【本編完結】とある転生者の役割交代   作:kotedan50

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死滅回游の裏側?

ほぼほぼ、オリジナルなので苦手な方は注意

・伊地知ポジション成り代わり(伊地知の双子の妹)ものです
・オリキャラ出ます
・激しい捏造、妄想含みます
・ネタまみれです



転生者、新たな仕込みを始める

 

・伊地知ポジション成り代わり(伊地知の双子の妹)ものです

・オリキャラ出ます

・激しい捏造、妄想含みます

・ネタまみれです

 

家入のPCを遠隔操作して、高専のネットワークに接続し、

ビデオ通話ではなく、家入の音声を聞き、私たちの言葉をエクセル越しのチャット会話。

無駄に手がかかるが仕方ない。

 

そして開口一番――

 

「……伊地知、お前“受肉体”の疑いかけられるぞ」

 

思わずため息をつく。

 

『勘弁してくださいよ。私は私です』

 

まさか私が「受肉体」の疑いを持たれてるとは。

しばらくやりとりした結果、なんとか納得はしてもらえた……多分。

その様子を見ていた七海が、横でくつくつと笑い始めた。

 

……あの、七海? あなたそんなキャラじゃなかったはずですけど?

 

なんだその面白そうな顔は。地味に腹立つ。

ムカついたので、ついでに、家入には七海の生存も報告した。

 

「はあああああ!? 七海!? 生きてんならすぐ帰ってこいバカ!!!!」

 

怒鳴り声が、スピーカーから盛大に漏れる。

慌てた七海が私からPCを奪い取り、必死で高速タイピング

 

『申し訳ありません、落ち着いてください。家入さん』

 

必死な謝罪と言い訳が画面を滑っていく。

私は口元を押さえて笑いを堪える。

……対岸の火事ほど楽しいものはない。ウケる。

 

謝罪がひと段落したところで、私は無言でPCを奪い返す。

すぐさま本題に入った。

 

『私は高専からの出頭命令に従うと、拷問や実験、最悪“呪胎”にされそうなので戻りません』

「それには同意だ。少なくとも伊地知は戻らない方がいい」

 

家入の声。くぐもった火打石の音とともに、タバコに火をつけた。

私は続ける。

 

『五条さんが戻るまではこのまま潜ります。

連絡は一旦こちらのメールアドレス([email protected])に。

スマホを用意したら、家入さんの携帯か、こちらで連絡します』

 

一瞬の沈黙。そして、家入がぽつりと呟く

 

「お前も、五条が復活するのを疑わないんだな」

 

その一言に、思わず手が止まる。

指先が浮いたまま、キーボードの上で凍りついた。

 

……だけど、すぐにタイピングを再開した。

 

『あの五条さんに貸しを作るチャンスです。乗らなきゃ損です』

 

なるべく軽い調子で。

本音を隠すための、いつものやり方で。

スピーカーの向こうで、家入がふっと笑った音が聞こえた。

 

「ひとまず、お前らの生存は皆んなに伝えておくぞ?」

 

私は即座に返す。

 

『それは待ってください。まず私の生存だけ伝えてください。“受肉体ではない”ということも。

それだけで十分です。七海さんの生存は、まだ伏せておいた方がいい。今後の利になります』

 

そして、少し間を置いて、慎重に追記する。

 

『特に、虎杖くんには伝えないでください。

虎杖くんの中の宿儺に情報を渡したくありません』

 

家入はすぐには返さなかった。

少しだけ息を吸う音が、サウンドスピーカー越しに聞こえる。

 

「……こういう時のお前の“勘”は当たるからな。分かった。そのようにする」

 

家入の声が、少しだけ低くなっていた。

きっと、家入なりにこちらの状況を察している。

 

『1点お願いがあります。冥冥さんに私から連絡があると伝えておいてください』

 

「わかった。知らない番号か非通知で連絡があると伝えておく」

 

本当に私の先輩方は察しがいい。助かる。

私は静かに最後の一文を打ち込む。

 

『ありがとうございます。では、また後日』

 

家入の返事をまたずに、ハッキング経由で接続していたセッションを手早く閉じ、遠隔操作をシャットダウン。

画面の中のエクセルがパッと消え、家入のPCとのリンクが切れた。

 


 

七海と向かい合い、今日の収穫と今後の行動方針について話し始める。

七海は五条家の許可を正式に取りつけたうえで、天の逆鉾の行方について、五条悟の私室や書庫を調査してくれていた。

 

「あなたの見立て通り、海外に封印したか、破壊したか……

いずれにしても、確定的な情報は何も残っていませんでした」

「……やっぱりですか」

 

私は苦笑しながら、小さくため息をついた。

 

「自分にとって決定打になりそうなものを記録に残さないの、

五条さんらしいっちゃらしいですけど…それさえあれば、五条さん即復活で楽だったのになぁ」

 

ワンチャン情報がないかと思って調べさせたが、五条はそんなに甘くなかった。

七海もわずかに頷く。

 

「そうですね……希望が少し見えていただけに、惜しい」

 

ふたりして、長いため息。

お互いに落胆を共有してから、私は自分の進捗を報告した。

 

「私はというと、さっき見てた通り、高専の現在の様子の確認。

其の前は偽の身分証明書とスマホ確保の手配。ひととおり、下地は整いました」

 

「……本当に慣れてますよね、その手の処理」

「補助監督やってると、裏の処理とか情報統制とかそんなのばかりです。

だから無駄に詳しくなるっていう」

「……帳より真っ黒、ですね」

「帳の外も真っ暗ですよ。呪術界も外もクソ」

 

ふたりして、今度は皮肉っぽく笑う。

 

しばしの沈黙の後、七海が手元のタブレットに映し出したタイムラインを確認しながら言う。

 

「それで、その後の予定は?

現時点の流れだと、羂索は中国に。

虎杖くんと伏黒くんは東京第1、秤くんとパンダは第2に行く段取りのようですが」

 

共有していた行動時系列の表に視線を落としながら、私はうなずいた。

 

「まずは、スマホを使って冥冥さんに連絡を取ります。

……で、このタイミングで」

 

私はタイムライン上の一点を指差す。

 

「冥冥さんがシン・陰流の当主を殺す前に、

その“当主”本人と接触しておきたいんです。

簡易領域の技術、使い方も含めて、其の情報を丸ごと“ぶっこ抜く”。

そのために、冥冥さんに当主の居場所を聞き出さないと」

 

日下部や三輪、憂憂から引っこ抜くという方法もあるが、これは最終手段。

シン・陰流についてより深い部分の情報を握ってそうな当主の方を今回は狙い撃ちにする。

七海が少しだけ目を見開く。

だが、すぐに真剣な表情でうなずいた。

 

「……接触、できると思いますか?」

「冥冥さん次第、ですけど……報酬はほらたんまりとありますから」

 

私は無造作にバッグから、以前五条から預かってそのままになっていた、五条名義の通帳を取り出した。

桁数の暴力。それを開いて見せると、七海が思わず目を細めて、ぼそりと吐き捨てた。

 

「……ちっ。ボンボンが……」

 

うん。私も同じ気持ちです。七海の声(ツダケン) で其のセリフを言うと別のキャラ思い出すなぁ。

 

「これで足りないってことはないでしょうけど、お金以外がいいとなったら、私が呪力を込めた宝石を渡して交渉します」

「それなら、ほぼ間違いなく交渉は通るでしょう。

五条家からたまに流れる呪力付きの宝石は、皆が喉から手が出るほど欲しがってますから」

 

そう、私が五条からの依頼で呪力を込めた宝石。

その一部が、ごく稀にではあるが呪術界で、五条家から流通していた。

 

出どころ不明、でも強力。

五条家に呪具作成が得意な人間を囲ったやら、そんな術式持ちが生まれた。海外から仕入れてる。

など、だいぶ界隈を騒つかせたらしい。いまだに作成者を探している家もあるとか。

 

……私は、全然知らなかった。というか、完全に情報をシャットアウトされてた。

それを知ったのは高専を卒業してから。

五条に「実はね」と軽く打ち明けられて——「補助監督だけど、一人前の術師になったからね」なんて、

どこか得意げに先輩顔されたのを、今でもはっきり覚えている。

 

宝石の流通も、金儲けが目的じゃなかったらしい。

どうやら、“使用者によって効果が変わるかどうか”を調べるための実験だったっぽい。

 

それ、せめて一言くらい言ってくれたってよくない?

 

七海のために作った宝石。

あれなんて、発動時に私の呪力が微かに混ざってたらしいから。

後付けした縛りの影響なのか、それともこめた呪力量の問題かは分からないけど……

同じようなことやってたらバレてたパターンもあったわけで。

実験なら、事前に言え。

 

まぁ、ある程度はしょうがない。

私はその代わり、五条の“庇護下”にいた。

呪力を込めた分、報酬も正式に受け取ってたし、立場としてはWin-Winだった。

 

 

「冥冥さんからシン・陰流の当主の居場所を聞いた後は、接触し情報を抜くわけですね。

………まぁ、あなたの術式なら大丈夫でしょうけど、こういう時に使い勝手が良すぎますね」

 

なんとも言えない顔で、七海がこちらを見ながら言う。

私は肩をすくめて返した。

 

「情報だけ抜いたら、私と接触した記憶も消すので。後処理もバッチリです」

 

そう、私の術式は、簡単に言えば「記憶を読んで、改竄できる」だ。

 

・相手に触れることで、その人物が“主観的に感じているすべての情報”を、『本』という形式で読める。

・そしてその『本』に書き込むことで、記憶を直接書き換えられる

・制限はあるが、書き換えた内容に基づいて、ある程度行動の制御も可能。

・無機物にも有機物にも、ある程度有効。

 

……どこかで聞いたことある能力だよね?

 

うん。これ完全に『ジョジョの奇妙な冒険』の岸辺露伴のスタンドだよね。

私も最初に発動したとき、真っ先に思ったよ。

 

「これ、天国への扉(ヘブンズ・ドアー)じゃん……」って。

 

あれは羂索の「無為転変」が発動したあの日。

混乱の中で、私の術式が本能的に目覚めて——直感的にわかった。

「あ、これは“記憶を読んで改竄できる”術式だ」って。

 

でもその瞬間、前世の知識が脳内で囁いたのが運の尽きだった。

 

「それ、天国への扉(ヘブンズ・ドアー)だね」って。

 

……おかげで、術式の解釈がそのまま固定化された。

私の発想力が貧相な脳みそのせいで。

 

幸い、本家の岸辺露伴みたいに「自分の漫画を読ませなきゃならない」みたいな縛りはなかったけど。

もしあったらマジで詰んでた。私に絵心はない。

 

……とはいえ、私の術式にもそれなりに制約はある。

 

まず、対象に触れてないと発動できない。

物理的に、どこでもいいから触れてなきゃダメ。

人なら手でも、服の上からでも、つま先でも。とにかく“接触”が鍵。

無機物や有機物からも其の記録を読み解くことは可能。

原作と同様、骨付き肉すらも本にしてみせており、消費期限や原材料、鮮度などを確認して品質チェックとか。

使うタイミングはめちゃくちゃシビア。戦闘中なら、ほぼ命がけになる。

 

それから、岸辺露伴みたいに「相手の体が本になって物理的に行動不能にする」みたいな芸当は私には無理。

相手の体の一部、肩とか腕とか、あるいは額とかに『本のようなページ』が浮かぶ程度。

 

で、それがまた面倒なことに、書き込む時には相手が呪術師なら“見える”。

 

そう。こっちだけの精神世界演出じゃない。

触れた瞬間、相手の視界にも、自分の体に現れた“ページ”が見える。

ちゃんと文字も見える。何が書かれてるか、バッチリ読まれる。

 

だから、バレたら終わり。

書きかけでぶん殴られたり、術式を強引に打ち消されたり。

それが怖いから、なるべく一発で決めるか、記憶を先に読んで心理的な隙を突くようにしてる。

もしくは、相手が自分に好意や信頼を持ってる時しかやらない。

……まぁ、それも倫理的にはけっこうアレだけど。背に腹は代えられない。

 

あと、書くための道具は術式専用のペン。

発動中だけ手元に勝手に出てくる。ちょっとずんぐりした万年筆みたいなやつ。

でも、術式が不安定だったり呪力が足りなかったりすると、筆が止まる。

 

自分に書き込むときは呪力消費がほぼゼロだけど、

他人に書くときは、それなりに食う。

命令の内容が複雑だったり量が多かったりすると、それだけ重くなる。

 

当然だけど、なんでも命令できるわけじゃない。

 

「イタリア語を話せるようになる」とか、「一定時間だけ痛みを感じないようにする」くらいならいけるけど、

「無下限呪術が使えるようになる」とか、「乙骨の呪力量を超える」みたいな、本人に絶対できないのは無理。

“その人間の才能と限界の範囲内”っていう縛りがある。

 

で、最後に問題の「死ね」系命令。

これは、書けるし、効く。

宿儺とか格上にも場合によっては行ける。多分。

……試したくもないけどね、実際のところ。

 

結局、この術式ってのは、

 

「接触して、情報を読んで、バレずに書く」

 

までが全部成功して初めて真価を発揮する。

制約付きのチートだ。

 

なんで術式が覚醒したばかりで、こんなに把握してるかって?

五条家の皆様と七海の協力のおかげだ。

私の人となりをよく知る七海はまだしも、五条家の人たちには特に頭が上がらない。

五条悟復活への一致団結っぷりがすごい。

古い体質で、鬱陶しい一族かもしれないけど、

大事にされてたのをもっと自覚すべきだよ五条は。

 

「……ひとまず、シン・陰流の当主と会う時に、七海さんも一緒に着いてきてください。

書き込み失敗したら嫌なので。私に無理そうなら、一発入れて沈めてもらえたら助かります」

 

七海はほんの少しだけ眉を上げて、そして静かに言った。

 

「……容赦なく人を使いますね。まぁいいでしょう。

あなた五条さんに似てきましたね」

 

一瞬、ムッとした。

あれ (五条悟)と一緒にしないでくれ。あの暴君(五条悟)よりはマシだわ。

 

 


 

 

スマホのスピーカーホールから、くぐもった声が響く。

 

『冥冥。伊地知かな?』

 

この声だけで、首筋に冷たいものが走る。

一度でも冥冥と関わったことがある人間ならわかる。

この人は金の亡者だ、油断すると尻の毛まで毟られる。

 

「そうです。お久しぶりです」

 

落ち着いた声を意識して返す。

 

『硝子から聞いているよ。何かようかな?』

 

「値踏み」してくるよねぇ。やっぱ冥冥怖いよ。

そう思いつつも表には出さない。

 

「ストレートに言いますと、シン・陰流の当主の居場所を教えてもらいたくて」

 

小さな間が空く。

すぐに返事がないあたり、探ってきてるなと分かる。

 

『……へぇ。なんで私にそれを言ってきたのかな?』

「報酬は1000万ほど用意してあります。いかがですか?」

 

話の核心を避けるように、私は報酬から提示した。

理由を先に話すのは、いつも損をする側だ。

 

『無視かい? 理由を聞いてもいいかな?』

 

甘く笑ったような声。

会話の主導権を握らせまいとしてるのがわかる。

 

「報酬が足りないのであれば、追加で、五条家が流通させている宝石をお付けします」

 

相手の沈黙が、今度は数秒長かった。

この一手で食いついたのがわかる。よっし!

 

『報酬は3000万から。宝石も、そうだな――3つほど、つけてくれるかい?』

 

ヒットしたが欲張ってきた。まぁ、そうくるよね。

この人そういう人だもの。

 

「2000万でお願いします。宝石は1つ。

――五条さんから預かったものなので、在庫に限りがあります」

 

『ふふ。じゃあ、宝石は2つ』

 

即答。やっぱりこの人、やり手だ。

私は一呼吸置いてから、言った。

 

「“この件に関して公言しない、私のことを誰にも言わない”という縛りを、正式に結んでくれるなら、それで構いません」

 

この条件で折れるか、突っぱねてくるか。

一瞬、沈黙。

 

そして、

 

『……いいよ。それで交渉成立だ。

交渉上手がいて五条君が羨ましいよ』

 

その後、宝石の受け渡し方法、お金の送付などの取り決めをして、通話を終えた。

冥冥みたいなタイプは、息をするように人を値踏みしてくる。

常に見透かされている気がして、本当に疲れる。

 

私はスマホをそっと伏せ、天井を見つめながら、深く息を吐いた。

 

……やりきったというより、ただ、ぐったりした。

 

 


 

 

冥冥からもらった情報を頼りに、私たちは静かな住宅地の外れ——昭和の雰囲気が色濃く残る、くたびれた駄菓子屋を訪れた。

 

暖簾は色あせ、看板は文字が剥げている。

原作でも知っていたけど、まさか、ここがシン・陰流の当主の拠点とは。

 

「……私が来る意味、なかったですね」

 

ぽつりと、七海が言った。

 

彼の視線の先、床に突っ伏して盛大に気を失っている老婆。

見事な白目で、ピクリとも動かない。

 

「完全に油断してた阿呆が悪いんですよ」

 

まずやったことは、自分と七海に「呪霊や人から認識されなくなる」と書き込んだ。

それから駄菓子屋に入ったのだが、上手いこといった。本当に、全然気付かない。

老婆が背を向けている時に。そっと洋服の裾に触れページを開き、シン・陰流の当主であることを確認。

『1時間気絶』と速攻で書き込んだ。

 

気絶してピクリとも動かない老婆――いや、シン・陰流の現当主の額に手を当て、パラパラと記憶をめくる。

 

「これが現役で現場に出まくっている術師なら、多少の違和感があったかもしれないのに」

「容赦ないですね」

「こんな人間に優しくするほど私人間できてないので」

 

老婆の記憶は、正直、なかなかに酷かった。

術式で“読めてしまう”からこそ、情報の生々しさが刺さる。

原作である程度知っていたが、

 

「うわ……最悪」

 

私は顔をしかめながら、眉間を揉む。

それでも、目的は達成しなければならない。

目を凝らし、記憶を一枚ずつ丁寧にめくっていく。

 

「あった……シン・陰流の簡易領域に関する、運用と使用の記憶」

 

私は自分の左腕にそっと触れ、術式を発動。

ページが浮かぶ――そこに、記憶を分かりやすいように整形して書き写す。

 

私は転生者特典なのか記憶力が良く、一度覚えたことは忘れない。

ただ、記憶のページは雑多に文字が並んでいるから、私は分かるけど他人からは見辛い。

こうしてちょっと整理すると、他の人に共有する時に楽だ。

手帳も端末もいらない、自分だけの記録媒体。

 

さらに、老婆の記憶の中を見て私たちの記憶がないことを確認。

その後、“訳もわからず、いきなり気絶した”記憶に二重線を引く。

書き込みと同時に、その記憶がスッと消えていった。

そして、小春日和が心地よくて1時間ほど昼寝をしてしまった。

と追加する。

 

「これでよし。目が覚めたときは、心地よい昼寝から目覚めただけ」

 

七海と連れ立って駄菓子屋から出る。

いや、『呪霊や人から認識されなくなる』は便利だな。こういう少人数での時に使える。

都内の繁華街のような人混みだと人にぶつかられまくって、途端に使えなくなるが。

命令文で制御できないもんかな…

そんなことを考えていたら、七海がぼそりと呟いた。

 

「……それにしても、術式に目覚めてから、ずいぶん変わりましたね」

 

視線を向けると、七海が心底感心した様子で私を見ていた。

 

「呪力量も、呪力操作も、以前とは見違えるほどです。

いや、呪力操作に関しては元々上手かったですが、今はレベルが違う。

あなたより上手い術師は、もうそう多くないですよ」

 

私は自分の体を見下ろし、腹部に手を押さえた。

 

「呪力の総量に関しては、増えたというか、きちんと使えるようになったみたいですね」

 

学生時代に呪力が少なくて非常に苦労したのを思い出す。

夜に宝石に呪力を込めて、昼間は任務にいて常時カツカツだった。

 

「子供の頃に頭をぶつけて呪力が目覚めたんですけど、術式は発現しなくて。

中途半端な覚醒のせいか一度に練れる呪力量がほんと少ないというか、上手く流せない感覚があったんです。

それが無為転変でそこらも改善されて通りが良くなったのかな。スルスル流れる感じがあります。

結果、総量も上がったんだと思います」

 

「……なるほど」

 

「それから、呪力操作ですが」

 

私は自分の胸元をぽんと指で叩く。

 

「バフ、かけてますからね。」

「……バフ?」

「はい。さっき自分に書いた『呪霊や人から認識されなくなる』と同じで、

『呪力操作を最大効率で行える』って書いてあるんです。

元々、宝石に呪力を込めてた経験があるので、精密操作には慣れてました。

そこにこの術式で、自分の才能の範囲内ギリギリまで、チューニングをかけたってわけです」

「……それで、あの精度ですか。

……いや、もはや呪力操作に限っては、五条さんに次ぐレベルかもしれませんね」

「……いやいや、それは持ち上げすぎです。

五条さんなんて、呪力を分子単位で制御してるんですよ?」

「それが“分かる”って時点で、普通じゃないんですけどね……」

 

いや、それは原作知識で言いたくなったが、流石にそこまで言えるはずもなく話を逸らす。

 

「ここからは、別行動を取ります」

 

私の声に、七海がわずかに眉を寄せる。

 

「京都の五条家には、もう戻りません。

これ以降、宿儺と羂索が“禪院家の懲罰部屋”を使うはずです。

京都に居続けるのは、あまりにも危険すぎます」

 

小さく息を吐いて、私は視線を落とした。

……あの五条家ですら、今や安全とは言い難い。

 

「ひとまず、七海さんは東京の高専へ。

『呪霊と人間に認識されない』効果は維持しておきます。

高専内も自由に出入りできますが、監視カメラには映るので注意してください。

誰かと会話したいときは、正面に立って身体のどこかに触れてください。それで認識されます」

 

私は淡々と説明を続ける。

 

「それから、シン・陰流の簡易領域。

さっき私が回収した“使用方法と運用情報”を、七海さんに書き込みます。

これで使用可能になるはずです。実戦で慣れてください」

 

書き込みでの練度強化より、自分で掴んでもらった方が早いし、納得もしやすい。

 

「あと、できればで構いません。

家入さんから反転術式のレクチャーを受けて、可能であれば――習得してください」

 

学生時代にも同じことをやってるはずだが、もう今後の戦いは反転術式か領域対策が必須だ。

できればと言ったが、なんとしてでも習得してもらいたい。

七海は目を細めたまま、短く問いかける。

 

「……ずいぶん無茶を言いますね。

あなたは、その間に何を?」

 

その問いに、私はほんの一瞬、言葉を飲んだ。

けれど、躊躇している時間はもうない。

 

「宿儺が完全復活する前に、“即身仏”を破壊します。呪物じゃないので、破壊可能です。

それと、できれば“指”をもう1本確保したい。これは難しいかな…

とにかく宿儺の戦力を、徹底的に削ります」

 

これは――

人外魔境新宿決戦に向けた、仕込みだ。

両面宿儺の力を、一つでも多く削いでおくための。

 

宿儺の復活を、完全には止められない。

当初は、伏黒の身体を利用した復活そのものを阻止する計画だった。

けれど、イレギュラーが連鎖的に発生し、

以前まで積み上げてきたチャートはすべて、投げ捨てるしかなかった。

 

それでも、抑えられる犠牲はあるはずだ。

 

「……もちろん、被害は出ます。

でもその代わり、“羂索”と“両面宿儺”を、確実に討ち取るチャンスでもあるんです」

 

私は自分の手を見下ろし、そっと握りしめた。

五条の命を、賭けにする形になる――それは、重々承知している。

 

……本音を言えば、そんな博打、やりたくない。

五条は実際に両面宿儺との戦いとなれば、喜々として戦いに向かうバトルジャンキーだ。

 

戦って負けて、でも満足し高専時代の姿で笑ってる、空港の光景を思い出す。

 

それを知っててなお、

「死なせたくない」という感情だけは、何度計算し直しても、どうしても削れなかった。

 

私は、呪術廻戦は箱推しだったんだよ。

誰だって、本当は死んでほしくないんだ。敵側はもう流石にそんな気持ちは無くなったけど。

たとえ世界の理屈がどうあれ、それだけは、ずっと変わらない。

 

「もちろん、五条さんは死なせません。……きっと、やれるはずです」

 

少しの間を置いて、七海が問う。

 

「……伏黒くんに受肉する時に、邪魔するのはダメなんですか?」

 

私は静かに、首を振った。

 

「できません。止めるのが私だった場合——不味いことになる」

 

「理由は?」

 

「……たぶん、私も“宿儺の受肉体”になれる人間なんだと思います」

 

七海の目が、かすかに見開かれた。

 

「伏黒恵に宿儺が執着したのは、術式だけじゃない。

“受肉が可能な肉体だったから”です」

 

私は一息置いて、続ける。

 

「他人に関心を持たない宿儺が、なぜか……私には反応を示した。

最初は、羂索のマーキングかとも思っていましたが、恐らく違います。

伏黒くんがダメなら次は私。そういう順番なんだと思います」

 

七海は苦い顔で黙っていた。

彼なりに、もう答えは出ていたのだろう。

 

「宿儺は、虎杖くんという“檻”から逃げたがっている。

伏黒くんがダメだった場合、次の“器”は、私になる」

 

冗談めかして笑おうとしたが、その笑いは喉の奥で詰まった。

……これは、笑える話じゃない。

 

五条にも言っていない。

けれど、原作知識のある私は、そんな気がしていた。

 

「だから。私は、伏黒くんに受肉すること自体は止めません。

私に来られるより、まだマシです。私が器になったら……展開が読めなさすぎる」

 

最悪の場合も想定していた。

術式を持たない私が“器”となり、自ら一度死ぬことで封じ込める——という手段も、チャートの一つに入れていた。

宝石に呪力を注ぐのは私純粋な技術のため、宿儺でも再現は不可能なはずだ。

原作で死んでから生き返った人を何人も見ている。きっと私にもそうしてくれると信じてた。

 

けれど、私が術式に目覚めてしまった。

 

私の術式は“記録と改変”――思考や記憶を読み取り、敵味方にデバフを振り撒ける能力だ。

この力が、宿儺の手に渡ればどうなるか。

伏黒が乗っ取られるより、ある意味……もっと質が悪い。

 

七海の表情は、もはや完全に凍りついていた。

ただ、その視線がわずかに伏せられたのを、私は見逃さなかった。

 

「厄介ですね。この内容を、五条さんたちに伝えられないなんて…」

「……五条家で、何度も試したんですけどね」

 

思い出して、私は軽く息を吐く。

五条家の人たちにも、実は未来知識(原作の内容)を話そうとした。

 

……電話が鳴る。相手が急用で席を外す。私が突然むせる。

とにかく、話が遮られる。

 

「未来知識を話そうとするたびに、不自然な邪魔が入るんです。

結局、誰一人にちゃんと伝えられなかった」

 

七海にだけ話せたのは、彼がもう“原作の運命”から外れているからだと思う。

おそらく天与呪縛に近い何かで、私は制限されている。

 

「未来の知識を得た時点で、“制限”がかかってるんでしょうね。

特に五条さんに関する内容は……言葉にすることすらできなかった」

 

七海によれば、五条は私の“未来視”を疑っていたという。

けれど、それを本人から直接聞かされたことはない。

それ自体が不自然だ。

 

「たぶん、彼も“何かに遮られてる”んだと思います。……無意識にでも」

 

私はふと思いつき、顔を上げる。

 

「七海さん。高専で、家入さん相手に試してもらえますか?

どこまで話せるか、匂わせなら通るのか……まだ検証が足りてません」

 

「……確かに、それは一つの方法ですね」

 

「“私が言えない”だけで、“他人経由なら伝わる”抜け道があるかもしれません。

――あまり期待はしていませんが」

 

七海は短く考え、頷いた。

 

「……分かりました」

 

「ありがとうございます。

何か不自然なことが起きたら——その時点でアウトですから」

 

私は、ほんのわずかに笑った。

 

「……でも、こうして頼めるのが、七海さんでよかった」

 

 


 

 

獄門疆の中に入って、どれくらい経ったのか。

 

仕事がクソ忙しいときなんて、時間なんて一瞬で吹っ飛ぶくせに、

疲労のあまり時間が普段より長く感じることがある。

その時と同じような感覚に陥っていた。

時間の感覚そのものが壊れてる。

 

周りを囲む大量の骸骨。

絡みついてくるそれらを払い除けると、あとは、もう思考しかできない。

他には何もなく、誰も居なく、誰の声も聞こえない。

六眼の機能を極力抑える。

この中に長時間いると、人はいずれ発狂する。

なるべく意識をぼんやりとさせ外界の情報をシャットアウトしながら、ただ、己の内側で思考だけをぐるぐる回し続ける。

 

まず、あの偽物......夏油傑の皮を被った“中身 (脳みそ)”をどう殺すかのシミュレート。

ありとあらゆる状況を想定して、幾百通りもの殺し方を試した。

まぁ、どれも現実で使えるかは不明だけど、やらずにはいられない。

 

次に、渋谷の“あの後”。

自分が封印された時点で、どう動いたか。

僕の生徒たちは生きているのか?

潔乃は?硝子は?七海は?夜蛾はどうなった?

誰が生き残って、誰が死んで「僕がいない世界」は、どこまで壊れた?

考えてもキリがない。

 

術式の再解釈。

無下限呪術と六眼、それぞれの理論的限界と応用の可能性。

術式の起こりで相手に術式が把握されるのを、回避する方法など。

...飽きた。

 

何百回も脳内シミュレートして、

あとは外に出て確認するだけ。

でも出られない。

 

眠っても、夢も見ない。

ただ脳が“シャットダウン”するだけで、

物理的時間が止まってるからだろうか、起きても回復した感じは皆無。

 

「くっそ、暇だな。寝ても寝た気しないし」

 

……ふと、思い出す。

 

「そういや、しばらく一緒に寝てねぇな」

 

元日のあの日から、疲れた時など定期的に潔乃を抱き枕にしていた。

潔乃の部屋に忍び込んで、無言で隣に行って、勝手にくっついて、抱きついて......

文句を言われながらも、なんだかんだで許してくれた。

ショートスリーパーだけど、潔乃と寝る時は深く長時間眠れたのを思い出す。

 

頭をがしがしと掻いてから、ふと周囲に転がっている骸骨へ視線を向ける。

一応は人の形をしてるそれを、なんとなく試しに抱き寄せてみる。

 

「…………」

 

……硬い。冷たい。

全然あったかくない。

 

「ははっ、流石にないね。潔乃に失礼すぎ」

 

笑って、骸骨を放り投げた。

カラン、と乾いた音を立てて、床に転がる。

 

「痩せっぽちの潔乃でも、ここまで酷くねーわ」

 

言葉にしたことで、余計に“会いたさ”が滲んでくる。

が、無理やりその思考を振り払う。

……何、感傷じみたこと考えてんだか。僕らしくない。

 

また背中を骸骨の壁に預けて、

あとはもう、次に潔乃を抱きしめて寝る日を想像してやり過ごすしかなかった。

 

 


 

 

主人公

 

休む間もなく新たな仕込みを始める。

本来のチャートだと新宿決戦を発生させない、

発生させたとしても自分を器とさせるなどとシュミレートしてた。

が、全部ポシャったので何としても五条を生かして戦いを終える方向に舵を切ってる。

なお、主人公の予感は正しく、宿儺の器として適性がある。

 

 

五条悟

 

骸骨で遊び始めるほど、暇。

 

 

七海建人

 

明らかに原作より強化されつつある。

主人公の行動や思考の端々に良くも悪くも容赦ない五条の気配を感じて、

常識人間だと思ってたけど主人公もやっぱり呪術師だとなってる。

東京高専で家入から反転術式を学ぶがやはり意味がわからない。

学生時代も言われたヒューンヒョイに悩まされる。

 

 

 

家入硝子

 

七海がいきなり高専に来てビビった。

反転術式を教えるが、七海の才能がなさすぎてタバコの量が増えた。

主人公に面倒ごと押し付けやがって、いい酒持って来いとメールで文句を送る。

 

 

 

冥冥

 

いきなり主人公に、シン・陰流の当主の居場所を聞かれて驚いた。

もう少し搾り取るつもりが、満足いくほどとまではいかなかった。

やるね!さすが五条くんのお気にり。

今後もいい付き合いをしていきたいと思ってる。

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