【本編完結】とある転生者の役割交代   作:kotedan50

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交流会終了後→福岡分校(ファンパレ)→起首雷同、直後まで

ファントムパレード福岡分校編のネタバレが大量にあります。
ゲームやったことない人で、やる予定のある方は避けた方がいいかもしれません。

・伊地知ポジション成り代わり(伊地知の双子の妹)ものです
・オリキャラ出ます
・激しい捏造、妄想含みます
・ネタまみれです
・ファントムパレード福岡分校編の大量のネタバレが今回あります


転生者、準備を終えて泥酔する

交流会の後処理に追われながらも、私は水面下で次の備えを進めていた。

渋谷事変に向けた対策——その一つが、七海への宝石の譲渡だ。

 

今回、宝石はベルトのバックルに加工して渡すことにした。

理由は単純。原作での七海は漏瑚の攻撃で上半身を燃やされ、半裸になっていた。

ネックレスやタイピンでは役に立たない。ピアスも考えたが、左耳が焼け落ちていた場面を思い出して却下した。

……臍ピや舌ピを七海に勧めるのは、さすがに解釈違いだ。

命には代えられないかもしれないけれど、そんな七海は見たくない。

そもそも、本人から蔑んだ目で一蹴される未来が見える。うん、泣く。

 

......思考がそれた。戻そう。

 

作成したバックルには、宝石を二つ埋め込んだ。

いずれも裏側に来るよう配置してあり、外見からは見えないように加工してある。

呪力の感知も極力抑えてあるので、五条クラスの術師が直視でもしない限り、特殊な意味に気づくことはないはずだ。

 

使用した宝石のひとつは、精神保護の効果が高い『オニキス』。真人の「無為転変」への対策として用意した。

魂=精神と解釈し、精神を守ることで魂の侵食を防ぎ、肉体改造を阻止するという、やや強引な理屈だが……

これでダメなら、もう無理だ。潔く諦める。

 

もうひとつは、手持ちの中で1番、炎耐性が強い個性を持っていた『カーネリアン』。

言うまでもなく、漏瑚への備え。

そしてこれは、七海の誕生月・7月の誕生石でもある。きっと彼を守ってくれる。

 

どちらも、私が幼少期に誕生日祝いとして贈られたものだ。

5歳のときと10歳のとき。今後を見据えて、ただ呪力を込めながら保管していたが……

今こうして、明確な意味を持たせられる。

 

五条に見られたら「何やってんの」と呆れられるかもしれない。

でも、これは七海のため。譲れない。

 

「領域対策です。特に、噂の『ツギハギ』……魂に干渉するタイプの術式に特化した防御を持たせました。

それと、炎を使う特級がいると聞いていますので、ついでに炎耐性も強化しています」

 

七海はすでに五条から話を通されていたようで、特に詮索されることもなく受け取ってくれた。

呪具の製作が私によるものだということも、五条から聞いていたらしい。素直にそれを肯定する。

 

宝石に込められた呪力の質に、七海は少し驚いていた様子だった。

けれど、出所については「五条さんの伝手です」と軽くかわす。

それで十分だった。

 

宝石に呪力を込められるという事実は、まだ五条と私だけの秘密。

その認識については、私たちの間で一致している。

 

 

 

 

けれど、本当は七海にも、五条にも言っていないことがある。

 

この宝石には、「私が渋谷事変で刺され、重体になること」を条件とする縛りを仕込んである。

それによって効果や精度は跳ね上がる。

 

特に漏瑚や真人のような相手には、強く発動しすぎてもダメだ。

異変に気づかれれば、すぐさま再攻撃されて詰む。

 

だからこそ、『仕留めた』と思わせる程度のダメージを受けつつ、

実際には逃げ切れるくらいの重傷でとどめなければならない。

そう、都合のいい『重体』を演出しなければいけないのだ。

 

……そんな繊細な調整をできるわけがない。

だからこそ、最初から『自分が犠牲になる』ことを縛りに組み込んだ。

その状態にならなければ、効果が最大にならないように。

 

普通に考えたら、頭がどうかしてる。

自分が死ぬことを前提にしか、七海を守れないだなんて。

こんな狂った方法でも、やらなければ守れないのなら

私は、喜んで頭が狂った判断をする。

 

 

さて、ここでもう一つ、重大なポイントがある。

私が『刺されて、なお生き残らなければならない』ということだ。

 

原作通りなら、生存できる。

できる……けど、正直、かなり綱渡りだ。

 

よく考えてほしい。

原作の伊地知さん( 兄さん)、重面に四回も刺されてる。

それでも生きてた。よく生きてたよね!!!

 

タイムラインでいえば、21時22分に刺されて、21時44分に七海に発見されている。

そのあと家入さんの元に運ばれて、治療を受けて生存。

 

あんだけ刺されて、30分以上も出血し続けた状態で、よく、生き残ったよね?

伊地知さん(兄さん)!!!

 

七海は「彼も術師を目指していたから」と言っていたけど、

術師志望だったらそんなに体丈夫なるもんか?咄嗟に呪力でガードしたのかな。

反転使えないからできるわけないし。

……冷静に考えて、奇跡だと思う。

 

正直、私は自信がない。

 

たしかに私と伊地知さん(兄さん)は双子で、顔も似てる。

伊地知さん(兄さん)みたいに頬が痩けるほどには痩せていないけれど、私も痩せ気味で、地味な方だ。

……うん、もう少し華のある美人に生まれたかったな。

それは、今は関係ない話だけど。

 

似てはいる。けれど、体格差は確実にある。

私は女性としては長身な方だけど伊地知さん(兄さん)より小柄だし、筋肉量だって劣る。

どうしても、超えられない『性別の壁』というものがある。

 

女性の方が出血性ショックには強いと聞いたことはあるが、民間伝承レベルで医学的根拠はなかった筈だ。

民間伝承に頼って、それで耐えられるほど、あの場は甘くない

 

体力が持つかどうか——それが、怖い。

 

だから、仕込みが必要だ。

少しでも生存率を上げるために。

 

本当は、体力を回復させる効果を持った宝石をごっそり持っていきたい。

でも、あまりに強力なものだと、呪力感知で悟られてしまう可能性がある。

 

問題は重面だけじゃない。やっかいなのが、裏梅だ。

 

重面だけなら、刺された直後に最終手段として強めの宝石を発動させ、

意識を失わない範囲で重傷を負い、そのまま気配を殺して待機する……という手も使えた。

七海対策の縛りを弱くして刺されることにすれば、それも可能だった。

 

けれど、裏梅がいるなら話は別だ。

中途半端な怪我では、見抜かれる。

 

原作を読む限り、あいつは『ただの重傷者』を見逃すようなタイプじゃない。

となると弱い呪力で、じわじわと体力だけを回復する。

ある程度出血した後は、それを止める効果のある方向に持っていくしかないか。

 

五条から定期的にもらっていた宝石の中に、

弱いながらも、傷を癒す効果を持つ個性を持った石がが混ざっていた。

 

私はそれを密かにストックしていた。

そして今、その一部を、そっと取り出す。

 

……ほんと、五条と早い段階で共闘関係になっておいてよかった。

仕事で忙しい時に「宝石に呪力込めろ」とやられて、何度も「糖尿でEDになれ」って呪詛を送ったこともあったけど

それがなければ、こうして宝石を確保することもできなかった。

 

私はその宝石に、静かに呪力を込めていく。

ぎりぎりまで耐えさせ、限界に達したところで砕き、粉末化。

 

そしてその粉末を、丁寧に自分の半袖インナーへとまぶしていく。

繊維と絡ませ、目立たないように馴染ませていく。

さらにこの後、コーティングスプレーをかければいい。

 

実は、五条から宝石を貰うようになってから、私はずっと研究を続けていた。

仕事とは別に、完全に趣味と実益を兼ねた実験。

鍵をかけずとも侵入を防ぐ“宝石の結界”も、そうした試行錯誤の中で完成させた成果の一つだ。

 

たとえば、宝石に呪力を込めすぎて割れてしまった場合、それを再利用できないか。

そう考えて検証を重ねた結果、私はひとつの結論にたどり着いた。

 

砕けても、粉末になっても——

宝石は、ある程度までなら『効力』を残している。

 

今回は、あえてそれを利用する。

効果を『弱める』ことで、相手に悟られず、かつ持続的に回復が行われるように設計した。

 

微弱な癒しを、じわじわと長く。

裏梅もこれには気づかないだろう。私自身の呪力に紛れてしまうはずだ。

これで準備は整った。

 

 


 

 

……準備が整って、多少は楽できると思ったんですがね。

 

私は今、なぜか九州で、死んだような顔をしている。

特級呪霊:朧絶(ろうぜつ)が起こした事件の後始末中だ。

 

ことの始まりは、九州地方での出来事だった。

閑散期にもかかわらず、地方のわりに複数の高位呪霊の出現が報告された。

地元の術師の数が足りないため、福岡分校の奈木野学長から支援要請が入り、

五条が「修学旅行のつもりで」と言って、1年生3人を派遣。私も同行することになった。

 

地方の呪霊だし、原作にも記憶にない話だし、大掛かりなことにはならないだろう。

そう思ったのが、失敗だった。

 

追加の着任で京都校から西宮桃、禪院真依、三輪霞がやってきた。

原作のネームドばかりが集まることに、メタ知識で「やけに嫌な予感」がした。

 

案の定、調査の結果、特級呪霊が絡んでいることが判明。

その矢先、奈木野が推定特級クラスの呪霊に襲われ、意識不明。

現地に残されたのは、東京校と京都校の生徒たち、それに4〜3級という微妙なラインの術師だけ。

 

キナくさくなってきたと思ったら、さらに追い打ち。

伏黒が術式をコピーされ、呪力を奪われるという緊急事態が発生した。

 

管理上、福岡分校は東京校の管轄だったため、夜蛾が現地入り。

偶然別件で来ていた東堂葵も合流し、東京校2年の禪院真希、狗巻棘、パンダも応援に加わる。

 

この時点で、私は確信した。

 

これ絶対、私が知らない小説かゲームか何かのイベントだ。

 

半泣きで五条に連絡を取ったが、

「東京にいる特級への抑えがあるから離れられない」

「うちの子たちなら大丈夫大丈夫」と軽くあしらわれた。

 

生徒たちへの信頼が厚すぎる。

胃薬を飲みながら、私は覚悟を決めた。

 

その後、伏黒の術式と呪力を奪った特級呪霊が、自らを朧絶(ろうぜつ)と名乗ったことで、事態が明らかになる。

 

26年前、大規模被害を出した特級呪霊。

夜蛾と奈木野らによって祓われたはずが、生き延びていた。

 

朧絶(ろうぜつ)の目的は、「九州大結界」の展開。

九州全域の人間を『家畜』として飼育し、呪霊の楽園を作ろうと目論んでいた。

26年前にそれを実行しようとし、最終的に夜蛾達呪術師連合の総攻撃により敗れた。

 

ちなみに、今回は虎杖も血と呪力を奪われ、宿儺の指を用いて宿儺呪霊を作っていたと聞かされた時、

私の胃薬の消費量は2箱目に突入した。

 

知らねぇよ!!そんな設定!!!なんだよ宿儺呪霊って!

マジで、ほんと、こんな知らない大事件は勘弁してほしい!!!

 

ちなみに、もう一度五条に泣きついたが、

「大丈夫大丈夫」とまたしてもスルーされた。

解せぬ。

 

結論として、私たちは常に後手に回っていた。

「九州大結界」を実行するにあたって必要となる術式があるらしく、その目的の術式を持つ人間を奪われた。

さらに結界の要の特定にも時間がかかり、ついに九州大結界の発動を許してしまった。

 

幸い、結界は3段階発動式で、最初の1段階ではまだ被害は軽微。

街に呪霊がうろつく程度だった。

 

何度も総監部に応援要請をしたが、

敵が朧絶(ろうぜつ)と知った途端、「現地対応」の一点張り。

26年前の事件で術師が大量死した経緯があるらしいが、

ほんとクソだな!!!九州にいるのほぼ学生だぞ!!!

 

この頃には、胃薬をフリスク感覚で齧っていた。

五条?もう電話してない。

どうせ来ない。メタ的な意味で絶対来ない。

 

漫画とかゲームのイベントってやつだ。

五条が来たら、話が一瞬で終わっちゃうからな!

 

……糖尿で禿げろ。

 

呪詛だけはちゃんと送っておいた。

 

九州大結界 第1段階発動で呪霊が市街地に溢れたため、

市街地対応と結界の要へ向かう戦力を分断して対応することになった。

 

私は結界の要へ術師を車で運ぶ係。

運転して要の地点へ向かっていたが、呪霊に襲われ車ごと道路から崖下へ突き落とされた。

掠り傷ひとつなく私も無事生き残り、私も人外側の人間だったかと遠い目をした。

一般人なら、即死していたぞ!

 

その後、程なくして九州大結界の第2段階が発動。

私は、その凶悪な呪力に耐えられず、意識を失った。

 

目が覚めた時には、事件は収束していた。

大量の後処理だけを残して。

 

結界の影響で倒れた一般人はいたが、死者は出なかった。

後遺症も、長くは残らない見込みだという。

被害が広がったのは、熊本を中心に九州一帯。

 

……で。

これだけの大被害を、どうやって隠蔽したかって?

 

どうにかするのが、私の仕事なんだよ!!!

 

まずは、防犯カメラに写っている証拠等は抹消、また偽装してデータを書き換える。

 

その後、各種カバーストーリーを作成。

大規模ガス漏れ事件。

活火山の噴火予兆。

硫化水素自殺希望者の事故。

同時進行で偽装証拠も作成。

国や自治体、総監部と調整し、承認が出た瞬間に古今東西に流布して回る。

 

……ふふふふふ。

 

この時点で、胃薬はダース単位で消費していた。

 

ある程度、隠蔽工作(仕事)が落ち着いてきた頃、

私は、ふと気づいてしまった。

 

もしかしたら、朧絶 (ろうぜつ)の背後には、羂索がいたのではないか?

 

理由はいくつかある。

 

ひとつは、朧絶が「宿儺の指」を所持していたこと。

もうひとつは、「九州大結界」という異様な仕組み。

 

嘱託式の帳

それを実験するのも兼ねて、交流会の時に襲撃を仕掛けていたはずだ。

あの一連の流れを思えば、今回の一件も、無関係とは思えない。

 

……くそ、できればこの話の原作、知っておきたかった。

事前に知っていれば、もっと動きようがあったのに。

 

ちなみに、虎杖たち生徒、夜蛾は先に東京へ戻っている。

最後まで現地に残って、調整と後始末をしていたのは、私だけだった。

 

今回は、まったく予備知識も、準備もなかった。

だからこそ、後処理にここまで時間がかかってしまった。

 

いい経験になった、と言えば、そうかもしれない。

 

……でも、痛感した。

 

私の能力は、やはり『予備知識ありき』だ。

それがなければ、結局この程度のことしかできない。

ため息をつきながら、私は帰京した。

 

 


 

 

東京に戻った私は、九州大結界で倒れた影響を考え、

しばらく補助監督としては同行せず、事務作業を優先することにした。

虎杖曰く、「宿儺が伊地知さんこと、まだ面白そうに見てる…気がする」という発言もあり、

虎杖達への任務の同行はなるべくしない方針は、五条と相談済みの上で継続だ。

私が同行する予定だった任務は、新田をメインに振り分けた。許せ。

 

 

 

「事情はわかりました。津美紀さんの護衛ですね」

 

私が九州から戻ってきてすぐ、起首雷同が発生したらしい。

八十八橋の呪霊による呪い。

津美紀も肝試しに参加していたという話だ。

しかも、一緒に行った人たちに異常が出始めていて、タイムリミットはおそらく1週間程度。

伏黒と通話をつなぎながら、私は手元のタブレットを開いた。

 

「ですが、今手の空いているのは2級術師の方だけで……」

 

原作と変わらない状況に、内心舌打ちする。

ここで1級術師が空いていれば、派遣して話はすぐに終わるのに。

まぁ、今回のこの件には積極的に介入していないので想定通りではある。

 

「被害者の数が、こちらの想定よりもずっと多いとなると、呪いの等級も見直さねばなりません」

 

ため息をつきながら、私は原作通りの流れに持っていくことにした。

 

「……おそらく、虎杖くんの成長を加味した上で割り振られた任務です。

そこからさらに危険度が上がるとなると、2級術師の手に余るかと。

皆さんも同様です。個人的には、撤退を推奨します。

来週には五条さんも戻られるので、調整は可能です」

 

正直なところ、九州での戦いを見ているため、虎杖たち3人が負けるとは思っていない。

 

八十八橋の呪霊は宿儺の指を飲み込んでいるが、今の伏黒なら大丈夫だろう。

壊相と血塗なんて、可哀想になるほど釘崎との相性が悪い。虎杖も一緒にいるなら尚更だ。

故に黙殺する。

 

津美紀のタイムリミットを知っていながら、それでも、知らないふりをして会話を続けた。

最後に来週には五条が戻ると伝えたが、原作通りなら2日で戻ってくるから間に合うはず。

まぁ、伏黒は未来なんて分からないから今夜、八十橋に突撃するのだろう。

 

 

その後、虎杖・伏黒・釘崎の提出した報告書と、新田から上がってきた補助監督の報告書を確認する。

起首雷同は原作通り、無事に終了したようだ。

特に違和感もないため、通常通り機械的に処理した。

 

 


 

 

五条が高専に戻った。

東堂と冥冥の推薦によって、「禪院真希、虎杖悠仁、パンダ、伏黒恵、釘崎野薔薇」が一級術師への推薦を受けた。

 

……ああ、あのワンタッチで1000万を送金するシーンか。

金持ちのボンボンめ。

そういや、いまだに持ってる五条の通帳早く返したい。怖い。

 

私はというと、七海や自分用の防御策の仕込みはすでに完了している。

だから、あえて補助監督として任務には出ず、高専運営側の整備に専念していた

夜蛾にアポイントを取り、学長室へ乗り込む。

 

「高専運営の権限、私一人に集中しているのはおかしいです。

最低限、私以外にも管理者を置いてください。

それが無理なら、せめて複数人でアクセスできる仕組みに改めるべきです」

 

福岡分校での騒動、九州大結界で私が実際に倒れた経緯があるため、

この話はすんなり通った。

 

これで、もし私に万が一があっても、

高専側の事務作業やバックヤードは滞らない。

 

 

渋谷事変後を見越して、都下の銀行、信用金庫に偽名で貸金庫を複数契約し

呪力を込めた宝石を複数箇所に分けて保管した。

私は五条派閥と見られているため、自室においていたら没収されてしまうだろう。

誕生日にもらい続けた宝石などはなるべく呪力を流したいので、ギリギリに預けにいくことにする。

 

……さて、本当にやれることがなくなってしまったな?

 

 


 

 

私は珍しく、定時で上がった。

 

職員寮の自室で、そっと棚から高級ウイスキーを数本取り出す。

以前、デパートの抽選販売に当たって、定価で手に入れたものだ。

 

今では異様なプレミアがつき、価格も跳ね上がっている。

そして、おそらく渋谷事変の後は、さらに値段が高騰するだろう。

 

まあ、私の部屋はどうせ調査の対象になる。

没収される未来が見えているなら、今のうちに飲んでしまおう。

 

そう思って、封を切った。

 

こんないい酒なら、本当は酒好きな家入や七海を誘うべきだろう。

でも、今の私には無理だとわかっている。

 

渋谷事変が近づくにつれて、

自分でもわかるくらい、私はナイーブになっている。

 

七海と一緒に飲んだら、きっと泣いてしまう。

だから誘わない。

 

夜蛾と顔を合わせるのも、日々辛くなってきている。

現場で話すたび、心が削られる。

 

彼は、私の恩師で、お世話になった人だ。

でも、私は、もう彼を、「助けない側」に分類してしまった。

 

そうするしかないから。

今後のこと考えると、楽巌寺は最終的に味方側に寄せる必要がある。

夜蛾の死が楽巌寺の心を動かした。だから夜蛾は助けられない。

 

奥歯を噛んで、浮かびそうになった涙を堪える。

感情の波が落ち着いてから、そっとグラスを傾けた。

 

流石にロックでウィスキーのボトルをハイペースで開けていると、酔いが回ってきた。

フワフワして気持ちいい。いくら飲んでも二日酔いにはならない体質なので、このままテーブルで寝てしまおう。

テーブルに突っ伏すようにして私は目を閉じた。

 


 

補助監督の執務室に顔を出した五条は、珍しく「伊地知さんは定時退社しました」と告げられた。

マジで?珍しい。

そう思いながら、職員寮に向かう。

潔乃の部屋の前に立つと、薄く漂う呪力の気配を感じた。

部屋にいるのがわかったので、いつものようにノックもせず扉を開ける。

開けた瞬間、目に飛び込んできた光景に五条は思わず青筋を浮かべた。

 

「潔乃さ、何、酒飲んでるの?」

 

無謀な飲酒は禁止だと、以前しっかり注意していたはずだった。

それにもかかわらず、テーブルに突っ伏して酔い潰れている潔乃。

しかも、周囲には高級ウィスキーのボトルが六本も転がっている

 

は? 嘘だろ?

定時で上がってから、まだ二時間も経ってないんだけど?

 

急性アルコール中毒が脳裏をよぎって、慌てて様子を確かめる。

呼吸も脈も乱れてない。

その気配はなさそうで、五条は心底ホッとした。

 

潔乃がうっすらと瞳を開く。

アルコールで潤んだ目、上気した頬。

そのまま、五条を睨みつけるように見上げた。

 

「五条さん!なんで福岡来てくれなかったんですか!大変だったんですよ」

「おい、流石に飲み過ぎだ」

 

本格的に酔うとからみ酒になるタイプだったのか、と五条は思う。

ここまで泥酔してる潔乃を見たのは初めてだった。

正直めんどくさいと内心でため息をつきながらも、結局潔乃を宥めるしかなかった。

 

「ほんと大変だったんですよ!なんなんですかあの特級!!」

「あー報告書見た。ま、僕が行けば一発で終了だったけどね」

「でしょうね。もっと情報があればうまくやれたかもしれないのに、何もできなかった

第2段階で私は倒れちゃったし……」

 

ぶつぶつ言い続ける潔乃を横目に、

五条は冷蔵庫から勝手にミネラルウォーターを一本取り出した。

キャップを開け、突っ伏している潔乃の前にぽんと置く。

 

「ほら。ちょっとは水飲め、泥酔女」

 

ストレスを溜め込んでいるのは見て取れた。

ミネラルウォーターをもそもそと飲み始めた潔乃は、

なおもぶつぶつと五条に文句を言い続ける。

 

五条は、再び深く溜息をついた。

 

今日、潔乃に会いに来たのは理由があった。

 

交流戦のとき、なぜ潔乃が、あれほど異様なまでに警戒していたのか。

ありえないほど綿密に予定が組み上げられ、対応が仕込まれていた。

 

 

そして、交流会では虎杖が命を狙われ、特級呪霊の襲撃を受け、特級呪物を奪われた。

 

あれは偶然ではない。

何らかの形で、潔乃は事前に「知っていた」と、五条は考えている。

 

ただし、潔乃は裏切ってはいない。

それだけは、確信していた。

 

だからこそ、知りたかったのだ。

 

未来を知っているのか。

あるいは、未来が見えているだけなのか。

本人に、その自覚があるのか、ないのか。

 

それを確かめるために、今日ここに来た。

 

そして、もう一つ。

 

渋谷@イベント、と名付けられた、あのフォルダ。

単なる名前。単なるデータ。

そう理解しているはずだった。

 

それでも、嫌な予感が、どうしても脳裏から離れなかった。

 

ハロウィンも近い。

「イベントの下見だ」と言われれば、それで終わる話だった。

 

だが、あの荒く雑な走り書き

 

「東京メトロ渋谷駅 B5F副都心線ホーム」

「渋谷駅構内B2F」

「東京メトロ渋谷駅13番出口付近、宮下第一歩道橋」

 

それらの文字を思い出すたびに、胸には、ざらりとした違和感が広がった。

 

だから今日、ここまで来た。

 

場合によっては、無理にでも話を引き出すつもりだった。

 

けれど、現実に目の前にいるのは、

六本もの高級ウィスキーを空け、うざいほどに絡んでくる潔乃だった。

 

テーブルに突っ伏して、

ミネラルウォーターをもそもそと飲みながら、子供のように文句を言い続ける潔乃を目にして、

五条は諦めた。

 

これでは話にならない。

 

彼女は今日までずっと無理を重ねてきたのだろう。

福岡から戻ってきた後の顔色と、疲れ切った様子を思い出せば、それは明らかだった。

 

今ここで問い詰めたところで、得られるものなど何もない。

 

五条は小さくため息をつき、突っ伏したままの潔乃に声をかけた。

 

「ほら潔乃、寝るんだったらベッドで寝ろ」

 

五条は潔乃の両腕に腕を差し込み、

子供を抱き上げるようにして、そっと持ち上げた。

そのままベッドへと運び、軽く転がした。

 

横たわった潔乃が目をぱちくりととした後、

 

「五条さん!」

 

勢いよく、ベッドのマットレスをバシバシと叩く。

 

……は?

 

五条は、思わずまじまじと彼女を見下ろした。

どうやら、「こっち来い」ということらしい。

要するに、添い寝を要求している。

 

珍しい。

普段は、こっちから近づくと、どれだけ眠そうでも微妙に嫌そうな顔をするくせに。

ソフレじゃないとか言ってるのに。

今日に限って、こういう反応するか?

 

五条は軽くため息をつき、

頭をかきながらベッドの端に腰を下ろした。

 

「……しゃーねぇな。この酔っ払い」

 

誰に聞かせるでもないような声で、五条はぼそりと呟いた。

そのまま、潔乃の隣にそっと身体を横たえる。

 

すると、するりと腕が伸びてきて、

五条の体に絡みついた。

 

潔乃はためらいもなく、

細い体をぴったりと五条に密着させる。

さらに、器用に足を伸ばし、五条の足の間に差し込んで、絡め取った。

 

そして、またぶつぶつと文句をこぼし始める。

 

「福岡……大変だったんですよ……」

「宿儺にも目ェつけられて……嫌なんです……」

「仕事だって、多すぎるんです……」

「夜蛾学長、ホントすみません」

 

眠たげな声でぽろぽろと零れていく。

最後には、若干ふてくされたような調子で、

「聞いてますか? 五条さん!!!」と追い打ちまでかけられた。

 

五条は、呆れたようにため息をついた。

 

こりゃ、ダメだ。

今日はもう、寝落ちるまで相槌マシーンになるしかない。

五条は苦笑しながら、抱きしめ返した潔乃の背中を、あー聞いてる聞いてると言いながら、ぽんぽん軽く叩く。

 

「……潔乃、貸しひとつだぞ?」

 

小さな声で、冗談めかしてそう囁いた。

 

もちろん、まともな返事が返ってくるはずもない。

潔乃はすでに、再びぶつぶつと文句をこぼしながら、

五条にしっかりしがみついたまま、うとうとと意識を手放しかけていた。

 

 


 

 

主人公

 

福岡の朧絶(ろうぜつ)の件の後処理が本当にきつかった。

自身も一度倒れて本調子じゃない時に、九州全体に影響する偽装工作とか。

 

今回ばかりは流石にダメかと思いました…

と原作の伊地知さんと同じセリフを呟いていた。

 

渋谷に向けての準備も終わって逆に余裕があるので、逆にストレスと向き合う羽目になっている。

他人にぶつけるわけにはいかないので、酒飲んで泥酔してる時に

ストレスの要因の一つの五条がきたので、盛大に絡み酒して愚痴った。

 

記憶は全部残ってて、翌朝起きたタイミングで、土下座して五条に謝る。

そして下手のことを口走らないでよかったとホッとする。

 

 

五条悟

 

福岡に行かなかったことを盛大に責められた。

いやーだってうちの子達優秀だからできるでしょ。と本気で思ってた。

潔乃の泥酔が珍しい。めんどくさいが、普段抱き枕にしてるのは、こちらなので付き合ってやる。

僕はなんて優しいんだろうと思ってる。

 

翌朝土下座で謝罪する潔乃をスマホで写真を撮り、ネタにするクズ。

あえてそうすることで、潔乃が気にしないように気を紛らわしてる部分もある。

酒に関してはガチめに説教した。

 

本当なら聞きたいことあったけど、今度でいいかとなる。

...後日聞かなかったことを、心底後悔する。

 




ファンパレのストーリー良いので、やって欲しい(布教)

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