ほぼほぼ、オリジナルなので苦手な方は注意
・伊地知ポジション成り代わり(伊地知の双子の妹)ものです
・オリキャラ出ます
・激しい捏造、妄想含みます
・ネタまみれです
・非人道的な描写があります
・オチがひどいです
あの後、物理的に痛む頭を押さえながら、私は五条を保健室のベッドに叩き込んだ。
「念のため、家入さんの診断受けるまでは大人しく寝ててください」
そう言い捨てて離れようとしたのに、獄門疆の中で相当暇だったらしく、五条の“構ってアピール”が止まらない。
まとわりつくアラサーを横目に、私は今日の仕事復帰を諦めた。
仕方なく補助監督の執務室へ内線を入れ、「夜に戻って業務を再開します」とだけ伝えて、五条の相手を続ける羽目になる。
七海も嫌そうな顔をしながら、今まであったことの報告を兼ねて話に付き合ってくれるらしい。
……とはいえ、渋谷では私はほとんど七海班と行動していたので、話す内容はおおよそ同じだった。
ただ、別行動直後の出来事——呪詛師・重面に宮下第一歩道橋で、通話中にいきなり後ろからブッ刺されたくだりを説明した時は、五条も七海も顔が怖かった。
「大人しく刺され待ちするとか、どんな強メンタルだよ。キモ!
お前も術師らしく、しっかり狂ってるわ」
と五条にすら言われ、七海にも同意された。
仕方ないだろその時は術式もないから、手持ちのカードだけで必死だったんだから。
私の渋谷の話はここまで、と七海にバトンを渡すと、彼は少し言いづらそうに口を開いた。
七海は突入後、虎杖とミニメカ丸から五条が封印されたと聞き、
1級術師の自分でしかできないことを私と相談するため、帳の外に出て歩道橋に戻ったら、私が血まみれで倒れていたと。
「......あの時は肝が冷えました。
血まみれでぴくりとも動かない貴女。
出血で冷えた身体に、かろうじて呼吸があったことで、どれだけほっとしたか。
元呪術師志望で身体を鍛えてなければ、死んでましたよ?」
またしても、2人の視線が鋭く私に突き刺さる。
居心地が悪くなって視線を逸らした。
「ま、まぁ、インナーに、微妙な回復効果がある仕込みを入れてたので……」
「おい、なんだそれ。聞いてねーぞ」
五条が眉を跳ね上げる。ああ、そういえば研究中だったから、まだ言ってなかったか。
話の腰を折る形になってしまったが、放っておくと気になって仕方がない人なので、ざっくりと説明することにした。
「宝石を砕いて粉末にして、生地や肌に密着する部分に塗布するんです。本体そのままより効果は落ちますが、それでも回復や呪力の干渉はある程度残ります」
先ほど五条に「『死んで勝つ』と『死んでも勝つ』は全然違う」と言われたけど、私だってノープランじゃないんだ。
死ぬ気はなかった。やることちゃんとやってたんだと訴える。
「......それの研究開発急ピッチで。宿儺戦前に実戦に使えるようにして」
とんでもない無茶振りが、さらっと下された。
……仕事が増えた。これだから五条は!!!
呆然とする私の肩に、ぽんと七海の手が置かれる。
「私の分も、お願いします」
は? と顔を上げると、五条が当然のように続ける。
「そりゃ、全員分でしょ?」
……やっぱり呪術界、どう考えてもブラックだ。
七海の話が、再び静かに再開された。
「……陀艮という特級呪霊との戦闘中、謎の男が乱入してきまして」
その“謎の男”の詳細を聞いた瞬間、五条の顔がさっと曇る。
どうやら、伏黒甚爾だと察したらしい。
あからさまに嫌そうな顔だった。わかりやすいにも程がある。
その後、連戦で現れたのは漏瑚。特級呪霊。
いきなり業火で燃やされた、と言った時は、
「特級2体とかウケるー滅多に出ないから特級なのにー」
と空気を読まない五条に、七海のこめかみが引き攣っていた。
五条の軽口にムカついてたらキリがない。
なので今度は私が七海の背中をポンと叩いて、慰める側に回る。
そこから七海の話は地下へと移った。
負傷した状態では地上ルートは危険と判断し、地下へ。
しかし、そこに待ち受けていたのは——改造人間の大群。
流れるように渋谷駅構内のB2Fまで移動し、そこで真人と遭遇。
戦闘の末、『無為転変』を受け、横腹を大きく吹き飛ばされた。
「そこからは、意識が朦朧として……気づいたら、貴女に担がれて、大量の呪霊から逃げ回っていました」
苦笑交じりの七海の言葉に、私は「そうでしたね」と頷く。
呪力で筋力を底上げできるとはいえ、180センチ越えの大男を、168センチの私がよくもまあ運び切ったものだと思う。
しかも直前まで私も死にかけてて、体力的に本当にきつかった。
なので、途中で七海が目を覚ましてくれて助かったよね。
その後、ようやく落ち着いたころに総監部からの通達が届いたが、私はそれを無視して“バックれ”を選択。
七海と共に、京都の五条家に身を寄せる形になった。
情報収集、術式の発現確認、そして最低限の休息。どれも命を繋ぐのに必要だった。
「本当に助かりました。後日、手紙でもご挨拶はしますが……ご当主の貴方からも、ご家族によろしくお伝えください」
「いいよ、そんなの。僕が当主だし」
「それでも、ありがとうございます」
五条が静かに礼を受け取ったその直後、私は少し迷った末に、夜蛾学長の話を切り出した。
……本当の理由を、今こそ話すべきだと思ったからだ。
五条がいなくなったことにより、目をつけられていた夜蛾が総監部に拘束されたこと。
パンダも同時に拘束されたため、脱走した夜蛾はそのまま処刑されたこと。
静かに聞いていた五条は、「そうか」とだけつぶやいて黙った。
先ほどの怒りとはうって変わって、凪のような静けさだった。
私に言いたいことはあるはずなのに、それだけだった。
──そして、渋谷以降にやったことの報告が始まる。
先に口を開いたのは、七海だった。
「私は、五条家の書庫や、五条さんの私室を調査させてもらいました。
かつて五条さんが手に入れた、天の逆鉾の行方を探すためです」
彼の視線が、そっと五条へと向けられる。
数秒の沈黙の後、五条があっけらかんと言い放つ。
「あー、それ海外で破壊しちゃった」
まるで昨日コンビニでプリンを買い忘れた、くらいの軽いノリだった。
……やっぱり。
私は天を仰ぎそうになるのをこらえながら、苦笑いを浮かべる。
「まぁ、予想してた通りですね」
隣で七海が小さくため息をついた。
あれば使えたのに、自分の術式殺しだからって即壊さなくても……と思うが、
五条からすれば、あれ怖いよな。仕方ないか。
自分の弱点になるようなものを放置するほど五条は甘くない。
ただ、アレは宿儺にも有効な一手だったのが、本当にもったいない。
気持ちを切り替えて今度は私が口を開く。
「んで、私の方ですが、まずは冥冥さんに取引を持ちかけて」
隣で五条がベッドの上で胡座をかいたまま、こちらに視線を向ける。
「冥さんに? なに頼んだの? あの人、相当がめついよ?」
ほんとにな。
内心そう思いながらも、五条の視線を無視し話を続ける。
「シン・陰流の当主の現在地を聞きました」
「……え、冥さん何でそんなの知ってるの?」
ほんの一瞬、室内の空気が止まる。
五条の声が少し大きくなった。
そりゃそうだよね。なんで知ってるって思うだろう。
「蛇の道は蛇ですよ」
なるべく、あっけらかんとした口調で返す。
けれど、心の中では注意信号が鳴り響いていた。
これは原作知識で知っていたことなので、詳細は語らず軽く流して話を続ける。
五条が眉をひそめたのが視界の端に映ったが、私はあえてそちらを見ずに話を進めた。
……これはまだ未来のはずだから、これ以上突っ込まれると、制限に触れる。
「教えてもらったその当主のところに行って、簡易領域の情報を引っこ抜きました。
これで簡易領域使い放題です」
五条は口を開きかけて、何か言おうとして――結局、無言で口を閉じた。
私はその表情を見て、口元を緩めた。
「その後、七海さんと一旦別行動しました。
七海さんは東京に戻って家入さんの元で反転術式を学んでもらって。
私は——両面宿儺の指の探索と、即身仏の破壊に向かいました」
「……待って、だから情報量が多い! 宿儺って即身仏なんてあったの!?」
次から次へと飛び出す情報に、五条が目を瞬かせる。
私が間を置かずに話し続けるせいで、流石の五条も思考が追いついていないらしい。
「ありました。だから破壊しました。あると邪魔なので」
さらっと言い後は察しろオーラを出す私に、五条は黙り込む。
「その後は、伏黒津美紀さんが受肉体の可能性があると判断して、即時対応に移行。
七海さん、真希さん、冥冥さん、東堂君に連絡を取り、封じ込め作戦を実施しました。
二段階の作戦を一応考えていましたが、一段階目で拘束に成功しています」
ちらっと五条を見ながら、内ポケットをごそごそと探る。
「あと、ここでも冥冥さんに協力をお願いしたのですが………
その資金が私にはなくてですね」
少し言いにくそうに切り出すと、案の定——
「僕の貯金使ったんでしょ?好きに使えって言ったから報告することないのに」
ぴたりと核心を突かれて、私は小さく肩をすくめた。
本当に、話が早いというか、無駄に鋭いというか……
内ポケットから通帳を取り出し、そっとページを開く。
「はい、これが残高なんですが………」
ベッドに座ってる五条が見やすいように通帳を傾ける。
五条が身を乗り出して、通帳を覗き込んだあと、通帳を手に取った。
……冥冥さんとはなるべく交渉した。値切った。粘った。けど、あの人ほんと、値切りにくいんだってば。
ページをめくる手が止まり、五条がふっと眉を上げる。
「思ったより残ってるじゃん…………もしかして、宝石渡した?」
やっぱこの人鋭くて嫌だよ…
内心でぼやきながら、こくりと頷いた。
「…………はい。日常使いのレベルのものから三つほど」
反応を窺うようにちらりと視線を向ける。
五条はしばらく沈黙したまま通帳を見つめた後、ひとつため息をついた。
「……それならまぁいいよ。僕もいなかったし」
その言葉に、ほんの少しだけ胸をなで下ろす。
よかった、怒られなかった……と思ったのも束の間、声のトーンが一段下がる。
「ただ、次から宝石動かす時は、僕に話を通してからしてね」
私は姿勢を正し、小さく「はい」とだけ答えた。
……ていうか、預金の残高の減り方にツッコまないあたり、五条が本当に怖い。
そしてその金額を平然と受け取る冥冥も怖い。
金銭感覚どうなってんの。私が常識側で合ってますよね? ね?
そんなことを内心で毒づいていると、すっと会話の空気が切り替わる。
「……それにしても一段階目の作戦。真希さんが押さえつけて、伊地知さんの術式で封じ込める作戦がうまく行ったのは、本当にラッキーでしたね」
タイミングを見計らったように、七海が口を開いた。
会話がそれかけていた空気を、静かに本題へと戻してくれた。
「そうですね。もし二段階目に持ち越していたら……総力戦になったでしょうし。
まだ東堂くんが動けることも、七海さんの生存も——隠し通せなかったはずです」
言いながら、私はそっと七海に視線を送る。
彼はそれに気づいても表情を変えず、ただ静かに頷いた。
そのとき、ふと五条の顔色が変わった。
「……七海って、今、死んだことになってるの?」
予想外だったのか、声色に驚きが混ざっている。
「一部を除いては、そうなってます。切り札って、最後まで伏せるものでしょう?」
私はわざと肩をすくめて、口角を上げる。
以前、五条に言われたことがある。虎杖に宝石を持たせるかと相談した時に、
『両面宿儺の前で使うのは危険だ。
切り札は最後まで見せるな』
そう言われて、五条に却下されたのを覚えている。
「……羂索だって宿儺だって、“死んだはずの人間から攻撃された”ら、さすがに面食らうでしょう?」
そう言って、わざとらしく悪どい顔を作ってみせた。
呆れたような、でもちょっと楽しそうな顔で、五条が返す。
「潔乃、お前さ……ほんと、どこの軍師とか参謀ポジだよ」
その言葉に私が返す前に、五条はふっと肩をすくめて続ける。
「怪我とかして高専やめる時は、言えよ?
絶対、五条家で雇うから」
その一言に、思わずまばたきをひとつ。
「え、こき使われそうだから嫌です」
わりと本気で嫌だったので、即答してしまった。
途端に、目の前の六眼が細められる。
あ、やば。
そう思った次の瞬間、べしっと額に響く衝撃。
容赦のない、デコピンだった。
「いっだ!すぐ暴力に訴えるのやめてください!」
頭を押さえながら怒ると、後ろで七海が盛大にため息をついた。
あの後、しばらくして、高専メンバーが次々に戻ってきた。
そして、五条悟と生徒たちの感動の再会が始まる。
勢いよく飛びついてたり、蹴りを入れたりしてくる生徒たちを、五条は満面の笑みで受け止めていた。
その少し前、七海は何も言わずに席を外していた。
まだ生徒たちは彼の生存を知らない。
特に虎杖——両面宿儺の器である彼にだけは、余計な情報を悟られるわけにはいかない。
私は一歩引いた場所から、そのわちゃわちゃした光景を見守っていた。
……いいなぁ。
自然とそんな感情がこみ上げる。
五条はなんだかんだで、生徒たちから深く愛されているのだと、あらためて思う。
——ここに、伏黒がいないのが本当に残念だ。
家入の診察を受け、五条の体調には問題なしとのお墨付きが出た後、
そのままの流れで“次の戦い”の準備に入る。
どうやら、日下部と五条が中心になって、教室を貸し切って作戦会議が始まるらしい。
すでに、外部の術師の鹿紫雲や日車、冥冥、憂憂も呼ばれたようだ。
生徒たちを前にして、日下部がうんざりした顔で黒板にチョークを走らせ、
五条はお気楽なテンションのまま、横から口を挟んで茶々を入れていた。
この二人ってなんだかんだと長い付き合いで、意外と仲いいんだよな。
私はその光景をしばらく見守ったあと、そっと身を翻す。
通常業務に戻ろう。この調子なら抜けて大丈夫でしょ。
そう思って、静かに教室から出ていこうとした時——
「お前も参加だっつーの」
後ろから無限の蒼で引き寄せられ、ぴたりと足が止まる。
「修行パート付き合えって言っただろ?」
振り返って見上げると、五条が満面の“悪い顔”でにやりと笑っていた。
修行内容は原作と同じ。憂憂による“入れ替え修行”だ。
さらに今回は、私の術式によるバフも併用することになった。
書き込んだのは、三つの文言。
『修行の効果が最大効率になる』
『呪力操作が最大効率になる』
『体の動きが最大効率になる』
これを修行に参加する全メンバーの額に、術式で“記述”していく。
効果は絶大。意外とこれに関しては呪力消費が少なかったのが救いだ。
おそらくだが、強制したり押さえ込むわけではなく、術式を受ける人の同意のもと、その身体の才能の限界点、未来に至る可能性があるところまで状態を持っていく。ので楽だったようだ。
私の術式便利だけど使いづらいなぁ…
高度な技術を必要とするものは、今回はあえて書き込んでない。
基礎基本の技量を高めた上で、素養がある人間たちにシン・陰流簡易領域や反転術式を書き込む予定だ。
高度な技術となるため、書き込めない人——どう頑張っても才能がなく、使えない人もいるだろうという判断からそうなった。
ちなみにこの書き込みには縛りを入れてある。
「効果は、両面宿儺との戦いが終わるまで持続する」
そう明言し、絶対的な条件と引き換えに、術式効果をさらに高めた。
そのせいか——修行の進捗はおそろしいほどに順調だ。
原作よりみんな、たぶん鬼のように強くなっている。
実際に修行風景を見ていれば、それがよくわかる。
だって、虎杖が
原作では彼は
多分これ超新星とかも使えるようになるな?
ただ、それでも私は——いや、だからこそ、不安を感じていた。
修行は、あまりにもうまくいっている。
全員が成長している。
五条も、いつものように軽口を叩きながら、戦術指導をこなしている。
でも、これじゃダメだと、私は確信していた。
原作で五条はなぜ宿儺に負けたのか?
理由は、ただ一つ。
......油断だ。
彼は油断して、宿儺に殺された。
これは原作者がはっきり明言している。
『五条が世界を断つ斬撃を避けられなかったのは、魔虚羅を倒して油断していたからで、
普段の五条なら、何かを察知してギリギリ致命傷を避けることができたんじゃないか』
あの星漿体の一件の伏黒甚爾がやった削りと同じ状況だ。
魔虚羅を倒して、両面宿儺は無限を突破できない、という偽のゴールが見えてしまった。
あのときの敗因は、実力でも術式でもない。
漏瑚が言ってたように”危機感の欠如”、
“慢心”と“安堵”――そこにあった“隙”が、五条を殺した。
そして今のこの状況も、よく似ている。
うまくいきすぎている。
全員が成長し、強くなり、余裕が出てきた。
五条自身の修行も効率よく進んでいる。
宿儺の弱体化も成功している。
だからこそ、絶対に、五条は油断する。
だから私は、今からこの“失敗”の改修方法を考える。
これは、私が行った原作改変の——必然的な副作用。
順調すぎる修行。過剰な成長。過信と緩み。
その空気を作り出したのは、誰でもない、私だ。
……ならば。尻を拭くのも、私の役目だ。
修行の合間、メンバーたちの動きをぼんやりと眺めながら、思考を巡らせる。
五条を変える方法。油断を断ち切る方法。
幾つもパターンを試したが――現時点で、打てる手は一つしかなさそうだった。
正直、あまりやりたくない方法だ。
けれど、「危機感の欠如」「油断と慢心」。
その本人に、正面から“それ”を突きつけるのが最も効くのなら——やるしかない。
修行が一段落し、メンバーが水を飲んで談笑しているタイミングを見計らって、私は歩み寄った。
「五条さん、ちょっとお願いがあるのですが」
彼は、汗も拭かずに寝転がっていた。
呼びかけに目線だけこちらへ向ける。
「んー?」
「来週の修行のお休みの日に、私と手合わせしてもらえませんか?」
その言葉に、彼は驚いたように眉を上げた。
冗談かと思ったのか、一瞬、笑いかけて......でも、私の目を見て、表情を変える。
「術式ありで……ちょっと、どれだけ戦えるか確認しておきたくて」
言葉を選びながらも、口調には一切の冗談を混ぜない。
これは訓練ではない、“意図”を持った勝負だ。
数秒の間を置いて、五条が口元を吊り上げる。
「潔乃、やる気じゃん。いいよ」
ふざけたような返事。調子乗ってるのがよく分かる。
いいよ。別にそのままで。その油断があんたを殺す。
だから——最後に、トドメの一言を重ねる。
「私は全力で、五条さんを殺すつもりで行きますね」
その瞬間、周囲の空気が微かに変わった。
冗談にも、挑発でもなく、明確な“意思表示”。
その言葉に、五条は初めて六眼を丸くし——そして、ニヤリと笑った。
高専の職員寮。
空き部屋の一室で私は寝泊まりしている。
前の部屋は渋谷事変の直後に家宅捜索を受け、ズタボロ。もう使い物にならなかった。
今のこの部屋は、簡素なデスクとベッドがあるだけだが、十分だ。
「ねぇ、潔乃。どうやって僕を殺しにくるの?」
すっごく楽しくて仕方ない、とでも言いたげな声音だった。
悪びれもなく放たれたその一言に、私は眉をひそめることすら面倒で、ただ無言でため息をついた。
高専に戻ってきてからというもの、修行で身体を入れ替えている時間を除けば、五条はほぼ毎晩、私が間借りしている職員寮の一室に入り浸っている。
最初は——まぁ、久しぶりだし、少し経てば落ち着くだろうと思っていた。
獄門疆の中は相当しんどかっただろうし、今いちばん距離が近い私に絡みたいんだろう。
だが気づけば連日だ。
「僕の部屋、今めっちゃ荒れてるし」なんて呑気に言いながら、帰る気配は一切ない。
確かに、五条の部屋は総監部の家宅捜索でひどい有様だと聞いている。
けれど、掃除しろよ、新しい部屋借りろよ……と突っ込みたい気持ちは山ほどある。
しかし、この男に“正論”が通じた試しがない。だからもう言う気も失せた。
私は宿儺戦に向けた準備に、私自身の修行、五条との勝負の準備、五条の依頼である戦闘要員全員分のインナーに仕込む宝石粉末の準備まで請け負っている。
正直忙しくて目が回りそうだ。
忙しい時くらいほっといてくれと思うが、そんな私の願いはお構いなし。
部屋に入り浸り、私が机に向かっている最中も、背後からじっとこちらを眺めているその視線は、正直、薄気味悪い。
あれは完全に、「猫が面白そうな虫を観察している目」だ。
そして、今。
狭いシングルベッドの上で、ごつい腕を私の腰に回し、背後からぴったりと密着している五条の顎が、私の頭にずっしりとのしかかっている。
重い。地味に痛い。暑苦しい。
息が顔にかかるのもくすぐったい。
以前から添い寝はしてきたが、獄門疆から戻ってきた後の五条は、完全に甘えたモードが暴走していた。
まるで空白の時間を取り返すかのように、四六時中くっついてくる。
「呪霊やら頭の悪い呪詛師以外で、面と向かって僕に喧嘩売ってくるやつ久しぶりで……すっごく興奮するよね!」
その妙に興奮した色が混ざった声に、寝ぼけた頭が一瞬で冷える。
予想以上に楽しそうな反応に、こちらとしては鼻っ柱を折ってやるつもりだったのに、ただの刺激になっている気がしてならない。
……この術式オタクのバトルジャンキーが。
舌打ちして、無視を決め込んで目を閉じる。
「ねぇ、聞いてるの潔乃?」
聞いてませんよ。明日も早いんだから、はよ寝ろ。
「潔乃、髪の毛トリートメントしたほうがいいよ。キシキシする」
「ぶん殴りますよ!」
「おっ、やっと反応した」
心底楽しそうな声に、さらにイラつく。
そりゃ色抜いて金髪にしてるんだから、多少傷むのは仕方ないだろう。放っておいてくれ。
思わずカチンときて反応を返してしまったのが悔しい。
「んで、どうやって僕に対抗するの?」
「…当日までのお楽しみですよ。ほら、寝ましょう」
枕に顔を埋めてごまかすように言うと、背後からふわりと笑う気配がした。
「いやーそうなんだけど、ほんと楽しみでさ」
本当に、楽しそうに言うのだ。まるで遠足前の小学生のように、キラキラと六眼を輝かせてるのだろう。
子供か。
そう返す気力もなくなってきて、私は再度まぶたを閉じた。
子供相手に怒ってもしょうがない。
ほんの少しだけ、背中を預けるように身体の力を抜く。
その変化に気づいたのか、五条の腕がきゅっと強くなった。
……めんどくさいなぁ。
そんなことを思いながら、私はもう一度深く息を吐いて、五条に抱きしめられたまま眠気に身を任せた。
私はノートを開き、あーでもないこーでもないと作戦を走り書きし、
その合間にPCを開いては調べ物を繰り返す。
宝石を確かめ、ノートに効果を書き、使いどころを考える。
そんな私の様子を、部屋に来ていた七海が黙って見ていたが、静かに問いかけてくる。
「……五条さんと、戦う理由は?」
ノートに走らせていたペンの手を止める。
しばらく黙ってから、私は短く返した。
「修行がうまく行きすぎて、調子乗りすぎ。油断で死ぬ」
なるべく感情を抑えたけど、私にしては珍しくイライラが隠せない声色になっていた。
「天狗になった鼻っ柱を、徹底的に折らないと」
七海は少しだけ目を伏せ、言葉を濁す。
「……その気持ちは、分かりますが」
勝てるわけないだろう、七海がそう思ってるのは、言葉にしなくても伝わってくる。
この人は五条に心をバキバキに折られてるの、本当に良くない!と思うが口にはしない。
諦めたらそこで終わりなんだよね。
私はペンをくるくる右手で回しながら説明する。
「あの人、私からケンカを売られて今楽しくてしょうがない状態です。
ドSですし、一気に決めるんじゃなくて、楽しむ方向に行きます。
なので、絶対に“無限”を切って勝負を始めます。私が相手なので超絶舐めプ入ってますし。
なので、そこを突けばベストなんですよね」
ほんの少し、悪い笑みを浮かべながら言い添える。
「まあ、無限を張られてもやれる方法は考えてます。……例えば毒物とか」
「は?」
七海の表情が一瞬で固まる。
「……あの人、基本オートで毒物も弾いてるみたいですけど、弾けない毒物ってあると思うんですよ。
反転を回すにしても、毒の構成が分からなきゃ解毒は難しい。
心当たりがあるので、それ使って瀕死にして――鼻っ柱を折ってやろうかと」
「あなた鬼ですか」
「鼻っ柱が折れればいいので、手段は選びません」
そこへ、タイミング良くノックが響いた。
ドアを開けて入ってきたのは家入だった。白衣のまま、手にはここに来る途中で買ったであろう缶コーヒー。
「伊地知、私に話したいって何?」
少し気だるげな声。明らかに業務中に抜けてきた顔をしている。
「家入さん、これ、反転術式で解毒できますか? 一応、解毒剤は裏ルートで手に入れますけど」
私は手元の紙資料をぺらりと差し出す。
家入は受け取り、手元でパラパラとページをめくる。
が、すぐに――眉がぴくりと跳ねる。
「へー、五条を毒でやるってわけ。なかなかいい案」
私は頷きつつ、補足を入れる。
「バイナリー兵器的なのなら、いけるかと」
「良いところ突くね」
家入が手元の資料に目を戻したまま、やや楽しげに返す。
「バイナリー兵器?」
隅の壁際にいた七海が、眉をひそめながら口を挟んできた。
「二種混合型の化学兵器のことです。
無害の状態の2つの薬剤を投射時に混合して、猛毒物質を生成します。
まあ、家庭で言うと“漂白剤 × 酸性洗剤=塩素ガス”みたいなものですね」
「なるほど。無害と無害なら、無限を通り抜ける……。
でも、今の塩素ガスは有名ですし、普通に弾かれてしまいそうですが……」
七海の反論に、家入がそのまま言葉を継ぐ。
「そうだね。でも、伊地知が提案するのは違うってことでしょう?」
ページをめくりながら、家入の声が徐々に低くなる。
「A剤が C₇H₁₉N₂O₂P で、B剤が CCl₂FNO。混合後に生成されるのが…… C₂H₃Cl₂FNO₃P……」
化学式を読み上げた瞬間、家入の動きがぴたりと止まった。
沈黙が落ちる。
部屋の空気が、確実に一段冷えた。
そして、数秒後。
「……こんな解毒できるわけないでしょ!!
なんでこんな毒物の構成知ってるの!?合成すら危険なのに!!」
突然の絶叫に、私は淡々と応じる。
「英語で論文出てますし。そもそも家入さんも知ってるじゃないですか。
近くの大学の研究室、今なら無人ですし、使い放題ですよ?」
「いや、五条どころか私たちも死ぬんだけど!?」
家入が叫び返し、七海が壁際から離れこちらにやってくる。
「だから、解毒剤も用意しますし、家入さんが反転できたらいいなって……」
「解毒を“数分で行わないといけない”レベルの凶毒よ!?」
七海が資料を覗き込み
「……あの、どういう毒なんですか?」
私を見下ろし口を開いた七海に、私はあっさり答える。
「毒ガス第四世代。現時点で最強の化学兵器で、致死性がVXガスの5倍から8倍の効果があります!」
「却下です!」
次の瞬間、七海が家入から資料をひったくり、その場でビリビリと破いた。
「えー、確実に仕留められると思うんですが」
「目的がすり替わってます」
五条相手なら死なないでしょ。
いい方法だと思ったんだけどなぁ。そうか、だめかぁ。
主人公
ほぼ全てを曝け出してるので気が楽。
隠しているのは前世があることと、伊地知潔高ポジの成り代わりくらい。
これは話すもりはなく墓場まで持っていく。
主人公の頑張りの結果、かつてないほど順調。
でもそれが落とし穴と気がついて、五条に喧嘩をふっかけた。
五条の鼻っ柱を折ろうとして本気で殺しにかかっている。
しっかり狂った呪術師のメンタル。
そこらの知識があるのは、前世が製薬会社勤務の研究職だったからという裏設定を、
他で晒す機会がなさそうなので、ここで公開。
だから、作ろうと思えば他の猛毒とかも作れるし、英語もベラベラ喋れた。
今世では英語しか使わないなと思ってたが、まさかの前世知識が使える!となったけど、
選んだものがものだけに却下された。
まだ化学兵器禁止条約(CWC)に入ってないからセーフなはずなのに……
(※該当の化学兵器は2020年に規制された)
五条悟
まさかの化学兵器で殺されかけた人。
潔乃との勝負を楽しみにしている。
久々に真正面から喧嘩を売られて、相手が
後日、減った通帳にまたお金を前回よりたっぷり入金して、
「好きに使っていいよー」とやって、主人公に無量空処を叩き込む。
久しぶりの抱き枕に満足。やっぱ骸骨と違う!
七海建人
渋谷の刺され待ちといい、今回の化学兵器未遂と言い、
常識人仲間だったはずの主人公のやばい所を見すぎて、セルフ無量空処。
ガチでキレて止めた。今回のMVP
家入硝子
可愛い純朴だった後輩がやばすぎて、セルフ無量空処。
ガチ目にキレて止めた。今回のMVPその2
主人公の理系知識に?となりつつも、話が通じることに気がついて、
今後飲み会で化学式の話で盛り上がるかもしれない。
この手の内容を調べまくったせいで、検索履歴がただの危ない人でワロタ。
今家族が不審死したら、私は警察に疑われることでしょうw
本編完了しましたが、番外編後日談などどれが読みたいですか?
-
本編終了後の後日談
-
本編時間中の日常話
-
if系(√分岐、原作通り五条死亡など)
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R-18 の下ネタギャグ
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