【本編完結】とある転生者の役割交代   作:kotedan50

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死滅回游の裏側?その③
ほぼほぼ、オリジナルなので苦手な方は注意

・伊地知ポジション成り代わり(伊地知の双子の妹)ものです
・オリキャラ出ます
・激しい捏造、妄想含みます
・ネタまみれです


転生者、山場を一つ越える

翌日までぐっすり寝たら、だいぶ疲労は取れていた。

日課の宝石チェックと呪力供給を済ませる。

 

……無為転変で術式から目覚めて以来、明らかに呪力量が増えている。

おかげで、呪力を流し込める宝石の数も増え、効率が上がった。単純に手数が増えるので、私としてはありがたい話だ。

 

とはいえ、私の呪力量が突出しているわけではない。

仮に目安を付けると、宿儺が「350」、乙骨が「150」、五条が「130」、1級術師たちが「100」とするなら——

私は「80~90」くらい。準1級から2級術師の中では、やや多い程度の部類だろう。

 

それでも救いなのは、術式によって呪力操作を最大効率で行える点だ。

実際に“運用できる呪力”という意味では、数値以上に働いてくれている。

 

……というか、無為転変される前なんて、感覚的にはどうあがいても「40」くらいが限界だった気がする。

そりゃあ、どう頑張っても3級止まりですよね。五条が補助監督ルートを勧めてきたのも、まぁ、納得。

 

五条が戻ってきたら、何言われるんだろうか。術師なれと言われそうだなーやだなー

この呪力量と術式を見逃してくれる人でもないので、頭が痛い。

 

 

スケジュールを確認する。

明日の正午に真希が東京第1結界(コロニー)にて虎杖達と合流するはずだ。

そして15:00に、伏黒津美紀が原作の伊地知さん(兄さん)を身代わりに回游を離脱するため、結界(コロニー)内へ入るはずだ。

今回は私も泳者(プレイヤー)のため、その役割は新田が担うそうだ。

私不在の時はどこまでも私の代わりに対応させられるのね。新田ごめん。

 

まぁ、それは良い。生き残ったらあとで飲みにって奢ってあげるから。

 

話を元に戻そう。

まずは、伏黒津美紀に「参加の宣誓」をさせることから始める。

 

原作では、東京第1結界(コロニー)の“外”で、伏黒と虎杖が宣誓を行い、その後結界(コロニー)へ入っていく描写があった。

......宣誓そのものは、結界(コロニー)の外で行ってOKと解釈できる。

つまり、宣誓した後、コロニーに入らないという行動も取れるのでは?

 

……もっとも、宣誓しただけで中に入らなければ、点数も稼げず、最終的に詰む。

だからこそ、そこにこそ、あえて“規制されていなかった”のだと判断した。

 

ならばこちらは、それを利用させてもらう。

結界(コロニー)の外で宣誓を済ませた直後に、私の術式で「万」を封じる——あるいは、強制睡眠させる。

そのまま結界(コロニー)には入らず安全な場所へ避難させる形で、彼女を保護するのが狙いだ。

 

この作戦を行う点での心配事は1点。

他人への記憶改変や強制操作には、相応の呪力が要る。

この前、シン・陰流の当主に対しては、ほとんど消耗しなかった。

……が、それはおそらく彼女が既に前線を退いた、堕落した術師だったからだ。

 

相手が「(よろず)」となれば話は別。

1000年前の呪術全盛期のガチガチの術師。術式に目覚めたばかりの私との実力差を考慮すれば...

最低でも“全呪力量の7、8割”は持っていかれる、と見積もっておくべきだろう。

 

今回の主力協力者は、真希。

基本的には、真希の覚醒したフィジカルギフテッドな剛力で、万を押さえつけて一気に決着をつけたいところだ。

 

そして実は、七海・冥冥・東堂にも、バックアップとして待機してもらう予定でいる。

……もちろん、冥冥さんに頼むとなれば、ただで済むはずがない。

 

今回もまた、五条の通帳から資金を引き出し、ついでにまたも呪力を込めた宝石を1つ、渡すハメになった。

 

……どんどん減っていく、五条の預金残高と宝石のストック。

さすがに、意識が飛びそうになる。

 

特に宝石は、「渡す前に俺に確認しろ」と五条に言われていたし……怒られないかな、これ。

幾つになっても、五条に怒られるのは苦手だ。

学生時代の関係性の刷り込みって怖い。

 

今回は「伏黒津美紀が受肉体の可能性は?」と疑問を投げて、

その後時間を置いて「念のため、伏黒津美紀を私が調査する」と、まずは伝えただけだったのに、

七海以外のメンバー、冥冥(報酬は別として)、東堂、真希までが即協力を申し出てくれた。

 

ありがたい。……本当に、ありがたい。

 

未来視があることは、すでに七海が伝えてくれている。

「私が動く=迷う必要はない=とりあえず手を貸す」

——そう理解されているようで、皆、何も言わずに協力してくれる。

 

どうやら、「私の“今”の行動に対して手を貸す」ことで、

“未来”に干渉しているわけではなくなるため、強制力が働かなくなるのではないか——

というのが、七海の見立てだった。

 

……未来視に対する、“間接的な抜け道”。

それを聞かされたときは、ちょっと複雑な気持ちになった。

 

ありがたいけどさぁ……それ、早く知りたかったよ。

 

もしも、万を外で仕留めきれず、結界(コロニー)内に持ち込むことになった場合は、

基本的に、原作と同じ展開になると想定している。

 

冥冥の黒鳥操術でコロニーの周囲を監視。

万が外に現れた瞬間、東堂の「不義遊戯(ブギウギ)で引き寄せ、

七海が囮役となって時間を稼ぎ——

その隙に、私が術式で“封印”か“強制睡眠”を仕掛ける、という流れだ。

ちなみに、東堂はビブラスラップにたどり着いた直後で、術式の改造中らしい。

詳細は聞いていないが、なんとか術式発動は可能なため、今回参加してくれた。

 

……ただ、本音を言えば、この布陣はまだ使いたくなかった。

東堂や七海は、本来なら“宿儺戦”まで温存したい。

できれば、「(よろず)」程度でカードを切らされるのは避けたいのだが......

 

そこで、電話が鳴った。七海だ。

……明日の打ち合わせの件だろう。

 

『真希さんが、明日早朝に東京へ戻るそうです。

その際に、一度打ち合わせをしたいとのことでした』

「わかりました」

『冥冥さんと東堂くんにも、すでに連絡済みです。

待ち合わせ場所は——』

 

……七海、仕事が早すぎる。本当に助かる。

私は術式を発動させ、待ち合わせ場所の情報を自分に記録した。

 


 

バイクに乗って、待ち合わせ場所へ向かう。

目的地に着くと、すでに真希がいた。

 

バイクから降り、

自分にかけていた“術師や呪霊に認識されない術式”を解いた、ちょうどその瞬間——

 

「っ……!!?」

 

真希が、思いっきり後ずさった。

警戒心むき出しの顔。反射的に距離を取っている。

 

「ま、真希さん???」

「……伊地知さん? は? 金髪? メガネは? ……やっぱ受肉体か!!!」

 

「いやいやいや! 違うから!

これは見た目をごまかすための変装だからね!」 

 

ド金髪のベリーショートに、メガネなし。

メイクはいつもより派手め。しかも——使ったことのない系統の、マットな赤い口紅なんて塗っている。

耳にはピアス。昨日、思いつきで開けたばかり。

 

上はモッズコートに、ハイネックのニットのトップス。

中には、ヌーブラでなんとかボリュームアップさせた胸。

下はライダーパンツ。

足元は、ゴツめのブーツ。

 

 

うん。我ながら、“伊地知潔乃らしさ”を限界まで削ぎ落としたコーデだと思う。

……そりゃあ、真希が後ずさるわけだ。

 

……失敗した。

最初に「見た目を変えてます」って言っておけばよかった。

なんとか伊地知ですと説明すること5分。

真希に、「紛らわしいことすんな」と、わりとガチめに言われる。

 

「……すみません」

 

素直に謝ると、真希は腕を組んだまま、じっとこちらを見つめた。

 

「……本当に術式使えるようになったんだな。

私でも気づけなかった」

 

天与呪縛の“フィジカルギフテッド”、

視覚・嗅覚をはじめ、五感すべてが強化されているはずだ。

その覚醒した真希でさえ、私がバイクから降りて隣に立って術式を解くまで、気づかなかったというのか。

 

……いや、私の術式、ちょっと凄すぎやしない?

ていうか、ワンチャン目眩し程度に考えていたけど、超有効だな。

あぁ、だから飛騨霊山浄界で天元が何のアクションもしなかったのか?

もしかして、五条の六眼も欺けるのかな?

この術式使って潜んでおけば、五条の復活まで無事耐えられそうだ。

 

「羂索から押し付けられたプレゼントですが、案外有効なようで。

敵に塩を送るなんてバカですよね」

「ちげぇねぇ。頼もしいや」

 

などと真希と楽しく会話をしていると、七海、冥冥、東堂が合流してきて毎回

 

「...は? 金髪!!!! 受肉体?」

 

と、ほぼ同じ内容で突っ込まれて——カチンときた。

 

いや七海、お前は数日前まで一緒にいただろ?

その時は確かに、渋谷事変で壊れたメガネがなかったこと以外は、いつもの伊地知潔乃だったけどさ。

ベリーショートの金髪と服装が「伊地知さんらしくない」って……

 

東堂も東堂で、

「Ms.伊地知、あなたは普段でも美しいのに」

……とか言ってんじゃない。普通に気持ち悪いわ。

 

黙ってうっすら笑ってる冥冥の方が一番マシって。

こっちは“伊地知らしさ”を意図的に消してんだよ。

 

なのに七海は真顔で、

 

「高専関係者からすると衝撃ですよ。

...五条さんも、唖然とするんじゃないですか?」

 

……って、七海、さっき一瞬、胸のサイズ見たの分かってるからな?

先輩でもぶん殴るぞ?

 


 

4人で話し合い、まずは私の術式で、七海・冥冥・東堂に恒例の“呪霊と術師に認識されない”処理を書き込んだ。

加えて今回は、私と真希には“3人を認識できる”という効果も付与してある。

 

「……すごいね、伊地知。この術式、本当に使い勝手がいい」

 

冥冥が、目を細めて素直にそう評した。

彼女の口からここまで明確な称賛が出るのは、珍しい。

 

「えぇ。会話も、私たちの声だけは伊地知さんと真希さんに届く。

これは便利ですね」

 

七海が、冷静な口調で分析的に続ける。

彼の“便利”は、最上級の実用評価だ。

 

「術式が覚醒して、まだ16日か。

それでここまで把握し、運用できているとは……まさに知性と才覚の結晶。

誇っていいぞ、Ms.伊地知」

 

東堂が、満面の笑みでサムズアップしてきた。

うん、原作通り若干気持ち悪いが、ありがとう。もちろん顔には出さない。 

 

……なんだこれ。

皆からべた褒めされて、居心地が悪い。

 

私は元々、術師としてはへっぽこだった。

褒められ慣れてないのもそのせいだ。

 

……学生時代に、五条に呪力を込めた宝石を褒められたのがハイライト。

事務や裏方では「助かってる」と言われることは多かったけど、術式面では完全に新参者だったわけで。

 

どうも、落ち着かない。

ノートPCを取り出し、捨ててもいい回線のスマホでテザリングをつなぐ。

幸いこのあたりは電波は生きてる。

ダークウェブに接続し、ここ数日の情報を確認する。

 

「2日前に、各コロニーに各国の軍隊が侵入したのは——間違いないようですね」

 

原作知識で知っていたことの再確認。

……でも、実際にこうして裏が取れると、やっぱり気分は悪い。

 

七海も、明らかに嫌な顔をしている。

彼はルーツが海外にあるぶん、こういう話題にはより敏感だ。

 

「……腐っても経済大国3位の国なんだけどね。

さすがにこれは国際問題になるね」

 

冥冥が、不機嫌そうに口を開く。

今回の件で、きっと何か“損切り”もしたのだろう。商人としての顔がちらつく。

 

「Ms.伊地知は、ハッカーなのか?」

 

東堂の声。

このセリフ、ここ数ヶ月で何人目に言われたかな。

 

「補助監督をやっていると、この手の技術も必要になりますから」

「なるほど。実践で得た技術ということか」

 

……いつも似たようなやりとりしてるな、と思いながら、

私は東堂との会話を続けた。

さっきから「気持ち悪い」とか言ってるけど、

私は東堂、実は嫌いじゃない。むしろ、けっこう好きな部類だ。

 

こいつが出てくると負けない、って感じがいい。

原作者もそう言ってたし、私もそう思う。

あと、何度も言うが、東堂は女性に対しては紳士だ。紳士な男は嫌いじゃない。

ふと、ダークウェブに高田ちゃんのネタが流出してないか、検索を始めると東堂が秒で食いついてきた。

そのまま東堂と高田ちゃんトークで盛り上がる。

七海が「この人マジか」と言う顔をしてるが、東堂は五条よりだいぶあしらいやすいぞ。

 地雷がわかりやすいからな!

 

そんなこんなで話していると、東京第1結界(コロニー)から真希が出てきた。

どうやら、虎杖たちとの話がついたらしい。

 

さて——これからが本番だ。

 

冥冥と東堂は、この場の見えない位置で待機。

私と真希は、補助監督の新田と合流し、伏黒津美紀が入院している病院へ向かうことになった。

……ちなみに、合流した新田には、案の定こう言われた。

 

 

「伊地知さん!!! 金髪ぅ!!!! どうしたんスか!!!?」

 

 

どんだけ“伊地知らしさ”のイメージ固まってたんだよ……と、天を仰いだ。

 


 

「新田さん、本当に私の変わりに結界(コロニー)に......やっぱり私自分で......」

伏黒津美紀の入院していた病院からの移動中、車から降りて徒歩に切り替えたタイミングでの会話だった。

しかし、こうして向き合って話していると——本当に、伏黒津美紀にしか見えない。

過去の記憶を読み取った上で、演技も完璧。……やっぱり厄介だ。

 

ちなみに彼女にも、「伊地知さん!どうしたんですか!」と驚かれた。

……本当に、まいった。

 

「いえ、あまり結界(コロニー)外の術師を減らすのも得策とは思えませんから」

 

私はそう返す。

現状は結界(コロニー)に一度入ると抜け出せないため、バランスが大事なのは本当の話。

 

「なんか…死刑囚と司法取引みたいな……」

 

原作と同じセリフを言う真希に、私も原作と同じ言葉を返す。

 

「はは、できなくはないですが時間が足りません。

津美紀さんの宣誓期限の19日以内に、この状況まで持ち込めたのは奇跡です」

「そうっスよ!私がモタつくわけには行かないっス!」

 

新田が明るくサムズアップしてくれる。

ほんとムードメーカーで助かる。

 

「伊地知さんも死滅回游に巻き込まれてしまったんですね」

 

悲しげにいう伏黒津美紀に内心で、万は黙れと思いつつ表情には出さない。

 

「はい、だから、ちょうどいい宣誓の機会なんです。なので新田さんのことは私に任せてください。

最低限は戦えるようになりましたから」

 

私は新田と同行する形で結界(コロニー)入るという名目で同行している。

まぁ、私も宣誓だけして入らないけどね。

 

「あと、こう見えても学生時代は呪術師希望だったんですよ」

「え”」

「マジっスか?」

 

とりあえず原作をなぞるように言ったら、嘘でしょと言う反応をされた。

確かにへっぽこ呪力だったけど、そこまで驚くことかなぁ?

 

「五条さんに、『オマエ術師やめろ。クソの役にも立たねぇから』って言われましてね。その後すぐ教習所行って普通免許取ってこいと脅されましたね」

 

「うわー相変わらず五条さんって、デリカシーないっスね」

 

新田がドン引きと言った様子。うん、分かる。

 

「まぁ、でも——五条さんがああ言ってくれなかったら、中途半端な術師になって、すぐ死んでたでしょうね」

 

懐かしいな。あの日、自販機コーナーで——確か、ブラックの缶コーヒーを奢ってくれたんだった。

 

当時の五条は、自分が好きじゃない飲み物——

特にブラックコーヒーなんて、滅多に奢ってくれない人だったのに。

 

今回は話してないけど、

「クソの役にも立たねぇから」の後に、

 

「……オマエの宝石(アレ)はコスパ悪すぎ」

 

って、本気で残念そうに言われたの、今でも覚えてる。

 

呪力を流し込んだ宝石の技術だけは、昔からちゃんと評価してくれていた。

だからこそ、呪力量の少なさを理由に、呪師を外れるように外れるように促してくれたんだと思う。

 

あの“最強”にも、術師として認められてた部分がある。

それは今でも、私の誇りだ。

 

横を見ると、伏黒津美紀が少しだけ複雑そうな表情をしている。

その背中を、気にしないでいいと言うように、軽くポンポンと叩いた。

同時に、私は術式を発動させていた。

ちょうど肩に手を置いた瞬間。ごく自然な流れの中で。

 

ちらりと、自分にしか見えない“本”に視線を走らせる。

内容を確認しながら、あらかじめ設定しておいたキーワードを仲間たちへ共有する。 

 

「あぁ、見えてきましたね。

あそこに見える、“真っ黒い”壁の向こうが——東京第1結界(コロニー)です」

 

『真っ黒い』=伏黒津美紀は受肉体

 

事前の打ち合わせで、伏黒津美紀が万に乗っ取られていた場合は

“真っ黒”という言葉を情報伝達のキーワードに使うと決めていた。

 

 

今、協力者の4人に、それを伝えた。

 

 

「では、津美紀さん、触れて宣誓を。

その後は結界内に入って、伏黒君虎杖君と合流してください。

ポイントを譲渡してもらったら、新田さんを身代わりにして回游を抜けてください。

そのタイミングで私たちも突入します」

 

真希がさりげなく、伏黒津美紀の側に立つ。

何も知らない人から見ると、ボディーガードのように見えて頼もしい。

見える位置に七海も冥冥も東堂もいないが、待機しているはずだ。

 

そんな中——

伏黒津美紀が、結界(コロニー)の境界に手を伸ばし、触れた。

 

すると、コガネが現れた。

 

私は、背中に手を回し、後手に組む動きの中で術式を発動。

万年筆型の“書き込み道具”を呼び出す。

 

津美紀は、怯えたような声で——確かに、死滅回游への参加を宣誓した。

 

 

その瞬間。

 

真希が即座に動いた。

津美紀の身体を押し倒し、地面に固定する。

 

私も、津美紀の背中に触れ“本”を出し——書き込む。

 

 

 

『万は意識の奥に沈む』

 

 

 

書き込めた。

だが、凄まじい勢いで呪力を吸われていく。背筋がヒリつくような感覚。

 

伏黒津美紀の顔が、状況を理解した瞬間、ぞっとするほど邪悪な表情に変わった。

 

だが——

 

次の瞬間には、伏黒津美紀は力なく、パタリと意識を失った。

 

 

 

「あっぶな……」

 

 

 

7割どころじゃない。

今の私から、9割以上の呪力を持っていかれた。ギリギリだった

 

術式覚醒後、呪力操作で効率化している状態でこれだけ吸われるとは——

呪術全盛期の平安の術師こわっ。

 

ふらついて、思わず膝をついた。 

 

書き込んだのが“消滅”じゃなくて、“意識が表に出てこられなくする”で本当に良かった。

これは東堂の提案だったけど、マジでナイス。IQ53万。

消滅にしてたらこの作戦は失敗していた。

 

 

 

状況をまだ把握していない新田が、隣で慌てている。

……けれど、答える余裕がない。

 

真希が手筈通り、伏黒と虎杖に伝えるため結界(コロニー)に入っていくのを見送る。

 

「……私たちは、すぐにこの場を離れましょう。

最悪、宿儺が来る……」

 

 

そう言いながら、限界ぎりぎりの呪力を絞り出すようにして、術式を発動させた。

私と新田に、「呪霊と術師から認識されない」効果を書き込む。

 

耐えられないほどの頭痛に視界が滲む。

でも、もうひとことだけ。

 

 

「あとは……彼らから話を聞いてもらえると……」

 

 

駆け寄ってくる七海、冥冥、東堂たち...

を指差したところで、私は呪力切れを起こし、

静かに、意識を手放した。

 

 


 

 

次に目を覚ました時は、高専のベッドの上で18日になっていた。

丸2日間も寝てたのか!

最初に目に入ったのは七海。私が目を覚ましたことに驚き、慌てて家入を呼びに行っていた。

私が意識を失っている間も、「呪霊と術師から認識されない」は発動が解けないのは事前で確認していたが、

まさか丸2日も意識を失うのは想定外だ。

認識できるメンバーが交代で私を見ていたらしい。すみません。

......私、冥冥にいくらお金取られるんだろうか?

 

ひとまず不便なので、書き込んだ術式を七海以外、取り消し線を引いて、解除してから、現状の状況を聞いた。

七海の生存は、いまだに限られたメンバーのみにしている。

 

話を聞いてみて、結論としては伏黒津美紀の件以外は、原作通りだった。

真希から伏黒津美紀が受肉体だったことを伝えた伏黒と虎杖が激しく動揺した瞬間、宿儺が「契闊」を使った。

原作通りに伏黒恵の体を乗っ取り、「泳者(プレイヤー)は結界を自由に出入りすることができる」のルールを追加して、逃亡したらしい。

いや、そうなると思ったよ。うん。

 

伏黒津美紀は宿儺に狙われることを見越して、憂憂の術式で、高専とは別の場所に移動済みとか。

五条の通帳の中の残高がとんどん減っていく……

ただ、いい判断だと思う。

憂憂の術式で逃げ回っていたら、宿儺でも捕まえることは不可能だ。

だから許して、これは必要経費!! でもごめんなさい!

脳内の五条に謝り倒す。

ちなみに万が出てくる気配はないが、意識も戻って無いらしい。

ひとまず伏黒津美紀が死ぬ最悪の事態は避けられた……ぐっと拳を握りしめる。また一つ運命を変えてやったぞ。

 

1人達成感で震えていたところに、

 

「あなた宣誓しないと明後日には死ぬところだったので、目が覚めてくれて助かりました」

 

と七海に言われて肝が冷えた。

慌てて参加の宣誓だけをしに行ったのは言うまでもない。

 

 


 

 

19日になって、虎杖や乙骨をはじめとする高専生たち——

それに、脹相、来栖華、高羽らとも顔を合わせた。

 

そして案の定。

既知の知り合いからは、お約束のように飛んでくる。

 

 

「伊地知さん!! 金髪!!! どうしたの!!??」

「やっぱり受肉して…」

 

 

という絶叫。

 

……うん、聞き流す。もう慣れた。

似合ってないのは、私が一番わかった。

だから、もう勘弁してくれないかな……

このゴタゴタが落ち着いたら髪色だけは戻そう。そう決意する。

 

原作の流れ通りに、伏黒を救う方法が話し合われ、

その後、すぐに五条悟の封印を解く流れになった。

 

復活の場に選ばれたのは、埼玉県木呂子鉱山。

呪術高専・第四練習場。

 

私は、そちらへの参加を辞退した。

原作でもその場にいなかったし、ここまできたら、五条の復活が失敗することはまずないだろう。

そして何より、補助監督としての業務が、滞りまくって大変なことになっていたからだ。

渋谷事変以降のゴタゴタと、私も高専から姿を消していた結果だ。私も原因の一因なので、手伝わないわけにはいかない。

上層部はいまもやっきになって私を探しているが、幸い認識阻害を使って誤魔化しつつ補助監督の業務に復帰した。 

 

腕まくりをして、久しぶりに事務作業を本気で片付けていくことにした。

もちろん、「最大効率で動ける」と自分の体に書き込んであるので、作業処理速度は以前の数倍だ。

気づけば、溜まりに溜まった書類が——どんどん減っていく。

残タスクがどんどん減っていく、この達成感。

補助監督をやってて楽しいのはこの瞬間だ。

 

ちら、と周囲の視線を感じて顔を上げると——

 

新田や、他の補助監督たちの目が、なんだかおかしい。

あ、彼らは私が認識できるようにしてある信頼できる補助監督たちなのだが。

 

……背後から微かに声が聞こえてきた。

 

「えっ、また?さっきまでこの山、丸ごと残ってたよね……?」

「いやもう……あれ、普通の人間の動きじゃないっスよ」

「術式で処理能力上げてるって話だけど……それにしても速度がエグすぎる……」

 

新田と、他の補助監督たちの声だ。

 

一応、こちらが認識できるように術式を書き込んであるメンバー。

小声のつもりなんだろうけど、耳にはちゃんと届いている。

 

……え、ちょっと待って。

 

なんか、五条さんを見る時と似たような目してない?

え、なに、私いま、化け物枠?勘弁してくれ。

 

 

——と、そこへ。

 

 

ぐらり、と足元が揺れた。

地震だ。思わず目を細める。

ほんと派手な男だよ。自分の復活で地震を起こすとかさ。

規格外にも程がある。

 

五条——おかえり。

 


 

極門疆から解放された僕は、真っ先に夏油傑の偽物のもとへ向かった。

だが、そこにいたのは——伏黒恵の体を新たな住処にした、両面宿儺だった。

 

その場で夏油の偽物を討つことは叶わず。腹立たしい。

代わりに、宿儺との“決戦”の日付だけが決まり、「仲間がいるなら、そこだろう」と判断して、高専へと飛んだ。

 

 

……全くの想定外だ。

親友()の亡骸を取り戻しに行ったはずなのに。

内心でそう愚痴りながら、高専の敷地を歩く。

 

自分がいない間に、世界は驚くほど様変わりしていた。

都内には大量の呪霊の気配、乱立する結界。

高専の結界も緩み、セキュリティもガバガバなのはすぐ分かった。

いや、そもそも日本全体を覆う、この空気感はなんだ?

 

——本当に、いったい何があった?

 

夏油傑の偽物らが言うには、まだ19日しか経っていないというのに。

 

高専は拠点として機能しているようだが、知ってる術師の呪力は感じない。

出払ってるのか? ……いや、1人いた。

 

そのひとりが、向こうから勢いよく駆けてくる。

 

ド金髪のベリーショート。耳にはピアスがいくつも光り、化粧も派手。

ハイネックのニット、モッズコート、ライダーパンツ。

スレンダーな体型で、ぱっと見、誰だかわからない——

 

でも、わかる。

 

「……潔乃、術式、発現した?」

 

見た目はまったく違う。

呪力量も、最後に会った時の倍以上になってる。

そもそも潔乃に術式なんてなかった。何があったんだ?

でも、六眼が“伊地知潔乃”だと告げている。

そして何より、「俺」の魂が——それを肯定している。

 

こいつは間違いなく、潔乃だ。

 

「だいぶイメチェンしたじゃん」

 

近づいてきた潔乃の前に立ち、顔を寄せて、上から下までまじまじと観察する。

 

……なんで、こいつ、こんなにイメチェンしたんだ?

ド金髪にベリーショート、マットな赤リップも、案外似合ってる。

メガネは確か元々『伊達』って言ってたし、外したんだな。

耳のピアスは開けすぎてて痛そうだけど、まあ、悪くない。

 

にしても、胸、パッド入れてんのか?

……サイズ盛ってんじゃねーよ、このチッパイが。

 

「いや、帰還して第一声それですか?あと視線がなんか不快です」

 

呆れたように言いながらも、いつもの調子で憎まれ口を返してくる。

その様子が、あまりにもいつも通りで、心底嬉しかった。

 

「そりゃ、お前もでしょ?

ま、とりあえず——ただいま!」

 

右手を出すと、潔乃が勢いよくバチンとハイタッチを決めてきた。

こういうことに潔乃が素直に乗るのは、実のところ珍しい。

潔乃のやつは、なんだかんだ、特級と補助監督という立場を表では大事にしてるから。

 

「お帰りなさい、五条さん。

ご無事で何よりです」

 


 

主人公

 

伏黒津美紀の運命を変えてやったぞ!

見た目のイメチェンで、なんで?やら受肉体?と疑われ閉口する。

そんなにおかしいかなーこれとなってる。

じぶんの伊地知トレースが完璧すぎたと言う自覚はない。

ただ、五条だけは自分だと最初からわかってくれて、六眼ってすげーってなる。

 

 

五条悟

 

原作通り19日ぶりに復活した。

主人公のイメチェンについては、主人公に変わりは無いじゃん。の一言。

人の美醜にあまり興味がない。

ただ、胸のサイズアップだけは後日デリカシーなくいじって、主人公に殴られる。

主人公に術式がいきなり生えたことと、未来視については次の話で徹底的に聞く予定。

 

 

七海建人

 

伏黒津美紀の件で、サポートとして控えていたが、

呪力切れで意識を失った主人公を高専に運ぶ以外の仕事がなかった人。

高専に実はいるが、主人公の術式“呪霊と術師に認識されない”で五条は認識できてない。

目の前にこればなんとか感知できる。

主人公のイメチェンについては、お似合いですが違和感が…の一言。

 

 

冥冥

 

伏黒津美紀の件で、サポートとして控えていたが、鴉を飛ばした以外に仕事がなかった人。

でも今回の件で、だいぶ儲けさせてもらったので、やっぱり主人公は上客。

主人公の術式のチート具合を見てニンマリ。今後ともご贔屓に。

主人公にイメチェンについては、固定イメージをつけた後にガラリと変えるのは上手いね。

 

 

東堂葵

 

伏黒津美紀の件で、サポートとして控えていたが、高田ちゃんトークを楽しんだ以外は何もしてない人。

主人公とはそれなりに仲が良い。年齢や階級などで人を差別しないし、何より好みのタイプが面白いので。

術師じゃないのが残念だと思ってたが、今回術式が発現して、短い日数でそれを使いこなしてる様子に素直に称賛した。

あの術式で一度手合わせしてもらいたい、と思う程には、バトルジャンキー。

主人公のイメチェンについては、理由を理解しつつも、元の方が美しいと思ってる。

 

 

伏黒津美紀

 

なんとか命を繋いだ。今は万は意識の深淵に封じ込めた影響もあり、昏睡状態。

主人公のイメチェンについては、本人が見てたら

「伊地知さん、何か辛いことでもあるんですか?」

と別ベクトルでで心配して、伊地知を泣かせた。

 

 

 

 

ガチギレで伏黒津美紀の心の奥底で叫んでる。

が、誰にも聞こえないし、今後表層に出て来くることはない。

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