【本編完結】とある転生者の役割交代   作:kotedan50

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虎杖復活直後から、反魂人形(小説)まで

・伊地知ポジション成り代わり(伊地知の双子の妹)ものです
・オリキャラ出ます
・激しい捏造、妄想含みます
・ネタまみれです


転生者、サポートする

高専の地下。

扉の向こうからは、殴打音や、ドスンと鈍い音、床を滑るような摩擦音が断続的に響いてくる。

 

私はそっと扉の陰から中を覗いた。

案の定、虎杖が派手に転がっていた。

その向かいに立っているのは――全身から余裕を滲ませた五条悟。

 

おーやってるやってる。

楽しそうだね、二人とも。

 

扉を開けて部屋に入り、明るめの声で、訓練中の二人に呼びかける。

 

「お疲れ様です。昼ごはんをお持ちしました」

 

手に持ったビニール袋を一度掲げて見せ、中から唐揚げ弁当とハンバーグ弁当をテーブルの上に置いた。

 

「伊地知さん!あざっす!!」

 

「唐揚げ……いや、ハンバーグも捨てがたいな……」

 

どちらを選ぶかを巡って、五条と虎杖がジャンケンを始めた。

ほんと、ノリが小学生。

……でも、不思議とこういうところは相性がいいよね、この二人。

そりゃ五条さんも可愛がるはずだ。

 

盛り上がっている様子を横目に、私は鞄から微糖のアイスコーヒー缶を取り出し、プルタブを開ける。

 

「え、伊地知さん食べないんすか? お腹空かない?」

 

唐揚げ弁当を勝ち取ったらしい、虎杖がこちらを見て素直に聞いてきた。

 

「……ここには、五条さんしかいないことになってるんです。弁当3つは、持って来れなかったんですよ」

 

そう。

『ここ』には、『五条悟』しかいないことになっている。

虎杖悠仁は死んだ。表向きには、そうなっている。

だから、弁当を3つ持ってくるのは、不自然すぎた。

 

「なんかすみません……」

 

しゅんとする虎杖に、五条が行儀悪く箸を歯で割りながら軽く返す。

 

「悠仁が気にする必要はないよ。弁当2つってのは僕の指示でもあるし」

 

「そうそう。ここを出たら、しっかり食べますので。

ほら、温かいうちに早く食べてください」

 

私もフォローを入れると、虎杖は「はいっ!」と元気よく返事をした。

よかった。気を遣わせたら意味がない。

 

「……じゃあ、いただきます!」

 

パカッと蓋が開く音と、嬉しそうな声。

その声に、胸の奥がじんわりと温かくなる。

 

虎杖は、今日も生きている。

それが、どれだけ奇跡みたいなことか、本人はきっとわかっていない。

 

缶コーヒーを一口啜りながら、今日の昼食は抜きでいいかと考える。

夜に完全栄養食のドリンクでも飲めばいい。

 

虎杖が死んだあの日から、胃腸はやられっぱなしだ。

原作の伊地知さん(兄さん)も、小説で「虎杖に対して過保護になった」と書かれていたけど......わかる。

一度でもあれを見たら、トラウマにならないわけがない。

 

……まさか自分が、胃腸に出るタイプだとは思わなかったけど。

 

胃腸炎の一番の治療は絶食だ。数日抜いたくらいで死にはしない。

その後、ドリンクタイプの完全食と水で栄養を取ればいい。

 

ふと気づくと、五条がすぐ隣に腰を下ろしていた。

ハンバーグ弁当を食べながら、前を向いたまま、ぼそっと言う。

 

「……夜は、きちんと食べなよ」

 

虎杖には聞こえないくらいの、小さな声。

 

ああ、やっぱりバレてたか、と内心で苦笑した。

無関心なふりして、絶対に見てる。

だから嫌なんだよ、勘がいい奴は。

 

聞こえないふりをして、そのまま返事をしなかった。

 

 


 

 

二人が食べ終えた弁当の容器と割り箸をまとめ、ビニール袋に詰める。

 

「ごちそうさまでした!めっちゃ美味しかったっす!」

「いやー、ハンバーグも大勝利だったね」

 

満足げな虎杖の声と、得意げな五条の声。

どちらも、ちゃんとお腹を満たした顔をしていてよかった。

あの弁当屋の弁当美味しいんだよね。

虎杖が私を見上げ、

 

「伊地知さんは、これから補助監督の仕事?」

「今日は一日中調べ物の予定ですよ。それが結構時間がかかりそうなので」

「へー伊地知さんって比較的なんでもできるんっすね」

「そんなことないですよ...また夜に差し入れに来ますね」

 

そう言って、そっと部屋を出ようとした時に、五条とアイマスク越しに視線が合い、軽く目で合図をされた気がした。たぶん。

 

「じゃ、食後の休憩ね。すぐに動くと消化に悪いからね」

 

その声を聞きながら、扉を閉めて階段を上がり、建物の外に出る。

そして、高専の敷地内の端。影になった喫煙所の外ベンチに腰を下ろし、ノートPCを開く。

5分もすると五条がやってきて、ベンチの隣にだらっとした態度で私の隣に座り、足を投げ出した。

 

「何調べてんの?」

「呪詛師の運営していると思われるWebサイトに関してちょっと……」

 

任務内容を話しても特に問題はないため、素直に答える。

 

……やっぱり、検索エンジンからヒットしないように独立したサーバー内に立ててるっぽい。

うあーめんどくさい。私は、別にそんなにこういうの得意じゃないんだよなぁ。

調べようと思えば調べられそうだけど。

 

「オマエってさ、妙にそういうの手慣れてるよね」

「業務で必要だったので、自然と覚えました」

 

前世の知識で未来のネット構造に若干アドバンテージがある、なんて説明できるわけがない。

ので、当たり障りなく誤魔化しておく。

 

しばらくPCを叩いていると、五条が唐突に切り込んできた。

 

「潔乃が今調べてるのって、七海の任務のやつでしょ? 僕も行きたいから調整してくれる?」

 

……なんで知ってんだよ。

 

正直、七海と五条は『相性が悪い』というか、水と油というか、キャラの方向性が違いすぎる。

七海は五条を信頼も信用もしている。だが尊敬はしていない。

そして五条も、そういう七海の目をちゃんと理解してるくせに、ちょっかいを出していじり倒す。

 

私は、カタカタとノートPCのキーボードを叩きながら、目も合わせずに淡々と答える。

 

「今回の任務は、五条特級術師が出向くような内容ではないと思いますが…」

 

ごもっともな理由で却下する。自分の仕事しろ仕事。

けれど、

 

次の瞬間、ガシッと肩を掴まれた。

 

「痛っだっだ!ちょ、なにっ!!」

 

痛みで思わず素の口調に戻ってしまう。

そして、視界いっぱいに五条の顔。

至近距離。いや近すぎる。

見えないけど、まつ毛の本数すら数えられそう。ついでに息がかかるのも地味にしんどい。

 

しかも、その顔は、いつものおふざけモードじゃない。

笑っているのに、目がまったく笑っていないやつ。

アイマスクで見えてないけど大体わかる。

 

「特級の僕が行く必要があるって言ってるの。分かる? ……いいから、調整して」

 

前半は明らかに圧。呪力すら込めた威圧。

後半、声のボリュームが突然下がる。

周囲に聞かれないように、唇だけがかすかに動いた。音はほとんど出ていない。

 

……あー、なるほど。

本気で調整してほしいやつだ、これ。

 

「い、痛いですって五条さん!! わかりましたから!! 肩、ほんとに痛いんですよ!!」

「潔乃、ありがと!」

 

悲鳴を上げながら、無理やり了承した『ふり』をする。

すると、マスク越しでもはっきりわかるほどのニコニコ顔で、

五条は満足げに「よくできました」とでも言いたげに笑いながら、私の肩を解放した。

 

……痛ぇ。このクズがやりすぎだっつーの

 

そして、そのままスッと私から一歩引き、

今度は『暴君のふり』をして、余裕たっぷりの態度で離れていく。

 

これは、上層部対策の一環だ。

 

先日、英集少年院の件で、過去に私個人に直接圧力がかけられた。

その件について後から五条が調べたところ、実際のところそこまで大事にする必要はなかったようで......

1年派遣を渋っていた私や周辺に対する、『ちょっとした見せしめ』程度の圧だったらしい。

 

つまり今回は、そうした前例を踏まえ、上層部に再度目をつけられないようにするため、

『また五条の暴君ムーブに巻き込まれている、哀れな補助監督』というイメージを強める目的で、

あえてこの、外からもよく見える場所で一芝居打っている。

 

……が

 

……いや、これ、あんまり普段と変わらなくない?

 

そんな疑念が湧いてしまうあたり、

きっともう、私の感覚は色々と麻痺してきてるんだろうな、と思う。

 

「……お願いの仕方ってもんがあるでしょう……」

「ごめんごめん。でも、すぐにいうこと聞かないオマエが悪いの」

 

五条がケロッと笑う。

私は小さく息をついて、再びキーボードに指を走らせた。

 

「……七海さんが本気で怒っても、私は責任持てませんからね」

「それはこっちでなんとかするよ」

 

さらりと返されて、イラっとする。

絶対七海が怒って私にクレームを入れてくる未来が想像できた。

くっそ、七海に怒られろバーカ。

 

 


 

 

「あのですね。私の部屋に来てたら、一芝居打った意味ないと思うんですけど」

 

夜になり、虎杖に弁当を差し入れた後、仕事部屋に帰ってきたら、ソファの上でゴロンと横になった五条がいて、思わず脱力した。

勝手知ったるなんとやら、ひっそり仕舞い込んでいたザラメ煎餅をつまみ、

さらにほうじ茶ラテまで勝手に淹れて飲んでいる。

 

……そのザラメ煎餅、お取り寄せなんだけど!?

しかも、なんで今日仕事部屋に帰ってくるって知ってるんだよ。

こういう時の五条の思考回路、読まれてる気がして本当に腹が立つ。

 

「見られてないし、監視もないの確認してから来てるから大丈夫。

ここ数日、話したいことあったんだけど、なかなか来れなくてね」

 

それを聞いて、ひとつため息をつく。

 

つまりこれは――

“外では絶対に話したくない。安全で安心な、クローズドな空間で話したい”ってことか。

……選択肢、寮の部屋か仕事部屋か、趣味部屋の三択じゃん。

 

私はカバンをテーブルの上に置き、

スーツのジャケットを脱ぎ、ネクタイを外して、

五条が転がっているのとは反対側のソファに静かに腰を下ろした。

 

「悪い話と、もっと悪い話。どっちからがいい?」

「どっちも同じじゃないですか」

 

ようやく五条が体を起こし、こちらを向く。

アイマスク越しの表情が――

いつものふざけた調子から、静かに真面目なものへと切り替わっていた。

 

「じゃ、悪い話からね。

悠仁がさ、どうやら死んだ時に、宿儺となんらかの縛りを結んだっぽい」

 

いきなりぶっ込んできたな。

確か原作であった私が頭を抱えている『契闊』のことじゃないか。

 

「それって、まずいんじゃ…」

「まぁ、碌でもないことだろうね。

でも、宿儺が話してくれるわけないし、現状やれることはないね」

 

個包装されたザラメ煎餅を手にとり、袋の中でバキバキ割る五条。

 

「んで、もっと悪い話なんだけど、

数日前に学長との会食に行く道中、特級呪霊に襲われたじゃん?」

「車から降りて、私を逃がしてくれた時ですよね?あの時はありがとうございました」

 

漏瑚との戦闘だと、それくらいは気づいてたので、今更ながら素直に礼をいうと、

五条は一瞬目を細めたが、そのまま会話を続ける。

 

「その時で当ってるよ。あの時は僕の予定が漏れていた。

ピンポイントであの位置で待ち伏せにあったからね」

「......つまり」

「そ、高専に呪詛師か呪霊に通じてる奴がいる」

 

原作知識で知ってはいたけど、改めて聞くとうんざりする。

与幸吉と上層部が真っ黒だったんだっけ。

 

「潔乃には、東京高専所属の術師、職員や補助監督周りを調べてもらいたい」

「承知しました」

 

即了承する。これはわかってても断る理由はないな。

五条の後ろ盾で色々調べ放題だし、原作との齟齬がないかも調べられる。

この話は原作の伊地知さん(兄さん)も知ってこき使われたんだろうな。

 

重要な話は終わったらしい、先ほど割ったザラメ煎餅の袋を開け、煎餅を口に放り込む五条。

テレビのリモコンを手にとり、くつろぎ出してる

 

私は仕事用のデスクに座り、私物のデスクトップを起動させる。

高専支給のPCだとちょっとスペックが弱い。

五条?勝手に入ってきた不法侵入者を構うほど暇じゃない。帰るなり、風呂に入って泊まっていくなり勝手にするだろ。

私は仕掛かり中の調べ物が終わらないと気持ち悪い。

確かこれ、小説版の話で覚えあるんだよな。〝黄泉比良坂(よもつひらさか)"、というサイトの呪詛師のwebページの話。

確かこれを見つけ出したのが、原作の伊地知さん(兄さん)だったはず。

つまり私が見つけ出さないと、この話激しく原作ズレする!

 

五条を無視して匿名化通信されているブラウザを起動。

ネットワークを繋ぎ、幾つかのHidden Service内にあるスキャンリストを遡って検索を始める。

2時間後にやっと1つのHPにたどり着いた。

表向きは昔懐かしのシンプルなカウンターと画像のみ。うーん、隠しデータかな?

画像をダウンロードして、専用の解析にかける。

……数秒の沈黙のあと、生成されたのは1つの .txt ファイル。

その.txt ファイル内には、裏へのURLが記載されていた。

 

「よっしゃ!!!」

 

思わずガッツポーズをする。

 

「......なぁ、お前ハッカーか何か?」

「ひぇ!!!」

 

五条が私の隣にぬるっと座っていて、PCの画面を覗き込んでいた。

 

まだいたのか。というか、いつのから側にいて画面見てた?

集中しすぎて五条の存在を忘れてた。

いつの間にかシャワー浴びてるし?アイマスクも外されてる。

勝手に置いていった私服のジャージに着替えて、すっかりくつろぎモードになっている。

 

「これアクセスしないの?」

「タイムリミットや1アクセス制限かなどあったりすると面倒なので、明日七海さんと一緒に確認します」

「やっぱお前ハッカーだろ」

「ただの素人です」

 

ちょっと調べれば分かる技術でそういう評価を受けるのはたまらない。

さっさとPCをシャットダウンする。

時計を見ると1時を回ってた。流石に疲れが出てきたうーんと伸びをする。

 

「私も軽く夜食を食べたらシャワーを浴びて寝ますので、五条さんは好き勝手にしてください」

 

冷蔵庫を開け、完全食のドリンクを取り出す。

パッケージのデザインはやたらとスタイリッシュだけど、味の方は――うん、まぁ、あれだ。慣れれば……たぶん。

 

それをマグカップに注いで、一息で飲み干す。

のどごしは妙に粉っぽくて、舌に残る甘味が妙に機械的だった。

 

あんまり美味しくないんだよなぁ

 

と思いながら、コップを軽くすすいでからシンクに置いた、そのとき。

 

「は?」

 

いきなり後ろから声が飛んできた。

振り返ると、五条が信じられないという顔でこちらを見ている。

 

「お前、まさか夜食ってそれ?」

「はい。完全食です」

「……僕、昼間なんて言ったっけ?」

「“夜はちゃんと食べろ”と、言われました。

栄養素的には問題ないです。必要な分は全て入ってます」

 

親指を立てていうと、露骨に嫌な顔をされた。

 

「そんなん食ってるから、胃腸の調子悪いんだよ」

 

胃腸の調子悪い気づかれてると思ってたけど、そこはちょっと放置してて欲しかった

 

「調子が悪いから、これで済ませてるんですよ。せめて栄養だけでも」

「明日、中華粥の店行くぞ。それなら食えんだろ」

「いや、そんな時間ないんですが……」

 

それでも強引に行こうとしてくる五条に、少しだけ苦笑いしながら言い返す。

 

そのタイミングで、五条の仕事用スマホが鳴った。

ワンコールで即出る。話の内容的に、どうやら急遽の任務らしい。

 

この時間からお疲れ様です、と内心で思いながら見ていると、

五条は電話を肩に挟んだまま脱衣所入っていった。

通話中に着替えるんかい。

呆れつつも、着替えた彼が玄関に向かうのを、私は手をヒラヒラ振って見送った。

 

……やっと静かになった。

五条がいると黙ってても存在がうるさい。

私はシャワーを浴びて、パジャマに着替えて、ふかふかの布団に潜り込んで目を閉じた。

その翌朝、目を覚ました瞬間。

 

視界いっぱいに、五条の顔。

 

「……ッッッ!!!???」

 

悲鳴を上げたのは、ほぼ反射だった。

マジでホラー。なんで。ていうか、なんでいるの!?

 

跳ね起きて、布団を蹴飛ばす勢いで距離を取る。

 

「何してんですか!? 自分の寮の部屋に戻れよ!!」

 

寝起きでそう叫んで、五条を蹴り飛ばした私は許されるはずだ。

 


 

五条を蹴り飛ばしたあと、私は早々に高専へと移動した。

 

到着後すぐ、七海と連絡を取り、例の呪詛師のWebサイトを一緒に確認する。

表示されたのは、簡易な入力フォーム。

そこに噂になっていた依頼内容を打ち込み、送信すると返ってきたのは、現金書留の宛先だった。

場所は北海道。

 

ありがたいことに、ここにはワンタイムトリガーやアクセス制限の類はなく、

その後の調査はすべて七海に引き継ぐことができた。

 

これで、ようやく内通者の件に本腰を入れられる……

 

そう思ったのも束の間。

すぐに、五条から連絡が入る。

 

内容はこうだった。

 

「七海の任務に同行するため、北海道に出張に行く。

だから、その間、虎杖を君の家に泊めてほしい」

 

……まぁ、確かに。

地下に虎杖をひとり置いておくのは、あまりにも危険だ。

万が一があれば、すべてが終わる。

 

その判断には納得せざるを得なかった。

 

私は深夜、職員すらほとんどいない時間帯に高専へと向かい、カートで大荷物を運ぶフリをしながら、虎杖を連れ出した。

 

 

「しばらくこの部屋で過ごしてください。

私も日中帯はここで過ごし、睡眠だけは別の仕事部屋か、寮の部屋で寝起きします。

夜はこのスマホを置いておくので、食事はデリバリーで適当に頼んでください」

 

そう言ってスマホをテーブルに置くと、虎杖は、すぐに「ありがとうございます」と頭を下げた。

 

原作では仕事部屋に連れ込んで、虎杖が退屈そうにしていたと記憶している。

だから、今回は趣味部屋の方に案内することにした。

原作ブレイクにはなるけど、これくらいは……いいだろう。

 

案の定、虎杖は大喜びだった。

 

「えっ! この漫画知ってる! ゲームも! ていうか伊地知さん、意外とオタクだったんだな!」

 

「……ハハハ…」

 

あまりにもストレートすぎて笑ってしまう。

若い子の勢いっていいね。

 

「そういや、着替えってあります?」

「私の服が、男性用の170センチ程度なので……入りますかね?」

 

私は168センチ。女性にしては長身なので、大きめのジャージを常備している。

 

「たぶん、だいじょうぶっす!」

 

「では、まだ着ていないストックがあるので、それを使ってください。

洗面所の棚にあります」

 

そう言いながら、洗面所まで案内し、棚の位置を指差す。

 

「シャワーを浴びてください。今日まだ入っていないでしょう?

必要なものはすべて揃っています。歯ブラシは新品があるので、パッケージを開けて使ってくださいね」

 

「了解っす!」

 

虎杖が元気よく返事をするのを見届けてから、私は小さく息をついて、その場を離れた。

洗面所を後にしする。

 

彼が着替えてシャワーを済ませる間、私は自分の部屋の片付け、明日の予定の確認を兼ねて仕事用のタブレットを手に取る。

 

滞在は一時的とはいえ、受け入れる側として準備すべきことはまだまだ多い。

加えて、五条の依頼を含めたその他仕事も、こまめに片付けておかないと積もる一方だ。

私はソファに腰を下ろし、仕事を再開する。

 


 

──数分後。

 

「……あれ?」

 

虎杖が、ふと気がつく。

 

洗面台に置かれた歯ブラシは二本。

その隣には、髭剃りとシェービング剤。

男性用の制汗スプレーに、さりげなく置かれたオーデコロン。

 

浴室の棚には、明らかに男性用のシャンプーとボディソープが、それぞれ二種類ずつ並んでいた。

 

「やば……伊地知さん彼氏いるのに、俺、ここ乗り込んでんの……?」

 

こういうことに疎い虎杖でも、さすがに察する。

全身に変な汗をかきながら、そそくさと洗面所を抜けて、言われていた着替えの棚を開けた。

 

取り出したジャージを羽織ると、

 

……でかい。

 

袖も裾も、明らかにオーバーサイズ。ダボッと全身を包む。

あ、これ伊地知さんのじゃない。伊地知さんの彼氏のだ。

……伊地知さん、けっこう大きい人と付き合ってんだな……

 

そう思った瞬間、生々しい想像をしてしまって頭を抱える。

 

やっば……めちゃくちゃ迷惑かけてるかも

 

着替えた格好のまま、気まずさを抱えてリビングに戻ると、

伊地知はソファでタブレットを操作していた。

何かの資料を見ていたのだろう。ふと顔を上げて、ジャージ姿の虎杖を見て言った。

 

「ああ、それ、五条さんのです。間違えちゃいましたね」

「……え? 五条先生? ここに来るの?」

「月に2,3回くらいは来ますよ」

「じゃあ、洗面台のとか、お風呂のとか……」

「全部、五条さんのです」

「……っあ、あの、え? え? じゃあ、五条先生と伊地知さんって……」

「付き合ってません。そういう関係では一切ありません。

勝手に人の家を“便利な別宅”扱いしてくるんですよ」

 

即答。しかも、きっぱりと否定された。

表情は……確かに、ものすごく嫌そうだった。

虎杖には、だいたいの状況が察せられた。

そして、ドン引きした。

 

五条がわがまま放題で伊地知に絡み、

ときに無茶振りしている場面は、これまでにも何度か見ている。

 

学生たちには優しい五条だけれど、

伊地知に対してだけは、時折、というか、わりとしょっちゅう、当たりが強い。

 

「私の職員寮の部屋は、もっと入り浸ってますからね。学生時代から、ずっと」

 

伊地知が、どこか遠くを見るような目でぼやいた。

 

虎杖は、噂で聞いたことを思い出す。

五条と伊地知は、高専時代からの先輩後輩で、すでに『完全な主従関係』が出来上がっている、と。

 

でも……これはさすがに、ちょっと伊地知さんが気の毒じゃないか? と思う。

 

付き合ってもいない男に、ここまで日常を侵食されて。

プライベートとか、どこにあるんだろう……?

 

そう考えると、何故かなんとなく申し訳ない気持ちになり、虎杖はそれ以上何も言わずに、遠慮がちにソファへ腰を下ろした。

 

「いちおう内緒にしてくださいね。

みんな知ってるようで、ここまで入り浸ってるとは思ってないでしょうし。

これ以上、噂が立つと、ほんとに面倒なので」

 

そう言った伊地知の表情は、まさしく“諦観”という言葉そのものだった。

 

虎杖は、静かに。もう一度、ドン引きした。

 

 


 

主人公

 

虎杖の件で、体調崩し気味。

小説版の伊地知(兄さん)は、虎杖死亡の後、それがトラウマになって

虎杖に過保護になり7月から、起首雷同編まで一切休みを取らずに働いていたという描写があったので

それよりはマシだろと主人公は思ってる。

 

技術力というより、目的の情報に至るまでの検索能力に優れてる。

今回も前世知識で多少のアドバンテージはあるので、なんとか情報に辿り着けた。

 

帰ったはずの五条が朝起きたら目の前にいて、本気でビビった。

ホラーはやめてくれと思ってる。もう生活空間に五条が家にいること自体は諦めてる。

 

 

五条悟

 

主人公ってハッカーなの?

一度任務に出た後、近かったので主人公の仕事部屋に戻って、

勝手にベットに入り込んで寝た。

朝一蹴り飛ばすのはないと思うよ。近かったからいいじゃん。

 

北海道で七海にうざ絡みして嫌がられる。

任務後のバーで、虎杖のことを七海に頼む。

 

 

七海建人

 

主人公から情報が漏れて、楽しい地方出張に五条が来ることになって、イラついている。

優秀だけど情報漏洩はいけません。後で叱ろうと思ってる。

任務後に五条と行ったバーで、五条から虎杖のことを頼まれる。

 

 

虎杖悠仁

 

女性の一人暮らしの部屋に行くので多少なりともドキドキしてたが、

部屋中に残る男の痕跡に気まずくなってたら、それが五条と聞いてバックに宇宙猫を背負った。

付き合っていないとも聞いて、さらに宇宙猫。

五条先生さ、もう少し人に気を遣ったほうがいいと思うよ…




主人公あれやこれや調べてるシーンは、雰囲気で流してください。

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