慣れない戦闘シーンばかり。
五条のバトルジャンキーっぷりを強調したら、主人公もヤバい人になった……
ほぼほぼ、オリジナルなので苦手な方は注意
・伊地知ポジション成り代わり(伊地知の双子の妹)ものです
・オリキャラ出ます
・普段より、より激しい捏造、妄想含みます
・ネタまみれです
・主人公、若干チート気味になってきました
私と五条の手合わせは、高専の敷地内で行われることになった。
ちなみに今の私は、「渋谷事変の共犯者」「犯人幇助の疑いあり」として、いまだに捕縛命令が出たままの状態だ。
一方の五条は、その“渋谷事変の主犯格”のままなのに、堂々と高専で暮らしている。
なにもできない上層部。
今や五条が笑って歩くだけで、いつ牙を剥かれるかとビクビクしている。
そんな中、私は術式による認識阻害を解除し、“高専に姿を見せる”というリスキーな選択をした。
これは、ある意味での宣戦布告だ。
今までは五条よりではあっても、"高専の一員”としての立場を保ってきた。
けれど今回は、はっきりと明示した。
私は、五条側の人間だと。正面から、堂々と。
「最高の煽りだよね。ウケる」
そう言った五条の言葉は、まぁ、その通りだと思う。
……五条の威を借る狐ではあるけどね。
迎えた手合わせ当日。五条はそれはもう、余裕綽々の憎たらしい様子だった。
「いやー、潔乃がどう僕を殺しに来てくれるのか楽しみで、昨日寝れなかったんだよね」
嘘をつけ。
昨日だって、私の部屋でぐっすり寝てたくせに。
「楽しみ楽しみ」とか言いながら、私のベッドで数分も経たずに寝落ちしたじゃない。
……あれは幻だったのか?
「……一応、私の実力チェックが主目的ですけど。まぁ、やれるだけやりますよ。本気で殺しに行かないと、何もわからないでしょうし」
実力チェックってのも本当だけど、メインは別にある。
そう、五条の鼻っ柱を折ること。
軽く言ってるが、楽しそうな五条と違って、こっちは一世一代の大勝負だ。
こんなに緊張するのなんて、渋谷で“刺され待ち”していたとき以来かもしれない。
「大丈夫、僕最強だから。そう簡単には死なないよ」
……こちらの気も知らずに、お気楽なことを言いやがって。
先日の化学兵器でも持ち込めてたら、この会話の間に鼻っ柱、折ってやれたのに。
そんな空想を飲み込み、ふと空を見上げた。
上空を舞う鴉の影が、視界をかすめていく。
「……なんで、こんなイベントチックになってるんです?」
「潔乃が、みんなの前で僕に喧嘩売るからでしょ?
まあ、僕との勝負なんて滅多にないんだよ?観戦チャンス!」
五条は、いつもの調子で自信満々に宣言する。
「まさか、ここまで大ごとになるなんて……」
冥冥の鴉が空を飛び回り、上空だけでなく周囲もしっかり囲まれている。中継体制は万全だ。
冥冥曰く、「両面宿儺との戦いの前のリハーサルになるからね。タダでいいよ」とのこと。
――いや、こっちに金払ってくれませんかね?
というか、私は許可出してないけど。『私は』
「じゃ、ルールを確認するね。
体術あり、急所攻撃あり、術式・呪具も使用可。
潔乃は、僕を殺しにかかってもOKってことで」
五条の格好は、新宿決戦の時と同じ。
黒のピタTに、ガウチョパンツ……いや、あれはニッカポッカ?
原作の伏黒甚爾も似たような服を着てたけど、御三家の戦闘服って、ああいうのなんだろうか。
正直、ちょっとダサ……
……うん、話を戻そう。
しかも五条は、黒いアイマスクをつけたままだ。
この時点で、完全に舐めプ。
――いいぞ。もっと油断しろ。
私はというと、新宿決戦で原作の
ネクタイを外した白シャツに、スーツの上下。
さすがに足元はローファーではなく、スニーカーに変えた。
髪は金に染めていて、耳元ではピアスがジャラジャラと揺れているけれど……まぁ、これは許してほしい。
最近は金髪に合うラフな格好ばかりしていたけど、なんだかんだでスーツが落ち着く。
慣れって、怖い。まぁ、伸縮性のある素材で作られたオーダーメイドだから動きやすいし、いいけどね。
軽くストレッチをしながら、私は笑って言う。
「はい、そのルールでOKです。……五条さんの胸、ありがたく借ります」
高専・会議室——
いくつも設置された大型モニターには、冥冥の鴉が捉えた上空からの中継映像が映し出されている。
画面中央では、五条が手を振りながら『まだー? ストレッチ長くない?』と声をかけている。
対する潔乃は、黙々と肩を回し、太腿裏を伸ばし、股関節をほぐしていた。
まるで本気の試合前の準備運動だ。
「秤先輩からは、伊地知さんがそこそこ動けると聞いたけど、五条先生と戦えんの?」
モニターを見つめながら、虎杖がぽつりと呟いた。
「いや、そこまでの技術やスキルじゃねーよ。あの五条悟だぞ?」
秤が呆れたように虎杖の頭をスパンと叩く。
「……伊地知さんってさ、元々呪術師希望だったんでしょ?」
叩かれた頭を痛そうに撫でながら、再度ぼやく。
「希望してたのは事実。でも、才能がなかった」
そう返したのは、家入だった。ソファにもたれたまま、足を組み直す。
「学生時代の伊地知は、呪力操作はそこそこだったけど……それだけだね。あー、体力はあったし、受け身は上手かったなぁ。五条にポンポン投げられても、最後までしっかり受け身取ってたよ。
あとはちょっとした、呪具というかお守り作りが上手かったことか。五条から宝石融通してもらって、なんか作ってたな。
……逆に言えば、それくらいしか褒めるとこなかった」
「呪力量は?」と真希の問いに、家入は「術式に目覚める前は、みんな知っての通り、術師としては最低クラス」と即答する。
「五条の提言で補助監督に進路変更したのは妥当だったよ」
家入が淡々と語る。
だが、そこで言葉を区切った彼女は、少しだけ眉をひそめた。
「……でも、伊地知は気に入られてた。異常なくらい、ずっと五条の側にいた」
「異常?」
虎杖が首を傾げると、家入は言い淀みつつも苦笑まじりに答える。
「学生時代の五条は、今より性格が最低でな。弱い奴は歯牙にもかけない奴だった。
そんな五条がある日突然、伊地知を気に入って側に置き出した。『潔乃』呼びになったのもその頃だな」
「...実は強かったとか?」
パンダが静かに問うと、家入は無言で首を横に振った。
「みんな知っての通りさ。補助監督としても本当に優秀だし。人もいい。
でも学生時代の五条がそんな理由で、伊地知を気に入るはずがない。
……それだけが、ずっと引っかかってる」
映像の中では、五条が冗談めかして両腕を広げ、
潔乃はその様子を無視して、肩甲骨を大きく動かしている。
「実は術式があるのを見抜いてたか?」
秤の呟きに対しては、綺羅羅が即座に否定する。
「いや、それはないと思う。術式が発現した件は、悟ちゃんも相当驚いてたみたいだし」
「日下部先生。伊地知さん、今のままじゃ勝てないって、わかってて挑んでますよね?」
乙骨の静かな問いに、日下部は棒飴を咥えたまま目を細めた。
「勝てるわけねぇよ。普通ならな」
淡々とそう言い切ったあと、視線はモニター越しの潔乃に向けられる。
「ただな——あいつ、“本気で殺しに行く”つもりだ。
伊地知のやつ普段はお人好しだが、補助監督として現場回してるだけあって、
仕事となりゃ平気で狡猾な手段も取るタイプだ。
勝算ゼロの勝負を挑むような馬鹿じゃねぇ。……何かしら、確実な手段を持ってやがる」
そして、顎をしゃくって、画面の五条を示す。
「しかも、五条の奴が、それを“楽しそうに”受けてるってのが一番クソだ……完全に、遊んでやがる」
場の空気が一瞬止まる。
画面の中、潔乃が静かに構えを取った。
深く柔らかく、息を吐く。目元だけが鋭くなる。
「――始まるよ」
黙ってモニターを見つめていた冥冥が、そう呟いた瞬間。
画面内の二人が、同時に動いた。
五条が踏み出し、あっという間に距離を詰めたその瞬間、潔乃の身体が反応する。
少しも慌てず、あらかじめ定めていたラインをなぞるように動いた。
膝をわずかに曲げ、軸足を半歩引き、重心を溜める。
そして、五条の突き出した手を――まるで“触れる前”に読んだように、最短距離で流すように逸らした。
「すっげ……!」
「今の捌いたの!伊地知さん!?」
「動けてる!ちゃんと動けてるじゃん!」
会議室の一角がどよめく。
映像越しでも伝わる緊張感と、予想外の健闘に、学生たちは驚きと興奮を隠せない。
だが、その中で――
「術式で体術を仕上げてきたか」
日下部が低く呟いた。
「読み、反射、歩幅、全部がピンポイントで仕上げられてる……だがな、凡人の最適化だ。余白がねぇ」
その言葉に、乙骨も表情を引き締める。
「たしかに……柔軟性がありません。
常に“正解”を選び続ける以外の道がない動きです」
その時、映像の中で五条がふっと笑った。
『やるじゃん、潔乃。昔だったら、避けられなかったでしょ?』
成長した後輩を純粋に喜ぶというより、明らかに
冥冥がくつくつと笑い出す。
「……ま、ここからどうするかだね。
凡人が、化け物の首をどう取るか。見ものだよ」
くっそ、舐めプしやがって。
初撃を捌いた右手がビリビリと痺れていた。
ただの擦過、それだけのはずなのに、筋の奥から響くような圧が残っている。
手を抜きまくっててこの威力かよ。
こっちは捌くのに必死だったってーのに。これだから天才は嫌だ。
五条は天才で努力家だ。天才が努力したら追いつけないっての。ほんと嫌になる。
リーチの差もえぐい。
あの手足の長さ、間合いの取り方、全てが理不尽に有利で腹が立つ。
内心で毒を吐きながらも、ゲンナリとした顔を抑えきれなかった。
五条の全てに腹立つ。
アイマスク越しでもわかる。あれは完全に、“遊んでる”顔だ。
そして完全なる、舐めプ。
はいはい、次は何やってくれるの?ワクワク!!といった小学生みたいな表情にイラッとする。
でも、直接触れたということは『無下』を切っている。
内心でほくそ笑む。
「五条さん、ニヤニヤしすぎですよっと!!」
内心のニヤ付きを隠し怒鳴ると同時に、フェイントを混ぜて一気に踏み込む。
緩急をつけたステップで距離を詰め、左の拳を囮に繰り出す。
五条は軽く体をひねって拳をいなし、次の瞬間、真正面から蹴り上げた私の足を片手で受け止めた。
「お、けっこう思いきったね」
軽口を叩きながら、五条は楽しそうに笑う。
その余裕たっぷりの態度に、思わず舌打ちが漏れる。
強引に足を振り払い、苛立ちのままに連撃を仕掛け――
そう見せかけて、私は一気に体勢を低く崩し、横から滑り込むように五条の背後へと抜けた。
すれ違いざま、術式を発動。
右手でぺたりと五条の横っ腹に触れる。
直後、五条の長い脚が回し蹴りを繰り出してくるが、
それを紙一重でかわし、そのまま跳ねるようにして距離を取る。
「書き込む時間が必要なんじゃない?」
ニヤニヤと笑う五条に対し、私は術式を起動させた右手をかざす。
「いえ、もう書き込み済みです。舐めプ、ありがとうございました」
五条に向けた私の右手には、小さなハンコが浮かび上がっていた。
それを見た五条の口元から、にやけた笑みがすっと消える。
ほんの数秒前まで、余裕そのものだった表情が、瞬く間に真剣なものへと変わった。
同時に、自分の身体の違和感に気づいたのだろう。
五条はアイマスクを指先でずらし、鋭い視線で自分の身体を凝視する。
「ハハ……マジかよ」
「術式、うまく使えないでしょう?」
ニッコリと笑って見せる。
自分で言うのもなんだが、過去1、『イイ笑顔』をしてる自覚があった。
「私の術式は、ご存知の通り、“人の記憶”を読み取り、書き換える能力です」
静かな声で、淡々と告げる。
「人は、自分自身の記憶と認識に縛られています。
だからこそ、“記憶を書き換える”ことで自らを強くすることも、他者を弱らせることも可能になる。
今、私が使用したのは、“拡張術式”ですね」
そう言って、右手を掲げる。
手のひらに浮かぶ小さなハンコが、淡く揺れながら光を放っていた。
「事前に書き込む言葉を定型化し、印章のように保存しておく。
そうすることで、触れただけで即座に“書き換え”が実行できる。
発動時間を限界まで短縮し、奇襲性と即効性を両立させました」
印章に刻まれているのは、たった一文。
《呪力操作が乱れる》
それだけ。
長文を書こうとすれば、それだけで呪力が持っていかれる。
しかも、相手は五条悟。術式発動のタイミングすら与えられない。
だからこそ、私はあらかじめこの一文を用意していた。
この日のために、七海を何度も相手にして練習した。
一撃を通すために、私なりの“殺し文句”を。
五条の目がわずかに細められ、アイマスクを完全に下ろした。
警戒と理解が混ざったあの表情を、真正面から受け止める。
——ま、今更警戒しても遅いけど。
「無下限呪術――その核心となる、“呪力操作の精度”。
六眼がなければ維持も困難なそれを、私は今、記憶の書き換えで“ほんの少しだけ”乱しています」
「五条さんの呪力を封じるなんて真似は、私の現在の呪力量では無理です。
でも、精度を乱す程度なら——通る。よかったです、本当に」
ニタリと笑いながら、意図的に“嘲るような声色”で続けた。
「分子単位での精密制御が必要な“無限”を封じられたら――
あなたは、ガタイのいい、ただの術師だ!」
五条が構えを取るが、指先がわずかに痙攣した。
呪力を強引に練ろうとしているのがわかる。
五条は強い。フィジカルと呪力操作だけで特級をフルボッコにできる。
でも、呪力操作がままならない状況になったら?
無理に呪力を練ろうとすればするほど、“乱された”精度が仇になる。
焦ってるでしょ、五条悟。
無意識でも、他人を見下して舐めプするからだよ。
最短距離を駆け抜け、視界の中心に捉えたのは、どこまでも整った五条の顔。
呪力強化がままならない五条より、私の方が早い。
そのまま正面から拳を振り抜いた。
「——あんまり人を舐めるなよ、五条悟!!」
拳と呪力が重なる。
皮膚を打ち抜く、ほんの一瞬――0.000001秒の誤差の中で。
バキィッ!!
黒い火花が空気を裂いた。
――黒閃。
圧縮された呪力が空間を歪ませる感覚が、手のひらから背中まで一気に駆け抜けていく。
私の拳が、あの五条悟の綺麗な顔面を——正面から、叩き飛ばしていた。
黒閃が決まった瞬間は、正直、五条の綺麗な顔を殴り飛ばすので必死だった。
だから、黒い火花が空気を割いて、予想以上の威力が出たことに呆然としてた。
は?なんだ今の……
その“奇跡”の一撃を、私は自分の拳で放った。
あの五条悟の顔面に。
……え?え、今の、赤黒くなかった?
自分の拳を見下ろす。
さっきまでビリつくように熱かったその手が、今は不思議なほど冷たい。
え、なにこれ。……黒閃?
黒閃、入ったの?
は? えっ? 私、やったの?
「うっわ……やっば……っはっは!!」
その横で、地面に仰向けになっていた五条悟が、
腹を抱えて笑い出した。
テンション高っ!?
「黒閃初めて食らったけど効くね。頭グラグラする。
ねぇこれ、自慢していいからね? “あの五条悟に黒閃決めたって”!」
いや、私が一番びっくりしてるんですけど!?
目の前で勝手に盛り上がる五条を見ながら、正直ドン引きしてる。
五条は口元をぬぐいながら、楽しそうに身を起こす。
目を細め、いつものニヤリを貼り付けたまま、こちらを見る。
「……で。呪力操作、確かにちょっと乱れてるわ。うん、感覚ズレる。
でも、できなくはないね。面白っ」
五条、笑っているけど——その目が笑ってない。
すっごい冷えて、冴えてきているじゃん。やば。
......いやなんで、黒閃食らってピンピンしてるんですか?
「……まだ続ける気ですか?」
「うん。むしろこれからが本番じゃない?」
辞めてくれないかなーって、本音をこぼしたけど、
五条は心底楽しそうに笑っていた。
「ははっ、黒閃決めてゾーン入ってるのに、ここで終わるとかもったいないでしょ?
さー、どれだけやれるか見せてよ、潔乃」
その言葉と同時に、一気に距離を詰められた。
「っ!」
咄嗟に腕をクロスして、飛んできた拳を受け止める。
初撃なんかよりずっと重い。踏み込んできた勢いごと叩きつけてきている。
反動に合わせて飛び退き、なんとか距離を取る。
「……やっぱ術式は発動できないな。めんどくさい」
五条が小さく舌打ちしたあと、こめかみに手を添える。
——直後、頭部に呪力が集中して流れるのが見えた。
「……え?」
目を見張った次の瞬間、彼の目から血の涙がすっとこぼれ落ちた。
「……あー、これで術式使えるわ」
その言葉に、思考が一瞬停止する。
……いや、なに言って?
私が黒閃を決めた痕が修復されている、反転術式を使った……?
呪力操作がうまくいかず、術式すら使えないのに?
まさか..…
「記憶を書き換えられたなら、その記憶領域、ぶっ壊して治せばいいでしょ?」
「何やってるんですか!」
思わず怒鳴り散らしてしまう。
原作でやった禁じ手の脳破壊をやりやがったこいつ!!
自分の脳の“記憶操作された部分”を呪力で焼き切って、“操作された記憶”をリセットし、術式の干渉を強制的に解除した。
そんなやり方ある???
いやいやいやいやいや、そんなやり方、正気じゃない!
五条は元々気が狂ったやつだった!——って、そんなこと言ってる場合じゃない。
「ッ! バカですか!?」
「だってさぁ。やられっぱなしで悔しいじゃん?」
瞳から流した血の涙を拭いとり、五条は平然と首を回す。
「……さて、もう一回やろっか。今度は、“僕も術式あり”で」
背筋に、つうっと冷たいものが走った。
思わず一歩、後ずさる。
ちょっと待って。想定外が過ぎる。
「……降参って、ありですか?」
「ないかなー?少なくとも僕が満足するまでは」
「……ですよねーーー!!!」
ヤケクソになりながら内ポケットの中のものを握りしめ、森のエリアに逃げ込んだ。
「潔乃ー逃げ回ってるだけじゃ、どーにもならないけど?」
呑気な声が木々の間に響く。
声を無視して、私は全力で逃げる。
これはもう戦闘じゃない、鬼ごっこ――いや、恐怖の処刑ゲームだよ。
木の陰に一瞬身を隠し、すぐに右手を自分の胸元に当てる。
術式発動。現れた術式の万年筆で書き込む。
《五条悟に認識されない》
術式が展開された瞬間、呪力がごっそり持っていかれた。
……引っかかってる、か。
書き込みの“滑り”が悪い。重い。
それはつまり、十分に術式が効いてない証拠だ。
五条が戦闘モードに入り、六眼が本気で作動してる以上、ほぼ効果はないと見ていいだろう。
保健室で七海の認識が薄かったのは本気でじゃなかったからか。
これは時間稼ぎにすらならない。呪力だけ持っていかれたよクソが。
そう思った瞬間——
「みーつけた」
その声が真上から落ちてきて、背筋が凍った。
「ひぇっ……!」
思わず変な声が漏れる。
何でわざわざ上から!性格が悪すぎる。心臓に悪い。
すかさず、内ポケットから青い顔料入りの煙玉を取り出し、頭上めがけて投げる。
「けむたいなぁ……」
地面に降り立った五条がぼやく。
無視してさらに白い煙玉を追加で投げる。
周囲が煙で満たされ、視界がぼやけていく。
私の肺にはそれが少しずつ入り込んでいるけれど、大丈夫。
準備はしてある。
「潔乃、これちょっと毒性あるよね?臭いし、無限反応してるんだけど」
五条の軽口も無視して、今度は懐から宝石を二つ取り出した。
それを見た瞬間、煙の中から「おっ」と嬉しそうな声が響く。
無限を張って受ける気満々だ。
……これはこれで、また舐めプなんだけど、私相手だとそうなるか。
無限なしよりはいいけど、さっきそれで顔面殴られたでしょうに。
ならば、逆手に取る。
一つ目の宝石から、小さな火を放つ。
次にもう一つの宝石を呪力で起動。渦を巻くように、風を集める。
風は火に勢いを与え、五条の周囲の煙を焼き上げる。
その中には、先ほどの顔料と――
「へー、シアン化水素ね?
残念。これは僕が把握してる毒だから効かないね」
ちっ……やっぱ見抜かれたか。
特定の顔料に強酸を混ぜ、熱で化学反応を起こす。
シアン化合物の発生は古典的だが効果は高い。
が、相手が悪かったなぁ。
五条は術式の影響もあって理系が得意だ。
やっぱこれくらいの温い毒じゃダメだだったか。
「結構、強毒だけど、潔乃は大丈夫なの?」
煙と熱を纏った空気の中、五条の声が軽く響く。
術式で風も炎も、そして発生させたはずのシアン化水素すら、
五条はあっさりと無効化していた。
火花の残る煙の渦を、呪力がなぎ払うように吹き飛ばしていく。
彼はその中心にで息ひとつ乱れていない。
「事前に、中毒の予防薬を飲んでるから大丈夫です!」
私は咄嗟に声を返しつつも、足を後ろに引いた。
毒が効かないのは予想通りだけどさ。対応が最適解すぎて引く。
「無限なかったら、まともに食らってたよ?」
私は引いてるのを五条に悟られないようにしながら、次の一手を考えていた。
けれど言葉だけは、あえていつもの調子で返す。
「五条さんなら大丈夫かと、本当だったら化学兵器使いたかったんですけど
家入さんに止められました!」
五条は一瞬、ぽかんとしたように目を丸くし――
次の瞬間、わかりやすく眉をしかめた。
「いや、それは本気で僕も分からないからね。勘弁して」
あ、さすがに“化学兵器”には引いたな……
化学兵器は五条の範囲外か、相当厄介みたいだね。
やっぱり使いたかったな。毒ガス第四世代。
高専の大会議室。
巨大モニターの前には、教職員と生徒たちが集まり、静まり返った空気の中で戦況を見守っていた。
「――今の煙玉ってさ、毒、だよね?」
綺羅羅が半分呆れ顔で呟くと、隣の真希が腕を組んだまま、あっさり頷いた。
「そうだな。本気で殺す気でやってるな。
無限を使われたら、それくらいやらないと悟には勝てないからな」
煙の渦が画面の中で風に煽られ、その合間から潔乃が両手に何かを取り出す。
淡く光を放つ、宝石だった。
「……宝石?」
ざわめく空気の中、その一言に反応したのは――会議室の奥、壁際のソファにもたれていた冥冥だった。
目を細め、口角を上げながら呟く。
「へぇ……だいぶ贅沢に使ってるじゃないか」
その一言に、生徒たちがさらにざわつく。
「贅沢って?」
首をかしげた虎杖に、
「あれは“ただの”宝石じゃねぇよ」
日下部が低い声で割り込んだ。
前列で腕を組んでいた彼は、椅子からわずかに身を乗り出していた。
その目は、煙の向こうで光る宝石を捉えて離さない。
「定期的に、高濃度の呪力を込めた宝石が“五条家”から流通してる。
一つひとつが手作業で呪力を練り込まれた、高純度の呪具……まあ、市場にはほとんど出てこねぇがな」
「えっ、あの噂の……?」
三輪が目を丸くする。声が高く跳ねた。
頷いた日下部が続ける。
「効果は石の種類によって違う。攻撃用、補助用、回復系まである。
しかも、それらの管理は“五条家の当主”――五条悟の直轄管理下にある、完全なブラックボックスだ」
「……それを伊地知さん、さっきから、めちゃくちゃポンポン使ってない?」
モニターに映る潔乃は、今まさに宝石に呪力を通し、別の効果を起動しようとしていた。
虎杖の声が素直に漏れると、日下部は肩をすくめ、ため息混じりに言った。
「流通量考えたら、あれは伊地知個人が所有してるもんじゃない。
五条の手持ちから、直接引っ張り出してきてる。その許可が出てるとしか思えねぇ」
宝石を扱う潔乃の指先は、まるで精密機械でも操っているかのような動きだった。
長年の習熟と、意識の行き届いた操作。
“持たされてる”ではない。“使いこなしている”動きだった。
「ちなみに、五条家の宝石が外部流通し始めたのは、今から約十年前だ」
日下部が唸るように言う。
「それと同時期に、五条のそばにずっといたのが——伊地知。
なるほど、繋がった。五条が気に入って側に置くわけだ」
家入がタバコをくわえながら、絞り出すように言った。
モニターを凝視する目が鋭く光る。
「ああ……おそらく、あの宝石の製作者は、伊地知潔乃。そういうことだ」
その瞬間、会議室が静まり返った。
誰もが固まる中——冥冥が口元を歪め、笑みを浮かべる。
「へぇ……これは、無理してでも引き抜いておくべきだったね。惜しいことした」
「ねぇ、潔乃。こんなんポンポン宝石使ったら、身バレすると思うんだけど?」
五条の声が、呑気そのものに頭上から降ってくる。
あえて振り返らず、私は息を切らしながら木陰をすり抜け、
追撃を警戒して懐からもう一つ宝石を抜き取った。
「……気にしたら負けです!」
ほとんど自棄気味に返す。
今頃会議室では宝石の件でざわついてるんだろうけど、五条に喧嘩売ると決めた時点で想定内だ。
「
そのあとに五条は、愉快そうな声で、悪びれもなく付け加えた。
「まぁ、僕が守るからいいけど。……さ!!」
うるさい、守られる気なんてねぇわ。
……いや、多少の手助けは、ちょっとほしいのは事実だけど。
軽口を叩いているように見えて、こっちは必死だ。
手持ちの“日常使い”の宝石——本来はバックアップや補助で使うはずのそれを、今は躊躇なく牽制にぶっ放している。
というのも——
五条が先ほどと異なり、容赦なく術式を使ってくる。
無下限の「
距離を取ろうにもどんどん間合いが潰されていく。
……あーーーーーめんどくせぇ!!敵に回すとこんなに戦いづらいのか!
ちょうど今も、紙一重で五条の蹴りを側転で避けたところを、
引き寄せる蒼で身体ごと吸い込まれた。
「ッ――!」
そのまま、腹にパンチを一発もらう。
呪力を腹に込め、ぐっと歯を食いしばる。
ただ、ダメージはなかった。
……セーフ。仕込んでた宝石が防いでくれた。
けれど。パキっと服の内側で、嫌な音がした。
中で砕けるような感触。
胸元の内ポケットから、細かい破片がこぼれ落ちた。
……ッ!!
宝石が割れた。
「……っクソがぁ……!」
呪力、何ヶ月ぶっこんだと思ってんだよ。
それもあれだ、あの小粒のサファイア。
コツコツ呪力を流して、先日の術式発現のタイミングで増えた呪力量で一気に仕上げたやつ!
そして、それを五条の“素の一発”で消し飛ばされたという事実に思わず叫ぶ。
「はは、猫被り取れてるよ。会議室に音声流れてるけどいいの?あちこちにマイク設置されてるけど」
「うっさい。糖尿病予備軍が!!
黒閃決めた時に、もう一発殴って、意識削っときゃ良かった!!
「潔乃ーお口が悪いよー
あと、僕は甘党だけど、糖尿病予備軍じゃないからね」
五条がニヤニヤしながら言ってくる。
けれどその目は、笑っていない。軽口こそ叩いてはいるが――
すでに無限は展開済みで解く気配がない。
私の判子からの黒閃、そして毒ガスまで食らって、五条は私相手でも完全に“戦闘モード”に入っている。
舐めプの皮を被りつつも、五条はもう、警戒を解かない。
見せつけるように術式を起動させると、警戒した五条が離れる。
「その無限がある限り、私はあなたに触れられません」
その隙に息を整えながら、私はそう告げる。
右手を地面にぺたりと這わせ、術式を発動させた。
視線は五条に向けたまま、
ほんのわずか、開いたページに素早く書き込みを終える。
五条が一瞬、眉をひそめた。
驚いていたようだが、攻撃には踏み込んでこない。
……それが、命取りなんだけどねぇ。
“記憶”を操作できるのは、人間だけじゃない。
私の術式が扱っているのは、脳内の記憶だけじゃなく、“認識”の基盤になる情報そのもの。
つまり、物理的に存在する『場の情報』――
その記録だって、対象に含まれる。
次の瞬間。
「おっと」
五条が、姿勢を崩す。
「っ、なに……?」
彼の足元が、ズルズルと沈んだ。
五条の足元だけ、砂地のように柔らかく沈む。
掴み所のない不安定さが、バランスを狂わせる。
「滑った?いや、足場が……おかしくない?」
跳ねるようにして脱出しようとする五条の着地先――
そこもまた、“ズルり”と足を取る。
「っ!!!」
「拡張術式です」
私は淡々と告げた。
「地面の記憶が、五条周辺だけ“不安定になる”ように設定しています」
明言したその瞬間、五条の目が見開かれた。
「……マジで言ってる……?」
私が書き込みをした地面の辺りを六眼で凝視し、
それが驚愕と興奮で見開かれる。事実だと六眼が読み取ったのだろう。
「触れられないなら、あなたを取り巻く環境の方を書き換えます。
術式の触れる先は、“あなた”だけじゃありませんから」
「……君、ほんっと怖いねぇ!」
五条の口元が、賞賛と狂気が混ざったような笑みに歪む。
敵に向けているのは何度か見たけど、私に向けられると鳥肌が止まらない。勘弁してほしい。
心底楽しんでるのわかるが、狩の対象にはなりたくないんだ。
まぁ……言ってもこれは“決定打”にはならないけどね。
五条は無限を駆使して、空中に足場を作ることもできる。
地形干渉に慣れるまで、せいぜい気を引けるかどうか。
距離を取り、次の仕込みのために宝石を構えた。
「……ほんと君って隠し玉多いよね。
でも、そろそろ限界?」
先ほどから五条から逃げ回り、宝石を無駄遣いしてるようにしか見えないのだろう。
息が上がる。喉が焼けるように熱い。呪力は残りわずか。
それに対して五条は息一つ切らしてないし、これが現役最高峰の術師と、補助監督の差かと。
体力仕事だし、最低限の筋トレと運動はしてたんだけどなぁ。
「いえいえ、最後にもうひと足掻きさせてください」
私は静かに胸ポケットへ手を伸ばす。指先が冷たい宝石の感触を掴んだ。
「えーまた宝石? もったいなくない?」
手のひらに転がる五つの宝石を静かに見下ろした。
青、緑、琥珀、紫、赤。それぞれが、微かに灯るように呪力を帯びている。
けれど、これらは攻撃用でも、防御用でもないんだよね。
「……これ、五条さんにはまだ見せてませんでしたね」
「ん? 何を?」
「ご存知の通り、私、宝石に呪力を込めるのが得意なんです。
今までは、宝石本来の効果を発動させるために使ってましたけど...…」
そう言って、宝石をまとめて“ぎゅっ”と握り込む。
呪力が、逆流するように体内に注ぎ込まれる。
熱い。脈打つ。
全身の血管が拡張し、神経がビリビリと軋む。
「ッ……!」
普段流れない呪力量が全身を駆け巡り、ズキズキと痛みが走る。
「……今は、私が使います」
「呪力タンク!?いいじゃんそれ!!
なんで今まで見せてくれなかったの!?」
五条の目が一気に見開かれた。
「研究中だったので」
しれっと答える。
実際、まだ運用は不安定だった。
こんなの知られたら、こき使われるのが目に見えましてね……
「今の私は、“通常の5倍近い呪力量”を一時的に使えます」
慣れた手印を組む。詠唱が口をついて出た。
「──闇より出でて、闇より黒く。その穢れを禊ぎ祓え」
その言葉と同時に、先ほど投げ捨てたはずの複数の宝石が、淡く発光する。空間が揺れ、天井から墨を流したように、ゆっくりと帳が降りた。
──嘱託式の帳。羂索のやり口を模した、条件付きの閉鎖空間。
まさか五条を閉じ込めるのに使うと思わなかったな。
「宝石ムダ撃ちしてたと思いました?
これで、あなたはこの帷から、私を倒すまでは逃げられません」
宝石から吸収した呪力が身体中を暴れ回ってて、流石に体がきつい。
何度も使うもんじゃないな。回路が焼き切れそう。
私は術式を発動させ、空間にそっと手を伸ばす。
虚空を撫でるように触れ、“本”を開く。空気に、記憶を書き込む。
そして次の瞬間――
五条の周囲に、静かに“変化”が起きた。
「……っ!?」
音も、風も、動きも何も変わらない。
けれど、確実に五条の“呼吸”が変わる。
「……っは、え?」
喉に手を当てる五条の表情に、困惑の色が浮かぶ。
異変に気づいたようだ。
「無限で物理的接触は防げても......
大気中の酸素濃度までは、遮断できないんですよね」
私は淡々と告げる。
「あなたの周囲の空気の“記憶”を、私は書き換えました。
『今は三畳紀である』と」
「本来、周りの空気の記憶の書き換えなんてできませんが、呪力量の底上げと、
帳で空間を制限することで可能にしています」
「ちなみに三畳紀って、酸素濃度が極端に低い時代なんですよね。
10%〜15%程度⋯⋯普通の人間なら、息が切れ始めて、場合によっては意識も飛び始めるんですけど。流石ですね」
それでもまだ平然と立っている五条に、さすがに呆れる。
ほんと、どういう身体してるんだか。
でも流石に、五条の呼吸が浅く早くなっている。酸欠の症状だ。
無限は正常に展開されている。
空気はある。けれど、そもそもの周りの空気に酸素がない。
だから、脳が回らない。集中力が落ちる。
何より、“呼吸という当たり前”が足を引っ張ってくる…はずだ。
その様子を見て、私はすっと口元に笑みを浮かべた。
「……五条さん、降参してくれていいですよ?」
「っ、は……あ"ぁ"?」
「脳は、酸素を一番使う臓器です。術式の制御には特に必要ですよね?」
「……っ」
「無限を張るのも、段々キツくなってるはずです。
ねぇ、どうします?倒れる前に、言葉で降りてくれますか?」
徹底的な、煽り倒し。いい機会なので徹底的に嬲らせてもらう。
敵に追い詰められながら煽られるのって、多分伏黒甚爾以来じゃないかな?
その言葉に、五条の表情が明らかに歪む。
「……うわ、ちょっと...今の本気でイラッとした……」
五条は苦しげに息を吐きながら、しゃがみこむ……かに見えたが。
ふっと、笑った。
「いや、やっぱさぁ……潔乃とやってると、色々考える、よね」
「何の話ですか?」
「君って、すごく現実的じゃん。理屈と積み上げの人。現実を読み切って戦う。
でも僕、ちょっと変わってるって、知ってるでしょ?」
「自覚あったんですね」
「後で、マジビンタね。でね……」
五条が、顔を上げる。
「無限ってさ、“何もない”じゃん?…でも、だからこそ……“なんでもある”んだよね」
「……は?」
「君は、“無限には酸素がない”って判断した……それは正しい。物理的には」
空気が震える。
術式が、再び蠢く。
「でも僕にとって無限は、“遮断”じゃない。“定義”なんだよ。
何もない空間に、僕の無限が『酸素はある』って、思ったら……それはもう、ある」
五条が、手を空間にすっと伸ばす。
触れた場所から、見えない“何か”が生まれた気がした。
「今、僕の無限の中には、僕の定義した酸素がある。
君の術式が、“世界の空気”を操作するなら、僕は、“僕の世界”を作るだけだ」
瞬間、彼の呼吸が、ゆっくりと整っていく。
世界が、彼の“認識”で塗り替えられていく。
「君のロジックは正しい。すごいと思う。
でも、“術式”ってね、“発想力や想像力”なんだよ」
空気の定義を書き換え、酸素を“ある”と認識した無限の中。
五条は呼吸を整えてから、嬉しそうに笑う。
「潔乃って発想がおもしろいわ!ほんっと楽しい」
「……っはぁ……」
長く、深いため息が漏れた。
もう、この人ほんと無理……という顔を隠しもしない。つーかできない。
五条に向かって両手をあげて、帳と周りにかけていた術式を解除する。
「降参です。もう用意した策は全部潰されました」
どこか投げやりにそう告げると、目の前の男は、にやっと笑った。
「降参許してあげるよ。楽しかったし………」
その声に嫌な予感が走った。
「じゃ、ご褒美」
五条が突然私の腕を掴み、勢いよく引き寄せる。
そのまま強く抱き寄せられ、至近距離。反射的に息を呑んだ、その瞬間。
彼の指が、帝釈天印を組んだ。
「領域展開――『無量空処』」
世界が瞬時に塗り替えられた。
重い静寂。宇宙空間を思わせる五条の心象風景が広がる。
唖然としていると、鈍い音が、少し離れた位置から響いた。
反射的にそちらを振り返ると、視界の端に、黒い人影が崩れ落ちるのが見えた。
五条がちらりと視線を送り、肩をすくめるように言う。
「上層部の犬。森に入ったあたりから彷徨いてた」
口調は淡々としているが、殺気がこもった声色だった。
「……潔乃、呪力感知はちょっと課題ありだね」
いきなり課題を突きつけられ、反射的にぐぬぬっと眉が寄った。
補助監督だからいいじゃない!
大体、五条の呪力が大きすぎて、他の呪力拾い辛いんだわ!
死んだ名も知らぬ上層部の犬には申し訳ないが、私は自分の敵が死のうがどうでもいい。
内心でぐちぐち文句を言う。
五条の視線がその男から離れ、私へと戻る。
そして、肩にかけられた手の力が、少しだけ強まった。
「当たっちゃうから、離れないでね」
その一言に、私はぞわっと背筋を走るものを感じ、
本能的に五条の横腹へ腕を回して抱きつく。
無量空処のDDoS攻撃なんて食らったら廃人になる自信がある。
まだ簡易領域はきちんと扱えないし!
五条がクスッと笑った。
「ここは無下限の内側。滅多に見れないよ。
潔乃もいずれは領域に至るだろうから、見てこの感覚を覚えておいて」
「いや、私はそこまで極めるつもりは…」
五条は視線を逸らすことなく、きっぱりと言い切った。
「至るよ」
何の迷いもなかった。
私はその言葉に、口を閉じたまま何も言えなかった。
主人公
この度、無事チート系主人公に。
五条の鼻っ柱を折るために頑張りすぎた。
色々準備したけど、全部防がれた。これだから天才は!
実は唯一勝てるチャンスがあった。
黒閃きめた後、無限を使われる前に連続攻撃をして意識を刈り取れば勝てた。
初めての黒閃で動揺したの敗因。
五条悟
主人公の黒閃パンチがだいぶ効いた人
正面から殴られたのは高専時代の夏油以来。
「――あんまり人を舐めるなよ、五条悟!!」のセリフはだいぶ刺さった。
自分があまりにも規格外に強すぎるあまり、自分と自分以外では生物として線引きがあったのを指摘された気がした。
術式としては直接戦闘向きじゃない主人公に、発想力でここまでやられた、素直に賞賛。
窮鼠猫を噛むじゃないが、気を抜いてはいけないと痛感した。
五条が太平洋プレートの沈み込み帯から戻ってきた時も酸素ないやん
きっと獄門疆の中に空気があって、その後、一瞬で脱出したからセーフに違いない!
でゴリ押しで書き進めた人。
いろんなパターン考えたが、私の頭では無下限攻略がこれが限界だった…
本編完了しましたが、番外編後日談などどれが読みたいですか?
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本編終了後の後日談
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本編時間中の日常話
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if系(√分岐、原作通り五条死亡など)
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R-18 の下ネタギャグ
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