ファンタズム・ファンタジア   作:日差丸

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第56話 ミルキーウェイ

「だぁぁああああ!!」

 

 最初にしかけたのは王牙だった。霊力を噴出して加速し、まっすぐ綺羅々に向かって突っ込んでいく。

 その速度は初心者が出していいものではない。まるでジェット機のようだ。速ければ速いほど風圧は高まり、体への負担は増すが、そこは王牙の体である。力を入れれば鉄より硬い彼の体はその風圧を真正面から受けて平然としていた。

 その速度に彼女は若干目を見張るも、腕は冷静にお祓い棒型の霊器『玉昴(たますばる)』を振るっている。そして赤青黄緑……と色とりどりの弾幕が数百、周囲に形成され、一斉に彼に牙を剥いた。

 王牙はそれを避けようと左右に飛ぼうとする。ところが……。

 

「っ……小回りが、効かねえ……!」

 

 速ければ速いほどよいというわけではない。肝心の霊力操作が速度に追いついておらず、彼はうまく曲がることができなかった。曲がれたとしても弧を描くような大回りでしか動けず、滑らかに動き回る綺羅々と比べると非常に無駄が多いというのがわかる。

 そんな動きでは当然追尾性の高い彼女の弾幕を避けることなどできず、王牙は先ほどと同じように蜂の巣に遭った。

 

「空中飛行は直線は速いですけど、360°自由に動き回るには微細な霊力調整が必要ですから。そ、その、しかたないですよ?」

「……まずっ!?」

 

 慰めながらも、彼女は先ほど彼を貫いたレーザーを周囲に展開していた。それを見て顔を青ざめさせ、王牙はとっさに切り札を切る。

 

「『駆動心音(マキシマムハート)』、トリプルアクセル!」

 

 身体能力3倍強化。

 桃紫色の霊力がさらに強く彼から噴き出した。その状態のまま腕をクロスさせて防御体勢に入る。

 そして流れ星のようなレーザーが発射された。

 

「づっ……らぁ!!」

 

 王牙は眼前で両腕を交差させて霊力を注ぎ込むと、『王牙会心撃』の要領で勢いよくそれを振り払った。すると衝撃破が彼を中心に発生。それによってレーザーはおろか周囲の弾幕までもが消し飛ばされ、無に帰る。

 

「名づけて『王牙爆光破』だな。……やれやれ、遠距離攻撃技よりも先に防御技が出来上がるとはな」

 

 構想は前からあった。王牙は夜美のように結界を張ることはできない。ゆえに防御するとなると己の手足を使わなければならないのだが、それだと全方位から無数の遠距離攻撃を撃たれた時に対処できない。ちょうど前の修行での春水の『水魔手裏剣』のように。

 そこでこの技である。攻撃範囲は5メートルもないとはいえ、こうやって球状に衝撃波を飛ばすことで全方位を完全にカバーできる。崖登りによって鍛えられた身体強化のための霊力コントロール力がここで活きるなんて、何が役に立つかわからないものである。

 

「この強化はあんまし長くは持たねえんだ。飛ばしていくぜ!」

 

 そう言って王牙は再び突撃をしかける。それは先ほどよりも一段と加速していた。しかし同じように直線的な動きである。

 

(速い……けどこの動きならさっきと同じで大丈夫なはず!)

 

 綺羅々は何か不安を感じながらも、先ほどと同じように弾幕を形成して彼を迎え撃つことにした。

 そして放たれる無数の弾幕。

 王牙は当然これを避けようと……。

 

「っ!? 避けない!?」

「避けれねえんだったら、正面突破するしかねえだろうが! 『王牙爆裂拳』!!」

 

 彼は速度を維持したまま、なんと弾幕の壁の中に自ら突っ込んでいったのだ。そして残像が見えるほど激しく両手の拳を繰り出した。

 それは速度だけを重視した、力をこめていないジャブのような連打だった。だが人外的な怪力の持ち主である彼が放てばそれでも十分な威力となりうる。

 数百の弾幕が標的に当たる前に次々と打ち砕かれていき、消滅していく。もちろん全てを防げているわけではないが、防御力が3倍になっている今なら一発や二発の被弾ぐらい大した問題ではなかった。

 弾幕の壁を押し切りながらどんどん接近してくる王牙に今度こそ綺羅々は焦り、護符をばら撒いた。

 

「護法順式――『亀甲壁』!」

 

 綺羅々の目の前に六角形の結界が連結してできた盾のような結界が張られる。始式の『円月』の強化版とも言えるこの術は、たいていの攻撃なら防ぐことができよう。

 

「それで俺が止められるかよぉ!」

「きゃあっ!」

 

 しかし今回ばかりはそれは悪手だった。

 突進とともに乱雑に繰り出された拳の嵐によって、結界はあっけなく砕け散ってしまった。綺羅々はその時の衝撃で吹き飛ばされてしまう。

 もちろんその隙を逃す王牙ではない。霊力を噴出して接近し、追い打ちをかけようと拳を振りかぶった。

 

「ご、護法始式――『瞬盲』!」

 

 だがそれが当たる直前、彼女は必死に目をギュッとつむると、手のひらを突き出した。

 そして次の瞬間、視界が真っ白になるほどのまばゆい光がそこから発生した。

 

「がぁぁぁっ!? 目がぁぁぁっ!!」

 

 たまらず王牙は両目を押さえてたたらを踏んだ。目に焼きついた光はまだ残っており、彼は十数秒の間その場でふらつくこととなる。その間に綺羅々はなんとか安全な距離まで逃げることに成功する。

 

「ふえぇ……。こ、怖かった……。あれ絶対避けてなかったら気絶まっしぐらだったよ。というか拳が出しちゃいけない音出てなかった? 巫女姫様、助けてぇ……!」

「……その巫女姫様が俺とお前を戦わせたんだけどな……」

 

 両手を合わせて遠くにいる夜美に祈る綺羅々に王牙はなんとも言えない顔になる。だがすぐに気を持ち直して拳を構えた。

 言動と態度がいかにも弱そうだから勘違いしてしまうかもしれないが、綺羅々ははっきり言って格上の相手である。ぶっちゃけ言うと前の銀座の怪人よりもずっと強い。おまけに夜美の助けを期待できない今、状況はこちらが圧倒的に不利である。

 だから祈っている最中に悪いがと付け加えて、彼は急な突撃をしかけた。

 

「っ! ハァッ!」

 

 先ほどと同じように弾幕の壁が張られる。

 そして『王牙爆裂拳』がそれら全てを蹴散らし、王牙はグングンと彼女に迫っていく。

 このままだったらようやく一発当てられる。そう確信した時だった。

 ポツリと、雫のように小さな彼女の言葉が聞こえてきた。

 

「――『箒星』」

「っ!? がぁぁああああ!?」

 

 瞬間、腕が跳ね除けられたかと思うと、王牙の体を極太のレーザーが呑み込んだ。そして彼は体を焼かれながら数十メートル吹き飛ぶ。

 

「な、なんだ今のは……!?」

 

 そのレーザーは今までのものとは全てが違っていた。大きさはもちろん、威力も速度も。流れ星が見えたと思った瞬間にはすでに当たっていた。

 突然のダメージに動揺し、ひとまず観察していると、綺羅々が玉昴を天に掲げる。すると霊力が集中していき、徐々に巨大な霊力の塊ができあがっていく。

 

「『箒星』」

「っ! 今度こそ! ――がァァッ!?」

 

 玉昴が振り下ろされるのに合わせて王牙は霊力を横に噴射し、避けようとした。しかしダメだった。体が真横に飛行した途端、箒星がぐにゃりと軌道を変えてカーブしてきたのだ。ものすごい誘導性であった。

 当然避け切れるはずもなく、彼は再び光の線の中に呑み込まれ、体中を焼かれてしまった。そのまま勢いに流されて何度も回転しながら空中を舞う。

 

「づっ……ダメだ。空中飛行じゃ間に合わねえ!」

 

 先ほど空中飛行は小回りが効かないと言ったが、それが今回足を引っ張っているのだ。あれほどの速度と追尾性を両立させる攻撃を避けるには、とにかく細かく動き回るほかない。直線に動けば動くほどあれは当たる確率が高くなる。しかし空中飛行は霊力を噴射して飛んでいる仕組みゆえに、急な方向転換に弱いのだ。

 ……だったら。

 

「っ……!」

 

 次の一手を考え、行動に移そうとする前に綺羅々が動いた。その手に握ったお祓い棒を一閃。すると数多の弾幕が生まれ、複雑な軌道を描きながら飛んでいく。

 

「――『星籠』」

「今度は弾幕の檻か!」

 

 その名の通りに、王牙の周囲を無数の弾幕が巡りに巡り、檻を形成した。吹き飛んでいる最中だった彼は完成前に逃げることができず、その中に囚われの身となってしまう。

 

「そ、その……ちょっと卑怯ですけど、許してください。私も負けたくないので……」

「その程度で卑怯もクソもあるかよ。で、次はどんな手品を見せてくれるんだ?」

「こ、こうします!」

 

 再度彼女が玉昴を振るうと、今度は人間より大きいサイズの弾幕がいくつか生成された。それが身動きの取れない王牙に向かって放たれる。

 速度はない。しかしあの大きさ、間違いなく何かある。そう思い、王牙は両腕を交差させると、一気に解き放ち、衝撃波を撒き散らした。

 

「『王牙爆光破』!」

「かかった!」

「なに……!? これは……!」

 

 衝撃が大弾幕に触れた途端、それは消え去ることなく膨張し始めた。そこで彼は気づく。この弾幕の性質に。

 

「これ爆弾か、クソが!」

 

 再び衝撃波を放とうとするも、間に合わない。

 次の瞬間、夜空で大爆発が巻き起こった。だがそれだけでは終わらない。煙がまだ晴れていないにも関わらず、続いて檻を形成していた周囲の弾幕が中央に向かって殺到した。

 二連鎖の集中砲火攻撃。それは数秒続き、それだけで王牙の体をズタボロにした。だがそれに晒されながらも必死に霊力を溜めて、『王牙爆光破』を再度放つ。それによって周囲の弾幕は今度こそ消し飛ばされた。

 

「ハァッ……ハァッ……!」

 

 だがその被害も尋常ではなかった。

 両腕に霊力が集中するまでのたった数秒。しかしあれほどの爆発の後に数百もの弾幕を受ければ、たとえ数秒でも絶大なダメージとなる。

 王牙の上半身の服はすでに焼け消えており、後には鍛え抜かれた傷だらけの体が残る。それは見る人が見ればとても痛々しいものに見えただろう。

 しかし綺羅々は違った。

 

「……へ? お、おおお、男の人の裸!? ひ、ひぃぃ!!」

 

 彼女は顔を赤く染め上げると、思わず両手で顔を覆って目を背けてしまった。戦いの最中であるにも関わらずだ。

 

「今だ!」

 

 この瞬間しかない!

 耐えに耐えた先に現れた千載一遇のチャンス。それを掴むために、王牙は雄叫びをあげて彼女へと突っ込んだ。

 ワンテンポ遅れて彼女はハッと正気に戻ると、玉昴を振るう。そしてまたもや無数の弾幕の壁を形成する。

 それを見た王牙は右へ方向転換し、弾幕を避けて彼女の元へ辿り着こうとする。しかし相変わらず小回りが効かない。どれだけ気をつけても弾幕に追いつかれない程度の速度で移動すると、遠心力に振り回されて大きな円を描くように曲がるしかなくなるのだ。その背後を弾幕が追いかけていく。

 

「これで決めます!」

 

 綺羅々は状況を冷静に分析して、『玉昴』を掲げた。そして『箒星』の発射準備に入る。

 右回りで王牙が近づこうとしているのなら、左から箒星を放てば追尾弾との挟み撃ちにできる。それが彼女の考えだった。

 

「『箒星』!」

 

 かくして極太のレーザーが完成し、お祓い棒の一振りとともに射出される。それはぐにゃりと軌道を曲げ、左回りに突き進んでいく。

 しかし、その時だった。王牙は箒星を視認した途端、鋭い笑みを浮かべた。

 ――そして足を振り抜き、空気を蹴って即座に方向転換した。

 

「……へっ?」

 

 空中飛行から空中歩行への切り替え。

 単純な大回りから、王牙は透明な足場を蹴って上下左右にジグザグと小刻みに動き回る。そのランダム性の高く素早いターンにさしもの箒星も完璧に追尾することができず、その速度が仇となって空回りしていた。

 

「い、いつの間に空中歩行まで……!」

「最初からだよ!」

 

 そう、王牙は戦いの最中で思い出したのだ。今日よりもずっと前に空中歩行に成功していたことを。

 それはあのジェネシスとの戦いでのことだった。氷漬けとなった彼にトドメを刺そうと飛び出した時に、王牙は予想外のカウンターを繰り出され、危うく死にかけた。

 その時、空中にいたにも関わらず大気中の霊素を蹴ることによって無理やり方向転換し、攻撃を避けてみせたのだ。

 考えればあの時のあの回避が空中歩行だったのだろう。

 だったらその感覚を思い出せば、できないはずがない。

 

「は、早っ! ちょ、ちょっと待ってください! 生成する弾幕の調整が間に合わな……!」

「残念、これは勝負なんでね」

 

 これがあの一見隙のなさそうな玉昴の能力の欠点なのだろう。

 すなわち、やれることが多すぎて所有者に大きな負担を強いている。

 玉昴は綺羅々曰く弾幕の威力、速度、軌道、形状、そして性質すらも自在に変えることができる。しかしそれら全ての項目を弾幕を生み出すたびに設定するのは非常に困難だろう。ぶっちゃけ王牙には無理だ。脳の負担が大きすぎる。それをあそこまで難なく使いこなせていることからも、彼女が超人的な演算能力を持っていることは明白だった。

 しかしここで彼女にも欠点がある。

 彼女はあれだ、テンパりやすいのである。

 予想外の出来事が起こるとすぐに思考がフリーズしてしまい、玉昴をうまく操れなくなる。

 その結果がご覧の通りである。

 彼女は王牙が迫ってきているのにあたふたと弾幕を生成しようとしては、失敗して勝手に自爆していた。

 

「きゃあっ!?」

 

 相手が怯んでいる隙に王牙はズボンのポケットからある物を取り出す。それは数枚の護符だった。それを投げ捨てるように消費した後、移動しながら丁寧に詠唱を口ずさんでいく。

 

「“その指先に命の息吹を”! 火行始式――『赤炎弾』!」

 

 完全詠唱によって王牙の手のひらに炎が発生。その火はどんどん大きくなっていき――暴発した。

 当然の結果である。いくら制御しやすい始式と言えど、それで術を撃てたら夜美は絶望的にセンスがないなんて言わない。王牙と術式はそれほど相性が悪いのだ。

 

「ぶごはっ!? ……だがこれで……!」

 

 たしかに炎は暴発した。しかしその爆発によって黒煙が発生。ふんだんに霊力を注ぎ込んだせいでその量は多く、王牙と綺羅々の視界を覆い尽くしていく。

 

「ケホッ、ケホッ……! はわわ……な、なんなんですかこれ!?」

 

 次々と予想外の出来事が起こって綺羅々の頭の中はもはや真っ白になっていた。パニクりすぎていて陰陽術の風で煙を吹き飛ばすという発想すら消えていた。そうやって焦っていると、背後から王牙がヌッと現れてくる。そして一瞬のうちに彼女を羽交締めにして拘束した。

 

「ひっ……!」

「さーて。ここまでガッチリ固めりゃそのお祓い棒も振れないだろ」

「い、いや……!」

「うぉっ!? 意外と力強いな……」

 

 だが、それでも3倍強化した王牙の怪力には及ばない。暴れる綺羅々を押さえつけようとさらに力をこめると、ミシミシという音が彼女の細く柔らかい体から聞こえてきた。その痛みによってか、彼女はやがて抵抗することをやめた。その目にはうっすらと涙が浮かんでいる。

 ……なんか悪いことをしているみたいだ。

 

「俺は男だろうが女だろうが容赦なく殴るが、ああも親切にされるとやりづらくてな。お返しと言っちゃあれだが、ちょっと痛くない方法で気を失ってもらうとするぜ」

「へ? 何を言って……」

 

 言うが否や王牙は彼女を拘束したまま、空中で逆さになった。すると当然それにつられて彼女も逆さになる。

 戦闘が膠着状態になったからか、夜風を今さらながら痛いと感じた。それもそのはず、ここは地上から数百メートルも離れている。風が強くて当然だ。そんな高さから見下ろした夜の町はどこか怖々しい雰囲気があった。

 

「なあ。タイガースープレックスって知ってるか?」

「その……まさか……」

「答えは番組の後で」

 

 王牙はにっこりと彼女に笑いかけると――突如急加速して地面に向かって急降下した。

 

「いやぁあああああ!!」

「『王牙原爆投げ』ってな!」

 

 風圧の壁を突き破り、下に向かって加速に加速を続ける。地球の重力も相まってその速度はものすごいものだった。あまりの恐怖に綺羅々の涙がちょちょぎれていた。

 そしてそのまま王牙は腕に力を込めて、目前に迫るコンクリートの地面に彼女を叩きつけ――る前に、ピタリと停止した。鼻先の数センチ先を地面がかすめる。

 

「……ま、こんなもんだろ。どうだ? スリル満点で楽しかっただろ?」

「……きゅう」

「……やりすぎたかも」

 

 綺羅々は完全に目を回して気絶していた。手に握られていたはずの『玉昴』が消えたことから、これは演技ではないのだろう。

 霊器は所有者が意識をなくすと消えて、体の中へと戻っていく。そして霊器はいつどこでも一瞬で取り出せるので、霊器を奪うには契約者を殺して契約を途切れさせるより他ないらしい。もっとも彼女に対してそんなことをするつもりはないが。

 王牙は大きくため息をついて脱力する。そして桃紫色のオーラを霧散させ、能力を停止させた。途端にアドレナリンで麻痺していた痛みが体中に走る。

 

「っ……! だが、動けねえほどじゃねえ……! 修行の成果がようやく出てきたな……」

 

 王牙は拳を握っては放すを繰り返し、自身の体の調子を確かめる。

 

「デメリットなしで三倍を使えるのは5分。それ以上やると今みてぇに体に骨を締め付けるような痛みが入りやがる。たぶん……10分で行動不能ってとこだな……」

 

 それでも王牙には不満はなかった。むしろその顔にはギラついた笑みが浮かんでいた。

 ――成長している。それを実感するのがこれほど楽しいとは。癖になりそうだ。

 

「……っと、この子のこともどうにかしなきゃな」

 

 王牙は手のひらをゆらゆらと彼女の顔の上にかざした。しかし目を開く様子はない。完全に気絶してしまっているようだ。

 

「ちっ。しょうがねえな……」

 

 動く気配が微塵も感じられなかったので、王牙は仕方なく彼女をお姫様抱っこで持ち上げると、夜美たちの下へ歩き出した。

 そういえば彼女たちの戦いはどうなっているのだろうか。居候の少女の心配が浮かび上がったその時、夜空に大きな花火が一つ浮かんだ。

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