楽×マリー『オネガイ』その後   作:高橋徹

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バレンタイン編の続きです。

今回は鶫、小野寺のターンです。


鶫と小野寺。第49話「トロケテ」(2)

ずどんっっ

どんっ

どむっどむっどむっ…

 

 

おおよその人間が、その人生の中で一度たりとも経験することが無いであろうほどのバウンドを経て、楽は気付くと自分のクラスの教室に転がっていた。

「…な、なんてダメージだ…あいつの愛情と破壊力は比例関係、いや、指数関数の関係にあるのか…?し、死ぬ…」

身体を巡る、痛みやら吐き気やら諸々の不快感がまだ強烈に残っており、楽は未だに呻いている。

 

「い、一条楽…大丈夫か…?」

「…おお、鶫、おはよう…ぐふっ」

「!?おい!?挨拶と同時に死ぬなー!!!」

衝撃的な挨拶である。

「…す、少し、休ませてくれ…」

 

5分後。

 

「…ふう、ありがとうな…。効いたよ、この解毒剤」

「効いたら効いたで複雑なのだが…持ち歩いていてよかった」

どこかのRPGの世界だろうか、と間違えてしまいそうな会話である。

「あ、あのな…一条楽…」

「ん?」

鶫は周りをきょろきょろと見回す。

幸い、このとき周りはそれぞれのグループでの会話に夢中で、誰も楽と鶫を見ていなかった。

「こ、これを…」

「…え、これは…」

鶫が楽に手渡したのは、先程見たものと似たラッピングの、ちょこんとしたサイズのチョコレートだった。

「このラッピング…鶫がやったのか?」

「え、どうしてわかるんだ?」

「いや、さっきな、千棘が、ラッピングは鶫がやったんだって聞いて…」

「ああ、そういうことか。ふふ…お嬢のチョコはどうだった?」

「…さっき、階段の下でもらって、食べて、気付いたらここに居た…」

「…聞いてすまなかった…」

「…いいってことよ…」

何とも言えない、切ない空気が二人の間に流れた。

「こ、これはな!そ…その、私の!て、手作り…なん…だ…」

言い慣れていないせいもあるのだろう、全力で戸惑いながら、恥ずかしがりながら、言葉を紡ぐ。

「そっか…鶫の手作り…美味そうだな♪」

「え…ほ、本当か?本当にそう思ってくれているのか?」

鶫が目を輝かせて楽の言葉を聞き返す。

「な、なんだよ急に…?(くっそ、こういうとこホントかわいいよなこいつ…)」

恥ずかしくて、口が裂けても言えない本心を隠しつつ、会話を続ける。

「本心だよ。じゃ、頂くぞ?」

「あ、ああ。召し上がれ!」

ぱくっ、と一口食べる。

「…うめえ!」

「…ほ、本当か!?やった、やった、よかった…!!」

目立たぬよう、小声で精一杯喜ぶ鶫。

「ありがとな♪」

「…はう…!」

にかっ、と言う楽の笑顔に、鶫の胸がキュンと鳴る。

「な、なあ、一条楽、良かったら、今日の放課…」

「いやー、まさか鶫が手作りでチョコくれるなんてな!え、何か言ったか?」

「え、あ、その…な、なんでもないっ…!」

どむっ

「おぐふっ!?なんで首の付け根に手刀かますんだよ!?」

「ううううるさーい!!!」

勇気を振り絞った女の子の誘いを遮った罪は、大きい。

 

 

「いててて…。あ、小野寺、おはよう」

「あ、一条君!おはよう」

教室に、小野寺が入ってきた。

楽と目が合うなり、先程の鶫と同様に、周りをきょろきょろと見回す。

鶫も自分の席に戻ったため、誰も見ていないようだ。

「あ、あのね、一条君、これ、昨日作ったんだ…」

「お、お、マジか!?」

差し出されたのは、色合い鮮やかな3つのチョコだった。

「うん!上手くいったんだけど…あっ!」

説明の途中で、うっかり落としそうになる。

なんとか拾うことが出来て、3つのチョコの配置が変わっただけで済んだ。

「ほっ…よかった、せっかく小野寺が作ってくれたチョコが食えなくなるとこだった…」

「ど、どうしよう…」

「…え?」

小野寺の困惑した顔を見て、楽の背筋に謎の悪寒が走る。

「こ、この中で美味しいのは一つだけで、残り二つはその…いつもの、なんだよね…」

「…ナンダッテ?」

動揺のあまり喋り言葉がおかしくなる楽。

「一つ作れてやったー!って思って、その後試しにもう二つ作ったんだけどだめで、でも三つ合わせたときの見た目がすごい綺麗だなって思って、これも一条君に見てもらおうと思って…ご、ごめんなさい…」

目をうるうるさせて謝る小野寺を見て、激しく動揺する楽。

「(う、うおおおおお…小野寺まで涙目に…!!こんなの、責める訳もねえ…!!)」

「だ、大丈夫だよ、小野寺!ぜ、全部食えば良い話だろ!?」

「え、で、でも一条君…残りの二つは、食べたら多分…」

 

「え?」

 

「…」

 

「…ど、どうなるんだ…?」

 

「…や、やっぱり、」

 

「…やっぱり?」

 

「一条君の命の為にも、捨てちゃうね!」

「命!?命に関わるのか!?どういう原理で!?」

小野寺の言葉に、激しく動揺する楽。

手作りチョコで落命の危険性があると知れば、ごく自然なリアクションであった。

「ご、ごめんね、本当にごめんなさい、早く捨てちゃうね!」

そう言ってつかつかと、教室に置いてあるゴミ箱に向かって歩き出す小野寺。

「(うわああ切ない顔をしてるーーー…!!!うう、くそ、ここはもう…!!)」

「待てよ、小野寺!」

「え…?」

意を決して、小野寺を呼び止める楽。

「いいから、食うよ。俺の為に作ってくれたんだろ?」

「…い、一条君…」

小野寺の顔に明るさが戻ってくる。

「ほら、まずはこれから食うぞ?」

「あっ…」

ひょいっ、と一つ目を摘まんで食べた。

「…ど、どう?」

「…何の味もしねえ…?」

「あれ…おかしいな…」

「ま、まあ、二つ目に行けるからいいか!」

そして二つ目を摘まんで食べる。

「…また、何の味もしねえ…?」

「あれ、あれれ…?」

「と、取り敢えず、最後の一個、頂くわ」

そして三つ目を摘まんで食べた。

 

「…!!!うまー!!!」

 

「!!!ほ、ホント!!?」

小野寺の顔がぱあっ、と明るくなった。

「ああ、すげえうめえよこれ!!当たりはこれだったんだな!!」

楽も無事生き残れたことにより、テンションが急上昇する。

「本当によかった…当たりに行き着く前に一条君が死んじゃうんじゃないかった心配してたんだ…」

「そんなにか…でも、なんで大丈夫だっ、たん、だろ、う、な…げふっ、げほっ、あれ…?」

「い、一条君?」

「小野寺」

「な、なに…?」

「おまえは悪くない。悪くないよ。」

ぱたりっ

「一条君ーーーー!!?!?」

 

 

小野寺の作る料理は、遅効性の毒を持つ境地にまで達していた。

 

 

一条楽。男気を見せて、散る。儚い人生であった。

 

 

 

続く。




次回はマリー!2話に分けます。

後半はエロの方に掲載する予定です。

土曜日中に投稿します!


それでは、今回もお読み頂きありがとうございました(^^)!!
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