も通りがエグいんだろうが。ちっとは手を抜いてやれよ」
灰崎は青峰の普通はエグいと言う。橘高は思い出す……青峰の何時も通りを。
青峰は戦うことに関しては右に出る転生者は数える程度、ここにいない桃井を含めた転生者の中で一番強い。それは貰っている転生特典の話でなく本人の資質みたいなものだ。
本人的には勉強とか技術開発とかそっち系の能力が開花したかったがそっち系は微妙だった。
所謂暴力による戦闘では規格外で暴力以外、麻雀とかバスケとかそういうのでワンチャンある程度だ。ただしそれでも戦うならばその競技における奇跡の世代クラスの選手が絶対に居なきゃダメ。花宮を始めとする無冠の五将クラスは足止めとかは出来ても絶対に勝てない。
青峰もとい転生する度に諏訪部キャラになる男は戦いに関しては天才でなく規格外だ。
ちゃんと戦術とかも理解しているし……ただ問題として、コイツは遥か昔にやらかしている。転生先がバトル物の世界が割と多いから戦闘技能に突出した転生者は割と見るが青峰はその中でも10本の指に入る。10本って多すぎねえか?と思うが、戦闘技能に突出したタイプの転生者だけでも300人程いる……オレ?オレは再現性不可能な突然変異種だ。
「それは出来ねえな」
青峰大輝は圧倒的な強さを手に入れた。それと引き換えにバチバチと戦う真剣勝負が出来なくなり虚しくて虚しくて仕方なかった。
ただ、目の前に居る男は違う。転生する度に諏訪部キャラになる男は仮にやるべきことが決まったのならばちゃんとする。赤司にW杯と東京オリンピックで金メダルを取って日本の地上波でBリーグが放送されて当たり前の時代を作ろう!と言うバスケ王国計画に誘われて乗った。私生活は緩いが練習は基本的には手を抜かない。
何時の日か天才と呼ばれている自分達を倒してくれる怪物の前で情けない状態になるのが嫌ってじゃない。
圧倒的な才能を持っているからその才能で凡人が届かなかった世界の扉を開いてくれと凡人に頼まれたわけじゃない。
走り続けた先に視える至高にして究極の領域に足を踏み入れたいと望んだわけじゃない。
その種目に対して自分の全ての人生を注ぎ込みたいと太陽の如き圧倒的な熱を持っているわけじゃない。
青峰に一番相応しいのは闇だろう。
決して競争相手に才能が無いわけじゃない。むしろある方だ……ただ世の中にはどれだけ思考を張り巡らせようともどれだけ素晴らしい手を使い続けても、絶対に届かない世界がある。全てを自分の色に飲み込む圧倒的な闇だ。
それを見せつけられたら心が折れる奴は普通に折れる。確か同期の転生する度に宮野真守キャラになる男は折れた。同じく動機の海馬社長は言葉にしないが、青峰の強さだけは認めている。やる気が無いのが気に食わないが。
「でまぁ、ありふれたパターンである調子に乗るなよ!の暴力に走ってきたりしてな。その時に巻き込まれたりして……まぁ、そこで関係性を」
「そこまでは分かるけど、なんで二股なんだね!?」
「お互いにアプローチしていまして。そしたら……桃井を知って危機感を」
この世界での青峰と桃井の関係性はお隣さんであり中学は同じである。
幼馴染みの関係ではあるが恋愛要素は皆無である。しかしまぁ、アレでも互いに面はいいので、橘高や藤丸は危機感を抱き、結託した……桃井は青峰が何処までレベル上げれるか試したい実験材料みたいなところあんだけどな。
「桃井とはそういう関係性じゃねえつってんだろ……喧嘩するかと思ったけど特に無くてな」
「ふむ……アオミネンジャー、どちらも選べないからどちらも選ぶのは面白い考えだ。だけどね、現実的な話をしよう。君はNBAにトライアウトとかに行かずに日本でバスケをすることを決めた。日本と外国じゃ外国の方がお金に関しては正直だ。仮に2人とそういう関係性になった場合は」
「あ〜……王子」
「なんですか?」
橘高と藤丸は青峰に惚れている。人を誂うタイプの人間だが流石に恋愛事情に首は突っ込まない。
だけど現実的な話、お金についての話。ただでさえ不景気続きでありプロバスケ選手が幾ら貰えるかは分からない。仮に貰い続けても35ぐらいで選手としての限界は迎える。その際に2人を養えるかという結構なマジレスをしていたのだが、藤丸が一冊の本を取り出した。
「なっ、そ、それは!?……オークションで手に入れたのかね?」
「いえ、銀行から貰いました……王子くんの言う通りで、ものは試しで買ったら……なんか当たりました」
根付さんは藤丸だけでなく橘高が取り出した本を見て驚いた。オークションで手に入れたかと聞くが、それをわざわざオークションで買う奴は早々に居ねえ……手に入れてもホントに価値は無いからな。
「まさか!その本、宝くじ高額当選者にのみ貰えるという本!?」
王子は本を見て、宝くじ高額当選者にのみ貰える本だと気付いた。
弓場もマジか!?と驚いた顔をしている。橘高と藤丸は銀行の通帳を取り出したって
「おい、持ち歩くなよ」
大金入ってる通帳持ち歩くなよ。
「流石に持ってなきゃなんか怖くて」
預金通帳を開けば1億円が刻まれていた。
よく観察してみれば1億円から投資してる……
「お前等、投資してんだな」
「手堅い所を適当にやって毎月10万ぐらい貰ってる……」
B級は近界民をぶっ倒した出来高でA級は固定給+出来高だったか?
とにかく最初に手に入れた1億を投資してる。あ、橘高の奴は集英社に投資してる!
「なんか、青峰とそういう関係になってから金回りとかそっち系が幸運続きでな」
「……青峰、まさか修羅開匣」
「してねえよ……と言いてえが、多分見られてんだろうな……」
青峰とそういう関係性になった際に起こるであろう厄介なトラブル、金関係のトラブル。
宝くじに当たったり信用できる手堅いところに投資して毎月10万程貰っていたりと金回りが良くなっていると聞く。コレは明らかに不自然だと赤司は気付くので赤司は修羅開匣をやったのかと聞くが、青峰はしていない。修羅開匣していないのにこの幸運続きに心当たりはある。
「赤司、この件にはあまり関わらない方がいいのだよ」
青峰の心当たりがある発言でこれ以上は厄介なのに触れそうだと緑間は気付く。
赤司もこれ以上はまずいなと感じた……が、弓場が納得出来ない……まぁ、そりゃそうだろう。経済的な面は解決しているが倫理観的にはアウトだから。
「根付さん……ウサミミの刑でオレを1回呼べる様に」
「……それは構わないが、私は問題を解決するつもりは無いよ。なにが目的かね?」
「なに、トリガーを貸してほしくてな……こういう時は一発戦った方が早い」
「青峰っち、脳筋ゴリラはアウトっす!」
「青峰、それは無いのだよ」
「みねちんさ、もうちょい慈悲を持とうよ」
「大樹、そいつはねえだろ」
「青峰、アウトだ」
「ウサミミの刑をそういう風に使うんじゃねえよ」
弓場が納得する形、コレならば自分の隊のオペレーターを任せても構わないと思える強さを見せつける。
あくまでもオレ達三門ヴォーパルソードはボーダーの活動資金集めの為の道具でありボーダー隊員じゃない……が、別にオレ達戦えないわけじゃない。ボーダーからトリガーを貰えばバリッバリ戦える。
「それは出来ない相談だね。個人の揉め事でのボーダーの個人ランク戦を解決するのはよくない。確かに弓場隊員ならばその方法で納得をするが、それでトリガーを貸してくださいは出来ない相談だ」
「……おっさん、本音を言えよ」
「場所は貸そうじゃないか。だが、トリガーは貸さない……君の自前のトリガーを使いたまえ。それ+ウサミミの刑で1回、君を追加で呼べる様にで手は打とう」
「…………はぁ!?」
「ええっ!?」
弓場ならばその方法で解決するがボーダーのトリガーは喧嘩の道具じゃない。
喧嘩をする場所ならば貸してやる。自前のトリガーを使うのならば見逃す……それを聞いた藤丸と橘高は驚いた。青峰の奴は言ってない……言う必要は無いからか。
「どういう事すか!?自前のトリガーって」
タイマンの流れは飲み込めるが、自前のトリガーについては予想外だと弓場は騒ぐ。
紫原はこうなった言っておくかとめんどくさそうにしながらも答える。
「三門ヴォーパルソード設立の表向きの理由はボーダーの活動資金集め、でもホントの理由は本当にボーダーだけじゃ処理出来ない案件を巻き込んで協力させること。俺ら巻き込んだ方がお得とか考えてる感じだよ」
「自前のトリガーってどういうことだい?」
「鬼怒田開発室長は常々言っているだろう、開発資金が無いと。近界民に対抗する為のトリガーには近界民の世界でないと絶対に取れない資源を使っているわけではない。こちらの世界でも金さえあればある程度は一定の供給が出来る物で出来ている……俺達はその手の素材の最上級の物を持っている。更にはボーダーと異なる方向の技術として成立させているのだよ」
自前のトリガーがどういうことだと王子が聞けば緑間は答える。
転生特典と言えばそこまでであるが、一応はトリオンを動力源に動いて近界民に対抗する物を持っている……
「私としては君達が正式にボーダーに所属してくれればありがたいのだがね……」
「そこまで人生捧げる事は出来ねえよ……場所は貸してくれるし、どうせ研究の名目とか色々とでっち上げるつもりだろ。まぁ、それでもいいから」
青峰はそういい大きなあくびをした。
これから弓場と戦う事になるんだが、やる気らしいやる気は感じない……戦闘狂ってタイプじゃねえし、何よりも勝てる相手だからな。