【本編完結】とある転生者の役割交代   作:kotedan50

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人外魔境新宿決戦②
原作ダイジェストにオリジナル要素が、大匙3杯くらい。
今回も原作本片手に読むの推奨……

・伊地知ポジション成り代わり(伊地知の双子の妹)ものです
・オリキャラ出ます
・激しい捏造、妄想含みます
・ネタまみれです
・劇場版総集編「呪術廻戦 懐玉・玉折」のネタバレを若干含みます
・作者は関西圏じゃないので、関西弁わかりません。


転生者、隠密行動を終える

五条の体から血飛沫が舞った。

 

右腕が吹き飛び、その体が無様に後方へ倒れ込む。

 

『魔虚羅による適応は、一度攻撃を受けると緩やかに解析が始まり、時間の経過によって完成する』

 

『さらにその間に追撃を受ければ、その時間が加速する……』

 

両面宿儺の、どこか悦に入ったような解説が続く。

――胸糞悪い。

 

『一度適応した呪術も、決して解析を完結することなく、更なる適応を続けるのだ』

 

『俺が魔虚羅に求めていたのは“手本”だ。俺が貴様の不可侵を破るための”手本”』

 

虎杖が椅子を蹴り飛ばすように立ち上がった。

 

『はじめ貴様の不可侵に適応した魔虚羅は、不可侵を中和無効化するように自らの呪力を変質させていた』

 

『それは俺にはできないことだ。だから待った。俺に合った不可侵への適応を』

 

乙骨の肩が小刻みに震える。その肩を、真希が無言でポンと叩いた。

彼女の視線はモニターから逸らされている。

 

『二度目の適応は期待通りのものだった。あれは俺のように斬撃を飛ばしたわけではない。あれは術式対象の拡張だ』

 

秤がゆっくりと立ち上がりながら、首を横に振る。

 

『術式対象を、五条悟ではなく、空間、存在、世界そのものまで拡張し、斬る』

 

『不可侵なんて関係なく、その空間、世界に存在する限り、その空間、世界ごと存在を分断される』

 

そうだ、そのまま五条が死んだと思いこめ!

このまま五条から意識を逸らして、早くその場を離れろ。

 

『至難の技だったが、実に見事だった』

 

『あっぱれだ、五条悟。生涯、貴様を忘れることはないだろう』

 

鹿紫雲が飛び出していく。

 

五条に向けられた視線が逸れていく。

今しかない。

 

 

――雷神、任せたよ。

 

 

私も立ち上がり、憂憂とともにその場を離れた。

 

宿儺が鹿紫雲に気を取られている隙に、仕込んでいた“認識阻害”の術式が効いている私と憂憂は、姿を晒すことなく五条の元へと到達する。

 

右腕は切断され、胴を斜めに抉るように深い斬撃。

 

止まらない出血――だが、体は繋がっている。意識はないが、息はある!!

 

感情が昂るのを堪え、静かに、憂憂と目を合わせる。合図は必要ない。

 

私たちは、無言のまま五条を抱え、その場を転移した。

行き先は、本部の家入の処置室だ。

 


 

本部に着いた瞬間に憂憂の“認識阻害”の術式を解除する。

これにより、救助活動を続ける憂憂は宿儺の視界に入ることになるが、これはお互い同意済みの行動だ。

憂憂をあえて宿儺の視界に入らせることで、隠れている私や七海に対する認識を逸らす作戦だ。

申し訳ないけど、頼むよ。

 

五条を抱えて処置室に飛び込む。

新田が悪化の防止の術式をかけ、家入がすぐに手を動かした。

鋏が布を切り裂く音が響く。

五条の服が切り裂かれ、血に濡れた傷口が露わになる。縫合と同時に、反転術式による治療が始まった。

 

その傍らで、カラン、と小さな音がいくつか床を転がる。

 

私が、五条の戦闘服に縫い付けておいた宝石たちだった。

 

ほとんどは砕け、粉になっていたが、わずかに原型を留めているものもある。

 

一つ目は、明るいオレンジ色に輝くスファレライト。

真っ二つに割れ、その断面からわずかに呪力が燻る。

強い幻惑効果を持つ石で、5年前に五条から仕入れた石の中に紛れていた、偶然の掘り出し物。

この石のおかげで、宿儺は五条を「完全に死んだ」と誤認した。

縛りも仕込んである。「五条が重症に陥ったとき」という発動条件を設定し、効果を最大化させた。

ただしこの宝石は成分が亜鉛とカドミウムのため毒性がある。

万が一に備え、私は足先でそっと蹴り離しておいた。回収は、後回しでいい。

 

二つ目は、今にも崩れ落ちそうなほどヒビの入った、明るい緑のエメラルド。

高い回復力を持つ宝石で、五条が“世界を断ち切る斬撃”を受けたその瞬間から、

回復が始まるように発動条件を弄っておいた。

乙骨が虎杖にやったのと同じだ。一度殺し、即座に反転術式で蘇生する。

切られる側から治癒させればいい。ただそれだけの、強引な手段。

このエメラルドは、私が5歳の誕生日にもらったもの。

22年かけて蓄えた呪力を、今ここですべて使い果たした。

 

──そして、三つ目。

 

ヒビが走り、端が砕けかけている。

けれど深いインクブルーの光は、床の上でもなお鮮やかに存在感を放っていた。

 

スターサファイア。大粒の、極めて上質なもの。

 

あれはまだ高専時代。

宝石の件が五条にバレて間もない頃だった。

 

「質の良い宝石だとどんな違いがあるか、気になるだろ?」

 

そう言って、五条が興味本位で私に渡してきた石だ。

呪力を流して見せると、彼は結果に満足そうな表情をし

 

『やるよ。呪力流してもいいし、実験にでも使っていいぞ?俺に使い道はねーし』

 

まるで、読み終わった漫画を「捨てるのもアレだから、あげる」感じの声色だった。

数百万単位の宝石を、そんな風に渡された私は、盛大に動揺したのを覚えている。

 

五条は、私のが誕生日に貰っている宝石の質の良さを認め。

それらに呪力を流すのを優先しろ。と言ってた。

けど、私はこちらの宝石の個性に気づいてからは、こちらを優先していた。

スターサファイアの一般的に言われている効果は

 

・幸運を招き、悪いものを遠ざける

・迷いを断ち切り、正しい道を示す

・直感と判断力を高め、精神を安定させる

・困難に立ち向かう勇気を与える

 

……もう、五条のための石にしか見えないじゃないか。

 

私は弱者で原作の伊地知さん (兄さん)の代わりに、しょうがなく高専にやってきた。

「原作通りに動かねば」「死んではいけない」

そんな意識ばかりに縛られていた、最初の頃。

 

でも、強い“守護”の性質をもつ、この石を見つけてしまった。

 

その時から朧に原作準拠の思考を捨てて、本気で救済を考え始めた気がする。

......灰原や夏油の救済は叶わなかったけど、この石の力なら一番、不可能と判断していた五条を救えるのでは?

そう気づいた瞬間、私はこの石を“両面宿儺戦”での要にすることを決めた。

新宿で、五条の隣にあるべき1番の石はこれだと。

 

その日から、ほぼ毎日呪力を流し続けた。

準備のすべては、今日この瞬間のために。

 

そして、あの斬撃。世界を断ち切る一撃を五条が受けた瞬間、

宝石の効果が発動し五条を守った。

完璧には防げなかった。

が、それでも五条の身体は真っ二つにはならなかった。

傷の形状を見る限り、五条自身も土壇場で回避行動を取ったようだ。

それも、この石の加護と重なって、大きな効果を生んだのだろう。

 

 

さらに最後の仕込み。

私は、五条の領域展開を見せてもらったとき、

彼自身の記憶にこう書き込んでおいた。

 

『宿儺戦で勝利を確信した時こそ、油断するな』

 

書き込む時に、制限に引っかかるかと思ったが、原作内では油断したという直接描写はなかったのでセーフだったようだ。

とにかく、この一文が効果を発揮して、回避行動につながったに違いない。

どういうふうに効果が出たかは表面上はわからなかったが、彼は確かに回避行動をとった。

完全に避けることは叶わなかったが即死は免れた。

 

これだけ準備に準備を重ねて、結局五条は戦線離脱。正直、今この状況なのは頭が痛い。

できれば戦闘継続可能であって欲しかったのが本音。

 

が、それでも...

 

 

正史とは変わって、五条悟は、まだ生きている。

 

 

ところで、こんなに宝石を使いまくって宿儺にバレなかったって?

これに関しては私の術式で宝石の発動を隠蔽した。

渋谷の重面からの刺され待ち時は、術式がなかったため、強い効果の宝石が使えず苦労したのを思い出す。

あの時にあれば楽だったのに。

 

「伊地知!術式を!」

 

家入の言葉に我に帰り、私も術式を発動させる。

五条の身体に書き込む言葉は『治癒能力を限界まで上げる』『反転を全力で回す』だ。

戦闘開始からではなく今書き込むのは、時間を短縮する縛りによって効果を上げるためだ。

今は腹部に致命的な傷を負っており、呪力の生成が極端に抑えられているせいで、

五条自身の反転術式は、ほぼ作動していない。

それを、家入が代わりに反転で修復している状態だ。

私は別の回復系の宝石を取り出し、五条の体にそっと押し当てながら、モニターに目を向けた。

 

戦況は鹿紫雲が「幻獣琥珀」を使用したところだった。

 

「……展開が早い」

 

原作通りなら、この後に完全体になった宿儺によって鹿紫雲は殺されるはずだ。

宝石を発動させたまま手を離した。私がいなくてもオートで呪力切れまで発動し続ける。

腰につけていたポーチから巾着袋を取り出し、医療用ワゴンの上に置く。

 

「回復系の宝石です。全部の石が傷を癒やし体力を回復する効果を持ってます。

状況に応じて使ってください、使い方は以前話した通りに」

 

家入にそう伝えながら、五条の血に染まったスーツのジャケットとシャツを脱ぎ、投げ捨てる。

新田と甘井が目をそらした気配が伝わってくるが、中にTシャツを着せてあるので問題はない。

そして、家入の治療を受けている五条を見下ろす。

 

「もし、このまま死んだら……五条さんの恥ずかしい過去、みんなに晒しますからね」

 

ピッ、ピッと一定のリズムを刻む心電図モニターの音が響く中、あえて軽く脅しをかけておく。

もし今のこの“死にかけ”の状態で、『あの空港』に辿り着いていたとしたら──

ただ「戻ってこい」と幾ら私が呼びかけたところで、五条は帰ってこない。

 

いくら五条から信頼や信用を得ようとも、静かな恋のような青い春の思い出と──夏油傑には、勝てない。

あの青い春の末端に、紛れ込んでいたからこそわかる。

そして、劇場版のあのエンディングを前世で見た私にはわかってしまう。

原作の空港にいたメンツが、みんな揃って「南へ」行く気持ちも。

 

だからこそ、“死んだら恥ずかしい目に遭うぞ?”という悪意を込めた、呪いの言葉を吐いておく。

死んだ後のことはどうでもよくて、自分の死体にすら興味がない五条だが、こういうのは流石に嫌なはずだ。

アオハルおじさん、あんたが死んで残される側の身にもなれってんだ。

死ぬにしても今死ぬな。後10年くらいは空港で親友待たせとけ。

 

「いいぞ。こういう時の呼びかけで戻ってくる話は五万とある。

五条のやつにもちゃんと聞こえてる」

 

家入はバイタルモニターの波形を確認しながら、変わらぬ真顔で淡々と告げた。

 

「ならちょうどいいですね。生き延びる理由になってもらわないと」

「……いっそ、死ななくても意識が戻るの遅いようなら、晒してやれ」

 

家入のそのひと言に、わずかに口元が緩む。

五条悟という男はそういう小さい恥を引きずるタイプだ。

 

「……五条さんの初恋…弱いな。あ、直近のズリネタでも晒しますか」

 

さらりと告げると、部屋の空気が一瞬凍った。

 

「それで私らや、知り合いが出てきたらどうするんだ?」

 

家入の突っ込みには、やや呆れたような笑いが混じっている。

 

「より一層弄れるじゃないですか」

「…………確かに」

「一生擦り倒せますよ。口封じの対価で銀座の高級寿司でも奢らせましょう」

「高い日本酒もつけてもらおう」

 

アラサー女2人の悪意に満ちた密談。

私も家入も低く笑う。

10代の小娘の頃ならまだしも、お互いアラサー、特に私は前世合わせると歳いくつだって話だ。

これくらいの冗談、屁でもない。

 

ホラホラ五条早く目を覚まさないと、もっと弄られるぞ?

ただでさえ、今お前は治療のために裸に剥かれてるんだからな?

こんな軽口叩いてるけど、家入も私も必死なんだぞ?

 

甘井が気まずげに何か言いかけて口を閉じる。

新田が、そっと眉をひそめながら小声で呟いた。

 

「……お二人ともこんな時に真顔でそんなこと、言わんといてください…」

 


 

 

五条を家入たちに託して本部に戻ると、そこに残っていたのは七海ただ一人だった。

 

「鹿紫雲がやられました」

 

鹿紫雲に関してはもう本人が戦いを望んで、満足して逝ってしまったので何もいうことはない…

簡潔な報告に、私は頷くだけで返す。

画面では宿儺が完全体になっていた。四本腕で腹部に口がある異形の姿。

実質1人で2人分の行動取れるわけだ。そりゃ強い。反則だ。

そして、秤は予定通り宿儺から裏梅を引き剥がしたようだ。

 

「……次は日車さんの“誅伏賜死”からの、『没収(コンフィスケイション)』と『死刑( デスペナルティ)』作戦ですね。“没収(コンフィスケイション)”は……まあ、失敗確定ですけど」

「なぜ?今は神武解(かむとけ)もありませ...」

 

言葉を止め七海がふと瞬きをした。察したらしい。

 

「……ああ、あなたの宝石か」

「そう。宿儺の手元には、私の宝石があと1つ残ってます。おそらく“呪具”扱いになると思うので、“没収(コンフィスケイション)”対象になるはずです」

「……五条さん、ほんと余計なことしてくれましたね」

 

七海が心底呆れたような声を出す。そればかりは同意。

両面宿儺を削ってくれたのは感謝するけど、これに関してはギルティ。絶許案件。

 

「あとは、死刑( デスペナルティ)が通るかですが…」

「何か?未来視でも有罪(ギルティ)は取れたんですよね?」

「ちょっと気になることがありまして、多分大丈夫なんですがイレギュラーが発生して無いかと…」

 

怪訝そうな顔をする七海に私が告げる。

 

「今日が祝日だからです」

「は?」

 

口で説明するのもめんどくさい。

術式を発動させ、私の腕をトンっと触ると、いつものように本化。記憶のページをぱらりとめくる。

そこから該当の箇所を見つけ、トントンと七海に共有する。

基本書き込み以外の時は他人に見えないのだが、こうして意図的に見せることもできる。

私の術式ほんと便利。

 

『刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律

第百七十八条 

2 日曜日、土曜日、国民の祝日に関する法律(昭和二十三年法律第百七十八号)に規定する休日、一月二日、一月三日及び十二月二十九日から十二月三十一日までの日には、死刑を執行しない。』

 

七海がすごく微妙な顔をした。

 

……わかる。いや、わかりすぎる。

その反応、正常。

 

私もこれ、原作の連載当時にネット考察で見たときは爆笑した側だ。

日車の“失敗理由”の一つとして考察班が挙げていた説だった。

ネタとして大盛り上がったのをよく覚えてる。

 

「ないない。漫画的にそんな展開あるわけないって」

「でももしそれで話まとめたら、逆に作者天才すぎるだろ……」

 

と、週刊誌リアタイ勢として、大層楽しませてもらった。

 

でも、いざ現実になると──マジで勘弁してほしい。全然笑えない。

 

日車には言ってない。下手に意識させるとガチで失敗する。

 

代わりに日下部には、念のため“リスクの一つ”として伝えておいた。

……やっぱり彼も、めっちゃ嫌な顔をしてた。「そんなことに気づくな」とため息つかれたけど。

 

気づいたのは私じゃない。

考察班に言えや、と心の中で毒づきながら、

「五条と一緒に禿げろ」と呪詛を送っておいた。

 

この人にも、たぶん呪い、効かないけど。

 

「みんな忘れてると思いますが、今日、2018年12月24日は天皇誕生日の“振替休日”。祝日扱いです。

もし日車さんの意識が司法の“常識”に引っ張られているなら、“死刑”が成立しない可能性も……と思ってましたが」

 

有罪(ギルティ)が取れて『処刑人の剣』が発動したのを見て、ホッと息を吐く。

 

「よし!」

 

そもそも裁判自体、土日祝には開かれないし、死刑は「刑事施設内の刑場で執行」と法的に明記されている。

死滅回游の最中に日車は有罪(ギルティ)を取りまくっていたようだし、問題はないだろうと思ってはいたが…

流石に大丈夫だった。心臓に悪すぎる。

 

あとは決まれば良いのだが…...

没収(コンフィスケイション)”は、やはり私の宝石に対して適応され、日下部が防御に入る。

 

「これはもう未来視どおりでしょう。私たちもいきましょうか七海さん」

 

おそらく原作の流れは変わりそうにない。

日車も原作以上にだいぶ成長して………ぶっちゃけ、ほんと1級トップ層くらいになっているんだけど、映像でもわかる程度に宿儺の動きと違いすぎる。

もうモニターを見る必要がない。

原作通りに日車が宿儺によって孤立させられ、タイマンで戦い始める様子を横目に見ながら戦場へと向かった。

 


 

私たちが戦場に着いたタイミングで、宿儺による総則(ルール)追加が行われた。

 

総則(ルール)16

天元による人類との超重複同化の発動件は伏黒恵が持つこととする

 

つまり、乙骨と高羽のペアがうまいこと羂索を倒したことを意味する。

これは助かる。

私は羂索からマーキングを受けた身だ、今は術式で誤魔化せているのか、あるいはいつでもやれると見逃されていたのか...

とにかく、いつ寝首をかかれてもおかしくなかった。

その危険が、ようやく消えた。

 

直後に乙骨が到着し、領域を展開するはずだ。

それに巻き込まれないように距離をとりながら日下部の近くへ移動する。

 

「乙骨がいい感じに結界の座標をズラしてくれた。死角が無いよう全員散って位置につけ」

 

ちょうど猪野へ作戦指示をしているところだった。日下部と視線が目が合う。

 

「乙骨が結界の一部を崩したら全員が突入する。合図を見逃すなよ」

 

言葉を聞き、私と七海は無言で日下部に頷き返す。

 

「日下部さん、やっぱりもう何人かは領域に入ったほうがいいっすよ。予定では脹相も入るって話だったんだから」

「今更何言ってんだ。今誰かが乙骨の領域に侵入したら、宿儺の意識が領域の外に向く。それで禪院の奇襲が読まれたらそれこそ最悪だろ」

「てかここにいる何人が特級術師の周りでチョロチョロ立ち回れるかっちゅー話だよ」

 

その言葉が聞こえて、思わず

 

「日下部さんならいけるでしょう」

「日下部さんなら問題ないですね」

 

七海と私の声が同時に重なる。

 

──あっ。

 

言った瞬間、日下部に思いっきり睨まれた。

……だって事実じゃん。

猪野も同じことを思ってるよ。

というか私の言葉は聞こえてるので頷いてるし。

 

真希が構えをとった直後、乙骨の領域が砕け最高( 真希に刺された宿儺)最悪(重症の乙骨)」が姿を現した。

原作通り領域内で、世界を切り裂く斬撃を喰らったのだろう。

リカと憂憂によって乙骨が離脱していく。

乙骨はこのままだと死を覚悟するほどの重症だったはずだが、服に仕込んだ宝石と家入に残してきた回復の宝石でなんとかなるはずだ。

彼もまた修行で原作より強くなっているはずだから。胴体真っ二つにさえなってなければいける。

リカちゃんもいる。彼女なら、必ず乙骨を生かす。

そう言い聞かせないと動揺してこちらが動けなくなってしまう。

一旦、思考から外す。今は目の前に集中する。

 

真希と宿儺の激しい戦いが続く。

世界を切る斬撃をあっさりと避ける真希。

……五条がかつて言っていた「術式より、最終的にはフィジカルだ」と。

あれは、正しかった。

五条や乙骨は避けることすらできなかったのだから。

 

味方が重傷を負うたびに近づいて宝石で回復を行う。反転術式ほどの効果はないが家入のところに戻るよりは時間の短縮にもつながる。

これは最後の戦いだ。

無茶を承知で、それでも仲間たちには踏みとどまってもらうしかない。

 

 

七海も、日下部と猪野の攻撃タイミングを測り、

宿儺の背後から『十劃呪法・瓦落瓦落』を叩き込んでいる。

 

宿儺は今のところ、その攻撃に違和感を覚えていない。

術式が宿った呪具と、七海自身の呪力の“気配”が一致しているからだ。

 

──七海の隠密行動、さすがとしか言いようがない。

 

ちなみに──猪野には、七海の生存を知らせていない。

自分の呪具の攻撃か、あるいは日下部に呪具を渡したタイミングで打ち込んでいるものと思い込んでいる。

その勘違いをあえて修正しない。

我々は、あくまで“陰”からの援護。

 

今このタイミングでバレるわけにはいかない。

 

情報の開示は、最も効果的な瞬間に絞るべきだ。

 

そうこうしてるうちに真希が宿儺の黒閃を食らった。吹き飛ばされる真希のところへ向かい、ポーチから宝石を取り出して即回復を発動させる。

原作通りなら日下部が愚痴りつつ、宿儺と戦っているのだろう。

本来は心配すべきなんだが、あの人は本当に強い。

そして生き汚い。

生き残ることに関しては五条より信頼できる。

 

真希の回復を終え、戦場の中心に戻ると、原作通りミゲルとラルゥが参戦していた。

日下部の治療は家入に任せ、私は仲間たちの攻撃の合間を縫い、

今度は“攻撃用の宝石”を使って参戦する。

 

──そして、ついに。

 

宿儺がこちらを睨みつけ、忌々しげに叫んだ。

 

「……五条の犬か!」

 

どうやら、私の存在に気づいたらしい。

 

だが、六眼を持たない宿儺には、私の術式を完全に見破ることはできない。

正確な位置は把握できていないはずだ。

 

「解」が飛んできて、接近され「捌」を叩き込まれそうになる。

どれも致命的な一撃だが、私はそれらを紙一重でかわしながら、距離を保ち続ける。

 

真希が三度目の黒閃を喰らい、脹相も重傷。

ラルゥとミゲルも、虎杖への“黒閃”のアシストを終えて戦場を離脱した。

 

──私の隠れ蓑が、もうほとんど残っていない。

モロに食らったら、術師としてはここにいる面子の何ランクも下の私には致命傷だ。

ヒヤヒヤするが、退くという選択肢はもう存在しない。

今ここが、命の張りどころだ。

 

黒閃を連発する虎杖の動きに紛れながら、残ったメンバー共に宝石による援護を続ける。

 

やがて、猪野が倒れた。

それと同時に──彼の手から投げられた七海の呪具が、宿儺に命中する。

 

そして、跳ね返った呪具を、空中で七海が掴み取った。

 

「──十劃呪法!!」

 

両の手で握った二つのナタを力強く振り抜き、宿儺へと叩き込む。

 

それは、呪具としての“十劃呪法”と、七海自身の術式の“十劃呪法”。

ふたつの十劃が重なり合い黒い火花を散らす。

——黒閃。

まさに会心の一撃。

 

——このタイミングで、私は自らの術式による“隠匿”を解除する。

七海も同様に姿を現し、長く続いた隠密行動を終えた。

 

猪野と虎杖が、驚愕の視線を七海に向ける。

だが、それに構っている暇などない。

 

「虎杖くん!今です!!!!」

 

宿儺から距離を取りながら、七海が吠えるような声で叫ぶ。

 

その声に応えるように──

 

涙を湛えた虎杖が宿儺の横っ腹に「黒閃」を叩き込んだ。

 

 

直後、領域展開『伏魔御廚子』が展開される。

黒閃を7発も受けてダメージは相当のはずなのに無理やり領域展開を発動させるとか、やっぱ宿儺はバケモンだ。

この領域は領域の出力、閉じない領域と難易度を全く下げていない。

だが、その代償もまた大きく長時間の維持ができない。

原作通りなら、この領域の限界は99秒。

いまの宿儺に、高度な結界術を長く維持する余裕などない。

 

私たちは「シン・陰流・簡易領域」を発動し、迫りくる「伏魔御廚子」斬撃の嵐を堪える。

この戦いに参加している真希以外全員……結界術が苦手な七海ですら簡易領域を取得してきた。

だが、本当に警戒すべきはその後だ。

 

斬撃が終わる瞬間、私はポーチから複数の宝石を取り出し、素早く四方に投げ放つ。

 

「闇より出でて闇より黒くその穢れを禊ぎ祓え」

 

手印を組み、呪詞を唱えながら、

私・七海・虎杖・脹相の四人を中心に、宝石を起点とした帳が降りる。

空気が一瞬、ぴりと引き締まる感覚。

重さを持った壁が、四人を包み込むと同時に、それに強力な防御を付与する。

他のメンバーは、東堂が不義遊戯 (ブギウギ)で脱出させる手はずだ。

──だから、この瞬間は私たちだけを守り切ればいい。

 

私が誕生日にもらい続けてきた誕生石。

──その残り、17個すべてを対価とした、最後の結界。

今日この日のために、これらはあったのだろう。ここが切り札の使い所だ!

ずっと取っておいた。もうこれ以上、切れる札はない。

 

炎への耐性を極限まで高め、

火も熱も圧力も、外界の一切の干渉を遮断するよう設計した、最後の砦。

両面宿儺の最大火力に、正面から抗う。

 

燃やせるものなら、燃やしてみろ。

 

(カミノ)「開(フーガ)

 

勝利を確信しているかのような宿儺の声が響いた、刹那。

世界が砕けるような爆音が、天地を割った。

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