ほぼほぼ、オリジナルなので苦手な方は注意
・伊地知ポジション成り代わり(伊地知の双子の妹)ものです
・オリキャラ出ます
・激しい捏造、妄想含みます
・ネタまみれです
転生者、もろもろバレる
高専の廊下を歩きながら、スマホを耳に当てる。
通話先は家入。五条が戻ってきたことを伝えた途端、向こうからギャーギャーと怒鳴り声が飛んできた。
思わず耳を離し、スマホを腕の長さまで遠ざける。
……あー、怒ってる怒ってる。
無理もない。
五条を獄門疆から戻すために、埼玉の山奥まで主要メンバー総出で向かっていたというのに、
肝心の本人は──高専に、真っ先に帰ってきた。
つまり、全員──無駄足。
「ちょっと代わって」と五条にスマホを押しつけると、
彼は何が面白いのか、ニヤッと笑って受け取った。
「あ、硝子?いや、日本海溝に封印されててさ」
……日本海溝のプレート沈み込み帯から、無傷で戻ってくるのアンタくらいだよ。
勝手知ったる保健室に入り、電話の向こう側と騒がしく話してる五条を椅子に座らせ、
体温を測り、血圧を測っておく。そこでスマホを奪い取り、
「体温と血圧は平常値です。ひとまず寝かせておけばいいですか?」
『それでいいよ。戻ったら診察するから、保健室のベッドに縛り付けておいて』
「承知しました。ゴネるようなら強制睡眠させます」
などと家入と話してから、電話きると、五条がこちらをじっと見ていた。
興味深そうに六眼を細め静かに探る。そんな視線だった。
「へー、記憶に干渉する...ね。いい術式じゃん」
少し間を置いて、声のトーンがわずかに落ちる。
「でも、オマエは術式はなかったはずだ。どう言うことだ?」
何も見逃さない。隠し事は許さないと言わんばかりに、大きく見開かれた六眼で睨まれた。
青い虹彩が普段よりぎらついている。
あー、五条怒ってる。
正確にはまだ怒ってない。けど、これはこのあと怒るやつだ——と内心でぼやいた。
「長くなるのでざっくり、説明しますね。
夏油傑の遺体を操ってる人間は、加茂憲倫こと『羂索』。
脳を移動させて術師の身体を転々と乗り移れる術式で、千年くらい生きているらしいです。
その羂索が、術師を呪物化する技術を持っていて、過去の呪術師を大量に呪物化している」
「加茂憲倫って、あの最悪の?
「そうです、その加茂憲倫で合ってます。
ここまでが前提で、続けますね」
あえて淡々とした口調を保った。
「その羂索が、両面宿儺の呪物化にも関わっていて、虎杖悠仁を両面宿儺の器として作り出したのも羂索です。
羂索の目的は呪力の最適化。
日本全土を対象に、人類への強制進化を成すため、人類と天元を同化させようとしています」
「ちょっと待って、情報量が多い。どこが、ざっくり?」
五条が、呆れと苛立ちの混ざった声を出す。
それを黙殺して、言葉を重ねた。
「呪力の最適化を進めるうえで、五条さんが邪魔だった。
だから羂索は、渋谷であの事件を起こしました。
で、五条さんの封印が成功したあと——」
ちら、と五条の表情をうかがう。
苦虫を噛んだような表情を浮かべながら、青く澄んだ六眼が私を射抜くように向けられている。
「ちょっと五条さん、顔怖いです」
渋谷の自分の失態を思い出しているのだろう。
屈辱に歪むその顔が、本気で怖い。
「...いいから、続けて」
低く、喉の奥で唸るような声。
ほんと勘弁してほしい。
そう思いながらも、私は冷静なふりを貫いて説明を続けた。
「羂索は、マーキング済みの非術師——”呪物を埋め込んでいた人間”か、“術式は持ってるけど何らかの理由で発現してない人間”に、
取り込んだ真人の術式『無為転変』を遠隔で使って、強制的に術師として覚醒させたんです。
……んで、その中のひとりが、私です。」
「は?」
五条は少しだけ眉をひそめ、無言のままこちらを凝視してくる。
……あ、これ、あれだ。
情報の洪水で処理が追いついてないけど、キレる数歩手前のやつだ。
本来なら五条の六眼に映るはずだ。
でも、機能していなかったことに加えて、羂索のマーキングもあって把握できなかったんだろう。
実際、伏黒津美紀も羂索によって呪物を取り込まされ、意識不明になっていたのに、その原因を五条も特定できていなかった。
おそらく羂索は、そういう隠蔽に長けている。
……あぁ、この情報も伝えないと。
視界の端で、五条の表情が苦虫を噛み潰したように険しくなる。
が、私は無視して話を続ける。
「その状態で“無為転変”を施されたことで、術式が目を覚ました――って感じですね。
羂索本人に確認しないとはっきりしませんが……概ね間違っていないかと。
ちなみに、補足情報として『伏黒津美紀』は呪物を取り込まされた側でした。私の術式で今は眠っています。
……以上です。何か、質問ありますか?」
五条は顎に手を当て、何か考え込んでいるようだった。
しばらく沈黙の後、ぽつりと漏らす。
「……僕の身近から、マーキングされた人間が二人も出てるとかさ。これ、どういう確率?」
「私は子供の頃に謎の高熱で1週間寝込んだことあるので、多分その時かと。
なので……私は偶然じゃないですか?」
私は本当に偶然だろうが、伏黒津美紀に呪物を埋め込んだのは、
確かに五条への嫌がらせもあったんだろうな。相変わらず人の心がない。
「......潔乃、ちょっとこっちきて」
低く抑えた声でそう言って、五条は自分が座る椅子とは別のパイプ椅子をトントン叩く。
促されるまま隣に座ると、すぐに六眼の視線が肌をなぞってくるのがわかる。
「......あぁ、あった。確かに痕跡あるわ」
私の顔、特に額部分を睨みつけ人差し指でトンと突かれる。
そういえば原作で伏黒津美紀も目覚めた時に、謎の紋様が浮かび上がってたっけ。
私もそれが出てたのかもしれないな。
「確かに古い。仕込まれたのは…少なくとも今より二十年以上前だな。
……クソ、こんなのわかるかよ」
五条は苛立つように頭をガシガシかき、やや声を荒らげた。
目の奥に悔しさのような色が浮かんでいる。
へー年代もわかるのか。
と言うことはやはり子供の頃、あの公園でやられたで間違いなさそうだ。
五条が何かを思い出したように効いてくる。
「……術式が目覚めて、不調は?」
「特に何もありません」
「それなら良かった。術式が発現したての時は、それに振り回されることが多いからな」
即答する私を、じっと見つめたあと、少しだけ安心したような笑みが浮かぶ。
「まぁ、多少は戸惑いましたけどそんなこと言ってる暇なかったので」
「あぁ、高専の奴らと検証したのか」
「いえ、七海さんと五条家の方々と、私最近まで京都に潜伏してまして」
そう付け足した瞬間――五条の動きが、ぴたりと止まった。
「は?」
声の調子が変わる。
先ほどまでの軽さが一切なくなっていた。
私はゆっくりとスマホを取り出し、ホーム画面をスライドしながら、静かに告げる。
「……五条さん渋谷の件の主犯格にされてます。
それで、私も総監部から出頭命令を受けてまして...」
スマホに表示された文面を、五条の前に差し出す。
その顔から、五条の顔から、すうっと血の気が引いていくのがわかった。
「あ”?」
低く、圧のこもった声が漏れる。
五条が受け取ったスマホの画面をスクロールするたびに、じわじわと怒りが膨らんでいくのが伝わってくる。
これは私が言わなきゃいけない。そう思って口を開いた。
「......夜蛾学長も同じように容疑がかけられて…
すでに秘匿死刑は実行済みです」
スマホをスクロールする指の動きが止まる。
ゆるりと顔を上げた五条が、同じ速度で、視線だけをこちらに向けた。
「ねぇ、潔乃……やっぱあいつら、全員殺しておくべきだったわ」
バキッ、とスマホが握りつぶされた音がした。
空気が一瞬で変わる。
五条は術師らしく、人の生死に対してドライで、そう簡単には感情を表に出さない。
劇場版0で見た。夏油を自らの手で殺した後も、表面上はいつも通りを取り繕ってた男だ。
虎杖の時にあそこまで感情を露わにしていたのが、むしろ例外だった。
そんな五条が本気で怒っている。
上層部に対してだけじゃない。五条自身にもその怒りが向いてるのが分かる。
自分が渋谷で封印されたことが原因だと、自覚しているからだ。
私に向けられたものではない——それはわかっている。
それでも、かつて虎杖の死体を目の前にして、死体安置所でブチギレていた時よりも、ずっと重く、鋭く、怖い。
ひゅっ、と喉が鳴った。
息を呑んだ、その瞬間だった。
保健室の扉が、ガララと音を立てて開く。
「五条さん、それは八つ当たりでしょう」
七海だった。
五条は怒りを霧散させると、保健室の扉に細めた目を向ける。
「一人でに開いた?いや違う、なんだこれ...すごく見づらい。七海か?」
「あ、そっか。七海さん、ちょっといいですか?」
七海も状況を察して、私のそばへ来る。
術式を発動させ、七海の腕にぺたりと触れて本を開く。『五条には認識できる』と書き込む。
ついでに私も、五条と会う前に解いていた『呪霊や術師に認識されなくする』『五条には認識できる』を、自分に再度書き込んだ。
「うぉ、はっきり見えた。七海。そんなところにいたのか。
て言うか、六眼でも認識しづらくなるとか……」
まじまじと七海を覗き込んだあと、くるりと私の方に向き直る。
その目は大きく開いていて、好奇心を全く隠せていない。
「潔乃すごいじゃんこの術式。こんな使い方できるの?」
一気にご機嫌になった五条にほっとする。
「七海さんや私には『呪霊や術師に認識されなくする』と言う効果を記憶に書き込んであります。
記憶を改竄することで、ある程度の強制がいけるんですよ。そう身体に思い込ませるわけです。
……要するに、記憶を『そうである』と書き換えることで、身体の反応を“後付けの現実”に合わせるんです。
本人が信じ込めば、それは呪術的にも成立するんですよ」
「...…へー、他にもいけるの?」
七海の火傷の後が残る顔とか興味ないのかな、この人。私の術式の方ばかりに食いついてる。
一瞬前まで夜蛾学長の件で怒りがピークだったのに、もう忘れてるぞ、この人。
こっちは胃がひっくり返るかと思うほどの緊張だったのに。
……ほんとこの人、メンタル構造どうなってるんですか?
こういうところ、マジで狂ってる呪術師だと痛感させられる。
七海に助けて、という視線を向けるが、首を横に振られる。
五条といえばワクワクと言った表情。
あぁ、この表情懐かしい、昔、私が初めて宝石に呪力を込めるのを見せた時と同じだ。
これは全部説明するまでねだられるやつだ。
自分の腕に触れ、パラパラとページを捲り、
『呪力操作を最大効率で行える』『身体の動きが最大効率で行える』——私が書き込んだ文字を見せる。
「これは私が書き込んだやつです。
これで、自分の才能の範囲内ギリギリまで、チューニングをかけてます」
「ああー、だから、さっきの呪力操作の精度が、以前とダンチだったわけか。えぐっ」
五条の口調が興奮しすぎて、高専時代のそれになってる。こわ。
「……これって、他の人にもイケる?」
「試したことないですが、おそらく。ただ、呪力消費が激しそうです」
「はい、オマエ修行補佐メンバー確定。やらなかったらマジビンタ」
「はぁ? え? どういうことですか???」
親指を立てて満面の笑みを浮かべる五条
相変わらず人の話を聞いてない、こちらに決定権がない。
「12月24日に両面宿儺と闘うから。それまでに修行パートってこと」
いや原作知識で知ってるけどさ。
まさかの修行パートに私も参戦?
いや術式考えたら確かにって思うけど……思わず七海と視線を合わせ深々とため息をついた。
その様子を見ていた五条が表情だけは笑みのまま、全く笑ってない六眼で私を見つめた。
「......ふーん、その反応から見るに、やっぱ両面宿儺と僕が戦うこと知ってたな?オマエ」
「伊地知さんに
……あの直後、五条の座っていたパイプ椅子が『唐突に壊れ』、派手にすっ転んだ。
見慣れた長身が、予想外なくらい素直に床に落ちたその光景は、笑う余裕すらなかった。
七海がため息ひとつついたあと手を差し出し、ベッドへ移動させる。
あの”五条悟”が受け身を取る余裕もなく、しこたま腰を打ったのは衝撃だった。
制限、仕事しすぎだろ……
そんな中、しこたま打った腰を撫でつつ、五条が私を睨みつけながらぼやいた。
「くっそ、なんらかの呪縛か制限か?
どーりでオマエにその手の話をしに行こうとする度に、空振りしまくるわけだ」
頭の良い五条は発生した事象と、これだけの会話で、全てを察したらしい。
ほんと、こういう時は話が早くて助かる。
そしてやっぱり、五条自身も私に話を聞こうとして制約を受けていたのか、と察する。
「......すみません、不用意な発言は控えてもらったほうがいいかと。
聞きたいことたくさんあると思うんですが…」
さすがに申し訳なくて目をウロウロと彷徨わせてしまう。
とうとう五条にも、未来視があることが確定的に知られてしまった。
五条が、ちょいちょいと手招きで目の前に来るように私を呼ぶ。
渋々その前に立つと、ベッドに座ったままの五条が立ったままの私を見上げて、
「なんらかの制限や呪縛だろ?オマエが悪いわけじゃない」
まっすぐな瞳でそう言って、私の頭に手を伸ばし、くしゃりと撫でた。
この人はこういう時に、高専の時から変わらない対応をする。アラサーだからやめて欲しい。
私が頭を撫でるのを嫌がって逃げると、残念そうな顔をした。
「それに、オマエ自身が改変に動いてたろ?
んで、他の人間がそれに協力することは可能ってことだ」
五条がちらりと七海に視線を流す。
「七海の顔が
あの特級とやって、『よく生き残ったな?』つまり、そう言うことだろ?」
確定的な言葉は言わず、ギリギリのラインを探り探り入れてくる五条。
また制限くらっても知らないぞ。
「えぇ、その通りです。伊地知さんの……この宝石のおかげで命を拾いました」
「……は?2つ?」
あ、しまった。
2つ使うって、言ってなかった。
「はは……」
思わず乾いた笑いが漏れる。
案の定、五条が食いついてくる。
「ちょっと待て、おい……これ、なんか一番古い宝石だろ!? で、こっちも10年以上のやつだろ!!!」
怒鳴るというより、詰め寄るような声音だった。
五条の視線が容赦なく突き刺さる。思わず目を逸らす。
七海が困惑の表情を浮かべているのを見て、五条が呆れを通り越したような声で言った。
「この宝石は、潔乃が毎日コツコツと呪力を注いで作ってんだよ。
あのカスカスの呪力を振り絞ってな?
こっちが17年もの、で、こっちが……22年ものだ」
「…………は?」
七海の口がわずかに開いたまま、言葉が出ない。
驚愕と、混乱と、理解が、一気に押し寄せてきているのが表情から読み取れる。
五条はそんな七海に向かって、あくまで淡々と言い放った。
「……七海、
潔乃の時間をそれだけ使ったって——噛み締めて、生きろよ」
抑えた口調なのに、言葉が重たくのしかかる。
怒鳴られるより、よっぽど怖い。
七海は何も言えず、ただ硬直している。
眉が微かに動いて、目の奥に理解と驚きが交錯しているのが見えた。
その沈黙に耐えられず、私は慌てて口を開く。
「……別にいいんですよ! 七海さんが無事だったんだから!!」
慌てて勢いに任せて言うが、まったく場に馴染まない。
でも、言わないと空気がさらに重くなる気がして、止められなかった。
「んで、七海。その宝石ちょっと見せて」
五条が唐突に切り替える。
呆然としていた七海の手から、砕けた宝石をひょいと奪い取り、目の前でじっと見つめ始めた。
六眼が細かく光のように揺らめき、宝石の中を透かすように視線が注がれる。
「この宝石、普段と違うの入れてるだろ?
普段感じない、お前の呪力を感じる」
背筋がひやりとした。
ああ——やっぱり、バレてる。
縛りの影響で、呪力が宝石に少し混ざっていたのか。
やっべ……
五条が宝石に気を取られている今が逃げ時だ、と
私はそろりと一歩下がろうとした——その瞬間。
背後から両肩をがっしりと掴まれ、びくんと体が跳ねた。
驚いて振り返ると、七海が無表情で私を見ていた。
手のひらは無駄に大きくて、逃げ場を与えてくれない。
「貴方は、五条さんが怒った時、まずは逃亡しようとする癖、学生時代から変わりませんね」
「いやいやいや、気のせいじゃないですか?」
五条が立ち上がり、何かを確かめるように私をじっと見て——
次の瞬間、私の肩を掴んでベッドに押し込んだ。
「ちょ、ちょっと、ちょっ――」
あっという間に、私はベッドの真ん中に座らされ、
五条と七海、大男ふたりに完全に見下ろされる体勢になっていた。
圧が強すぎる。
……やばい。逃げられない。
五条がにやりと笑って口を開いた。
「いいからとっとと、吐け」
「はいぃぃぃ……」
観念するしかなかった。
「もうこの際なので、渋谷の件全部話します……制限はなさそうですね」
未来のことではないのでセーフのようだ。
ほっとしながら、話を続ける。
「渋谷の件は漫画形式でパラパラと読むような感じで見て、ある程度把握はしてました。
五条さんが封印されることも、あの惨事も」
「伊地知さんは子供の頃に漫画形式で
七海が補足を入れてくれる。
「その渋谷でですが、七海さんが死ぬのを見ました。
火山の特級呪霊に上半身をほぼ燃やされ、重傷を負って意識朦朧としながらも改造人間を倒していたところ、
真人に遭遇して、『無為転変』で上半身を吹き飛ばされてました」
五条は顔色一つ変えず、私の話を聞いている。
七海が渋谷で死ぬことを、ここまで詳細に語ったことはない。
本人も分かっていたことだろうけど、いきなり突きつけられるときついだろう。
七海の顔が見られない。
「私の実力では、あの大惨事にほぼ介入できません。
変えられるとしたら七海さんの件だけだと判断しました。
……まぁ、それを分かっていたので、色々案を練ったんですけど、子供の頃から呪力を流していた宝石を使うことを思いつきました」
「確かに、呪力を溜め込んだ宝石の個性を活かせるな。それで俺に相談してきたわけだ」
「はい、その通りです。
で、あの時も『七海さんが一定以上の損傷を受けた場合に、自動で発動する縛り』
を入れると話したと思いますが、
その調整が難しかったのと、特級呪霊のその力がどれくらいのものか分からず、不安がありまして…」
あー、話したくないな……
チラッと五条さんを見ると、早く話せと顎をしゃくられた。
「効果や精度を上げる縛りを追加しました」
「ふーん、で?どんな縛り?」
そりゃ聞きますよね……見逃してくれるはずもないか。
「あー、それで渋谷の件の話に戻るんですが、
私、渋谷で呪詛師に襲われて重体になるのを、知ってまして……」
「あ”?」「は?」
二人の声がユニゾンして、一気に保健室の温度が下がった気がする。
暖房の効いた部屋のはずなのに、背筋が寒さで震えた。
「……呪詛師に襲われて重体になる代わりに、宝石の効果や精度を跳ね上げる縛りを入れました」
あぁ、もう怖くて二人を見ていられない。
五条は私が渋谷で死にかけてたことを知らない。
七海はその死にかけの私を家入さんのところまで運んだ人だ。
「あの時の渋谷は、呪詛師や呪霊、改造人間がたくさんいた上に、
私を刺した呪詛師のそばには、宿儺の従者までいました。
なので、あそこで大人しく刺されて、早々に渋谷から撤退した方が、結果的にはマシだと判断して……」
ひたすら、どうしてそうなったのかを、言い訳——もとい事情説明として続けていた、その瞬間。
ガンッ!!
爆音のような衝撃が、頭蓋に響いた。
頭の奥で星が瞬いたあと、遅れて痛みが襲ってくる。
「い”だっ!!!! いっっぅ……!」
反射的に頭を押さえ込む。
何が起きたのか理解する前に、身体が痛みに反応していた。
顔を上げると——目が合った。
真っ赤に染まった顔、怒りに見開かれた目。
カッと見開かれたその目には、呆れも、怒りも、そして彼には珍しい“恐怖”すら混じっていた。
五条だった。
「……ッ」
思わず声が漏れそうになる。
本気で、怒っている。さっきより怒ってる。
その横で、七海も微動だにせず、表情を怒りで固めていた。
「てめぇ……」
低く、喉の奥で絞るような声が落ちる。
「“死ぬこと前提で計算に入れてた”って、ことだよな?」
五条の肩が、ゆっくりと上下する。
冷静に見えて、呼吸が乱れている。あの五条が?
「僕が恵に 『「死んで勝つ」と「死んでも勝つ」は全然違う』って話したって、この前言ったよね?」
五条の目が、まっすぐ私を射抜いてくる。
「オマエも同じだよ。お前、自分の命、なんだと思ってんの?
縛りがあるにしても、もっとやり方があっただろ?」
その視線に押されるように、私は反射的に叫んでいた。
「その……! 刺されても死なないことは、わかってたんです! だから……!」
語気が強くなった。
自分でも、言ってから後悔するくらい――根拠が曖昧すぎる。
「……なにそれ?」
五条の声は低い。
でも、その低さの中に怒りが静かに煮詰まっていくのがわかる。
「未来視で死なないと分かっていたから“安心”して、渋谷で刺されに行ったってのか?
外れる可能性もあるのに?
なにが“わかってた”だよ……」
私は、震えそうになる喉を無理に押さえ込んだ。
「……だって、それくらいしか、確実に変えられる部分がなかったんです。
私の命と1級術師の七海さんの命を秤にかけたら、迷う理由なんてないです!」
正論。
でも、言った瞬間に思い出した。
五条が、その手の“正しさ”を一番嫌うタイプだった。
「そういうのが、一番ムカつくんだよな……ッ!!」
再び、五条が近づいてくる。
もう一発くるかと目を閉じ身構えたところで、
その手は、今度は私の後頭部に回され、ぎゅっと引き寄せられた。
「この……っ……アホ……!!」
ベッドから半立ちになったまま、五条に抱きしめられて、どうしていいかわからなくなる。
私を拘束する腕の温もりは、思いのほか強くて、逃げることもできない。
え、これって怒ってる?
いや、怒ってたよね?
助けを求めるように、ちらりと七海に視線を送る。
……ダメだ、七海も怒ってた。
怒りの火は沈んだみたいだけど、顔が怖い。
こっちはこっちで怒り継続中。
無表情の仮面の下で、感情がまだ煮えてるのがわかる。
どうすりゃいいんだこれ………
責められてもしょうがないことをしたのは自分だし、怒られるのも納得してる。
さっきも思ったけど、人の生死に対してドライな五条が、ここまで感情を露わにしている状況に慣れない。
こんな風に“抱きしめられてる”状態で怒られると、なんというか——処理に困る。
いや、五条とは健全に同衾する仲だからいいんだけどさ。
いや、やっぱりよくないけど。
ここまで縋り付かれるように抱きつかれるのは、百鬼夜行の後の元日の時以来だ。
あの時は、目の下に信じられないほどの隈を作り、まるで子供のように私の肩に顔を埋めてきた。
今、あの時と同じ腕の力加減をしてることに気づいて、胸が苦しくなる。
あー五条に本気で心配かけてメンタル抉ったんだなと自覚する。
そう思った瞬間、ようやく実感がきた。
と同時に、後悔の念が津波のように押し寄せてきた。
人の生死に淡白で、冷徹な術師としての顔も嘘じゃない。
でも意外と、懐に入れた人間には情に厚い人だから。
どこまで冗談みたいに軽薄に振る舞っていても——こういう時だけは、真っ直ぐすぎるくらい真っ直ぐだ。
五条、ごめん。
本当に、ごめん。
「あー、五条さん。すみません」
こう言うしかないだろう。
他に、言葉なんて思い浮かばない。
トントンと、いつものように五条の背中を叩く。
慰めるような、家族がするような親しみの仕草。
それ以上でもそれ以下でもない。
……七海が目の前にいるんだけどなー、いいのかなー。
ていうか、それ以前に五条の顔がめっちゃ近いんだけど。
そんなことを考えていたら——
ガバッと、勢いよく五条が私から離れた。
「次やったら、マジでタイキックするからな!!!」
突然、頬をぎゅ——っと摘まれる。痛い。
「痛い痛い痛い!!!
タイキックなんてされたら、お尻の骨が折れちゃいます!!!」
こっちはまだしんみりしてたのに、いきなり温度感がジェットコースター。
完全に振り回されている。
それでも、なんとなく……空気が少し軽くなった気がして、ホッとする。
「おい、七海。お前もゲンコツ一発いっとけ。こいついくら言っても学習しねー」
「待って、なんでそうなるんですか!?今の流れ、明らかに終わってたじゃないですか!?」
焦って七海の方を見ると……
彼は無言のままネクタイの位置を直していた。
無言、だけど……目の奥に、明らかに乗り気な気配がある。
「や、やめて! 七海さん!
理性的なポジションだったじゃないですか!! 裏切らないでください!!」
叫んでも、誰も止めてくれない。
……あー、これは今日もうダメだ。
七海からも比較的本気のゲンコツを受けて、悲鳴を上げたのは言うまでもない。
ちなみにその後、七海からも、嫌がらせでしれっとハグされた。
「——2度と、あんなことはしないでくださいね」
耳元で低く言われた
こっわ!!
主人公
ゲンコツ2回されたが本気で痛かった。
次回から修行の効率化のために担ぎ出され、補助監督の仕事はまたできなくなる。
しょうがないね。便利術式だから。
五条のハグは慣れてるが、七海のハグは慣れてなさすぎてマジで参った。
五条悟
自分の命を安易に掛けすぎる主人公にキレた。
宝石の使いっぷりが気持ち良すぎて、ほんと呪術師向きのメンタルだな?と呆れてる。
思わず七海の前でハグしてしまったけど、気にしてない。
後で、「あいつ柔らかくて気持ちいいだろ?」
と七海に言ってガチで軽蔑の視線をもらう。
七海建人
貴重な宝石を2つも使われ、命さえかけて助けてくれたと知り、
主人公に一生頭が上がらない。
それはそうと、本当の意味で主人公が、五条のお気に入りな理由がわかった気がした。
常識人に見えて、一番タチ悪く狂ってると判断。
五条がハグをして驚いたが、もしかしてと思い、そして自分も嫌がらせでハグをしてみた。
が、五条が「あいつ柔らかくて気持ちいいだろ?」とかいうので、
こいつはそんな細やかな情を持つ人じゃなかったと反省。
高専主要メンバー
埼玉の奥まで行ったのに、高専に戻った?
え、日本海溝から?どういうこと?
ルビやらもろもろの修正に時間がかかる……
本編完了しましたが、番外編後日談などどれが読みたいですか?
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本編終了後の後日談
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本編時間中の日常話
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if系(√分岐、原作通り五条死亡など)
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R-18 の下ネタギャグ
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全部