【本編完結】とある転生者の役割交代   作:kotedan50

16 / 54
交流会前準備と七海対策

今回だいぶ非人道的な描写があり、重苦しい箇所があります。
苦手な方はお気をつけください。

・伊地知ポジション成り代わり(伊地知の双子の妹)ものです
・オリキャラ出ます
・激しい捏造、妄想含みます
・ネタまみれです


転生者、仕事に追われる

私は今、心の底から五条悟の顔面に拳を叩きつけたい気持ちでいっぱいだ。

 

「……なんで出張に行っただけで、こんなに仕事が溜まってるんですかね?」

 

今回、五条に無理やり海外出張に帯同させられたんだけど、そのとき言われたんだ。

 

『「誰でもできる補助監督」「誰でも回せる高専運営」作ってたでしょ?』

 

......って。

 

で、正直ちょっと「あ、たしかに……」って思ったのも事実だった。

 

全部、マニュアルにしてあるし、運用テストになるんじゃないか?って。

これで私の仕事が楽になれば、儲けもんだと。

引き継ぎリストも完璧。フォルダ構成も美しい。タスク一覧には備考も添えた。

 

なのに。

 

なぜ帰ってきたら、机の上に書類でタワーができてるんだ。

バベルかな?私は神を冒涜したっけ?いや、五条のせいだろクソが!

 

怒りとともに、私は深いため息を吐いた。

怒りを表面に出さないようにしながらも、周囲の同僚たちに、薄目で視線を流す。

すると、全員がピタッと固まったあと、スッと目を逸らした。

見事な連携プレー。あなた達は体育会系の部活か?

 

「伊地知さんが処理するスピード、おかしいんですよ……」

「普通、メールひとつに10分かかるんですけど、伊地知さん、3分で返信どころか関連資料まで添付されてて……」

「すみません。なるべく処理しようとしたのですが全然追いつかず……」

 

でもまあ、確かに。

私自身、「業務を回すには一定以上の処理速度と精度が必要」とか普通に言ってきたし。

 

学生時代から補助監督をやっていたせいで、いまや古参というか、ほぼ高専運営に関わっている。

気がつけば、管理者的立ち位置。役職はないのに。

せめて役職手当くらい、よこしてくれてもよくないか?

 

つまり、みんなの練度が低いだけ。

私の処理能力が高いのは、歴が長いからだ。

 

……でも、もっと頑張ってほしい。本当に。お願いだから切実に。

 

切実に願っても、この書類の山が消えるわけじゃない。

 

「……せめて、経理処理くらい終わっててほしかった……」

 

ぐったりしながら、パソコンを立ち上げて仕事を再開する。

開始早々また頭の血管が切れそうになった。

 

「なんで……これ、五条さん関係のタスクばっかり……?」

 

思わず舌打ちが出るのも無理はない。

隣の補助監督がビクッとしてたけどごめんね。余裕ない。

温厚な伊地知さん()だって怒るんだよ。

 

・五条悟が破壊した建物の補償金処理

・五条悟が吹き飛ばした〇〇山の一帯に対する、環境保護団体からの抗議対応

・祓除任務中に交通規制を無許可で行った件に関する、警察・自治体への謝罪と補填書類

 

だから言ったじゃないですか、分かった時点で申請出してくださいって……!

脳内の五条悟の胸ぐらを掴み締め上げる。ヘラヘラ笑って逃げるところまで想像できて、より血圧が上がった。

心の中で聴くに堪えないFワードを叫びながら、結局私はひとつひとつ片付けていく。

これは数日徹夜だな…

せめてもの慰めに、コーヒーにチョコを一粒放り込んで混ぜながら、心の中で叫んだ。

 

五条悟なんて大っ嫌いだ!

 

 


 

 

気づけば、時計は日付をまたいでいた。

 

今日『高専で処理したい分の書類の山』を一通り片付けた私は、

改めて机の隅に置かれたリストに目を落とす。

 

本当に向き合わなきゃいけないのは、こっちだ。

 

私は書類を鞄に詰め、そっと椅子を引いて立ち上がった。

夜勤の同僚や待機の術師達に声をかけてから、高専の敷地をあとにする。

私は自分の仕事部屋へと向かった。

 


 

……姉妹校交流会の警備再編。

 

今やらなきゃいけないのは、こっちだ。

 

ペンを握り直して、名簿に目を走らせる。

姉妹交流会の日に高専に残る術師と補助監督の候補リスト。

 

2級術師が3名、準1級術師が1名、補助監督が5名、そして禁庫番が2名。

 

これらは、交流会を襲撃された時に出る『予定』の人的被害だ。

原作通りなら、襲ってくるのは特級呪霊と呪詛師。

真人の無為転変で、絶対に誰かが死ぬ。

 

私の知識では、全員を救う手立てはない。

 

だから、線を引くしかない。

 

禁庫番の2人は、天元の側近だ。私には手を出せない。

斜線を引いて、『死亡確定』リストに振り分ける。

 

その他の候補者たちは、私情を挟まないために──

ゼークトの組織論を用いて、選別する。

 

利口で勤勉、有能な働き者は除外。

利口で怠け者も、指揮者としての資質がある。除外。

 

残るは…愚鈍で怠け者、愚鈍で勤勉な者。

 

その中から、家族がいない人。

万が一死んでも、誰かが復讐に走ったりしない人。

上層部となるべく近くて、でも死んでも揉めごとにならない立ち位置の人。

死滅回遊後、敵に回わりそうな人間は排除できるなら排除したい。

 

そうした条件に当てはまる者を、淡々とリストアップしていく。

その過程で……中立派も、少数ながら混ぜ込む。

上層部に近い人間ばかりから犠牲が出ると疑われる。

五条に近い無能も、例外ではない。

 

ひとり、またひとり。

名前の横に、赤丸をつけていく。

 

インクが滲んだ。

 

あれ……? とペン先を見ると、自分の手が、微かに震えていた。

 

動揺するな。私。前に覚悟は決めただろ。

夏油を“見捨てた”時と、やってることは同じだ。

 

自分都合で、人の命に線を引く。

 

……ほんと、呪術師らしくなってきたじゃないの、私も。

 

あー……お酒飲みたいな。

 

 


 

 

翌朝、私は粛々と仕事を片付けた。

昨夜作成した『死亡リスト』、もとい、『交流会の警備配置案』。

正式な文書に体裁を整え、所定のフォーマットに落とし込み、高専側へ提出。

あっさり了承された。

 

書類の受理と確認印を得たところで、私はスマホを手に取る。

次のタスクの話を進めなければ。

 

連絡するのは五条悟。プライベートのスマホ。

スケジュールを確認済みで、今は任務の合間に高専に戻っているはず。

私もプライベートのスマホを取り出し、発信する。

 

「もしもし。伊地知です。お忙しいところすみません、少々お時間よろしいでしょうか?」

 

やわらかく切り出したが、声は完全に業務用のトーン。

周囲に不審がられないように、いつもの伊地知モード(お仕事モード)を保つ。

 

「以前ご依頼いただいてました、銀座の宝飾店の調査についてですが......」

 

『銀座の宝飾店』つまり、私が呪力を込めた宝石の関連。

周囲に聞かれても問題ないように、五条とだけ通じる隠語。

 

すると、電話の向こうから軽い声が返ってきた。

 

『あー、あれね。ちょうどよかった。お前の部屋にアイスあったよね?それ食べながら聞くわ。今行く』

「……なんで知って…はぁ、承知しました」

 

私の部屋にアイスがあることまで把握しているのは、もう突っ込む気力もない。

ひとまず微妙に嫌がるそぶりをした後、渋々承知した風を装う。

五条が察した上で、あえていつもの軽薄さを出してくれるのは、正直ありがたい。

 

……この人、本気出すと、やっぱり怖いくらい鋭いんだよな。

 

電話を切り、私も静かに寮の自室へと向かう。

 

 


 

 

自室に戻って数分もしないうちに、ノックもなく扉が開いた。

こんなことするのは五条しかいない。

 

「おつかれサマンサー!アイス食べにきたよ」

 

いつもの調子でひょいっと入ってきた五条は、扉を閉めるなり、自然な動作で防音の結界を張る。

 

私が立ち上がって一礼しかけた、その時。

 

「……徹夜、した?」

 

不意にかけられたその問いは、思いのほか真面目な声だった。

歩み寄ると私の頬に手を添えて顔を覗き込み、目の下の隈をなでる。

私は一瞬だけ返答に迷って、いつものように軽口を叩く。

 

「えぇ、誰かさんが海外に引っ張り回してくれたのと、誰かさんが暴れた後処理のおかげで」

 

五条の手を払いながら、あえてジトっとした目で睨みつけた。

 

「仕事が属人化してるのが悪いんでしょ。そろそろ他人に割り振って仕事覚えさせな」

 

五条は肩を竦め、いつものように私の嫌味に乗っかってくれた。

まぁ、仕事量的に現在はしょうがないと認識しているからだろう、深掘りはされなくてホッとした。

業務より人の選別で疲れたとか言えないし、言いたくない。

 

「ま、あんま無理するなよ。

……ってんで、今から大事な話なんでしょ?」

 

「七海さんと虎杖くんが遭遇した特級呪霊についてなんですが…」

 

早速切り出すと、五条は軽く眉を上げたと思う。アイマスク越しでも分かった。

私が続けるより先に、彼が口を開く。

 

「……僕も報告書、読んだよ。

 で、どうせそれだけじゃ納得できなくて、悠仁からも聞いたんでしょ?」

 

私は黙ってうなずいた。

 

「ダメだって言ったよね、今はあんまり悠仁と接触するなって」

 

ほんの少しだけ、声に棘がある。

冷蔵庫から大好きなアイスを選びながらも不機嫌そうだ。

 

「……でも、私と七海さんとが仲がいいので。虎杖君に話を聞かないと逆に不自然になります」

 

五条は私を一瞬だけじっと見て、ふっと息をついた。

 

「……まあ、そう返ってくると思ってたけどね」

 

そのまま、彼は定位置の座布団にあぐらをかいて座る。

 

「領域展開を使われたと聞きました。

そして……その特級呪霊は、七海さんと虎杖くんを『逃した獲物』として覚えている可能性が高いです」

 

「うん、まあ、ありえるね。呪霊だし」

 

「虎杖くんはなんらかの理由で攻撃が効かなかったとか。虎杖くんが領域に入った瞬間に解除されたそうです。おそらくだから虎杖くんは大丈夫と判断します」

「問題は七海さんです。七海さんは、領域対策を持っていません。だから……宝石を渡したいんです」

 

私が言い終えると、五条は小さく「んー」と唸るような声を出して考え込んでいる。

 

五条はしばらく、あぐらをかいたまま天井を見上げていた。

それから、片手でアイスの蓋を開けながら、ぽつりとつぶやく。

 

「反転術式も七海は使えないしなぁ……

領域食らったら、即アウトか。確かに、それは困るねぇ」

 

カップアイスにスプーンを突き刺して一口すくいながら、私の方をちらりと見た。

 

「で? その宝石って、どのタイミングで発動するの?」

「正直よくわからなくて。魂に干渉して肉体を変えるとか意味不明すぎて」

「まぁ、確かにねぇ。僕がそいつの術式見れればよかったんだけど。僕の前に出てこないからなぁ」

 

五条がアイスを口に運び、わざとらしく肩をすくめる。

 

「ひとまず、七海さんが一定以上の損傷を受けた場合に、自動で発動するような縛りを入れようかと考えてます。

術式による体組織の変異、あるいは内臓への一定以上損傷。そこを調整してトリガーにできれば、重症でも撤退だけは可能となるはずです」

「なるほど。ワンチャン命だけ繋ぐってやつね。縛りとしては現実的」

 

頷き合ったそのタイミングで、私は迷いなく小さな宝石箱を取り出した。

ぱちんと小さく音を立てて蓋を開ける。

 

中に並ぶのは、鮮やかな色と透明度を持つ宝石たち。

どれも私が、5歳の頃から誕生日のたびにもらい続けて、

少しずつ呪力を込めて、大切に保管してきたもの。

 

「宝石は、この中から使います」

 

五条が息を呑んだのがわかった。

アイスを食べる手が、ぴたりと止まる。

珍しく驚いてるな。

 

言葉が出る前に、私は静かに続けた。

 

「……切り札。

使い所は、ここだと思うんですよ」

 

 

五条は口の中のアイスを溶かしながら、目を細めた。

 

「……潔乃、お前なんでそんな呪力少ないんだよ」

 

「褒めてないですよね、それ」

 

「褒めてるって。ちゃんと『呪術師の考え方』できてる。あー勿体ねぇ

呪力量さえあれば、宝石作らせまくって、使わせて術師としてこき使ってやったのに!」

 

少しだけ冗談めかしているけれど、言葉の端に、珍しく真面目な響きが混じっていた。

評価されるのは嬉しいが、こき使うのは勘弁して欲しい。

今以上の仕事が来たら過労死で死ぬ。

 

「七海に渡すの、僕から言っとく。七海も君のこと信用してるから、むしろ僕より素直に受け取るでしょ」

 

「お願いします」

 

これで、懸念だった五条の許可は取れた。

 

私は宝石箱を閉じ早く片付ける。

 

よし。溜まった今日分の仕事を片付けたら、さっそく、加工に取りかかろう。

 

 


 

 

通常業務に戻る潔乃を片目に、僕は自室へ移動した。

ドアを閉めて、遮音の結界を張り、スマホを取り出す。

履歴から七海の名前をタップ。コール音は1回ですぐに繋がった。

 

「七海? 僕だけど。少しだけ、いい?

なるべく発言はしないで返事だけして」

 

『……構いません』

 

「近いうちに、領域対策の効果がある呪具を渡すから。受け取ったら『肌身離さず』、一日中つけてて」

 

『承知しました』

 

「で、それ渡すのは僕じゃなくて、潔乃」

 

受話器越しの空気が、わずかに変わる。

だけど、すぐに返ってくる短い返事。

 

『……なるほど』

 

七海の反応に、大きな起伏はない。

でもその『間』で、ちゃんと理解してるってことが伝わる。

 

「……ここからは、まぁ僕の妄想に近い意見なんだけど、さ」

 

声のトーンを少しだけ落として、僕は続ける。

 

「潔乃ってさ。勘がいいと思わない?変なとこで妙に鋭いというか。何回かあったでしょ?」

 

『……えぇ』

 

「覚えてる?潔乃が高専の時に『お守り』配ってたの。灰原には渡せなかったけどさ。

あのとき作った『お守り』さ。あれ手渡すことができてたら……七海も、そう思わなかった?」

 

『………』

 

沈黙。七海がそれを否定しないのは分かってた。

あの時期、あれを見た人間なら、あれが『気休め』だけじゃなかったって、分かるはずだ。

 

「今回の呪具も、作ってるのは潔乃だ。

『勘の良い』潔乃がお前に守りの呪具を渡したいと、いきなり言い出した」

 

 

『………』

 

 

「まぁ、そう言うわけだから」

 

返事はなかった。

でも大丈夫。七海ならこれでちゃんと伝わる。

 

僕は短く息を吐いて、通話を切った。

 

 


 

 

主人公

 

出張帰りの仕事量に肉体疲労

死亡リスト作成で精神的疲労。

七海の守りの宝石作りの許可が、おかげで少しメンタルが回復した。

どんなアクセサリーにしよう?

 

 

五条悟

 

いきなり七海に領域展開対策で宝石をあげたいと言われてピンときた。

これ灰原の時にあったやつ!これは何かあると直感。

全面協力し、七海にも忠告する

 

 

七海建人

 

いきなり領域対策の呪具を渡すと言われて何事?と思ってた。

主人公言い出したと聞いて、納得した。

七海も主人公の勘の良さになんとなく気づいていたらしい。

呪具はありがたく受け取る。

本編完了しましたが、番外編後日談などどれが読みたいですか?

  • 本編終了後の後日談
  • 本編時間中の日常話
  • if系(√分岐、原作通り五条死亡など)
  • R-18 の下ネタギャグ
  • 全部
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。