「んだよ、俺が1番かよ」
三門第一高校付近で荷物が入っている旅行鞄を手にしている灰色の頭の男、名前は灰崎翔吾。
GWを用いての合宿をすることになり一番最初に辿り着いたのは自分なのかよと呆れている。
「オレが一番最初だ」
「うぉ!?……あんた、居たのか」
「お前等運ぶの誰だと思ってんだ。一番最初に来てるわ」
オレが一番最初に来ているのはしっかりとした理由はある。
今回の合宿、転生者9人もといキセキの世代を運ばなければならない……移動手段は勿論車だ。
車の免許を持っているのはオレと虹村でレンタカーを借りてキセキの世代と荷物を運ぶ……だから当然と言うべきか、オレは早くに来てる。
「お前が一番とか普通に笑えるな」
「黙れ……やることねえし渋々付き合ってんだよ」
「ボーダークビになってをつけ足しておけ」
灰崎は色々とヤンチャしていてあまりいい人間ではないが、それでも灰崎が一番最初にやってきた。
遅刻するとかサボるとかそういうことを平然としそうなタイプなのになんだかんだでキッチリと来ている。
本人はやることがないからを理由に渋々来ていると言っているが、ボーダーをクビになっているからだろう。それを指摘すれば聞こえるレベルの舌打ちをした後にハッキリと告げる。
「リアルでザマァをしてやる」
迅が裏で手引きしてこのままではボーダーは成長することが出来ないのを理由に灰崎はクビになった。
表向きは素行不良で実際防衛任務あると嘘をついて学校をサボってた事があるからそれを口実にクビにしたが実際のところは灰崎とボーダーが絶妙なまでに噛み合ってない。
「日本一や世界一になった時にメディアに向かってボーダーをボロクソに言ってやれば、ボーダーの評価が下がるってもんだ」
性格悪いな、コイツは。
まぁ、こんな奴に小判鮫の如く縋りつかないとどうしようもないオレがなにかを言うつもりは無い。
「おはようございます」
本来の集合時刻20分前に赤司征十朗がやってきた。
何時も通りキッチリとやってきているがとても楽しそうにしている……顔には出ていないから分かりにくいが。
「灰崎……バスケ部を辞めたそうだな」
「黛さんも虹村さんも居ねえただの公立校じゃ全国は不可能だろ?……黛さん抜きで全国までなんだから。テメエらとバスケをやった方がまだ勝ち馬に乗れる」
高校3年生になった途端に灰崎はバスケ部を辞めた。赤司に辞めさせられたんじゃなくて自分の意思で退部した。
理由は周りが弱いからそれに合わせてバスケをしても大して意味が無いから。1年の頃には虹村とオレが居たからなんとかなったが3年の今はなんともない。
それ以前に虹村のやり方は嫌われていた。
三門第一高校はボーダー隊員の高校生の受口みたいなところであり本気で部活やりたいならば強い学校に行けって話なのだが虹村がゴリゴリに練習メニュー弄くった……いいところにまで行くことは出来たが、学校としてもバスケ部員としても勝つためじゃなく楽しむ為のスポーツをしたいからと普通に嫌われている。
「賢明な判断だ……普通のバスケ部ではお前は確実に埋もれてしまう。僕達とバスケをすることで大きく成長する事が出来る」
「言っとくがお前のバカな戯言に付き合いたいんじゃねえ。ザマァしたいだけだ」
「動機なんてそんなもんでいいだろ」
灰崎はバスケでMVPに選ばれるほどに優秀な選手……とは言えキセキの世代がやんちゃしていた中学時代でなく何もしていない高校生の頃に頭角を現した化け物である。現に1年目の際には灰崎よりも上のスター選手といえば虹村しか居ないとまで言われるレベルのヤベえ選手……流石は本来のキセキの世代。
「どうも〜ッス」
「まだ15分前なのに皆早いね」
「5分前行動だからのループに入っていないか?」
赤司がやってきてからは続々とやってくる。
黄瀬、紫原、緑間……紫原が210ck越えで緑間がギリギリ2m行かなくて黄瀬が四捨五入したら2m行くとかいうふざけた体格。
バレーとかならそれだけを理由に部活でエースやれるぐらいには強えだろうな。
「うぃーっす」
「皆、久しぶり!」
本来の集合時刻10分前に青峰と桃井がやってきた。
青峰がバッグ2つで桃井が荷物無しだから桃井の奴は青峰をパシらせたな……コレで残りは虹村か。
「久しぶりッス、桃っち」
「さっちん、おひさ〜」
「久しぶりなのだよ」
「って、オレは無視か!」
「まぁ、いいじゃねえか。美女な彼女2人持ちのイケメンさんはよ」
桃井に対して気軽に声をかけているのだが青峰はガン無視であることにツッコミを入れれば灰崎が煽る。
彼女が2人居ることについては反論がする事が出来ずにぐぬぬと悔しそうにしている……コレに対して正しい反論ってなんかあんのか?とは思うが無いだろうな。
「とりあえず荷物は俺で、人は黛さん……黛さんの助手席は桃井、俺の助手席が灰崎だ」
そんなこんなで集合時刻3分前に虹村がやってきた。
レンタカーでやってきて荷物を入れろと各々の荷物を入れた後に車を走らせる。
「ねぇ、黛さん」
「なんだ?」
「コレでいいのかな?」
「なにに対してだ?」
車を走らせていればチョコレートを食べている紫原がコレでいいのかについて聞いてきた。
なにに対してなのかという質問を返せば紫原は何事もなく答える。
「いやほら、高校バスケで無双しまくるとかそういうのせずに体作りに専念するとかさ……赤ちんのバスケで天下を取るは別にいいんだけど知名度上げなくていいのかなって」
「オレと桃井はともかく他は体づくりが大事だろう」
灰崎、虹村、桃井、オレは三門第一高校で他は全員別々の高校だ。
バスケが強い高校からスポーツ推薦の話が無かったわけじゃなかったがそれら全てを蹴った。理由はキセキの世代同士でバスケをしていた方がいいし、なによりも体が出来ていない。
当たり前だが練習はしっかりとこなさないといけない。だが、オーバーワークはいけないことだ。
高校生だからハードな練習とかをやらされてその上で学業とかも普通にあるわけで、パンクする奴は普通にパンクする……だからオレ達は賭けに出る。高校生の間はバスケで過酷な動きをしまくるのでなく体作りをしっかりしようと。
「大丈夫だよ、むっくん。ちゃんと日本代表の座を狙いに行く準備は出来ているから……日本代表の人達をそれこそトリプルスコアで倒せば文句は言わせないよ」
「それよかここでバスケしてていいんすかね?原作とかショーゴくん以外ガン無視ッスよ……ま、そのショーゴくんもクビになったけど」
日本代表の座を手に入れる為の準備は着々と進んでいるから問題は無いと桃井が答え、今度は黄瀬が疑問をぶつける。
ここでバスケをしていいのかと……鳩原未来が向こうの世界に密航とかそういうのがあってそれに対して誰も何もしようとしていない。
「別にハッピーエンドにする義務は無い……お前がここに居るのが何よりの証拠だろ」
原作について気にしているが、気にしたところでのものだ。
一歩でも間違えれば主人公は死んでしまう?当たり前だ、この世界の物語は異世界とのガチの戦争だ。どっちが正しいか間違いなんて関係無い。オレ達が明日を生き残る為に死んでくれと言っているも同然だ。
「物語をよりよい方向の為に犠牲になってくれなんて閻魔大王は一言も言ってねえ、幸福な人生を送れるように頑張れよと背中を押してくれている。普通の人生歩みたけりゃ歩めばいい、その世界の中にある非日常を体験したければ体験すればいい……非日常を体験すれば場合によっては成り上がれる、顔もスタイルも性格もいい奴との結婚、億万長者とロマンはあるが、ロマンでなく平穏を求めるのも普通の事だ」
転生した後に面白い事をしているから見ていて楽しいだけであり、面白い事をしてほしいから転生させているわけじゃない。
閻魔大王達地獄の転生者運営Sideはあくまでも幸せを掴んでくださいねと言っているだけで、強要はしてねえんだよ。
「大体よ、最終的にはどうするつもりなんだ?異世界の存在を証明し、異世界独自の技術がこちらの世界の住人達でも扱えるとかで、明らかに無理ゲーだろ」
近界民憎しと近界民排除する派閥、街の平和が大事だよねの派閥、近界民にもいい奴が居るから仲良くしようね派閥。
その派閥の3つのどれかに加わるとしてもどう足掻いても意味は無い……異世界の存在を世間に証明した。ボーダーは裏で色々な手を使ってやっとの民間組織で、近界民には国がある。国同士のやりとりに関してはそれはもう完全に1人の人がどうにかすることが出来るもんじゃねえ。
「黄瀬、お前はどうかは知らねえけどよ……暴力以外で物事解決しなきゃいけねえ系はしんどい」
「青峰がそれを言うのはホントに深みがあるのだよ」
「最終的には暴力で物事解決しなきゃならないのってホントに終わってるよね〜」
暴力で物事を解決しなきゃいけない事に関しては仕方ねえと割り切るんじゃなくてダメなの事だと認識している。
漫画とかラノベとかでもとりあえずは暴力で物事の解決がオチになるが、それは本来は最終手段であり初手でやっていいことじゃない。
転生する度に諏訪部キャラになる男もとい青峰は最強だ。
やらないだけで単騎でボーダーを全滅させるぐらいは容易く出来るが、そういうのを好まない……暴力で解決しなきゃいけないって決まった時のコイツは物凄く恐ろしいからな。敵認定だとマジで恐ろしい。
「力を持っている人間は可能性を手にしているのであって、やらなければならないと言う義務を与えられているわけじゃない。力を持てば人は良くも悪くも歪んでしまう。持ってない人にとってそれは時として最高に見える場合もあるし最低に見える場合もある……もっとも、オレは他人の褌借りなきゃまともに生きれねえが」
この世界にいる転生者は転生特典が無くても強い……オレ以外はだ。
転生特典関係無しに普通に強い転生者を普通に作る、それが地獄の転生者養成所……転生特典無かったら何も出来ないは洒落にならない。
「お前達は弱い人間だった、それを忘れるな」
弱い人間だった頃に感じていたものを忘れていたら大事な物を失う。
既に強い人間になっている人達に言うべきことじゃないのは理解しているが誰かが言っとかなきゃならねえ。
「……相変わらずそういうフォロー、上手ですね」
その辺のフォローを毎回しているオレを赤司は褒めてくる。
赤司は元から強い人間、強い人間だから弱い人間がどうして弱いのか、変えることが出来ない弱さを理解出来ていない。緑間も黄瀬も……青峰に至ってはそれが原因で友達を傷つけたことまである。
「甘い汁を吸えてんだ、これぐらいはしておくもんだ」
別にこいつらが人として間違わないように正しく導こうなんてこれっぽっちも思っちゃいねえ。
ただこいつらが居ればオレは甘い汁が吸えるからこいつらがやらかさないようにしておく為にフォローを入れる、ただそれだけだ。