とある日、万里花宅にて。
黒髪でガタイの良い、男らしい青年が万里花の前で土下座しながら何かを頼み込んでいる。
「万里花お嬢様!折り入ってご相談があるんですが…」
「ああ…この間のらっくんの手つきは…あれはもう…天国でしたわ…♡」
「…万里花お嬢様!折り入ってご相談が…」
「らっくんの愛情と気持ち良さが同時に得られるなんて、なんて素晴らしいことなんでしょうか…!」
「…あ、あの、万里花お嬢様…」
「以前までなら、あんなに抱き付くこと自体出来ませんでしたし…ぐふふ…あ、いけませんわよだれが」
「…あ、あの、万里花おじょ」
「はいはいご覧の皆様にご説明しますと彼の名前は右助。私の犬です。…ああ、またあのように触って頂ける機会をもっと作れないものかしら…♡」
「返答無しの上に紹介が雑で更に妄想の続きを!!?」
「うるさいわねえ」
「うぐお…」
この右助という男。警察機動隊第一部隊長、つまり万里花の父の部下に当たる。しょっぱなから不憫な匂いしかしない男である。
「それでなんです?やぶから棒に相談なんて」
一瞬躊躇するも、右助が答える。
「…実は、実は僕、今、恋をしているんです」
「海辺にお誘いすれば一発かもしれませんわね…今から悩殺水着を買いに行こうかしら!」
「聞いてくださいよお嬢様!?…真剣なんですよ、僕は。こんな気持ちはじめてで…。」
右助が語り出す。
「出た学校はずっと男子校だったし、ヤロウとしか今までつるむ機会もなかったんで恋愛ざたの話はてんで苦手で、アプローチしようにも何をすりゃいいのか…。
僕の中でお嬢様は恋愛事にお詳しいイメージがあったんで。こんな内容他に相談出来る奴もいねーし…」
「『他に相談出来る奴~』からしか聞いていませんでしたわ(ふむ…)。まあ右助如きの恋の話などミジンコ程も興味ありませんが、頼られると言うのは悪い気しませんね。テキトーに話を聞いて追い返しましょうか(分かりました。私が力になりますわ♡)」
「お、お嬢様…本音と建て前が逆っす…泣きますよオレ」
万里花のなんら容赦の無い雑な対応に、右助の心はぼきぼきにへし折られそうになる。
「それで私にどうして欲しいのですか?」
「そ、それはだから…女性には最初どんなきっかけで話しかければいいのかとか…」
右助の言葉を聞き、万里花はため息を漏らす。
「…ふう。面倒臭い…どうして私がそんな事を…」
「…もはや悪怯れもしないっすね…」
右助の心が更に折られる。
「…あ。」
万里花は何かを思い付いた顔をしたかと思うと、急に立ち上がった。
「ん…お嬢様…?」
「行くわよ右助!!ワイに恋ばいうもん教えちゃるけん☆」
「えええ~~~!!?不安定すぎて怖いっスよ!!!」
右助のリアクションを全く気にもかけず、万里花は右助を連れ出しどこかへと向かった。
「…というわけで、彼の相談に付き合ってくださいませんか楽様?♪」
万里花が向かったのは楽の下であった。
「…は、はあ…。つーかお前なんで当然のようにオレの居場所が分かったんだ?」
「それは以前LINEで言いました通り…」
「…あ、発信機付いてんだっけ…もうどうにでもしてくれ…」
「寝言で小野寺さんの名前を呟くのは…拗ねちゃいますよ私?ぷー!」
「盗聴器も俺自身に付いてんの!?あと俺そんな恥ずかしいこと言ってたの!!?」
「あと3カメで見たら、楽様ったら私というものがありながら、ミニスカートの女の子が少し遠くでこけたとき凝視しすぎですよまったくもう!」
「あ、いやそんなことは…ってそれも見てたの!?あと3カメって何ここスタジオ!?何この状況怖い!!」
「ちなみに私の今日の格好はいかがですか?♪」
この日の万里花の格好は爽やかな白のノースリーブにショートパンツという、いかにも夏らしく彼女のイメージに合ったものだった。
「…かわいい」
「えへへ…ありがとうございます…♡」
「あ、あの、お嬢さ」
「うるさい右助邪魔をするんじゃありませんというかもう帰りなさい」
「そこまで!!?」
万里花の楽監視体制に対する楽のツッコミからのただのバカップル会話からの冷たい罵倒と言う話の激流が収まり、本題に入る。
「さて、それでは…楽様、今日はどこに遊びに行きましょうか?」
「お嬢様ー!?」
「ちっ…いちいちうるさいわねえ、私とらっくんの逢引を邪魔しないでほしいですわ…(それでは右助、まずは楽様に自己紹介を)」
「お嬢様また本音と建て前が逆になってますよ!?っていうかこれどうなってんですか!?」
楽の前であろうと容赦なく右助の心を折る万里花。
「うう…。オレは相葉右助ってんだ。お嬢様が小さい頃から面倒見ててな…」
「へえ…そうなんですか」
「お嬢様の買い物を手伝ったり、お嬢様を車で迎えに行ったり、メロンパン買って来させられたり、まあ兄みたいな存在だな。ハハッ!」
「(…それはパシリって言うんじゃ…?)」
今までの会話と自己紹介を聞き、何となく、不憫さという面で自分と同じものを右助に感じる楽。
「楽様は恋愛のエキスパートなんですよ。今日は私と楽様が恋愛のなんたるかを教えて差し上げますわ♡」
「!!?ええええ!!?おいい…!!なんだよその話…!!」
「まあまあ♪助けると思って…」
「そうなのか!!さすがお嬢様の婚約者だな…!」
右助の相談に楽を巻き込んだ万里花。
「それで、何が知りたいんでしたっけ?」
「それは…女性に話しかける時のきっかけというか…」
「…ふむ」
万里花が考え込む。
「…では右助、今から私をデートに誘ってご覧なさい。」
「えっ!?僕が…お嬢様を…!?」
「はい。まずはあなたのレベルを知りませんと。いいこと?本気でやらねば容赦しませんわよ?」
「わ…わかりました…じゃあ…」
右助は照れながらも意を決し、万里花に話しかける。
「あ…あの、今度の日曜日良かったら…」
びしいっっ
「あだぁ!!?」
右助の言葉を聞くやいなや、PKキックの如き勢いで右助の尻を蹴る万里花。
「ぬるい!!ぬるいですわ右助!!そんな拙い文句で女がついて来るとでもお思いですか!!」
「えっ…その…ダメでしたか…!?」
万里花の顔が突然少女漫画チックになり、そして語り出す。
「いいですか右助。女という生き物はいつだってステキな殿方の熱いお誘いを待っているの。そんな安っぽい言葉ではダメ。もっと力強い言葉を求めているのよ…」
「は、はあ…」
「では、私達が見本をお見せしますね。楽様、私をデートに誘ってください」
「えっ!!(そんないきなり言われても…あ、じゃあ、行きたい場所を指すってことにするか)
な、なあ橘、今度の週末、良かったらオレとあそこに行かないか?」
そう言うと楽は何も見ないまま窓の外を指差した。
「それはもちろ…ん…ふええ!!?え、でも、いきなりそんな、いや、でも楽様のお願いとあらば…」
万里花が急に赤面してうろたえるのを見て、楽は嫌な予感がした。
「!!あ、これはその…適当に指差しただけで…!!」
嫌な予感は的中した。楽が指差した先は、『ボンヤリホテル』という文字がどでかいピンクの看板に書かれているラブホテルだった。
「いえ、もう行きましょう!いつでしたっけ…今度の週末…あ、違いますわ今日でしたね♡」
「なんで覚悟決めた上に早めたの!?」
万里花の決意の早さに慌てる楽。
「へへ…見ました?右助。コレですよコレ。」
「え…いや、あんまり僕との違いが分からな…」
「それはあなたのレベルが低すぎるから分からないだけです。この未熟者めが。」
「そっ…そうなんスか…!!そりゃ失礼を…」
「(かわいそうだなこの人…)」
益々右助を不憫に思う楽であった。
「では次のステップへ参りましょう。次は首尾良くデートに誘った後の…スキンシップですね…!」
万里花が目を輝かせて言う。
「さあ右助、私にさりげなくスキンシップを取ってごらんなさい」
「ええ!?いいんスかお嬢様の身体に触れてしまって…!!」
「当然です。さぁお早く…」
「いえ…しかし…未婚の女性の体に触れたら妊娠させてしまうという噂が…」
「小学生かおどれは」
右助の小ボケが入ったところで、実践。
「で…では…」
右助はそう言うと、万里花の手にそっと触れる。
がしっ
どごおっっ
極めてスムーズにバックドロップを右助に極める万里花。
「甘い!!甘いですわ右助!!そがん如きスキンシップで女が満足すっと思いよっとか!!!
女はいつでもぬくもりを求めているんです。スキンシップとは言葉ではなく体で愛を伝える行為…!!男なら黙って行動で愛を示すのです…!!
では楽様実践です♡」
「ちょい待てコラー!!」
「大丈夫ですわ、楽様、ここにコイン・二つのルーレット・書き込み用のペンがあります!」
「?どうするってんだ?」
「まずコインは表が楽様、裏が私とします。次にルーレットの片方には私が身体の部位を書きます。そして楽様はもう片方に触り方を書いてくださいませ!例えば「表、頭、なでる」と出たら私が楽様の足をなでると言った具合です!」
「へえ…ってなんでこんなゲームじみた展開になってんだよ!?普通でいいだろ!?」
「だって…やりたいんですもの…」
「いっそ清々しいなおまえ…しゃあねえ、やってやるよ」
「!ありがとうございます、楽様!♪お互いが書いた内容は直前まで見せないようにしましょう!項目の数は自由にしますね♪」
「おう」
「あの…この展開は…?」
「おだまり」
「は、はい…」
こうして謎の展開になった。
続く。
長くなったので分割しました。この後すぐに後編を上げます!
原作の「ステップ」の回をぜひ使いたい!と思って前々からちょこちょこ考えていました。右助良いですね、不憫で!
今回もお読み頂きありがとうございました(^^)!!
感想ばんばんお待ちしています(大声)!!