静音の転校から数日が経った。その間は特筆するべきことはなく、平和な日常が続いていた。4月、5月と最近は月に一回は死にかけていたからな。今月くらいは平穏に過ごしたいものだ。そんなことを考えながら王牙はジャージを体操服の上に羽織って、校庭に出ていく。
「よーし! 今月中はサッカーをするぞ! まず手始めにパスの練習からだ! 全員二人組を組んでくれ!」
少しわずらわしく感じるようになってきた日差しを浴びながら、牛丸はやかましいほどの大声でそう叫んだ。
ペアか……誰と組もうか。とりあえず王牙は他の変態たちのところに近づくも、彼らは彼らで二人組をすでに組んでしまっていたようだ。
「へっへっへ。悪いな王牙。この組二人専用なんだ」
「やかましいわ。ったく、俺が余りかよ」
「いいじゃん別に。僕たちと違って君は他にも組んでくれそうな相手がいっぱいいるじゃないか」
組んでくれそうったって……全員女子じゃねえか。王牙はそうぼやいた。別に嫌なわけではないのだが、こういうのは同性同士で組みたくなるのが人の心理だろう。
ちらりと周囲を見渡す。形見は……珍しいことに桜以外と組んでいた。桜の方も男女問わず何人もの人が押しかけてきて団子状態になっているが、なぜだか一人ひとり丁寧に断っていた。
それに比べて……。王牙はもう一方を見る。そこでは夜美がジャージ姿で腕を組んで孤高を貫いていた。
まあそりゃそうなる。夜美自体も嫌われているわけではないのだ。むしろそのあまりの美貌から初日でファンクラブなるものができたほど男女からの人気は高かった。
だが、あれは高嶺の花なのだ。触れて感じるものではなく、遠目から眺めて楽しむものなのだ。彼女が無意識のうちに発している気品さといったものがオーラとなって、人を遠ざける要因になっていた。
しかしそんな彼女は王牙と目が合うと、こちらに歩みを進めてきた。同時に桜も人の群れから抜け出して小走りで駆け寄ってくる。
「あら、いつもの二人とはあぶれてしまったのかしら? 哀れね。あまりに哀れすぎるから、今回は特別に私と組んであげてもいいわよ?」
「王牙君、一緒に組もうよ! 王牙君ってスポーツものすごく得意でしょ? ちょっと教えてほしいかな……なんて」
「……あら?」
「……ん?」
二人が声をかけてきたのは同時だった。そして次の瞬間、彼女たちは互いに目線を合わせて睨み合う。人を殺せそうな目をしているのに、表情は笑顔なのが逆に不気味だった。
「桜。あなたは他に誘ってくれる人間がいっぱいいるじゃない。こんなのに構ってないで別の人と組んだほうが効率がいい気がするのだけれど」
「夜美ちゃんは誰からも誘われてないからね!」
「……それは誤解よ。私はあえて拒否しているだけ。私の中の最低基準を満たしているのがこの男しかいないから、しかたなく組んであげようと思っているだけよ」
「しかたがないなんて思ってるんだったら組まないほうがいいんじゃないかな? 相手にも罪悪感与えちゃうかもだし」
「……」
「……」
こいつら怖い!
まさに氷と炎。ここだけ殺気がぶつかり合っていて周囲の空気がピリピリしていた。仲裁の女神たる形見に必死に目を向けるが、彼女は申し訳なさそうな顔で目を逸らした。ジーザス! 神は死んだ!
何か手はないかと周囲をキョロキョロ見渡すていると、夜美とは別でボッチプレイをしている人間を見つける。例の転校生こと静音である。渡りに船とはこのこと。王牙は忍び足でその場から離脱すると、彼女に声をかけた。
「よ、よお。一人か?」
「……別に。もしかしてお情けで組もうとしてる? だったらやめてくれたほうがいいんだけど。こっちも惨めになるし」
静音は胡乱な目を向けてくる。彼女からすれば仲がよさげな二人を差し置いて自分と組もうとしている理由が理解できないのだろう。だから王牙はまっすぐ彼女の目を見て話すことにした。
「そうだな。あの二人のどちらかと組むと面倒くさくなりそうってのもあるが、俺はお情けでお前と組もうとしてる」
「うわスッゴ。すっげえ正直者じゃん。ウケる」
「『誰かのためにならない嘘はつかない』が俺の座右の銘だからな」
王牙は胸を張ってそう口にした。そのあまりに馬鹿げた信念に静音は呆れたようにため息をつく。
「ま、あれだ。だったら俺が困ってる時助けてくれよ。もらってるだけが嫌ならそうしてくれりゃいいさ。それで貸し借りなしだ」
「別にお情け受けるって言ってないんだけど……」
「でも、このままじゃ授業受けれないだろ? それとも他に当てがあるのか?」
「……」
「決まりだな」
王牙は元気よく片手を差し出した。彼女はそれを怪訝な瞳で見ていたものの、しばらくしてその意味に気づいたようだ。そして遠慮しがちに手を差し出し……すぐに引っ込めて彼の横を通り過ぎていった。
「ペアが決まったみたいだな! じゃあボール配るぞー! 周囲とぶつからないように気をつけて練習するんだぞー!」
『へっ?』
一方そのころ、夜美と桜の睨み合いはまだ続いていたようだった。しかしいつまでも時間をかけるわけにはいかないと、牛丸は強制的に二人をペアにすることに決めた。これには二人も大激怒。夜美はともかく珍しく桜まで抗議の声をあげていた。
「ちょ、ちょっと待ちなさい! これは横暴よ! 職権の濫用よ! 教育委員会に訴えてやるわ!」
「そうです! いくら私でも限度がありますよ!?」
「……ふむ、どうやらバカ四人組に追加メンバーが二人入るようだな」
「桜、さっさとボール蹴るわよ」
「うん。なんだか私夜美ちゃんと組みたくなってきたよ」
そんなに嫌なのか、バカ呼ばわりされるのが。もはやこのクラスではバカ四人組は想像以上に不名誉な称号として扱われているらしい。言ってて涙が出てきた。
そしてしばらくして各ペアがボールを手に入れ、パス練が始まった。
「はいパース」
「……パース」
サッカーと言ってもパス練は一番地味な練習だ。まっすぐボールを転がすだけなのだから。これがプロを目指しているのならパス練こそが最も重要と力説されるのだろうが、王牙たちはただの授業でやっているに過ぎない。よってこの時間はひたすら退屈に感じた。
「ハァッ!」
「くぅぅぅっ……! ……お返しだよっ!」
「っ!」
約一組、おかしなところもあるが。
なんだあれ。もはやキラーパスというかシュートである。しかも夜美はほとんど全力で蹴っているのでボールが衝撃波のようなものを纏っているように見えた。兎の妖怪がやっていいスポーツじゃないだろ。
しかしそれに追いつく桜のほうもすごい。地面に溝を残しながらもしっかり足裏であの殺人パスを受け止めている。そして返しのパスも夜美ほどではないとはいえ十分プロを超えた威力となっていた。もはや超次元サッカーの領域である。
桜は中学時代はそこまで運動が得意ではなかったはずだが……いつのまにあんなに動けるようになっていたのだろうか。
「女と組みながら別の女に目を向けるのはよくないんじゃない?」
「おっと。悪い悪い」
っと、よそ見をしているとボールが近くに転がってきた。すぐにそれを蹴り返す。しかしこのままだと退屈で死にそうなので、せっかくだからと王牙は静音ともっと話そうとする。
「そういえば前はどこに住んでたんだ?」
「……神奈川」
「ふーん。俺は引っ越しはしてるが、ずっと東京だな。実家は滋賀県にはあるが、一年に一回顔出すかぐらいだ」
もちろん、形式上の保護者となっている祖父に会いに行くためではない。行くのにはもっと別の理由があった。
「うちのことばっかり話してるけど、あんたはどうなのよ。家族とかいんの?」
「……いんや。今は俺一人だな」
「……ごめん」
王牙に家族はいない。祖父もその例に漏れず、彼を蛇蝎のごとく嫌っていた。いや恐れていたと言ったほうが正しいか。だがあそこには妹の墓があるので、命日には行かざるを得ないのだ。
家族がいないという言葉が彼女の心の何かに触れたのか、静音は少し影を帯びながら呟く。
「うちもさ。三年前に家族とか死んじゃってさ。それで色々あってここに来たってわけ」
「そうか。一人か?」
「……いや、妹がいる」
「そうか。だったら大切にしろよ? 失ってから後悔してもおせぇんだからな」
「……あんた、まさか……」
静音はそれで王牙に妹がいたことに気づいたのだろう。その後は気まずくなったのか、二人はパス練が終わるまで一言も喋ることはなかった。しかし不思議と奇妙なつながりのようなものが見えて、お互いの距離が少し縮まったように王牙は感じた。
「今日はここまで! ボールを片付けたら各自で解散しろ!」
授業の終了を告げるチャイムが鳴り響き、今日の体育が終了する。と同時に夜美が息を切らせながらゾンビのような足取りでこちらに歩いてきていた。
「はぁっ……はぁっ……ひ、酷いじゃない。私を残して別のやつと組むなんて……っ。おかげで疲れたわ……」
「お前、どんだけ本気でやってたんだよ」
「……ふぅ。あの女が悪いのよ。最後の方とか顔ばっか狙ってきてたし」
「それでどうしたんだ?」
「ムカついたから蹴り返してKOしてやったわ」
「桜ーーっ!!」
校庭を見ると、たしかに桜が倒れていた。王牙は急いで駆け出す。夜美は面白くなさそうに口をムッと閉じた。
その様子を静音が観察していることに、誰も気づいてはいなかった。
「う、うーん……」
「大丈夫かお前?」
たしかに桜は目を回して倒れていた。頭には数匹のひよこが回っているのが幻視できる。仕方がないので保健室に連れていってあげることにした。背負うのは意識がないと後ろに倒れるかもしれないので、背中と足の関節に腕を通して持ち上げる。いわゆるお姫様抱っこというやつである。
彼女は夢幻祭の時と変わらず羽のように軽かった。軽すぎてちゃんと食べているのか心配になってくるくらいだ。そうして何事もなく保健室のベッドに彼女を乗せて、すぐ外に出る。すると廊下に静音が待ち伏せていた。
「なんだ? お前も怪我でもしたのか?」
「……違う。ちょっと忠告しに来ただけ」
その声色は少し低い。彼女はそのまま王牙へと歩みを進める。そしてすれ違いざま、耳元でそっとつぶやいた。
「出雲夜美とは離れたほうが身のためよ。彼女とあんたが交わることはない。永遠にね」
「……? なんのこと――」
――その時、リィーン……という葬式で鳴る鈴のような音が背後から聞こえた。それは廊下の端から端までよく響いていた。無意識のうちに王牙はその音に耳を澄ませる。しかし音が聞こえなくなった時にハッとし、すぐに後ろを振り向く。
――そこに、彼女の姿はなかった。
♦︎
そんなこともあったが、その後は特に何も起こらずに日は沈んでいき、夜となる。王牙は口をへの字に曲げながら道を歩いていた。
「ちぇっ。じゃんけんで負けたほうがドリンク買ってくるって……。受けなければよかったぜ……」
こんなことになる未来がわかっていたら、あの勝負も回避していたのに。文句を言いながら若干遠くにあるコンビニで指定されたコーヒーとドリンクを買う。そしてさっさと帰路に着こうとした。
しかしその途中、周囲に薄い霊力が張り巡らされたことに気づく。
「これは……『遮境門』か? だがいったいなぜ……」
「――火行始式『赤炎弾』」
次の瞬間、バスケットボールサイズの炎の球が唸りをあげて飛んできた。肌で熱を察知して、とっさに王牙は横に飛ぶ。すると先ほどいた地面が爆発を起こす。
「ほう……その身のこなし。やはりお前は能力者だな?」
その声が聞こえてきたのは炎弾が飛んできた方向だった。見上げると電柱の上で男が一人、蔑むような目で彼を見下ろしている。
……いや、一人だけではないな。斜め横に一人、後ろに二人。合計四人で囲まれている。
「……そういうお前は陰陽師だな?」
「なに? なぜわかった?」
「……服と術を見りゃわかる」
バカだろこいつら。
彼らの服は忠則が着ていたような白と黒の狩衣だったのだ。ただし、他の三人が無地の質素なものだったのに対して、電柱に立っている男の狩衣は金や銀の記事で豪奢な装飾が施されている。それで王牙はこの男がリーダー格だと悟る。
リーダーの男は正体を当てられたことで動揺していたが、それを覆い隠すように気味の悪い笑みを浮かべる。
「ふん。凶悪なテロリストを追ってこの町に来てみたが、まさかこんなところで野良の能力者に出会えるとはな。ちょうどいい。こいつを捕獲すれば俺も上からの覚えがめでたくなるってものだ」
「た、隊長。お言葉ですが最近では能力者狩りは慎むべきだという風潮が広まっております。それに無用な能力者狩りを禁ずる法の改正案も可決されたとか。今回はやめておいたほうがいいかと……」
「黙れ! あの改正案は可決はされたが執行は延期されている。いやこのままだとお蔵入りになるだろうな。それを推し進めていた出雲の巫女が病で死んだのだから」
出雲の巫女……夜美のことか?
どういうことだ。夜美が幻魔として生きているというのは陰陽師院も把握している内容のはずだ。しかし彼らは夜美が消えたのを殺されたではなく、あくまで病という自然死としての形で扱っている。
そのことから、彼は夜美の情報が末端までは行き届いていないのだと理解する。彼にしては珍しい頭の冴えであった。王牙は彼らの話に興味を持ち、何もせずにもっと聞くことに決めた。
「それにな。俺は前々からあの出雲の巫女が気に入らなかったんだ。俺はあの名門藤原家の分家の男だぞ! それがなんで歴史の浅い『春夏秋冬部』なんかに配属されたんだ! おかしいだろ!」
「それは、その……」
「だから俺には手柄が必要なんだ! そしていずれ俺は『陽光神宮』や『月影大社』のようなエリート組織に移籍してやる! それこそが俺本来の辿るべき未来なんだ!」
男は自分に言い聞かせるように叫んでいた。どうやらよっぽど今の自分の立場に納得がいっていないらしい。
色々な組織の名前が出てきたが、陰陽師院も一枚岩ではないということなのだろうか。いろいろ考えることが出てきたが、それよりも気がつけば王牙は思っていたことを口にしてしまっていた。
「くだらねえ。詳しいことはわからねえがよ。テメェの実力が足りなかったら自分の望んだ仕事場に就けなかったって話じゃねえのか? 陰陽師は実力主義だろうが。逆恨みもいいところだな」
「……言葉を慎めよ半妖。あの法は『無用な能力者狩り』は禁止されているが、能力者を狩ること自体を禁止しているわけではないんだ。お前を凶悪な犯罪者にでっち上げればお咎めなしで済むんだぞ?」
「元からそのつもりだったんだろ。だったら口を閉じようが閉じまいが変わらねえじゃねえか。力だけじゃなくて頭も悪いのかよお前」
「っ……きっさまぁ……!」
男は完全に怒りに身を任せて脇差を抜いた。それに釣られて部下らしき者たちも同じように抜刀する。王牙は戦闘が始まる気配を感じ取ると、左手で右手首を捻り、桃紫色のオーラを体から噴出させる。
「『
「そんな光、こけおどしだ! 死なない程度に痛めつけてやれ!」
合図とともに背後にいた一人が駆け出し、刀を振るってきた。が、遅い。王牙は難なくそれを腕で弾く。
「か、硬い! 硬質化の能力か!?」
「怯むな! 足止めに徹しろ! 残りは陰陽術だ!」
彼は諦めずに何度も刀を振るう。だが腕一本で防ぎ切れるほど王牙には余裕があった。それに違和感を覚える。なんというか、弱すぎるのではないか、と。
「“その指先に命の息吹を!” 火行始式――『赤炎弾』!」
「“振りゆく粉雪、弾と散れ!“ 水行始式――『雪飛礫』!」
そうこうしているうちに距離を保っていた陰陽師たちが結印を結び、詠唱を唱えていた。いわゆる完全詠唱というやつか。しかしそれにしては使う術が始式とショボいように思える。あれだったら夜美の無結唱の方が威力も発動速度もはるかにマシだ。
擁護しておくと、彼らは陰陽師院では最下級の平隊員だが、決して弱いわけではない。その実力は平均的と言っていいだろう。しかし普段の生活がアレなので王牙は失念していたが、彼が比較対象にしている夜美は陰陽師院内ではトップクラスの陰陽術の使い手なのだ。核兵器を超える陰陽術を単独で放てる存在と比べられたら、誰だって霞んで見えてしまうに決まっている。
放たれた炎球を王牙は気合いを込めて蹴り返す。そして次に迫ってきていたツララの弾丸に当てて見せた。二つの術は互いに相殺され、役目を果たすことなく消えていく。
「まったく。人がいないとはいえここは道路だぞ? まあいい。だいたいの実力はわかったぜ。お前らもう寝ていいぞ」
「は? 何を言って……っ!?」
瞬間、王牙の拳が目の前の陰陽師の腹にめり込んだ。あまりの衝撃に彼の背中が一瞬ゴムのように膨らむ。もちろん耐え切ることなどできず、彼は白目を剥いたまま大量のよだれを吐き出しながら気絶した。その足を掴むと、まるでハンマー投げのように回転しながら彼を振り回し――先ほど陰陽術を使った者めがけて投げつける。
「っ!?」
自分の体と同じサイズの肉体が砲弾のような速度で飛んでくるのを見て、二人目の陰陽師は真上に跳躍することで回避した。跳んだ距離は10メートルほど。いくら平隊員でもそこは陰陽師。その肉体は一般人のそれとは比べ物にならない。
しかし王牙はそのさらに上をゆく存在だった。
「であぁっ!!」
「がフッ!?」
なんと、男の真上にはすでに王牙が先回りしていたのだ。彼は両手を組み合わせてハンマーを作り、それを敵の頭蓋骨めがけて振り下ろす。陰陽師は鈍い音を響かせながら地面に激突し、そのまま動かなくなった。
「さて、次はお前か」
「ひ、ひぃぃ!!」
三人目の陰陽師はすでに戦意を失っていた。王牙と目を合わせただけで膝が砕けたように震え出している。そしてあまりの恐怖に耐えかね、敵前逃亡を始めてしまった。
「ちっ……つまらねえやつだな!」
だが、王牙に喧嘩を売ったことで、彼が無事に逃げ延びる未来は絶たれてしまっていた。
王牙は一瞬で陰陽師の眼前に先回りすると、虫でも払うかのように拳の甲を顔面に叩き込んだ。だがそれで終わらず、今度は吹き飛んでいく方向に先回りすると、逆方向から拳をねじ込み、さらに吹き飛ばす。彼の体はピンボールのように弾かれて近くの建物に突き刺さった。
「さて、残るはお前だな」
「ちっ……役立たずどもが! たかだか野良の能力者一人になんてザマだ!」
「だったらお前がかかってこいよ。それとも高みの見物決めこむのがお前の仕事なのか?」
「……半妖風情が。調子に乗るなよ! 俺の名は朝間慎吾! 直系春夏秋冬部傘下、朝間隊隊長だ!」
名乗りをあげるとともに、朝間は自らの刀に手を添える。そして言霊を紡いだ。
「霊装解放――『
すると光が集中していき、脇差が変化した。外見状の違いはほとんどない。せいぜい切先が折れて刀身が少し短くなった程度だ。しかしその威圧感は段違いになっていた。
そして全ての準備が終わると、二人は合図を待たずに飛び出した。