楽×マリー『オネガイ』その後   作:高橋徹

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久しぶりのマリーです。おかえりなさい。


第67話「オカエリ」

鶫とのデートの後、万里花の下へ向かう楽。

 

この一行目の時点で中々やばい。

 

罪悪感と自己嫌悪を振り払う為に、全力で走っては手を膝に置いて休み、ふらつく様に走り出しては電柱にぶつかる。

そんなことを繰り返していたため、万里花の家に辿り着く頃にはぼろぼろになっていた。セルフで。

 

 

「…つ、着いた…。」

万里花の家の前まで来ると、楽は気だるげに呟いた。

そして、そっとインターホンのボタンを押す。

「…はい。」

誰が来るかは分かっているが、楽じゃなかったときのためだろう。

ほんの少しだけ他人行儀な、万里花の声が聞こえる。

「俺だよ…」

まだ息を切らしたまま、楽が弱々しく答える。

その瞬間、インターホンの向こうで嬉しげに、言葉を発する為に息を吸う音が聞こえた。

「!すぐ行きますね♪」

かちゃっ、と言う音がして、会話が切れた。

 

「おかえりなさいまし…らっくん!♪」

「ああ、ただい…まぅっ!?」

玄関先であったのだが、万里花は何の躊躇も無く楽に飛び込み、キスをした。

キス自体は軽めのものであったのだが、それは深い深い愛情を含んだキスだった。

「(…ああ、そうか、俺、帰って来たんだな…。)」

万里花の声と、笑顔と、抱き付いたときの温かさと、キスの柔らかさを思う存分に感じる楽。

帰り道、罪悪感に苛まれていた心が、ゆっくりほぐれて行く。

 

数十秒程で、万里花は唇を離した。

「…ぷはっ。…万里花、俺、さ…」

「まあまあ!その話は中でしましょう!♪」

「あ、ああ…」

楽は、万里花の明るさに心底驚いた。

なんなら、ドアを開けた瞬間に思い切りビンタをかまして、そのまま蹴飛ばしてドアを閉めるくらいしたって良いのに。

そんな風に思いながら、楽は万里花に手を繋がれて部屋に向かった。

 

 

「さて…と♪はい、こちらにどうぞ♪」

万里花はベッドの上にぽすんと座り、すぐ隣をぽんぽんと叩いた。

「ああ…」

楽は沈んだまま万里花に従い座る。

座った直後に流れる、少しばかりの沈黙。

楽は、すぐ隣に居る万里花の表情を見ることが出来ないでいた。

すっと息を吸って、意を決して口を開く。

「あの、万里花、俺さむぉっ!?」

突然の出来事に、楽は間抜けな声を上げてしまった。むぉっ。

事態を把握するのに時間がかかったが、万里花が楽を自分の胸に埋めていたのである。

ぱふん、と言う柔らかい感触が、楽を優しく包んだ。

「…あったかい…って、いやいや、そうじゃなくて!万里花。俺とんでもないことをむぉっ!?」

万里花が楽を抱きしめる力を強くして、楽は再び変な声を上げてしまった。むぉっ。

「らっくん…あなたの顔を見れば分かります。ここに来るまでに、たくさん考えて、たくさん悩んで、罪悪感に散々駆られて、お疲れになったでしょう?まずはゆっくりくつろいでくださいまし♪」

「…!!」

予想もしていなかった、万里花の温かい言葉。

全て、全て見透かされていた。

万里花ならこんな対応ももしかしたら…とは楽の頭に一瞬過ぎっていたのだが、自分のやったことを思い返すとそんな甘い考えはすぐに頭の中からかき消えて、いや、かき消していた。

そんな、楽がすぐに頭の中で振り払った対応を、万里花は笑顔でやってのけている。

実感が、湧かなかった。

 

「万里花…なんでこんなに優しいんだよ…?」

万里花の胸に埋まりながら、楽は今にも泣きそうな、情けない声で言った。

その声は、万里花が聞いた楽の声の中でも、一番頼りない様な、甘えるような、助けを求めるような、責めて欲しいと心の奥底で叫んでいるような声であった。

そんな楽の心情を気遣い、万里花はありったけの優しさと愛情を纏った声で話し出す。

「…何となく、予感はしてたんです。鶫さんの色気や容姿、実はかわいらしい性格や色気、そして色気をもってしたら、らっくんの理性が飛ぶんじゃないかって。」

「ちょっと色気を推し過ぎでは…」

「はいはい」

「むぉっ」

楽の頭を押さえていた手に、少しだけ力を入れてむぎゅっと締め付ける万里花。

ツッコミを、圧殺、いや、乳殺された。

…鶫のこと、そんな風に見てたんだな。

こんな状況ではあるが、楽はふとそんなことを思った。

「…それで、最初は、どうするか迷いました。しゃにむになってデートの邪魔をしようかとも思ったんですが、それも違うなと思ったんです。」

ここまで喋ったところで、万里花は楽の肩を掴み、自分と正面から相対するようにした。

そして、にぱっと笑う。

 

 

「だから、私は、らっくんがどう言う結末を迎えたとしても、正妻としてどーんと受け止めようと思ったんですわ(どやぁぁぁ…)!!!」

 

 

「」

どーーーーん、と言う効果音が聞こえた気がした。

座ったまま胸を張って腰に手を当てる万里花を見て、楽はしばらくの間絶句して、やがて、ぷっと噴き出した。

「…ははは!…叶わねえなあ、万里花には♪…ありがとう。」

楽は万里花と顔を合わせてから初めて、柔らかな笑みを浮かべた。

「うふふ♪その笑顔が見たかったんです。」

そう言って、万里花はまるで聖母の様に微笑んだ。

 

 

「…でも」

「?」

万里花の声の調子が少し変わり、楽は不思議がって万里花を見つめる。

「それでも…やきもちは焼いてるんですよ?…明暦の大火くらい。」

真剣になりすぎないようにしようと試みたのか、えらい例えが出た。

例え通りなら親族ひっくるめて末代まで祟りそうなやきもちの焼きようである。

「それ焼け方尋常じゃないぞ…。…でも、そう…だよな。償い…って言い方は重いか、お詫びに何でもするよ。」

「…ありがとうございます♪…では、その…今日は、いっぱい、したいです…。」

万里花が少し、もじもじしながら言った。

楽は万里花の仕草に内心悶えながらも、笑顔で答える。

「お詫びじゃなくても俺もしたいし、何より今の恥じらい方かわいすぎるんでどうにかなりませんか万里花さん」

真剣なんだかそうでないんだか分からない調子で、楽が万里花を見つめながら言う。悶えただけでなく結局言葉にしていた。

「…もう。…ありがとうございます♪」

そう言って、楽とゆっくり唇を重ねた。

 

 

数分後。

「…。…すんすん、すん、すはー、すーはーすーはー…」

「ま、万里花…?犬っぽいし変態みたいだぞ…?」

二人は唇を離すと、万里花が急に楽の身体の匂いを嗅ぎ始めた。

「否定はしません!!」

「しないんだ!?」

「まあそれはさておき。らっくん…他の雌の匂いが強烈に染み付いてますわね。」

「!!うぐっ…!!」

匂いに敏感な女性なら、この反応は当然とも言えた。

「すんすん…右手中指なんかもう…!」

「いや本当にごめんなさいそんな風に具体的に言われると何にも言えないです僕」

楽が縮こまる。

「ふふ♪冗談…では全くありませんけども、」

「冗談じゃないんだ…そりゃそうか。」

「らっくん…一緒にお風呂に入りましょうか♪」

「ええ!!?」

「何もかも、洗いだして絞り出して差し上げますわ(どやぁぁぁ…)!!!」

「」

 

 

楽の浮気未遂(と言うかほぼ完遂)への糾弾はどこへやら、二人はこれから一緒にお風呂です。

 

 

 

続く。

 




マリーの受け止め方を色々と考えていたんですが、彼女なら多少悩んだとしても、このくらい言ってくれるだろうなと、そう考えました。

次話は久しぶりに、本編でのマリーエロになります。誕生日は番外編的な扱いで考えているので、何気に約一ヶ月ぶりくらいになります。何と言う。


ハーレムに向けての話の流れは、第1章と比べて皆さんが思うところも色々あるように思います。それでも頑張って、楽しみながら書いて行きたいと思いますので、どうかお見守りください。


それでは、今回もお読み頂きありがとうございました(^^)!!
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