オリジナル設定てんこ盛り。
後日談②
とっ捕まった後のお話。
もう原作がないのでやりたい放題になるので、苦手な方は注意してください。
五条の囲い込みがエグい。
・伊地知ポジション成り代わり(伊地知の双子の妹)ものです
・オリキャラ出ます
・原作終了後のため、オリジナル要素、独自解釈、激しい捏造、妄想ばかりです。
・ネタまみれです
・夢要素強くなるので、苦手な方はお気をつけください。
五条との話し合いの末、結局私の役職は「秘書官」になった。
曰く、
「秘書官って、“担当者の日常業務を全面的にサポートする”のが仕事でしょ?潔乃にピッタリじゃん?」
……概ね、正しいのがまた腹立つ。
総理大臣とかならともかく、五条の秘書官って何それ。
いやまあ、特級術師ではあるけれど……なんかこう、釈然としない。立場が曖昧というか、雑用全部押しつけられる未来しか見えないというか。
金払いは大分いいから、お金貯めて落ち着いたら大学通ったり、旅行行くのもいいかな。
そんなことを考えているうちに、食事の時間になった。
五条がキャビンアテンダントと、メインの料理について話をしている。
私はもう五条に全部ぶん投げた。本来こんなことはしたくないけど、高級すぎて流石に頭が回らない。
次々と運ばれてくるのは、見るからに高級そうなコース料理。味は、きっと美味しいんだろう。
でも、もはや緊張で味覚が死んでいる。
そして、五条にお酒好きでしょ。少しくらい飲みなよ?と言われて勧められて出された飲み物が──
「……ドンペリ?」
一瞬で魂が抜けかけた。
せめてシャンパンくらいにしてくれ。なんで飛行機でドンペリ。
恐ろしくて、グラス一杯でギブアップ。
これ以上飲んだら確実に悪酔いする。緊張も加わって、既に変な汗が出ている。
そんな私を見て、楽しそうに笑っている五条が、腹立たしいったらない。
ちなみに下戸の五条は、1人だけ無邪気にぶどうジュースを飲んでいる。
ずるい。私も今日はそっちがよかった。
食後のコーヒーも、たぶん豆からして高い。
メニュー表に「原産国がウンタラカンタラのナントカ種です」とか書かれてたけど、見なかったことにした。
詳細を把握した途端、さらに味がわからなくなりそうなので、聞かない。全力でスルーする。
食事が終わり、やっと一息ついた。五条がつけた映画を一緒にぼーっと眺める。
精神が疲れすぎたせいか、英語の映画が全く頭に入ってこず集中できない。
アメリカ英語で私は慣れてないからか。ハリポタとかなら、演者がほぼイギリス人だからスルスル入ってくるのに。
そういやビーチでのナンパ男に言っていた五条の英語は、なかなか品が無くて痛烈だったな。
アメリカのヤンキー系の口調まんまじゃないか。
五条家の英語の教育係よ、あれは品がなさすぎるぞ。どこで覚えたんだ?
私だったら破れたオブラートでチクチク刺してたかなぁ。
だいたいアメリカ英語喋る奴らにRPで話すと、大体それで口籠もるんだよなぁ。
特に東洋人の私みたいなのが喋ると。
ぼーっとしながら辺りを見渡していると──ふと、アメニティが置いてあることに気づいた。
……ホテルでもないのに、アメニティ?
ファーストクラスってすごいな。
そう思いながら手に取ってみると──有名ブランドだった。
なぜか、フルボトルの香水付き。
そっと元に戻し、静かに視線を逸らす。
気を取り直して、さっきキャビンアテンダントから借りた膝掛けに目をやると、タグがちらり。
こっちも有名ブランド②。
よくよく見れば、今使ってるスリッパも、就寝時に使うだろう毛布も、ルームウェアも──全部、有名ブランド②のそれ。
……いやいやいやいや。
ここ、飛行機の中なんですけど!?
本当にそうなの?と現在地を疑いたくなるレベルのラグジュアリー空間に、思考がついていかない。
──やだもう、金持ちの世界、怖すぎる。
どうにか平常心を取り戻そうと、私はトイレに逃げ込んだ。
銀座のデパートの様なパウダールーム付きのトイレ。
ちょっと豪華だけど、ファーストクラスでもトイレは普通だった。安心する。
いや、「飛行機の中にデパートの様な広い、トイレがある時点で普通ではない」というツッコミは心の奥底にしまっておく。
幸い今ファーストクラスにいるのは、私たち4人だけ。
トイレはもう1室あるので好きなだけ引きこもれるが、あんまり長居すると、ノンデリの五条がネタにしかねない。
お腹壊した?それとも生理?とか言われたら、五条の五条に黒閃を叩き込んでしまいそうだ。
そろそろ深夜の時間帯だ。流石に眠くなってきたのもあるし、寝て全てを忘れて仕舞えばいい。
歯磨きを済ませ、メイクを落とす。
洗面台のアメニティに高級ブランドの化粧水と乳液があって目眩がする。
誘惑に負けて少し使ってみたけど、ダメだ贅沢がクセになる。ちょっとだけにしておいた。
一応持ち込んだ有名ブランド②のルームウェアを一瞬見て悩むが、タグから目をしらして着替える。
すごくデザインがいいし、何より着心地がいい。
確かこれ持って帰っていいんだったよな…マジか。
くっそ………替えで欲しくなるじゃないか。買っちゃおうかな……
そんなことを考えながら、意を決してトイレを出て、個室に戻ったのだが……
……さっきまでなかったはずのダブルベッドが、そこにあった。
どうやら私がトイレに籠っている間に、キャビンアテンダントがセッティングしたらしい。
そのベッドの上では、五条が当然のようにくつろいでいて、こっちもいつの間にかルームウェアに着替えてる。
備え付けのモニターで何かの映画を見ていた。
平然と、そこにいる。まるで自宅のリビングか何かのように。
──ほんとに、ここ飛行機の中?
状況が理解できず、私は一歩後退った。
うん。もう一度、トイレに戻ろう。
今のところ、私の居場所はあそこだけだ。
そう思って方向転換した瞬間──ふわっと体が浮かび、気づけばベッドの上、五条の腕の中にすっぽり収まっていた。
「ちょっ! 飛行機の中で“蒼”使うなんて危ないですよ!」
「僕が調整ミスるわけないでしょ?」
……いや、確かにそうかもしれないけど!
長い手足で私の動きを封じるようにがっしりと抱きしめて、五条はそのまま私の髪に顔を埋めている。
なんかこう──包まれてる感がすごい。
「……とりあえず、離してください。いつキャビンアテンダントさんが来るか……!」
必死に腕を突っ張って距離を取ろうとするが、五条の拘束は緩まない。
「“
と、さらっと言ったその瞬間──個室といっても、扉には模様で穴が空いていて、また天井までないので通路から覗き込める──
通りすがったキャビンアテンダントと、ばっちり目が合った。
一瞬視線を向けた後、ニコリと微笑まれ、何事もなかったかのように、そのまま通過していった。
「ほらね、来ないでしょ?」
「来ないけど!思いっきり“見られて”ましたよね!?早く離れてください!」
「やだ」
きっぱり即答。頭頂部に顔を埋めたまま、全く動じる気配なし。
「大体ダブルスイートだよ?夫婦やカップルの利用が多いんだから、これくらい誰も気にしないでしょ」
「いやいやいやいや!私と五条さん、夫婦でもカップルでもないですから!」
小声で五条に抗議する。
本当は全力で叫びたいけど、大きな声を出せば虎杖や脹相のいる場所まで聞こえてしまう。
他にファーストクラスの利用者はいないので、別に聞こえてもいいんだけど…
...いやよくない。この会話はよくない。
さすがにこれで離れてくれるかと思ったのに──
ようやく顔を上げた五条は、にやっと笑って、
「じゃあ、これを機に“フリ”から始めてみる?」
「その発想が怖いんですけど!?本気で言ってませんよね?」
「うーん?半分くらい?」
にやけ顔のまま、さらっと言い放つ。
「っていうか、僕前にも言ったよね?潔乃なら“イケる”って」
「ストップストップ!!そういう“イケるイケない”の話じゃないですから!」
慌てて手を振って拒否する私に、五条はなおも悪びれず続ける。
「えー、でもさ。ビーチでの潔乃、セクシーで可愛かったし……正直、結構そそられたんだけどなー」
「──ッ!!!!!」
一瞬で思考がフリーズする。
……なに言ってんのこの人。顔が、熱い。耳まで確実に真っ赤だ。
この人の口から私に対して、性的な意味で誉められたのは初めてだ。
……ネタ的ないじりでは、何度もあるけど。胸も尻もなくて悪かったな!
いや、半日前までビーチでナンパされて、女としての自己肯定感を回復してたのは事実。
でも、それとこれとは話が別!
五条に影でズリネタにされるのは構わないが、こういうセリフは!
五条からはいらない!
解釈違い!
「あれ?照れてる?……珍しい。でも可愛い」
まるで猫でも愛でるようなトーンで言いながら、ちゅっと頬にキスを落としてきた。
──その瞬間、思い出した。
「……五条さん、ビーチでナンパ男撃退した時にも、ほっぺにキスしてきましたよね!?」
急に語気が強まった私に、五条が「あー」と思い出したように目を細める。
全く悪びれた様子はない。
私はというと、さっきキスされた頬を手のひらでゴシゴシこすりながら、精一杯の抗議。
「……こういうの、いらないです。ほんとに」
「えっ、でも効いたでしょ?あの白人のナンパ男、即黙ったし」
……いや、黙らせたのはあんたの顔面偏差値とガタイの良さ、そして異常な威圧感だろ。
キスの有無なんて関係なかった。
「とにかく、そういうのは──私たちの関係ではやめてください」
きっぱり言い切ったのに、五条はというと、しれっとした顔でこちらを見つめてくる。
「……“今の関係では”、ってこと?」
「そういう意味じゃないです!!」
ああもう、やりづらいったらない。
なんでこの人、あんな顔して真面目に茶化すの……
「まぁまぁ。じゃあ、とりあえず今日は寝よっか」
「その“とりあえず”の使い方おかしいですからね!?」
会話が成立しているようで、まるでかみ合わない。
そして何より、顔がまだ熱いままなのが悔しい。
……この人の言動は、睡眠と一緒にリセットするのが正解だ。
そう自分に言い聞かせて、私はぐっと腕を突っ張る。
「寝るんで。離してください」
ところが。
「なんで?」
不思議そうに、小首を傾げながら聞いてくる五条。
その無邪気な声に、逆にこっちが戸惑う羽目になる。
「いや、なんでって……」
「だってさ、僕たち、少なくとも宿儺戦の前日まで、毎晩一緒に寝てたよね?」
……ぐうの音も出ない。
五条の言ってることは事実だ。
いや、いい年した男女が、そういう関係でもないのに毎晩一緒に寝るってどうなの?ってのは、この際置いておく。
新宿決戦の前、例のプロポーズもどきで私がブチ切れ、一時的に「私の部屋・立入禁止令」を発動させた。
でもその後、上層部を殲滅してイライラ全開だった五条が勝手に部屋に乗り込んできて、
結果として──なし崩しに、同衾生活が復活した。
宿儺戦の前夜ですら、五条は当然のように私の部屋に寝に来た。
“当然のように”って何だよ、ほんと。
「明日は宿儺との戦いだから、広いベッドでちゃんと休んでください」って、何度言っても聞かず。
狭いシングルベッドの上で、いつものように五条に抱きしめられながら眠ったんだっけ。
……それがあったから、今さら「距離を取る」ってのも、言いづらい。
まぁでも、「私でイケる!」とか「そそられた!」とか言う人と同衾するほど、貞操観念ゆるくはないのよ。
「とにかく、離してください。ヤです」
とりあえず“強行突破”──これが正しい“とりあえず”の使い方だよ、五条。
と、心の中でイヤミを吐きつつ押しのけようとする。
「だから、だーめ。昨日まで1ヶ月弱、離れて寝てたでしょ? だから今日から復活するんだよ」
どの口が“復活”って言ってんだ。
当然、そんな抗議なんて五条に通じるわけがなかった。
ジタバタ抵抗する私を、体格差と長い手足で難なくホールド。
そのまま、再び左頬に──ちゅっ、と音を立ててキスを落とす。
「はい、じゃ、おやすみ。僕の潔乃」
「だからそれやめてって!! ていうか、私、五条さんのじゃないですから!!」
なにサラッと恐ろしいこと言ってんだこの男。
なんか今、聞き捨てならない爆弾発言あったよな? 勘弁してくれ、ほんと。
「ん? 静かにしてくれないと、眠れないなぁ……」
私の耳元で、甘ったるい吐息の様な囁き。
こういう時だけ超いい声で囁いてくるの、やめろ。
ほんと
背筋がゾワゾワして、身体が震えた。
こいつ、絶対確信犯。
絶対わかっててやってる……!!
「……五条さん」
名前を呼ぶと、即座に返事が返ってくる。
「なに?」
即答。そして満面の笑み。
自覚ありありの顔で、悪びれもしないその態度が、さらに腹立つ。
私はじっと目を見据えて、静かに、冷たく脅す。
「次、同じことしたら──“1ヶ月ヌケない”って術式で書き込みますよ」
「…………」
五条の笑みが、ぴたっと止まった。
そのまま、さらに畳みかける。
「女が相手でも、自己処理でも、いい年こいての夢精でも、
ぜーったいに射精できないようにしてやりますから。
1ヶ月イライラムラムラしてください」
「………………」
五条が顔を引き攣らせる。
「……それ、男の健康にガチで関わるんだけど……?
あと、女の子がそんなこと言っちゃダメ」
「大人しくしてりゃ、健康も保てますよ」
「……はい……」
小声で素直に返事して、大人しくなった五条に、ようやく満足する。
やっと、静かになった。
二度と変なスイッチ入れんなよ、マジで。
男性機能を殺すぞ?
それにしても、ほんと、私の術式の応用って無限の可能性があるな……。
そんなことを考えながら、再度腕を突っ張って体を離そうとするが、五条が腕に力を込めて抜け出せない。
思わず舌打ちしながら五条を睨むと、驚くほどまっすぐな目。
静かな青で私を見ていた。
「……調子乗らないから、抱きしめて寝るのはさせて?」
「……………………………」
.......あーーもう!
私は五条のこういう素直なお願いの仕方に弱い。五条に対して甘すぎる自覚はある。
ああ、もう……勝手にしてくれ。
小さく、ため息をひとつ。
そして──観念したように、突っ張っていた腕の力を抜く。
「はいはい、抱きしめていいですよ」のポーズ。
その瞬間、五条の顔がぱっと明るくなった。
高専の教師になってからは滅多に見ない……特に生徒たちには絶対に見せない、学生時代と同じ笑い方。
嬉しそうに、子どものような勢いで、遠慮なしにギュッと私を抱きしめる力を強くした。
あーでかい大型犬。ご主人に久しぶりに出会えてウレションするタイプのような大型犬。
頭も白いし、それにしか見えなくなってきた。
でも、流石にちょっと強い。これでは鯖折りだ。
肩をポンポン叩いて落ち着け落ち着けと訴えると、少しだけ力が緩んで五条の片手が私の頭を支える位置に移動して、腕枕の体勢に。
そのまま、私の髪を優しく撫で始めた。
もう片手が私の手を掴み、そのまま指を絡められて恋人繋ぎにされる。
「……はぁ……」
思わずまた、ため息をついた。相変わらずの距離なしすぎるだろ。
五条の肩越しにふと通路側に目をやると、通りかかったキャビンアテンダントとまた目が合った。
さっきと同じ人。
こちらをちらりと見て、プロの微笑み……というか、明らかに「わかってますよ」の微笑を浮かべて去っていった。
……わかってなくていいんだけど。
というかお願いだから、何も見なかったことにして。
勝手にしろと許したはずなのに、なぜか負けた気しかしない。
五条の腕に引き寄せられるまま、私は彼の首筋に顔を埋める。
美麗な顔とは正反対の、節くれだった無骨な手が、私の頭を撫でる。
髪に指を絡めて、ゆるゆると遊ぶように撫で続けるその動作が、妙に心地いい。
私より少し高い体温。
体臭と混ざった、嗅ぎ慣れた香水の香り。
逞しい身体に包まれると──
なんだか、ホッとしてしまう。
……やっぱり、負けた気がして。
私はもう一度、小さくため息を吐いた。
まぶたをゆっくり開けると、視界いっぱいに柔らかな布地が広がっていた。
それは──私が着ているルームウェアと同じ生地。
……あれ?
少し目を動かすと、すぐ上に五条の白い髪が見えた。
ベッドヘッドを背もたれにして、五条が座っている。
すでに起きていて、備え付けのこれまた有名ブランド③のヘッドホンをかけ、モニターでまた何かの映画を観ていた。
……え? 状況どうなってる?
私はというと、彼の腹部に腕を回し──まるで抱き枕のように、しがみついていた。
……あー、うん、これ多分。
五条が起きた時に、私をそういう体勢にしたんだな。
寝る時は確か、腕枕だったし。
画面に集中しているように見えたけど、彼のもう片方の手が、私の頭に添えられていた。
その指先が、ふわ、ふわ、と優しいリズムで髪を梳きながら、頭を撫でてくる。
……起きたの、気づいてない?
その心地よさに流されたまま、私はしばらく、ぼーっと五条の顔を見上げていた。
微妙に寝癖が残っていて、髪の先が跳ねてる。
それなのに、根本的に顔が良すぎるせいで、妙に愛嬌があるのが腹立つ。
五条のくせに。
少しして──
五条がこちらの視線に気づいたように目を落とし、ふっと笑った。
「……あ、起きた? おはよう。そろそろ食事だから起こそうかと思ってたとこ」
ヘッドホンを外しながらそう言うと、自然な動作で私の頭と背中に腕を回し、
「よっこいしょ」
と軽く抱き起こしてくる。
ふわっと体が浮いて、気づけば彼の胸元に支えられていた。
……ああもう、またこれだ。マジで何なんだコイツ。
「……自分で起きれますよ」
寝起きで少し掠れた声で抗議すると、五条は満足そうにニヤッと笑って、
「うん、でもまだ寝ぼけてるね。顔洗ってきな。
その間にベッドは戻してもらうから」
……何その世話焼き感。そんなキャラじゃなかったはず。
「……はいはい、洗ってきます」
しぶしぶ立ち上がり、フワとあくびをひとつ。
短時間の睡眠のせいで、ちょっと寝足りない。
そう感じながら軽く頭を振っていると、
「シャワーは入りたいだろうけど、それは日本帰ってからね」
その言い方がなんだか妙に自然で──
“日本に一緒に帰る”のが前提みたいな響きがして、ちょっとだけ胸がむずがゆくなった。
「エミレーツにすりゃよかったかな……」
「なんでですか?」
「ファーストクラスにシャワールームがついてるから」
「……勘弁してください」
もうこれ以上ラグジュアリーな空間は無理。
一気に目が覚めた私は、着替えを手に取り、トイレへ逃げ込んだ。
機内食は、事前に五条が予約していた特別メニューだったらしい。
なんでそんな気合い入ってるの……。
出てきたのは、これまたコース仕立ての豪華すぎる朝食。
クロワッサンはサクサクふわふわ、サイドのスープも香辛料のいい香りがする。
メインに至っては「朝にこのボリューム?」とツッコミを入れたくなるレベルだった。
味は、きっと美味しいんだと思う。たぶん、いや間違いなく美味しい。
でも──味が、ほぼしない。
寝起き+空腹+気疲れの三重苦で、舌が完全に死んでいた。
それでも、出されたものを残すのがなんとなく嫌。
せっかくのファーストクラスの機内食。
一品ずつ静かに淡々と食べ進める。もともと少食なのもあって辛くなってきた。
満腹中枢を無視して、無理やり食べ進めていると、いつものように五条がかっさらって残りを食べ始めた。
「ぷっ……真面目すぎ」
向かいの席から、五条が笑ってくる。
「お残しが苦手な日本人なんです……!」
呻くように言い返すと、五条はますます楽しそうな顔をしていた。
あんたが豪華な世界に慣れてるだけだからな?こっちは生粋の庶民なんだわ。
やがて機体は成田に到着し、ドアが開いた瞬間──
ふわっと流れ込んできた空気に、思わず深く息をついた。
ああ……地に足ついた感じ、最高。
ラグジュアリー空間、もう2度とごめんだ。
庶民の私には、どうにも落ち着かない。
入国審査を終えてロビーへ出ると、虎杖はすでに別任務へ向かうとのこと。
脹相もそれに付き合っていくとのことで、2人してあっという間に去って行った。
10時間近いフライトのあとに、あんだけ動けるの普通にすごい。
タフだなあの兄弟……というか、これが若さか。
私はというと、五条の指示で、五条家の人間が手配した車に乗り込むことになっていた。
空港の外で待っていたのは、見るからに高級な黒塗りのセダン。
「助手席、乗って」
そう言われて少し首を傾げながら助手席に向かうと、
運転席にいた五条家の人間が無言で降り、ドアを五条に譲った。
え? いやいや、ちょっと待って。
「五条さん、私が運転しますよ」
つい、いつもの補助監督モードで反応してしまい、
思わず腰を浮かせかけたけど──
「いいから」
五条はこちらを見ることもなく、シートに収まりながら一言。
次の瞬間、エンジンが静かにかかる。
……え、えぇ……
助手席側の警告音がピピッと鳴って、仕方なくシートベルトを締めた。
座り直して深く息を吐く。
助手席に収まるなんて、現場では滅多にないから、なんかそわそわする。
落ち着かない。
五条の運転する車に乗ったのは1回しかないので、本当に落ち着かない。
チラリと横を見れば──
ハンドルを握る五条の横顔は、いつになく穏やかだった。
なんかもう、逆らうのも疲れてきた。
私は深く座席に体を預けた。
静かに走る車内。
五条の運転は前回も思ったけど、意外なほど安定していて丁寧だ。
車窓には都内の景色がゆったりと流れていく。
心地よい揺れ。沈黙。朝の陽射し。
運転している五条には悪いが、ちょっと眠たくなってくる。
「君だけど、しばらくは僕の監視下ね」
運転席から、まるで雑談でも始めるかのようなトーンで爆弾が投下された。
「表向きは“身を守るために潜伏してた”ってことにしてあるけど、一応はペナルティってことで」
……なんだこの突然の判決文読み上げ。
ていうか、こっちは今、朝の平穏を噛み締めてたんだけど。
でも、言ってる内容自体はまぁ否定できない。
死亡偽装して勝手に逃げてたのは事実だし、根回し一切ナシだったのも事実。
五条が水面下でどれだけ調整してくれたかも、だいたい察しはつく。
だから、素直にこくりと頷いた。
この程度で済むなら、まだマシな方だ。
──と思ったら。
「んでもって、住む場所だけど、僕と完全同居ね」
「……は?」
半分眠ってた頭が一気にフル稼働モードに突入する。
「いや、それはおかしいでしょう。意味がわからない」
「一応、高専の外に五条家の持ち物のマンションがあるからさ。
都下で、高専にも近いし、呪霊も少なめだし。そこにする予定」
「話し聞いて」
「職員寮は空きまくってるから、そっちの手配は簡単に通るはず。
でも、まず君の雇用を整えて、五条家からの派遣って体裁を作ってからかな。
数日で整うとは思うけどね。だから、それまではマンション固定暮らしね」
「だから聞いて」
「職員寮の準備が整ったら、必ずどっちかがいる部屋に帰宅するのはルールね。
僕がマンションにいるのに、君が寮に泊まるのはナシ」
「全然人の話聞いてくれない」
なんなの? その勝手なルール。
「君、監視対象だし。近い方がいいじゃん、
どうせ毎晩添い寝するんだから、同居でも別居でも変わんないよ」
「……毎晩添い寝すんの????」
「そうだよ。何か問題でも?」
「問題しかないんですが!!」
「決定事項だから、騒いでもダメだよ」
私の悲鳴の様な声に、五条は満足げに笑っていた。
ハンドルを片手で軽く操りながら、まったく悪びれる気配もない。
仕事だけじゃなくてプライベートまで囲まれそうになってる。
聞いてないこれは聞いてないぞ。
頭を抱えてしまった私を見て、「あ、そうだ」と五条が呟く。
「君の生存は、さっき君が成田でトイレ行ってる間に高専に伝えたけどさ──みんな怒ってる。
特に硝子と七海が、僕並みにガチギレしてるから。覚悟しておいたほうがいいよ?」
「……はい?」
思わず、運転席を二度見した。
「本当の理由は説明してない。
でも、あいつらも長い付き合いだから、大体想像ついたんじゃない?」
「……うへぇ」
思わず呻くような声が漏れる。
頭を抱えたくなった。いや、わかってたけど。
「説明は君がしてね」
はい、出た。さらっと丸投げ。
「……それは、まぁ……はい………」
これは、丸投げされてもしょうがない。いや、私が対応すべきだ。
そう理解しつつも、思わずしどろもどろになる。
実際、言い訳できる立場じゃないのは重々承知してるけど……
………家入と七海の低い声を想像して、頭を抱えた。こっわ…
そんな私の動揺を、五条は視界の端でしっかり確認したうえで、
口元をにやりと緩めた。
「これに関しては僕は何もしないよ。せいぜい怒られておいで」
「………………」
沈黙。
助手席で項垂れる私に、さらに一言。
「君は、それだけのことをした。ちゃんと自覚してね?」
トーンは優しいのに、言葉は鋭かった。
先程までニヤついていたはずの五条が、気がついたら真顔になっていた。
否定できない。
できるわけがない。
五条に怒る権利は、たぶん誰よりもあるのは分かってる。
高専の人間で私と一番仲が良かったのは五条だから。
「この件に関しては僕は一生許さないし、忘れない」
ぽつりと落とされたその言葉に、心臓がきゅっと縮むのを感じた。
怒鳴られたわけじゃない。
でも、痛いほど、真っすぐに突き刺さってくる。
これは、思い出し怒りだな。五条の説教第二弾だ。
ビーチでは激昂した状態で、支離滅裂な感情任せの説教だったが、これは理詰めされるやつ。
「……ごめんなさい」
これに関してはもう謝るしかできない。
早々に謝る体制に入る。
五条は何も言わなかった。
黙って高速を降り、下道に出たところにあった、コンビニの駐車場に車を停め、エンジンを切った。
ハンドルに手を置いたまま、前を見つめている。
その横顔が、少しだけ、疲れて見えた。
ドアを開けるわけでもなく、サングラスも外さないまま、五条が低く言った。
「……もう怒りがおさまったと思った?そんなわけないでしょ。
あと謝ればいいと思ってない?」
私は何も言えなかった。図星です。
五条に怒られ慣れすぎて、五条の怒り対策マニュアルに沿って考えてました。
そんなこと言えるはずもなく、ふるふると横に首を振る。
「………本気で心配してたんだよ、こっちは」
私の様子に嘘くさいと言う視線を向けたあと、普段の飄々とした口調からは程遠い。
五条悟が怒っているときの、静かな声で話し出す。
「僕の前から消えたってだけでもキツいのに──残されたものが何だったか、君は分かってる?」
「…………」
「左手と、耳と、それに付随してたピアスと指輪だけ」
深く、深く、息を吐く。
何かを抑えるように、ハンドルを握りしめるのが見えた。
「どうせまた、“それくらいのことだ”って顔するんだろうね。
──でも、僕は、あの瞬間、醜く取り乱したよ」
その言葉に、胸の奥がぐっと締め付けられる。
運転席の五条が、サングラスの奥からこちらを見た。
視線がぶつかりそうになり、慌てて逸らす。
「──あんなに取り乱したのは、傑の時以来かな。いや、あれより酷かったかもね」
口調は淡々としているのに、確かに、そこには色濃い感情が滲んでいた。
「傑とは決定的な思想の隔たりがあった。どれだけ親友でも、超えられない一線があったよ。
だから……諦めがついた部分もある。でも、それでも“生きている”ってわかってた。
いつか、また分かり合えるかもしれない……という希望はあった。
まぁ、最後まで分かり会えなかったけどさ。傑はそれでも僕のたった1人の親友のまま死んだ」
遠い目をしていた。
たぶん、五条の視界には、過去の夏油傑の姿が浮かんでいるのだろう。
「でも君は違う」
短くそう告げて、こちらに顔を向けた。
「僕と何の軋轢もない。
僕の思想に歩調を合わせてくれて、僕の全部を知ってて、そして──それでも、
言葉の一つ一つが、重くて痛い。
こぼれ落ちる声が、胸に突き刺さる。
「僕に相談すれば解決することを、勝手に判断して、勝手に消えて……自由になったつもりかもしれないけど──
僕が、どんな気持ちで君の指輪とピアスを受け取ったか、考えたことある?」
息が止まりそうになった。
「……君は、僕にとって、ただの補助監督じゃない。
ただの術師でも、部下でも、後輩でも、友人でもない」
その先を聞くのが、怖かった。
「……相棒? そういう言葉が一番近いかもしれない。
なのに、その“相棒”が、何も言わずに消えた。
それはつまり、「信用されていなかった」ってこと」
「ちが──」
「違わない」
遮られた。
いつもなら冗談交じりに返してくる五条の声が、今は真っ直ぐすぎて、何も言えなかった。
「君の意思は尊重するよ。でも、今回だけは違う。
一人で全部抱えて、死んだふりして終わらせるなんて……それはもう、呪いだよ。
君に関わった全員に、確実に降りかかる」
その言葉がどれだけ重たいものか、痛いほど伝わってくる。
五条の顔が、少しだけ苦しげに歪んだ。
「脹相がいて、本当によかった。あいつがオマエと呪力の繋がりがなかったら──」
その先の言葉は、語られなかった。
「君のせいで、みんな呪われるところだった……自分の残した爪痕を、考えたらいいよ」
喉の奥が痛む。なにも、返せなかった。
サングラスの隙間から見える六眼。
それが、まっすぐに私を射抜いていた。
ビーチで、陽射しの中で見た、六眼のきらめきと温度。まったく同じだった。
──あの時と、同じ。
新宿で夏油傑の離反を止めようとした時の、激しい執着。
「……何度でも言うけど。俺の手の届く範囲に、いろ」
視線を落とし、震える手で自分の膝を握る。
爪が食い込むほど膝を強く握っているのに、全く痛みを感じなかった。
静まり返った車内には、自分の鼓動の音すら響いているようで──
「……ごめんなさい」
もう一度、絞り出すように呟いた。
謝罪の言葉しか出てこない。
言い訳も、反論も、今さらできる立場じゃないことくらい、わかってる。
ぽつりと、五条が呟いた。
「………次はないからね」
その言葉に、生唾を飲み込む。
やがて彼は、ふっと力を抜いたようにシートにもたれかかる。
──そして、
「とりあえず、アイス食べてく? 僕、甘いもので機嫌直すタイプなんだよね」
唐突に、空気がガラッと変わった。
あからさまなほど、意図的に雰囲気を切り替えてきたのがわかる。
思わず顔を上げて瞬きをすると──五条は、私を見ていた。
軽薄そうな笑み。その中に、今日は許してやるよ。という温情の色が透けて見えた。
「……子供ですか?」
──いつもの、五条悟のやり方だ。自然に笑みが漏れた。
五条の気遣いに乗っかると、彼はいたずらっぽく片目を細めて返した。
「僕、昔からこうだからさ。今さら大人ぶるの、無理でしょ?」
そう言って、ようやく運転席のドアを開ける。
外に出てから伸びと深呼吸、そして助手席の方へと回り込んできた。
「ほら、潔乃も早く降りて」
扉を開けて差し出された手に、一瞬だけ戸惑ったあと、まぁいいかと手を重ねる。
指先が触れた瞬間、わずかに力がこもり、自然と恋人繋ぎになっていた。
「あのさ、アイスの一つや二つ、奢ってくれてもいいんじゃない?」
五条は、笑顔でこちらを見下ろしてきた。
いつもの軽口なのに、行動が妙に甘ったるくて噛み合ってないんだよなぁ。
この手外してくれないかな? と手に力を入れて振ってみたがほどけなかった。
「監視対象からの賄賂ですね」
諦めてそう返すと、彼は肩をすくめてみせる。
「その言い方、色気ないなー」
「アイスの賄賂で、添い寝なしとかになりません?」
軽い調子を保ったまま、ちらりと視線を送ってみる。
ほんの少しだけ期待を込めて──けれど返ってきたのは、きっぱりとした否定だった。
「ならないね。それはダメ」
即答。
あまりにきっぱりとしていて、思わず肩が落ちる。
「……チッ」
わざとらしく舌打ちしてみせると、五条は肩を揺らして笑った。
「そう言うとこだよ、潔乃」
その声は、どこまでも穏やかだった。
主人公
ラグジュアリー空間に疲れた。
贅沢が嫌いなのではなく、唐突すぎて馴染めなかった。
自分で計画を立てて乗っていたら、誰よりも楽しんでた。
五条の甘えと説教を連続で受けて、メンタルが風邪ひきそう。
いや、確かに私が悪かったが、執着がすごくて日和ってる。
その間に、どんどん囲われてる
五条悟
ファーストクラスでアメニティのタグを見て顔色を変える主人公を見て、内心爆笑してた人。
今回の主人公のやらかしを利用して、
同居、添い寝の権利、昼間に恋人繋ぎ
の実績を解除。着実に色々囲い込んで行ってる。
監視?んなものする必要ないけど?
だって呪詛師から逃げてた被害者ってなってるし、と言うのは主人公には言わない。
思い出し怒りは本当に怒るつもりがなかったが、家入と七海に怒られると頭を抱えてる主人公を見て、怒りが再燃した。
俺もまだ怒ってんだけど?俺が一番怒ってんだけど?
虎杖悠仁
ファーストクラスの中で脹相と仲良く仲良く楽しんだ。
食べ物はなんでも頼めるし、飲み物も飲み放題だし、映画も見放題、楽しい!
時折かすかに聞こえる、主人公の怒った様な声と五条の笑い声に、
あの2人ほんと仲良いよな。学生時代の仲間って一生もんなんだな!
と、放置した。
脹相
悠仁と2人で食事と旅行楽しい。悠仁のおすすめ映画を教えてもらって楽しんだ。
今日はあの2人を邪魔はできないなぁと。次は家族4人で食事をしたい。
時折かすかに聞こえる、主人公の怒った様な声と五条の笑い声に、
両親が仲良いことはいいことだ。と、放置した。
ファーストクラスのアメニティを調べてたら、
普通にアル○ーニやら、ジバ○シィやら、フェ○ガモやら、
銀座のデパートとかで3万円くらいする化粧水が、アメニティとして置かれてるとか見て、魂抜けた。
本編完了しましたが、番外編後日談などどれが読みたいですか?
-
本編終了後の後日談
-
本編時間中の日常話
-
if系(√分岐、原作通り五条死亡など)
-
R-18 の下ネタギャグ
-
全部