【本編完結】とある転生者の役割交代   作:kotedan50

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前半は某ゲームを虎杖とプレイする小話、後半は...
交流会直前まで。

・伊地知ポジション成り代わり(伊地知の双子の妹)ものです
・オリキャラ出ます
・激しい捏造、妄想含みます
・ネタまみれです




転生者、別の天才に目をつけられ、原作不在になる

私の趣味部屋に居候している虎杖は、予想以上に順応していた。

たくさんのゲームと漫画があるから、退屈しないのは当然かもしれない。

今日は朝から、私がお勧めしたアクションゲームをやっている。

死んではリトライを繰り返し、画面に向かってブツブツ文句を言っている。

 

「うわーまた死んだ!マジで難しすぎ!」

 

うんうん、いい悲鳴だ。

他人の悲鳴からしか摂取できない栄養素というのがある。

彼はソファの上であぐらをかきながらプレイしていたが、ついにコントローラーをクッションの上に放り投げた。

 

「伊地知さん、このゲーム難しすぎなんだけど!」

「慣れればそうでもないですよ」

「嘘だー!!!」

 

……はいはい。

 

ため息をつきながらPCをスリープモードにし、椅子から立ち上がって彼の隣に腰を下ろした。

 

「……見せてください、ステータス」

「これね、これこれ。なんか防御も攻撃も微妙で、すぐ死ぬんだよね……」

 

覗き込むと、力にも技にも中途半端に振られていて、完全な器用貧乏構成。

しかも体力は異様に低いという。このステはきつい。苦労して当然だ。

 

「このゲームは、特化させたほうが強いんですよ」

 

そう言って彼のデータをとりあえずセーブし、タイトル画面に。

表示された新規開始ボタンを押す。

 

「え、伊地知さんがやるの!?」

 

驚いたようにこちらを見る虎杖くんの声を背に、私は迷いなく“持たざるもの”を選んだ。

最弱の素性。装備はボロ布とクラブ、ステータスも全素性中で最低。

 

序盤は本当にきついけど、序盤を少しプレイして見せるだけなので、走り慣れたこの素性で問題ない。

 

「このゲームは、装備重量が軽ければ軽いほど、ローリング回避時の移動距離と無敵時間が長くなります」

 

ぽちぽちとキャラ作成を進めながら、淡々と説明する。

 

「えっ……? あ、そうなんだ?」

虎杖がこっちを覗き込む。完全に『初耳』って顔をしてる。

 

「はい。敵の火力も高いですし、防具を着けてワンパンされるか、全裸でワンパンされるかの違いしかありません」

「いや、『全裸』って……!」

「だったら無敵時間を最大にして、回避し続ければいいんです。当たらなければいいだけですし、最終的には素手でも勝てます」

「素手……???」

 

虎杖くんが本気で混乱しているのがわかる。

目をぱちぱちさせながら、「どこからツッコめばいいのかわからん」って表情をしてる。

 

「強武器を担いだ全裸が、最適解ですね」

「……全裸が最適解…」

 

ゲームの話をしてるのに、なんでこんなドン引きされてるんだろう?

 

「伊地知さん、自分が何言ってるかわかってる?」

「もちろんです。実際、虎杖くんが会った初心者狩りもそのスタイル多かったでしょう?

みんな行き着く先はそのスタイルになるんです。私もそのプレイスタイル慣れてますから」

「慣れてるって……え、初心者狩り?」

 

虎杖がなんか言ってるけど、私は構わずボタンを押す。

 

「まぁ、見ててください」

 


 

スタート地点。

名前は適当に打ち込み、オープニングムービーはスキップ。

即走る。

 

道中の雑魚敵は全無視。拾うアイテムも必要最低限。

何も言わず、ただ一直線に駆け抜ける。

 

「……え、えぇ? え、なんでそこ敵スルーできるの?」

「一定距離を離れれば追ってきません。ここらの敵は経験値も美味しくないので、スルーで」

 

途中、NPCが一人いたが、会話もせず即攻撃。

 

「え、その人このあとアイテムくれるよね!?」

「殺してもドロップしますし、会話が長いので殺します」

 

カットできるイベントは極力スルー、最短距離でボス部屋へダッシュ。

入り口の高台から落下攻撃を決め、体力の半分を削る。

 

「うおっ、落下攻撃そんな減るんだ!?」

「ここでモタモタしてるとボスの攻撃を喰らうので注意です」

 

淡々とアドバイスをしながら、私は続けた。

 

「攻撃パターンは決まってます。この敵は背中に回ると後ろには攻撃してきません」

 

後は、敵のお尻に回り込んで殴る。ジャンプの範囲攻撃は回避、もしくは盾受け。この素性だと盾受けはきついので全避けする。

またお尻に回って殴る。

 

「これであとは『作業』です。これを繰り返せば――」

 

VICTORY ACHIEVED

 

ボスが倒れ画面にその文字が表示されたのを確認し、私は静かにコントローラーを置いた。

隣で、口をポカンと開けたままの虎杖くんが呆然としている。

 

「えぇぇ……俺そこ、すごく苦労したのに……」

「慣れれば楽ですよ」

 

私はコントローラーを虎杖に渡し、業務再開のために再びノートPCのスリープを解除した。

 

 


 

 

「このゲーム、敵の攻撃が無理すぎる! 急に来るんだってば!」

 

虎杖が、またコントローラーを握りしめながら叫んでいる。

確かにこのボスは、初見殺しに近い。というか、私も嫌い。

狭いエリアに、何故か階段のある地形。カメラワークが悪くて見えにくいし、犬2匹と山羊頭の変態が襲ってくる。

地形を利用してカメラワークさえ利用して殺しにくるので、あれは本当にずるい。

それでも、負けるには、ちゃんと理由がある。

私は軽く息を吐いて再度立ち上がり、虎杖の側に戻り画面を指差す。

 

 

「ゲームなので、必ず敵の行動パターンには変化があります。

攻撃前には、必ずそれを知らせるモーションがあるんです。

見落とさなければ、ちゃんと“ヒント”は出ていますよ」

 

「……え、マジで? 俺、見えてないだけ?」

「そうです」

 

頷いて、画面に目を戻してから虎杖からコントローラーを奪い取る。

 

「呪術も同じですよ。戦っているときの周囲の環境、そして相手、呪霊でも術師でも、よく観察してください」

 

階段は走って登り、その上からわざと落下して巻き込むように八木頭と犬に複数体攻撃する。

虎杖の視線が、少し真剣さを帯びる。

 

「地理、地形、天候。そこに自分がどう位置しているか。

それを理解した上で、相手の視線、筋肉の動き、呪力の流れ……

特に、術式を発動する直前には、必ず呪力の“起こり”があります。

その一瞬を見逃さなければ、対処できることは多いです。

ヒントは、いくらでもあるんですよ」

 

「……すげぇ……」

 

虎杖が、黙って画面を見直し始める。

その表情が変わっていくのが、横目に見えた。

 

真面目に、集中して、『見る』モードに入ってる。

ああ、こういうときの彼は、本当に伸びるんだろうなと思う。

ゲーム伸ばしてどうするんだって、五条に怒られたらどうしよう?

 

あ、欲張って攻撃ミスった。

次の対応を一瞬迷ったら、山羊頭の攻撃を喰らって死んでしまった。

 

「『迷えば敗れる…』

今攻撃ミスって反応遅れてしまいました。

典型パターン踏んじゃいましたね」

 

私は小さく笑って、ごめんと言いつつ虎杖にコントローラーを戻した。

 

『迷えば、敗れる』

 

これは剣聖・葦名一心の名台詞だ。

いいセリフだと思う。本当それ。

SEKIROやりたいな。来年の3月発売だったはずだけど。

予定通り発売してくれるんだろうか。

 

「いざという時の判断だけは、即断即決するようにしてます。

才能がない私が生き残れてるので、結構正しい情報だと思いますよ?」

「伊地知さんって、こんなゲームやってるからか、意外と戦闘強者っぽい思考ですよね!」

 

雑魚で悪かったですね!!などど虎杖としょうもない会話で笑っていたそのとき

 

 

『ケケッ!小僧、オマエよりも、よっぽどこの女の方が呪術師らしいではないか!』

 

へ?

嘲笑を含んだ声にゾワっと鳥肌が立つ。

 

「あ、オマ!」

 

虎杖がバチンと頬を抑えると、今度は手の甲に口が浮かんだ。

 

「りょ、両面宿儺っ!」

 

...初めて見た。両面宿儺。

虎杖には申し訳ないが、本能的な恐怖で後ずさってしまう。

気づけば背中がソファの背にぶつかっていた。心臓がバクバクとうるさい。

唐突な事態に頭が回らない。

私と虎杖の会話を聞いていたのだろう。

 

『……女、何故闘わぬ?補助監督などという、腑抜けた役割に甘んじているのは何故だ?』

 

低く、地を這うような声音だった。

ビクリと自分の肩が無意識のうちに跳ねた。

 

「……っ」

 

言葉が出ない。答えようとして、喉が震えるだけ。

 

『答えぬか?』

 

次の瞬間、目には見えぬ圧を感じた。

呼吸がし辛い。息が上がる。

五条の圧より、まとわりつくようで重くてきつい。

 

「あっ、ちょ、やめろ宿儺!お前は引っ込んでろ!!」

 

虎杖が慌てて押さえ込もうとするが、全く引っ込まない。

 

『答えろ.........何故、闘わぬ?』

 

膝が震え、言葉が喉に詰まる中、ようやく掠れた声が漏れた。

 

「……才能が……ないから、辞めろと……五条さんに…」

 

しん、と静まり返った空気の中。

 

宿儺はフン、と鼻で笑った。

 

『……くだらん』

 

そして、わざとらしく溜息をつくように、侮蔑を込めて吐き捨てる。

 

『オマエの主人(五条悟)は、見る目がない。所詮、その程度よ』

 

それきり、虎杖の手の甲からスーッと口が消えていった。

 

「……………」

 

部屋の空気は、まだ宿儺の圧を引きずっていた。

私はソファの背にもたれたまま、わずかに震える指先を見つめて、ぼそりとつぶやく。

 

「……い、虎杖くん、今、私、両面宿儺と話してました?」

「うん、話してた……」

 

虎杖は眉尻を下げながら、どこか申し訳なさそうに視線をそらす。

 

「伊地知さん……宿儺に目つけられたかも……」

「……ですよねぇ……」

 

思わず天井を仰ぎ見た。

ちょっとフロム脳で偉そうにアドバイスしましたけども。

年上風吹かせてちょっとだけカッコつけた代償がこれって、理不尽にもほどがある。

 

あー、胃が痛い。

 

 


 

 

「で?」

 

五条は車の後部座席に乗るなり、不機嫌そうな声を出した。

あの後、夜中にLINEの返事が返ってきて、「詳細は帰ったら聞く」とだけ。

帰りのフライトの時刻が書かれており......つまり、ピックアップに来いということ。

それでたった今、合流したところだ。

余談だが、朝1のフライトでこの時刻に羽田来るのは結構面倒だった。

 

「宿儺に話しかけられたって?」

「……はい。突然でした。ゲームをしていた私と虎杖君の話を聞いていたみたいで…」

 

五条は口元に手をやってしばらく黙り、次いで吐き捨てるように言った。

 

「LINEでも報告もらったし、悠仁からも聞いたけどさ。

潔乃の言葉で、ちゃんと説明して」

 

羽田空港第1ターミナル併設の駐車場に車を止めたまま、

宿儺との一部始終を再現するように語った。

虎杖との会話、アドバイスの内容、自分の反応、宿儺の最後の一言まで。

 

聞き終えた五条は、指先でこめかみを軽く押さえながら、小さく呟いた。

 

「……はぁ。やっかいなとこ、見抜かれたね」

 

「……どこを?」

 

「精神構造だよ、オマエのさ。

『戦ってないのに、最前線の呪術師の考え方をしてる』ところ。

『実戦の中で生き残る者の哲学』っていうの?」

 

なんですかそれは。意味がわからない。

若干フロム脳な説明だったけど、概ね問題ないはずなんですが。

 

「いや、ゲームやっててその時の攻略法が、実際にも使えるだけですよ。って話しただけなんですが」

 

「それが的確すぎたんだよ。

あのさ、一介の補助監督の口から、『術式発動には呪力の起こりがある』とかパッと出てこないよ?」

 

あれ?これ原作でも言われてたことだから問題ないと思ったけど…

 

「今は補助監督で後方支援なのに、発言が無駄に歴戦の強者感あるんだよ」

 

「んなこと言われましても……」

 

「まぁ、普通ならスルーするだろうね。でも、宿儺には多分わかるんだよ。

呪術全盛期の平安を生き抜いた、呪いの王だからね」

 

そう言って、五条は深く座席に再度もたれかかるように体を伸ばした。

 

「で、『最前線で戦う呪術師としての精神性』を持ちながら、戦場から退いていて、

『才能がないので戦ってません』なんて言ってて……

そりゃ、気になるよな?

『くだらん』って捨て台詞、あれ、僕にも向いてたな」

 

なるほど、そういうことか。

でもこの思考の半分は、何度も言うけどフロム脳なだけなんだけど、五条には言えない。

 

「……すみません」

 

「今回はしょうがないけど……とりあえず、お前はその荒い性格、少しは隠せ。

隠せてたらこんなことになってないんだよ」

 

頬杖をついて、バックミラー越しに呆れた声色。

 

「昔っから見た目は人畜無害でおとなしそうなのに、根本、気性が荒いんだよ。

お仕事モード入ってる時みたいに、常時猫かぶれとは言わないけどさ」

 

アイマスクに隠れた六眼も、同じように呆れたように歪んでいるのが想像できた。

 

「僕にも従順そうに見えて、案外歯向かってくるし。

死にゲーのしすぎで、気性がより荒くなってんじゃない?禁止するよ?」

 

「いや、それはやめて」

 

慌てて返すと、五条が呆れたようにため息をついた。

 


 

「ところで話は変わるけど、頼んでいた、東京高専所属の術師、職員や補助監督まわりの調査はどうなってる?」

 

しばらく何かを考えていた五条が、車内の沈黙を破るようにふいに口を開いた。

 

「現時点で、私が調査できる範囲ではすでに完了しています。

学長以下、東京高専のメンバーに特に怪しい動きがある人物はいませんでした。

おそらくですが、情報が漏れているとしたら、残念ながら更にその上かと」

 

淡々と答えながら、私は私物のタブレットを鞄から取り出す。

 

「こちらが調査結果のまとめとなります」

 

タブレットを手渡すと、五条は無言で受け取り、指先で画面をスライドさせながら確認を始めた。

端から順に目を通しながらも、表情はほとんど変わらない。

 

「高専への出入りのログ、通信記録などをメインに確認しましたが、特に問題は見られませんでした。

偽装の痕跡もありません」

 

「これ以上のハッキング的な調査は、リスクを鑑みて今回は控えています。

必要であれば、引き続き調査可能ですが……どうされますか?」

 

数秒の沈黙が落ちる。

五条は画面から指を離し、そのままタブレットをこちらに差し出した。

 

「……いや、いい。十分だ。

少なくとも、現場にいる人間はおおむね問題ないってことはわかった」

 

受け取ったタブレットをカバンの中に戻しながら、次の言葉を待つ。

 

「補助監督の中で使いやすくて、情報漏洩のリスクが低い人間は誰?」

 

「……そうなると、新田明ですね。

五条さんも、ハピナ商店街の調査などで、何度かやりとりされていたはずです」

 

今いる補助監督たちのリストを思い浮かべながら、最も適任と思われる名前を挙げる。

数秒後、五条の「ああ、新田ね」という小さな声で、思い出した気配が伝わってくる。

 

「一般家庭出身の補助監督です。

現在、京都高に弟がいますが、情報を漏らすようなタイプではありません」

 

「どうして言い切れるの?」

 

京都と聞けば、そりゃ警戒もするだろう。

だから、即答で返す。

 

「元ヤンキーで、義理人情に厚いタイプです。

彼女の新人研修に付き合ったときに、懐かれまして。

ありがたいことに、今でもずっと慕ってもらっています」

 

その言葉に、五条の口元がわずかに緩む。

 

「なるほど」

 

そして、まるで雑務のひとつを片付けるように、さらっと告げた。

 

「しばらく、潔乃は悠仁との任務からは外れようか。

んで、新田に悠仁を引き継いで」

 

──は?

 

一瞬、脳が処理を拒否した。言われた内容はわかるのに、意味が理解できない。

 

「は? え?」

 

間の抜けた声が自然に漏れた。

それでも五条は、変わらず真顔だった。

 

「宿儺から興味を持たれたままだと、悠仁を通じて何かされる可能性がある。

今のうちに距離を取って、視線を逸らさせる方がいい」

 

……え、待って。それはまずい。まずい。まずすぎる。

 

《幼魚と逆罰》に私が絡めなくなる。

激しく原作がブレイクする。

このエピソードでは、虎杖と七海の出会い、改造人間との戦い、

吉野順平との交流と悲しい別れ──

そして、原作の伊地知(兄さん)の「私は二度と間違えない」の決意。

ここを外されたら、原作で積み上げられていた虎杖とのあの静かな信頼関係も、丸ごと削れてしまう。

伊地知(兄さん)と七海の仕事上の信頼や、真人に関する貴重な現場情報も……できる限り、間近で押さえておきたい。

 

「いえ、大丈夫です。虎杖くんのサポートは、ぜひ私に」

 

表情は極力冷静を装いながらも、シート越しにぐるりと体をひねって、後部座席の五条を真っ直ぐ見据えた。

 

「ダメ」

 

即答だった。

まさかここまできっぱり斬られるとは思っておらず、思考が一瞬止まった。

 

「何が大丈夫なもんか。冷静に考えてダメでしょ。オマエと宿儺が接触するほうが危険」

「ですが!」

「潔乃は悠仁が死んでから、心配しすぎ。オマエが気に病まなくても、悠仁はもう大丈夫だよ」

 

その言葉に、思わず息が詰まった。再度反論しようとした瞬間

 

後部座席、五条が乗っているのとは反対側のドアがガチャっと開いた。

ふいに車体がわずかに沈む感覚。誰かが乗り込んできたのだと反射的に視線を向けると

ドアを閉める音とほぼ同時に、静かな目線がサングラス越しにこちらとぶつかった。

 

「……七海さん?」

 

「合流が遅れて申し訳ありません」

 

七海は、後部座席のドアをしっかり閉めながら、いつもの淡々とした口調で言った。

 

「違う便で、先ほど羽田に到着しました。

五条さんから、事前に『合流してほしい』と連絡を受けていたもので」

 

五条は口元に手を当て、笑みとも読めない微妙な表情で、うんと頷いた。

 

「話が早くて助かるわ」

 

「……何の話をしてるんですか」

 

すでに嫌な予感がしていた。やられた。完全に段取りを組まれていた。

七海の視線が、ゆっくりとこちらに向けられる。

 

「伊地知さん

私も、五条さんの意見に賛成です。

虎杖悠仁の担当は、私が引き受けます。

あなたは一度、彼から離れてください」

 

「……どうして、七海さんまで」

 

「あなたの判断力を疑っているわけではありません。

ですが、今のあなたは『感情』が入りすぎている。

私には、それが危うく見えます」

 

五条がアイマスク越しに、ちらりとこちらを見た気がした。

無言の『ほらね』が肌に突き刺さるようだった。

 

「伊地知さん。あなたは、虎杖悠仁のために尽くしすぎている。

そこを両面宿儺に弱みにつけ込まれかねない。

だからこそ、距離を取る必要があると、私は考えます」

 

......勝てるわけがなかった。

 

五条と七海、二人がかりで理と情を押さえられてしまえば、

反論の余地など残っていなかった。

私は静かに頷き、虎杖悠仁の任務から一時的に外れることを了承した。

 

ちなみに引き継いだ新田明は諸々の説明を聞いて、「マジっすか!」と叫んでいた。

ごめんよこんな重たい仕事を押し付けて。

 


 

虎杖の任務を新田に引き継いでからも、私は完全には諦めていなかった。

直接接触はできなくても、資料の流れや周辺の動線、日報の細部……

高専のシステムに触れる立場として、裏から探れる手段はまだある。

というか──原作の動きを見守らないと落ち着かない。

 

…………そんなことを考えていたのを、五条悟が見逃しているはずもなく。

 

「ねぇ、潔乃」

 

呼ばれて顔を上げると、五条はいつものお気楽そうな調子でこちらを見ていた。

でも、その表情のなんというか、ニヤつき加減に嫌な予感しかない。

 

「パスポート、期限大丈夫だよね?」

 

「え……あ、はい。去年更新したばかりです」

 

不意を突かれてつい、素直に返してしまう。

 

「じゃ、一緒に行こうか」

 

「…………は?」

 

間抜けな返しが口から漏れた。

 

「いや、ほら。悠仁の任務から外れたなら、ちょうどいいタイミングじゃん?

通訳欲しかったんだよね。潔乃はたしか英語、僕より得意だもんね」

 

まるで、昼飯でも誘うかのような軽さだった。

 

「僕の海外出張に付き合ってよ。

憂太のところに顔出そうと思っててさ」

 

「は、え? 憂太? 乙骨君のいるアフリカに?

いや普通に仕事がパンクしますって」

 

「仕事、マニュアル化してたでしょ?

『誰でもできる補助監督』、『誰でも回せる高専運営』。

ね? オマエがずーっと言ってたやつ。使うなら今でしょ?」

 

「いやちょっ!」

 

「明日の朝の便、予約取ってあるから。夜にはここ出るよ」

 

軽い声で告げながら、スマホをひらひら見せてくる。

すでにフライト情報の画面が表示されていた。

 

「ちなみに、特級術師の命令だから拒否権はないよ。

よろしくね、通訳さん」

 

「…………」

 

もう何も言えなかった。

 

 


 

 

その後、私は五条に連れられて、本当にアフリカに飛んだ。

 

「英語得意でしょ?」という理由で同行させられたのだから、まぁ予想通りというか、

通訳としてこき使われた。

五条も英語はいけるはずだが、本当に全部丸投げされた。

 

空港でのやりとり、タクシーなど交通の手配、ホテルの確保、呪術関連の会合から、呪具調整の商談、政府との許可取り、

あげく「そのメニューって辛い?どれくらい辛い?」「僕甘いの食べたい!」の通訳まで、それ、自分で話せ。

おまえも英語いけるんだから。そう思い睨みつけると

 

「だって潔乃の英語ってクィーンズ・イングリッシュでしょ。

旧イギリス統治下の国がアフリカは多いし、僕のアメリカ英語よりそっちの方がいいじゃん」

 

真っ当なことを言われ口籠もる。

英語が多少できるのは話したけど、私がイギリス英語喋るのをいつの間にか知ってたんだよね。

何回か海外出張付き合ったことあるけど、イギリス英語圏では同じこと言われたな。

にしても、五条家の調査能力怖い。

 

重い書類と、五条の我儘にグッタリする。

呪霊は本当に海外だとほぼいないらしくて、その点は本当に楽だった。

天元の結界がないとこういう世界になるんだな…

 

久しぶりに乙骨に会えたのはよかった。

元気そうだったし、相変わらず落ち着いた空気で。

こっちのあれこれを話すと、軽く驚いた顔で「大変だったんだね」と言ってくれた。

……優しいなほんと。虎杖と並んで、素直さだけで呪術界を生き残ってる貴重な人材。

こっちは陰キャだけど優しいから好きだよ。あ、リカちゃん恋愛的な意味じゃないからね

 

あと、今回初めてちゃんと話をしたのがミゲルだった。

意外と常識人で驚いた。喋り方は面白かったけど。

百鬼夜行で五条と特撮バトルしてた人という印象が強ったので、開口一番

 

「五条さんと特撮バトルしてた人だ。黒縄だけですごく粘ってた人だ!」

 

っとストレートに言ってしまって、ミゲルと乙骨に笑われた。

なんかすみません。もうほんとあの印象が強くて。

五条はなぜか、その日ずっと拗ねてた。

それに関しては、知らんがな案件。

 

そして、毎晩泊まったホテルの部屋。

ちゃんとツインじゃなくて、二部屋取ってたのに

 

なぜか、気づけばほぼ毎晩、私は五条の抱き枕になっていた。

 

「エアコンが効きすぎて寒い」

「部屋に戻るのめんどい」

「今日移動時間長くて疲れた」

 

理由は日替わり。

結局、夜の自由時間はほぼ消えた。

日本と連絡取る時間も限られていたうえ、五条がベッドでべったりなもんだから、

普通の仕事もできないのに、新田に探りを入れる余裕も全くない。

新田にちゃんと連絡ができたのは、帰国してからだった。

 

そして…

 

帰ってきてから、新田のまとめた報告資料を読んで、

私は、やっと把握した。

結局、人が変わって(伊地知から新田に)も原作の流れに変わりはなかった。

 

虎杖と七海が出会い、

改造人間や真人との戦闘が起き、

吉野順平と虎杖の交流が生まれて、

……そして、あの、悲しい結末も。

 

私が不在の間に、『物語』はきっちり進んでいた。

 


 

 

主人公

 

フロム脳のフロムゲー信者なせいで、両面宿儺に目をつけられた。

結果、原作の幼魚と逆罰から里桜高校の原作に関われなくなった。

主人公は英語は喋る英語はイギリス英語。これは完全に前世知識。

本人の言い訳としては、ずっとBBCニュースを見ていたから。

 

真人の話を聞いたので、後日五条に七海への守りの宝石について話に行く。

 

 

五条悟

 

主人公が両面宿儺と話したと聞いてあわてて翌日の予定を全て変えて、東京に戻った人。

主人公の頑固さを知ってたので即七海を巻き込んだのはファインプレイ。

 

そしてその後強引に、一緒にアフリカ出張へ行った人。

なんでもやってくれるので、マジで出張が楽だった。夜は安眠できた。

次回もあれば連れて行こうと思ってる。

主人公のきれいなイギリス英語どこで覚えたの?と疑問を持ってる。

経歴洗っても出てこない,,,へえBBCニュースねぇ...

 

主人公と虎杖が不気味な会話をしてるのが心配。

 

 

虎杖悠仁

 

主人公のフロムゲーマーっぷりにビビった。

が、完全にハマった。

後日、主人公と「脳に瞳を宿す」など話をして、何も知らない五条に真面目に心配される。

 

主人公の立ち回りをするのが新田明になった以外は、全部原作通りだった。

 

 

七海建人

 

夜中に五条に叩き起こされた時はキレかけたが、後輩の主人公が両面宿儺に目をつけられたと聞き

速攻でフライト変更、五条の後に続いた。

 

主人公の立ち回りをするのが新田明になった以外は、全部原作通りだった。

 

 

新田明

 

今回の一番の被害者。

死んだはずの虎杖が生きててビビった。

その後、主人公から虎杖関連の仕事を全部ぶん投げられて、パンクするかと思った。

伊地知さんパねぇっす…

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