楽×マリー『オネガイ』その後   作:高橋徹

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長編スタートです。


鶫。第60話「キンヨウ」(1)

戦間近(?)の木曜の夜のこと。

 

 

楽と鶫は、それぞれ自室で考え事をしていた。

「明日の放課後は…鶫がお願いしたいことがあるって言ってたけど…」

楽は明日のことを考えながら、ふと、万里花の言葉を思い出す。

 

―お三方は、前々から、らっくんに想いを寄せていると踏んでいます―

 

…そんな訳がない。だって俺だぞ?

そんな風に考えても、今までの3人それぞれの行動を思い返せば思い返す程、思い当たる節がどんどん出て来る。

「…それでも、んな、俺なんかが…。万里花が惚れてくれたのだって奇跡みてえなもんだぜ?それを、あの3人もだなんて…そんなそんな…」

言い聞かせるように、一人呟いた。

万里花に言われたことであっても、やはり、時間を置いてもう一度自分で考えると、とても信じられないのであった。

「…何にせよ、明日の鶫、明後日の小野寺、明々後日の千棘…この3日間で、色々分かるのかな。

…いや、なんつう贅沢者なんだよ、俺…」

ほんと、その通りである。

「…デート、なのかな…?」

ここで、万里花と金曜日~日曜日のことについて話したときのことを思い出した。

 

―以下、回想。―

「らっくん」

「ん?どうした?」

「土曜日の小野寺さんと日曜日の桐崎さんのことを考えると、金曜日の鶫さんも十中八九デートだと思って構わないと思います」

「な、なるほど…」

「らっくん…お気を付けて。」

万里花は穏やかに話してはいるものの、その目は様々な感情が混じりながらめらめらと燃えている。

「あ、ああ…。」

そんな万里花に気圧されて、たじろぎながら返事をする楽であった。

―回想、終了。―

 

「…デートだったら…なんかどきどきするな。…あらゆる意味で。」

楽は複雑な表情を浮かべると、ぽそりとそんなことを呟いて、ゆっくりと目を閉じた。

 

 

その頃、鶫の家。

明日のことを考える度に、顔を赤らめたり悶えたりと一人忙しそうにしている鶫をよそに、鶫の家に居候しているポーラ(鶫のかつての仕事仲間)はパジャマに着替えて寝る準備をしていた。

「ねー、黒虎(ブラックタイガー)、もう寝るわよー?」

「(明日は一条楽とデート明日は一条楽とデート明日は一条楽とデート…!!!このことはお嬢と小野寺様以外には極力ばれないようにせねば…!!)」

「ねー、寝るよー?」

「(あ、明日着る私服を今のうちに用意しておかねば、やつを待たせてしまうな。は、早く用意しておかねば♪♪♪)」

「…ねー?」

「(この服がいいかな…?いや、こっちも捨てがたい…!!うむむ…あ、そうだ、お嬢とテレビ電話をして相談しようかな…いやいや、だめだ!自分で頑張らねば…!!)」

「ねーったら!!黒虎ー!!」

「…はっ!」

やっと、意識が現世に戻ってきた。

「もー、私早く寝たいんだけど?何をさっきからそんなにそわそわしてんのよ?」

「あ、ああ、そうだな、すまない。早く寝ないと成長ホルモンが出なくて困るものな…」

ちらっ、と視線を移す鶫。

「私の胸を憐れんだ目で見るなー!!!」

…GとAのあまりにも明確な格差は、着衣の上からでもはっきりと見て取れた。

 

…関東平野と、ヒマラヤ山脈のように…。

 

「…はぁ、はぁ、このやろう…いつか見てろよぉ…!!」

ポーラは涙目で怒りを露にしている。

「はは、すまないすまない。…(これも結構良いかな…?)」

鶫はポーラをおちょくりながらも、手に持った服をさりげなく自分の身体に合わせ、似合うかどうかの吟味をしていた。

「…なに?あなた、デートでも行くの?」

ぶばぼしゅぅぅぅっっ

服に飛沫がかからぬよう、器用に避けながら盛大に噴く鶫。

「ななな何を言っている!!?そ、そうだ、これは今度の潜入任務で着る服を選んでいるだけだぞ?」

「私はその任務のこと、何にも聞いてないけど?」

「!わ、私が単独で依頼されているんだ…」

「普通、任務で着る服を選ぶのに、そんなにやけた幸せそうな顔をするかしら?」

「…い、いや、そのこれは…」

ポーラの質問で、見る見る追い詰められて行く鶫。

「…なるほど、明日は一条楽とのデートって訳か」

どんがらがっしゃんしゃーんっ

古典的な音を立てて、盛大にずっこける鶫。

…ちゃんと、服にしわが出来たりしないように、器用によけながらこけた。

「な、な、なんでそれを…!?」

「いや、勘で言ったんだけど…」

「…」

「…」

「…(ちらっ)」

「!!だから胸を見るなぁーーー!!!このホルスタイン女めーーーー!!!」

「!!?」

割とえげつない返しが飛んで来た。

「ふん、明日は一条楽にそのでか乳を揉みしだいてもらえるように精々頑張れば!?おやすみ!」

ばふっ、と布団をかぶるポーラ。

zzz…

ものの数秒で寝息を立て始めた。

これは、極限の環境下でも休むべき時に休めるように鍛えた成果なのだろうか。

…いや、そう言った面も少なからずあるのであろうが、大部分は単純に、ポーラの体質によるものだった。

いわゆる、のび太体質である。

「…何と言う捨て台詞を言い残すんだ、まったく…」

その通りである。

「…き、キスまでこぎつけようと思っていたのに、む、胸だと…!?そ、そんな…こと…」

ふと、自分の胸を見下ろし、正面の姿見を見る。

本人の自覚は全くと言って良い程無いのだが、ポーラも言っているように、その胸は絶品の一言に尽きるものである。

それでいて肥満に思えるところなど一つもなく、高校生離れした見事なプロポーションを誇っている。

普段は男物の制服を着ているため、そう言った目で見られることは少ない。

しかし、以前楽と買い物に行った際は、私服姿(千棘が用意したものであるが)で街中に佇んでいるだけで、周りの注目を集めに集めていた。

…それでも、もう一度言っておくと、鶫本人にはそんな容姿の素晴らしさに対する自覚など全く無い。

そんな中でも、明日の楽とのデート(楽はわかっていないが)に備えて、懸命に服を選んでいた。

「…頑張っておめかししたら、あいつは褒めてくれるかな…?」

一番似合うと判断した服を合わせながら、鶫は照れくさそうにふふっと微笑んだ。

 

「(…黒虎…。なんか、前までよりも一条楽にぞっこんて感じじゃない?

明日って言うと、放課後よね?ふふ…しょうがない、背中を押してやろうかしら♪)」

ポーラは鶫の様子を窺いながら、静かにそんなことを企んでいた。

…意識は半分夢の世界に居て、寝言の様にも聞こえたのだが。

 

 

翌日の朝。

「おはよう、鶫」

先に学校に来ていた楽は、教室に入って来た鶫に声をかける。

「おおおおはよう一条楽今日はとても良い天気だなぁあははははは!!!」

「なんでそんなテンパってんだよ!?」

不自然極まり無い態度に驚く楽。

「(うわぁぁぁぁん!!いざ目の前にしたら、もう、緊張で…!!こんな調子で放課後を迎えたら…わ、私はどうしたらー!!?)」

鶫は分かりやすく、とても分かりやすく、テンパっていた。

「(鶫のこの態度…これって…今日のことを考えて、だよな…?…うわ、なんか俺まで緊張してきた…)」

鶫の舞い上がりが、楽にまで移ったようであった。

 

そして昼休み。

「な、なあ、一条楽、今日の放課後なんだが…」

「ああ、どうするんだ、結局?」

なんだかんだで、まだ詳細を聞いていなかった。

「そ、その、他愛もない用事なんだが…か、買い物に行かないか?」

「(お、予想通り…か?)ああ、いいよ。」

「…!良かった…。いざ提案してみて、断られたらどうしようかと思っていたんだ。良かったぁ…」

鶫はそう言うと、ほっと胸を撫で下ろした。

そして、思わず笑みがこぼれた。

その仕草と笑顔に、楽は思わずドキッとする。

「(…っと、やべえやべえ、動揺がばれねえようにしねえと…。)学校から真っ直ぐ行くのか?」

「あ、その…一応、一旦家に帰って、私服に着替えていいか!?すぐに着替えるから!」

「ああ、いいぞ」

「(鶫の私服って…。…あ、いかんいかん、またどきどきしちまったー!!)」

内心、どきどきが高まって行く楽。

「じゃあ、集合時刻は16時半、場所は…以前飼育係のエサを買いに行ったときの場所と同じで、良いか?」

「ああ、わかった」

「それじゃあ…楽しみにしてるから、な。」

鶫は穏やかに微笑んだ。

「…!!」

楽は再びドキッとした。

この会話だけで、何度ドキッとしたか分からなかった。

 

 

そんな訳で、放課後。

「(変なことが起きませんように変なことが起きませんように変なことが起きませんように…!!)」

「(何かしら進展出来ますように何かしら進展出来ますように何かしら進展出来ますように…!!)」

楽と鶫は、それぞれ違う願いを心の中で唱えていた。

いよいよ、楽と鶫とのデートが始まる。

 

 

 

 

 

続く。




おかげ様でこの小説も60話達成です。お気に入りの数も徐々に増えていて、本当に嬉しい限りです!!
お気に入りの数より感想の数の方が多いって言うのが、なんか無性に嬉しいです。見守って頂いている…!!

今までの話で、楽と万里花以外のキャラがある程度出て来た回にはタイトルで名前を出すようにしてみてます。抜けがあると思うので、もしよろしければご報告頂ければと思います(^^)!

ここから鶫→小野寺→千棘と続きますが、一人当たり3~4話かかると思います。残業続きでこま切れのアイディアばかり書き溜めていたのですが、アイディアの量を鑑みるに、どうやっても短くはなりそうにありませんw

ので、この三日間を書くのだけで恐らく今月が終わるかもしくは間に合わないかと言う感じです。

合間合間にマリーとのいちゃいちゃやエロ()、集るりの絡みも入れるつもりでいます。リクエストがあればぜひ!息抜きで合間に書ければと思います。


それでは、今回もお読み頂きありがとうございました(^^)!!
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