【本編完結】とある転生者の役割交代   作:kotedan50

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1ヶ月修行期間④
別名「五条に危機感持ってもらおうパート②」
空想に空想を重ねてヒッチャカメッチャカな理論になってます。
雰囲気で流していただけると幸いです。
ほぼほぼ、オリジナルなので苦手な方は注意。

・伊地知ポジション成り代わり(伊地知の双子の妹)ものです
・オリキャラ出ます
・激しい捏造、妄想含みます
・ネタまみれです


転生者、市場価値が上がる

あの後、五条の領域から出た直後。

私は、呪力も体力も限界を迎え、その場に崩れ落ちたらしい。

 

で、五条が私を抱えて、家入のもとへ駆け込んだそうだ。

ちなみに私に“無量空処”をかけたと勘違いされて、観戦者のほぼ全員からこってり絞られたらしい。

 

......ザマァ。見れなかったのが残念だ。

 

ちなみに目を覚ました後は、地獄だった。

 

術式の使いすぎによる頭痛、

呪力を無理やり逆流させてブーストした反動で、体内の呪力回路はあちこち炎症を起こしてるし、

おまけに全身が筋肉痛。

 

凡人が最強に噛み付いた代償かと思うと安いもんだけど、きつい。

 

保健室のベッドの上でうめくことしかできず、私は枕に顔を半分埋めたまま、ぼそりとつぶやいた。

 

「――あーあ。結局、五条さんに勝てなかったなぁ」

 

家入が乾いた笑い声を漏らす。

 

「十分でしょ。格下の相手があそこまで五条追い詰めたんだから、

しかも術式発現したての人間が」

 

「もっと命の危機を感じさせて、あの人の鼻っ柱、へし折りたかったんですよ」

 

家入が指を一本ずつ折りながら、楽しげに数えていく。

 

「命の危機は感じたんじゃない?

舐めプしてる間に術式封じて、次に毒物で殺しにかかって――

フィールド改変して機動力削いで、最後は酸欠で仕留めようとしたんでしょ?」

 

「……」

 

「どこの熟練の術師よ」

 

「結果こそ全てです。全部、防がれたので」

 

不貞腐れて枕へ顔を押し込む。

直後、ぽすんと軽く頭を叩かれた。

 

「十分。あいつには響いてる」

 

「……そうですかね……そうだと、いいんですけど」

 

五条の同級生の家入が言うならそうなのかもしれない。

少しでも、五条に何かが届いていたのなら、いいけど。

 

ベッドの上でうんうん唸りながら考える。

やっぱちょっと弱いよなぁ。

両面宿儺の「世界を断つ斬撃」は、縛りに縛りを重ねて、五条に当てた時だけノーモーションかつ、

呪力の起こりもなかったはずだ。

 

「初めての自爆です」が五条の生前最後の言葉だからな。

 

あれを本来の五条だったら避けられるはずという話だが⋯⋯それはそれで恐ろしいけど、

あの時の五条は異常なハイテンションだった。

黒閃を何発もきめて、無制限の虚式茈の自爆技で魔虚羅を倒して、勝確っていう状況。

 

北斗で「アミバが出てきてバトルになった」

エヴァの「背景格納庫に移動した」

私鉄純愛列車で「終電なくなっちゃった⋯⋯」

 

が出たという状況。いわゆる鉄板。

仮にそこから外したら、そのホールの不正遠隔か機械の故障と判断して、即、遊戯中止をお勧めする。

私なら2度といかん。万札をドブに捨てるだけだ。

 

......話がそれたから元に戻すけど、

私に殺されかけて、警戒を怠ってはいけないってのは多少頭に入ってるはずだけど、

だからといって、戦闘の高揚感なんてそう簡単に抑えられるもんじゃない。

コンコン、と控えめなノックの音が保健室に響いた。

 

 それに応じて、家入が椅子を揺らしながら「どうぞ」と一言。ドアが開いて、顔をのぞかせたのは虎杖悠仁だった。

 

「……伊地知さん、お見舞いっす!スポーツドリンクとアイス持ってきました!」

 

手に提げたコンビニ袋を差し出されて、思わず笑みがこぼれる。

 

「ありがとうございます。ちょうど頭が痛くて、アイスとか欲しかったんです」

 

袋からアイスを取り出し、ペリッと包装を剥いてひと口。

甘くて、冷たくて、じんわりと幸せが染みていく。

 

「いや、ほんと……さっきのすごかったっす!」

 

目を輝かせたまま、虎杖はベッド脇の椅子に腰を下ろし、ぐっと身を乗り出してきた。

 

「五条先生に黒閃決めた時、俺、叫びましたよ!あの五条先生が吹っ飛ぶなんて……もう、びっくりでした!」

「うんうん、あれは最高だったわ。あの五条のツラ……見た?」

 

家入が肩を震わせながら笑う。よほど痛快だったらしい。

あの瞬間、生徒たちは驚いて固まったあとで、ザマァの大歓声を上げたらしい……愛されてるねぇ、五条。

 

あと、日下部や、こっそり観戦していた七海まで、無言でガッツポーズをしていたらしい。

あの二人、普段から1級術師として五条に理不尽な仕事を押しつけられてるから、ちょっとばかり鬱憤が噴き出したんだろう。

溜飲が下がったなら、何より。

 

「……でも、あのあとすぐに動揺しちゃって」

 

 私は少しだけ肩をすくめる。

 

「あのまま連続で攻めて、意識を飛ばすとこまで持っていけてたら、勝ててたと思う」

 

本当は、金的の一つでも決めておくべきだった。

流石の五条だってそこをやられたら撃沈するだろ。

触りたくはないけど、躊躇してる場合じゃなかった。

あぁ、でも五条の五条を砕いたら、五条家から呪われそうだからダメか…

 

「“迷えば敗れる”って、前に虎杖君に言ったのにね。自分がその通りになっちゃったよ」

「いやいや、それでも十分すごかったですって!それにしても、“無限”ってあんなふうに突破できるもんなんすね……」

「今回の私のやり方は、もう通用しないけどね。五条さんって弱点をそのまま置いておくタイプじゃないから」

「え、じゃあ他に突破方法って……ないんすか?」

「――ないでしょ」

 

家入がタバコに火をつけながら笑いかけてきたところで、私は即座にかぶせた。

 

「……理論上は、可能かもってレベルならありますよ」

「……って、え、あるの!?」

 

虎杖の目が、さらにまん丸になった。

家入も無言で固まってる。

 

「一つ目、私が領域展開できるようになる。これの説明は省略します」

 

虎杖も家入も「それは確かに」と頷いている。特に突っ込む様子もない。

 

「二つ目。五条さんが“認識していない”系統の毒で攻めること」

 

 そこで一瞬、家入が眉をひそめたが、私はそのまま話を続ける。

 

「無限による自動防御、あるいは反転術式による治癒。どちらも、“毒”を正確に認識していれば機能する。でも、未知の毒、あるいは構造が特殊すぎて直感的に理解できない毒の場合、対応が遅れる可能性がある。

そのため、呪術依存の毒じゃなくて、現代科学による毒が望ましいです。呪術依存だと五条さんの六眼で見抜かれますから」

 

虎杖がピンと来てないようなので、ちょっと分かりやすい解説を入れることにする。

私が齧っている棒アイスを虎杖の目の前に差し出して揺らす。

 

「たとえば、このアイスはミルクと牛乳と卵と砂糖からできている。

これならある程度アイスのつくり方を知っていれば、完全再現とまで行かなくても誰でも作れるでしょう?

でもこれが、サーティーワンのラブポッピンシャワーだったら?

ミントにチョコにポップロックキャンディの種類。それらを把握する必要がある。さらにポップロックキャンディーの作り方と原材料を把握する必要があり、作業工程が多いんです」

 

なるほど!という顔をした虎杖に満足し、アイスを戻しパクりと齧る。

 

「たとえ即座に反応されたとしても、即効性のある高致死毒なら、先に意識を飛ばすことも可能となります。

今回は使いませんでしたが、候補に挙げてた毒は、そういうものばかりでした」

「……あんた、ほんとに補助監督?」

 

家入が呆れた笑みを浮かべ、タバコの灰を落とした。

発言は無視して次に進める。

 

「三つ目。私の術式で、無限そのものを書き換えること」

 

虎杖がえ、できるの?と呟いている。

 

「私の術式は“大地”や“空間”にも書き込める。なので、対象が“概念”に近い無限であっても、術式の記述が届く可能性はあります。

ただし、これは呪力量が問題。

無限に干渉するための呪力量がどれだけ必要なのか見当もつかない」

 

「4つ目。五条さんの無限に対して、強引にエネルギー勝負で打ち勝つ。

無限“距離の増加”が“光速で展開されている”と仮定します。であれば、それを超える速度のエネルギーで攻撃を加えれば、理論上は突破可能です」

 

トンデモ理論だけど、こういうのを考えるのは結構楽しかったりする。

 

「……たとえば、まだ存在すると確定してはいませんが、光速より早いとされる、“タキオン粒子”の概念を………」

 

そこで私は虎杖の顔をちらりと見た。

 

……眉が下がって、目がウロウロと泳いでて…完全に“処理落ち”していた。

ぱちぱちと瞬きを繰り返し、口を半開きにしたままフリーズしている。

明らかに、脳内メモリが追いついていない。

 

「虎杖君、ついてこれてます?」

 

そのまま椅子にのけぞる虎杖の姿に、家入が思わず吹き出す。

 

「もうちょい優しく説明してあげなって」

 

……さすがにタキオン粒子は重すぎたか。

のけぞって白目を剥きかけている虎杖を見て、私は小さく咳払いして話題を変えることにする。

 

「……まぁ、あとは私には使えない、他人の術式の話になりますね」

「え、でも聞いてみたいっす! 参考になるかもしれないし」

 

虎杖が目をキラキラさせて前のめりに言ってくる。

……さっきまで頭から煙出てたのに、切り替えが早いな。

 

「たとえば……七海さんの術式、“十劃呪法”とか」

 

その瞬間、虎杖の表情がぴたりと固まった。

......あ、そういえば。七海が生きてるって、虎杖君にはまだ伝えてなかったっけ……

 

「“十劃呪法”は、対象の長さを線分にしたとき、“7:3”の比率の点に強制的に“弱点”を作り出す術式。でも、あれって“物体”限定とは明言されてないんですよ」

 

虎杖君の硬直を無視して話を続ける。

 

「だから理論上は、“空間”とか“世界”といった抽象的なものを対象にできれば……たとえばあの五条さんを真っ二つ、“2.5条”にできるかもしれない!」

 

原作連載当時に流行ったネットのブラックネタをつい口にしてしまったが、虎杖も家入も、ぽかんとした顔で沈黙。

 

……うん、完全に滑った。

 

「もちろん、現実的に成立させるには、相当な縛りや制約をかける必要があるとは思います」

 

滑ったことは無かったことにして、私は脳内計算のほうに意識を向けながら、話を続けた。

 

これは制限に触れる可能性がある内容だ。けれど、ただの“術式の解釈”の範囲であれば、おそらくセーフ。虎杖を経由して、五条さんの耳に入れば儲けものだ。

 

「あとは、両面宿儺の“御廚子”も、同じことができそうです。あれは“切る”ことに特化した術式ですし、宿儺はどうやら“縛り”のエキスパートのようですから。可能性は高いと思っています」

 

これはあくまで“解釈”の話で、未来を見ているわけでも、確信しているわけでもない。どうやら制限にも――かかっていない。セーフだ。

 

冥冥や東堂は、虎杖に術式の話をすることに慎重だった。宿儺と身体を共有していた彼に伝えた情報が、無意識に宿儺側へ渡る可能性がある――と危惧していたのだ。

 

でも、あの“指”の件ですらきちんと伝わっていなかったことを見る限り、情報共有の精度はそう高くない。少なくとも、この程度なら問題ないと判断している。

 

「宿儺の術式は言い方悪いですが『ただ切るだけ』の能力です。

術式のクラスで言ったら、五条さんよりも何ランクも劣る」

 

私は、食べ終わったアイスの棒をくるくると指先で転がしながら、ぽつりと続ける。

正確には斬撃ではなく炎の竈もあるが、今回は話が逸れるので話題には出さない。

たぶん、あれで五条の無限を突破はできそうにないしね。

 

「それでも――呪術全盛期の平安で、“呪いの王”とまで呼ばれた。

呪力量だけじゃない。発想力、縛り、知識、あらゆる技術の総合力……

……確実に、五条さんより上に行っている。私は、それが怖いんです」

 

部屋の空気が、ふっと重くなった気がした。

そんな中で、虎杖が遠慮もなく言葉を放つ。

 

「仮に、仮にだけどさ。伊地知さんが……宿儺だったとして。

五条先生と戦うなら、どう戦う?」

 

おっと、だいぶストレートなボールが来たな。

これどう答えても制限に引っかからないか?

 

「……そうですね」

 

私はほんのわずかに息を吸って、言葉を選ぶ。

 

「まず、“偽りのゴール”をセッティングします。

“ここで終わり”、“これで勝った”と、五条さんが確信するような地点を、あらかじめ用意しておく。

その“勝ち確”の瞬間を作り出した上で......」

 

ドクン、と心臓が脈打った。

 

あ、やっぱ……だめだ。これ以上は口にすべきじゃない。

発言を邪魔する系じゃなくて、体に直接害する系は初めてだな。

微かに眉を寄せながらも、私は抑えめの口調で進める。

本当なら、呪術の起こりがないとか、詠唱破棄とか言いたかったけど無理そうだ。

最低限言える範囲まで言いたい。

 

「……縛りをゴリゴリに仕込んだうえで、なんの前兆もなく、“無限”を攻略できるようにした“御廚子”を、速攻で叩き込みますね」

 

ドクン。さっきよりも強く、明確に心臓が警鐘を鳴らす。

『なんの前兆もなく』は制限に引っかかり掛けてるが、なんとかセーフだったらしい。

多少、心臓に負担をかけてもこれを言えたのはよかった。

言葉を飲み込み、呼吸を整える。さすがにこれ以上は、もう話せない。

 

多分、普段の制限よりきつい、これ以上話すと心臓が止まる。

 

虎杖が追及してこなかったことに、ほんの少し安堵した。

そのとき、家入が静かにタバコを灰皿に押しつけながら、ぼそりと呟いた。

 

「……あんたが敵じゃなくて、本当に良かったって、今、心の底から思ってるわ……」

 

 


 

 

保健室の扉を挟んだ廊下。

音を立てずに立っていた二人の男――七海建人と五条悟は、互いに顔を見合わせることもなく、静かにそのやり取りを聞いていた。

 

『まず、“偽りのゴール”をセッティングします。

“ここで終わり”、“これで勝った”と、五条さんが確信するような地点を、あらかじめ用意しておく。

その“勝ち確”の瞬間を作り出した上で......』

『……縛りをゴリゴリに仕込んだうえで、なんの前兆もなく、“無限”を攻略できるようにした“御廚子”を、速攻で叩き込みますね』

 

その一言に、空気がピンと張る。

扉の向こうの気配が静かになるのと同時に、五条は僅かに目を細めた。

わざとらしくため息をつき、手のひらで首の後ろを掻いた。

 

「ほんともう、潔乃の発想がさ……怖くてしょうがないよ。ねぇ七海?」

 

そう言いつつも、五条は思い出していた。

かつて、伏黒甚爾にやられたあの時を。

自分は最強という自覚と確信があったからこそ、命を落としかけた......いや、実際に一度死んだ。

あの敗北を、潔乃は正確に言語化して、再現できると言っている。

無意識に、背筋に冷たいものが這い上がっていた。

 

「彼女の話は、仮定でも理論でも、いつも“実行可能”なラインで組まれています」

 

隣で七海が低く言った。

 

「五条さん、本当に気をつけてくださいよ」

 

五条の死因を聞いてる七海からすれば、本当に心の底からの忠告だった。

だが、そう言っている七海自身の胸中もまた、あまり穏やかではない。

 

まさか、自分の術式『十劃呪法』が、あんなふうに拡張解釈されて語られるとは思わなかった。

それも、まるで“元からそうだった”かのように、迷いなく。

 

無力感、ではない。だが、発想の差に、思わずため息が出そうになる。

目の前にいる“最強”に対しても、彼女は“勝つこと”を前提に思考している。

それを、尊敬しつつも......少し羨ましかった。

 

 


 

 

あの後、保健室の扉が静かに開いた。

 

入ってきたのは五条と虎杖には見えていない七海。

 

「あ、俺、また来ます!」

五条の姿を見て空気読んだ虎杖はそう明るく言い残すと、くるりと踵を返して退室していった。

その際、彼は七海のすぐそばを、何も気づかずに通り過ぎていく。

 

“不可視の存在”として、見事なまでに処理された七海。

 

……ほんとに、私の術式って有効だな。

 

自画自賛しながら、私はこっそり満足する。

虎杖の感覚なら何かに気づいても良さそうなのに、まったくの無反応。完封だ。

 

五条がベッドサイドに歩み寄り、アイマスクをずらしながら私の顔を覗き込む。

 

「潔乃、少しは落ち着いた?」

「ちょっと頭痛するくらいですね。あと、筋肉痛がひどくて」

「……頭痛も筋肉痛も、明日には落ち着くと思うよ」

 

アイマスクを元に戻しながらのその言葉に、私は素直に安心した。

 

「よかった」

 

その横で、静かに頷いた七海が、真っ直ぐにこちらを見る。

 

「伊地知さん、いい勝負でした。

黒閃を決めてくれたときは、心の底からあなたを尊敬しました」

 

思わぬ言葉に、胸がじんと熱くなる。

……七海にそう言われると、なんか照れるな

ちゃらんぽらんな五条と違って、普段あまりそういうことを言わない人の言葉は、まっすぐ響く。

 

「ありがとうございます。七海さんからの尊敬をもらえるなんて、私も光栄です」

「ちょっとそこ! ひどくない!?」

 

不満そうに身を乗り出す五条を完全に無視して、七海は視線を逸らした。

 

そのやりとりを見ながら、保健室の隅――

今日何本目になるかわからないタバコに火をつけていた家入が、くくっと笑う。

 

「黒閃を顔面に受けた時は、胸がすく思いだったぞ」

 

五条の口角が、ぴくりと引き攣る。

 

「……お前らな」

 

ガシガシとイライラした様子で髪を搔いていた五条は、苦い顔で息を吐いた。

そして次の瞬間、表情をふっと真顔に切り替える。

 

「今日一晩は、僕も七海も保健室に泊まるから」

「……そうですか」

「驚いてないんだな」

「羂索にも宝石の件はバレていましたし、あと模擬戦で宝石のバーゲンセールやりましたから」

「それだけじゃないよ」

 

五条がにやりと笑う。

 

「君が僕と“いい勝負”しちゃったからね。胎としても市場価値、上がりまくり。

で、狙いやすいのは今夜が一番確率高いわけ」

「模擬戦終わって、私も五条さんも普段より疲弊してますからね……確かに、今が一番狙いやすい」

「うん。“今夜が山だ”ってやつ」

 

その声色は軽いが雰囲気がピリッとしてる。あぁ、これマジなやつだ。

嫌だなぁ。私に、そんな価値なんてないのに。

 

「とりあえず、明日になれば呪力も落ち着いて、オマエなら術式と宝石で身を守れるだろ?」

 

そして、ぽんと肩を叩くと軽く言い放つ。

 

「だから今晩は、ここで仲良くお泊まりな。

僕らがそばにいるから、安心して寝てなよ」

 

そのとき、保健室の片隅で家入が口を開く。

 

「私も今日はここで待機するよ」

そう言って、棚の奥から取り出したのは日本酒?焼酎と思われる一升瓶。

 

「やるでしょ?」

 

七海が小さく苦笑する。

襲撃者が来るかもしれないのに余裕だな!この人達も呪術師で狂ってやがる!

 

「ええ、一杯だけなら」

 

その二人の様子を呆れて見ていたら、その日本酒のラベルが目に入った。

 

「私も飲みたい!」

 

そのラベルを見て、思わず体の痛みも忘れて私も飛び起きる。

限定流通・高評価・入手困難。ネットでも即完の幻の一本。

しかも渋谷事変で日本中大混乱。もう2度と飲めないかもしれない一品だ。

ベッドから降りようとして

 

「オマエは寝てろ」

 

五条の手がぐいっと頭と肩を押さえ、ベッドへと力任せに押し戻された。

 

「えぇぇ……!」

 

頭を押さえつけられたまま睨み上げると、五条は涼しい顔で言い放つ。

 

「潔乃は療養中。酒なんてダメでしょ?

しかも、明日からは宝石詰め直し任務があるんだからね?」

 

「えぇ……」

 

確かに宝石は今日だいぶ使ってしまったので明日から量産を急がなければならない。

ベッドに押さえつけられながら、私はあの幻の酒を恨めしそうに見つめる。

家入がすでにお猪口を差し出しており、それを七海が受け取って二人は静かに乾杯していた。

 

ちくしょう。私も飲みたい。

 

「宿儺との戦いが終わったら、僕が手に入れて、好きなだけ飲ませてあげるから」

 

その言葉に、私は一瞬――まぶたの裏に、原作の最悪の結末がよぎった。

最悪の未来が現実にならないように、必死に動いている。なのに......

一番その未来を信じきれていないのは、私自身なのかもしれない。

 

彼は当然のように、“その先”を語る。

それが、どうしようもなく胸に突き刺さった。

 

無理に口角を上げて、精一杯“いつも通り”を装う。

 

「……絶対、忘れないでくださいよ。その約束」

 

ほんの一瞬だけ間を置いて、わざと明るく付け加える。

 

「お高いお取り寄せのつまみもセットで奢ってくださいよ!」

 

五条は一拍遅れて、にやりと笑った。

 

「もちろん。松坂牛でも、伊勢海老でも、鴨鍋でも、ウニでも、なんでも付き合うよ」

「……あぁ、でも、流通してるかどうかが問題かも」

「じゃあ、現地に行って食べればいいんじゃない?」

「インフラほぼ死んでるのに?やっぱダメじゃん」

 

不貞腐れたふりをして、枕に顔を埋める。

……泣きそうになってる顔を見られたくなかったから。

 

「ほらほら、拗ねるなって。なんとかなるっしょ?」

 

五条が、珍しくご機嫌をとるように私の頭を撫でる。

その手のあたたかさを感じながら、私は無理やり、眠りについた。

 

 


 

 

潔乃が、不貞腐れたように枕に顔を埋めて眠りについた。

その様子をそっと見届けた五条は、ベッドから離れ、家入の許可ももらわずに無造作に冷蔵庫を開けた。

中からコーラを一本取り出して、プシュ、と音を立てながら蓋を開ける。

炭酸のはじける音とともに、五条はソファに座る七海と家入のもとへと戻ってきた。

 

「……久しぶりに、4人で泊まってるよね」

 

五条の何気ないその一言に、家入がちらと目をやる。

タバコを灰皿に押しつけながら、ゆるく笑う。

 

「去年の夏、伊地知の部屋で宅飲みしたとき以来?」

「そうですね。忘年会と新年会は......百鬼夜行で流れましたから」

 

七海が静かに言う。

 

「……痛風鍋、しようって言ってたのにな

傑のやつもタイミング選べってんだ…」

 

五条がコーラをひと口飲みながら、ぽつりと続けた。

やりきれないような声色がにじんだ声。

 

その名前が口にされた途端、場の空気が微かに揺れる。

誰もすぐには返さない。だが、ふと家入が、低く呟いた。

 

「……次に飲むときは、夏油の弔いだな」

 

その言葉に、五条は黙ったまま目を伏せた。

七海もまた、無言のままサングラスの奥で目を細める。

 

「……祝杯もな」

 

五条が静かに言った。

 

「あの脳みそ野郎、ぶっ殺して祝ってやるよ。

......まぁその前に害虫の処理だな」

 

ベコッ、と乾いた音が響いた。

 

五条が手にしていたコーラのペットボトルを、呪力で圧縮しながら潰した音だ。

あっという間にペットボトルはぺしゃんこに変形する。

五条はそれを無造作に投げ捨てると、アイマスクをゆっくりと下ろした。

 

一方で、七海も黙って立ち上がる。

きっちりと結ばれていたネクタイをほどき、それを静かに拳に巻き付けていく。

そして、背中のホルスターから新調してたナタを、静かに引き抜いた。

 

「……保健室は汚してくれるなよ。掃除が面倒だ」

 

家入が日本酒をお猪口に注ぎながら、ため息混じりにそう言った。

 

 


 

 

主人公

 

疲労困憊でお休み中。

でも明日になったら大体回復するあたり、術師の回復力と家入の反転術式の力が凄すぎる。

五条の原作通りの死を回避するために色々やっているが、どれもこれも空回りしてるような気がしてならない。

自分に資産価値なんてないのに、この時期に何をやってるんだと呆れ顔。

 

 

 

五条悟

 

前話で黒閃を決められて皆から、ここぞとばかりに色々弄られた人。

無量空処を主人公にかけたと思われ、家入にメスを投げられた。

誤解は解けたけど紛らわしいと皆から怒られた。

主人公が両面宿儺だったらの時に、明らかに自分の弱点をよく知ってて、的確に殺しに来て、それが実現可能そうだと本能的に感じ取った。

自分だったらどこで一番油断する?と、どこで攻撃されたら一番ダメージを受ける?と考え始める。

主人公の資産価値爆上がりで今夜襲撃が確実に来ると予想。保健室で泊まり込む。

襲撃者の数?虫の数なんて、いちいち数えないでしょ?

 

 

七海建人

 

前話で黒閃を見て感動した人。

思わずガッツポーズをして、雄叫びをあげそうになるのを堪えた。

五条に対しては、五条との才能の差で、諦観している部分があった。

だが、主人公が自分の術式で真面目に勝ちに行こうとしてるのを見て、衝撃を受けた。

冬なのに害虫が多くて困りますね。

 

 

家入硝子

 

前話で黒閃を見てゲラゲラ笑った人

五条のあの顔最高!

主人公の宝石の件は本気で驚いたし、五条が庇護下におくわけだと納得。

可愛い後輩が宝石製造マシーン、胎にならなくて良かったと思っている。

保健室が汚れなければ、なんだっていいよ。

 

 

虎杖悠仁

 

皆で保健室に詰めかけるのは迷惑ということで、1人が代表で行くことになった。

じゃんけんで主人公へのお見舞いに行く権利を勝ち取った。

無限攻略のパターンをあれもこれも考えていてびっくりした。

普段穏やかで優しい(ゲームの時以外)伊地知さんが、こんなこと考えているなんて!

七海の術式に触れられて不覚にも泣きそうになった。

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