ミラクルトリガー   作:アルピ交通事務局

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第4話

 

「屋上だな」

 

「普通の屋上ですね」

 

 何時もの様にライトノベルを読んでいると人がやってくる。

 如何にもなヤンキーと糸目の男で強キャラ感は無くもないが無い……ヤンキーは推理小説、糸目は時代小説。

 

 屋上にやってきているのに謎のリアクションを取るところから、屋上に何かがあると思っている。

 

「図書館の方が良かったか?」

 

「う〜ん……加古ちゃんがオススメしたから何かはありそうなんですけどね」

 

 屋上なので本を読むことは決して適していない。当たり前だ。本は基本的には屋内で読む物だ。

 加古から屋上で本を読むのがいいとオススメされたが、最適な場所ではない。だがそんなのは一旦物事を俯瞰したり冷静になって考えれば分かること、愉快な人間ではあるがバカな人間じゃない加古が分からないわけじゃないし嫌味として言うわけでもない。

 

「なんかあるつっても屋上だからな。今から図書館行くの勿体ねえし、今回はここで読むか」

 

 屋上だからなんかあるにも限度があると言われ、図書館行く時間が勿体無いと本を読み始める。

 完全にオレに気付いていない……そしてオレから声をかける事は無い。普通にラノベの続きが気になるし、仲良くなりたいとかそういうのは特に無いから。

 

 普通に近い距離だがオレの存在については特に気付かない。

 糸目は推理小説、ヤンキーが推理小説に没頭する……風が吹いてページが捲れる的なのは特に無い。

 

 40分ぐらい使って小説を読む……オレ?ラノベのおかげで速読のスキルは手に入れているから15分ぐらいで読破は出来る。

 ネット小説ってのもありだが如何せん当たり外れや解釈の不一致とかが多すぎる……二次小説みたいな世界に足を踏み入れる事が出来る機会を手に入れても逃げても問題無い。

 

「うぉ!?」

 

「どうしたんですか諏訪さん?」

 

「いや、人が居た」

 

「え?」

 

 推理小説を読み終えた頃に見た目が悪い男もとい諏訪がオレに気付く。

 糸目の男がどういうことだ?と諏訪の視線の先にいるオレを見れば驚いた。

 

「めっちゃ近くに居るのに全然気付かなかった……」

 

「影が薄いだけなんで……変なリアクション取らないでくださいね」

 

「ミステリアスな雰囲気を出してる割にはラノベなんだな」

 

「そうだが?」

 

 ブックカバーとか特にしてないライトノベルであることを糸目の男が気にしている。純文学は鬱陶しいから好きじゃない。

 一切の迷いなく答えればコイツ、出来る!と何故か思われた……オープンオタクでなにが悪いって話だろう。

 

「加古ちゃんが言ってたのって……えっと」

 

「黛……二年だ。読書するのに最適とは言えない場所を勧めたのはオレと鉢合わせする為だろうが……まぁ、見ての通り特になんてことは無い人間だ。ボーダーの人間でも何でもない変人だ」

 

「そうか。俺は堤だ」

 

「諏訪だ……意識が向いてなかったとは言え、マジで気づかなかったな……」

 

「よくあることなので」

 

「…………まさか……」

 

 影が薄いという特殊能力を持っているのか?と考えているだろうが、コレに関しては特殊能力とかそういうの一切関係無い素だ。

 仮に影が薄いと言ってもレーダーには反応する。気付きにくいだけであり、そういう特別なのは無い。

 

「諏訪、探したぞ……屋上とは珍しいな」

 

「読むのにここがいいって加古に勧められたんだよ」

 

「図書館でいいだろう」

 

「風間さん、一応の成果はありましたよ」

 

 ちっこい男が紙袋を片手にやってきた。諏訪が屋上に居ることについて軽くボヤきながらも紙袋を諏訪に渡した。

 

「意外と面白かったぞ」

 

「だろ。それ読みながら実写ドラマ見たら、スゲえスラスラと読めんだよ」

 

 実写ドラマと読むって事から……漫画とかの子供向けの物じゃないタイプの作品を実写化したドラマの原作か。

 意外と面白かったと言うことは数字がいいタイプのドラマ……アクションよりもドロっとした人間ドラマ重視の作品か。

 

「しかし、屋外に出てまで本を読むのか……少しは体を動かさないと不健康だぞ」

 

「頭の体操はしてんだよ」

 

「麻雀だろう……模範となる隊員になれとは言わないが、酒と煙草と麻雀というダメ人間一直線コースは1人の友人として見過ごせん」

 

「んなの言い出したら雷蔵とかどうなんだよ?」

 

「今はお前の話をしている。話題をすり替えるな」

 

 めんどくせえ彼氏みたいな事を言っているな。

 ただまぁ、言っていることは一応は間違いじゃないだろうな……酒、煙草、麻雀のトリプル役満とか普通にな。

 

「体は鍛えておいて損は無い」

 

「あのな……お前等に付き合えねえんだよ!ゴリッゴリの体育会系にとって普通の運動に付き合えるか!」

 

「でも、そういう場所を考えないとダメですよね……日佐人が麻雀を覚えたいって言い出して」

 

「…………」

 

 言うまでもないが今時の子は麻雀は知らない。ハマる奴は物凄くハマる競技ではあるが、ルールが無駄に細かい。

 楽しいと言えば楽しいし頭をよく使う物だから思考速度を上げるのにはいいけれども、子供に麻雀教えるのは果たしていいことなのか?と言う堤のもっともらしい意見を聞いて返事に困っている。

 

「普通にスポーツをするとかでいいだろう……歌川が柿崎達とスポーツしているから紹介できるぞ」

 

「運動能力に差がある奴が楽しめねえだろ。ゴリッゴリの体育会系の中に混ざる普通かそれ以下はつまんねえしつれえんだよ。ましては俺等の場合はオペレーターがいるから自動的に男と女が入ってどうしてもその辺がややこしくなんだろうが」

 

 スポーツに誘う風間に対して運動能力に差があるから色々とややこしいという。

 スポーツは上手い奴同士でやるから面白い、下手な奴とやっても面白くない。その逆、下手な奴も上手い奴にイジメられればスポーツをやる上で一番大事なスポーツを楽しむ感情が無くなってしまう。基本的にオレもそっち側の住人だ。

 

「でも、普段の運動とかはともかくそういうコミュニケーションは大事ですし……あ、そうだ。そういうのを知らないか?」

 

「っ!?」

 

「いきなり人に話振るんじゃねえよ」

 

「……いったい何時からそこに」

 

「この2人が屋上に来る前から」

 

 諏訪の言ってることも風間の言っていることもどちらも正しい、正しいからこそ答えが出ない。

 全く関係無い第三者の意見を聞いてみたいなと堤はオレに話を振れば風間が物凄く驚いた顔をした……普通に居たのに気付かないのは大概だな。

 

「いや〜この距離で気付かないって存在感薄いな」

 

「この人がオレじゃなくて諏訪さんを意識して色々と言っていたからですよ」

 

「お前は……誰だ?見ない顔だが」

 

「2年の黛……それで堤に聞かれた事の答えですが運動能力に差が激しい人達でのスポーツはつまらないですよ。差がありすぎて能力が優れてる人が楽しんでしまう。本気で勝つ為のスポーツをしているならともかく、おっさんが健康の為にする運動でそれはやっちゃいけないこと」

 

「誰がおっさんだ」

 

 運動系の習い事をしている奴等とそうじゃない奴等が纏ったとして必然的に浮き出る。

 蹂躙されていてスポーツが全くと言って面白くないと感じる奴が多くいる。その逆はいない。

 

「楽しむスポーツと勝ちに行くスポーツは全くと言って違う……風間さんの少しの発言から推測するに風間さんは真面目な人で予習復習とか鍛錬とか色々とするタイプでやる以上には勝つ考えをしてる。別にそれ自体は極々普通のことだけどそれは挑戦者の思考だ」

 

「……挑戦者の思考?」

 

「そう。挑戦者はハードルを上げまくる。でも、指導者の場合は時としてハードルを下げないといけない。自分の技術を自分と同じスピードで覚えれるとは限らないし自分と同じ結果が出せるとも限らない。楽しむスポーツは指導者のハードルとしてやらないと、じゃないと体育会系のノリとかそういう以前に根本的にスポーツが大嫌いになります」

 

 実際、元々のオレは体育は大嫌いだ。

 疲れるのは体育の性質上当たり前だから仕方ないが、一方的な運動能力の差でゴリ押してくる奴が確実に出てくる。

 

「……お前は体育学科か教育学科か?」

 

「いいえ、高校の頃にバスケでいいとこまで行けただけです」

 

「そうか……いい話をしたがなにも問題は解決していないが」

 

「そうですね。オレはその辺のとこはなんとも言えないんで……適当にウォーキングするだけでいいんじゃないですか?」

 

「アバウトだな、おい」

 

 いい話をしたがなに1つ問題を解決することが出来ていない。

 ウォーキングに引っ張るだけでいいと言えば諏訪はツッコミを入れたが特に気にしない。体力欲しけりゃ適当に歩いとけばそれでいい。ホントに必要な体力は一応は付く。

 

「バスケをしていたのなら普通にバスケをオススメすると思ったのだが……」

 

「オレがしていたのは楽しむ為のバスケじゃなくて本気で勝ちに行く為のバスケで死ぬほどキツいんでオススメはしたくないですよ……そもそもであの馬鹿共が馬鹿やりすぎて圧倒的に不人気な種目ですし」

 

 運動したいならばバスケを!と言う事を言ってこない事に少しの疑問を抱く風間。

 オレがやっていたのは勝つことを求めるバスケで死ぬほどキツいバスケ……虹村もその辺については割と反省はしている。灰崎?知らん。

 

「馬鹿共?」

 

「……ブラック部活問題と言うのは知ってますよね」

 

「ああ。教えれないが責任者として居なければならず早く出勤しないといけない教師等の多くの問題がある。最近だと学校外のクラブ活動に任せたほうがいいと言う政策もある」

 

「一部の地域じゃ中学の部活禁止とか色々としているわけで、三門市もまぁ、色々と手を出しててその中で1つのクラブチームが生まれたんですよ。そのチームに現れた5人の天才達、通称『キセキの世代』……日本代表に選ばれる選手が居るぐらいのプロチームを相手に勝利するほどのヤバい奴等の集まりで……あまりにも強すぎた。特に奴等が中学3年の時にクラブチームの日本一を決める大会の決勝戦で相手選手の心を折った。スポーツマンシップとかそういうのを無視してそれでも理不尽な大差をつけて勝った。三門市はクラブバスケがそのチームしかないからあんま知られてねえがクラブバスケをしてたことがある奴等の中じゃ心を破壊したプレイで悪名高い」

 

 勝ったからと言ってあんな事をするとはまぁ、なんというかクソでしかないが……それをしなきゃいけねえってのあいつの腹だろ。

 とにかく悪名高いキセキの世代が居るせいで三門市はバスケが人気が無い。

 

「そのクラブは代替わりしたし高校じゃ姿を消してるから平穏なバスケライフですけど、ホントにヤバい……っと、そろそろ講義なんで失礼しますね」

 

 オレはそう言うとラノベをポケットに入れて講義に向かった。

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