楽×マリー『オネガイ』その後   作:高橋徹

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第7話「オミマイ」

一度帰宅する楽。

 

 

「坊っちゃんおかえりなさいやせー!!」

 

 

迎える個性的(893)たち。

 

 

「おう、ただいま。

 

ちょっとばかし料理するからよ、台所に行くわ。」

 

 

「へい!ん、しかし晩飯にはまだ早いですよね・・・?」

 

 

「ああ、ちょっと友達の見舞いにお粥でも作ろうと思ってな。」

 

 

急に泣き出す個性的(893)たち。

 

 

「うおお・・・なんと優しい坊っちゃんなんでごぜえましょう・・・!!!こんな方に2代目を継いでもらえる俺たちはしあわせでさあ・・・!!」

 

 

「だーかーら、俺は継がねえっての!あと、いちいち泣くな泣くな!」

 

 

いつものやり取りを終え、手際良くお粥を作り終える楽。

 

 

「よっと・・・こんなもんでいいかな。んじゃ、ちょっと行ってくるわ。」

 

 

「へい!行ってらっしゃいやせ坊っちゃん!」

 

 

「さて、急ごう・・・」

 

 

橘の家に向かい走り出す楽。

 

 

 

 

 

その頃、橘はと言うと・・・

 

 

 

 

「うう・・・もう放課後の時間ですわ・・・今治ったところで楽様に会えるのは明日までお預け・・・ううう・・・。」

 

 

珍しく、ひたすらに落ち込んでいる。

 

 

「はあ、こんなとき楽様がお見舞いに来てくださったら3秒で治りますのに・・・」

 

 

「(3秒・・・)お嬢様、なにかお召し上がりになりますか?」

 

 

「うーん、今は食欲が湧かないからいいわ・・・。

 

 

ああ・・・会いとうございますわ楽様・・・」

 

 

 

 

 

ピーンポーン

 

 

 

 

「・・・なあに?こんなときにどなたかしら・・・。本田、確認してきてちょうだい・・・。」

 

 

「はい。」

 

 

「まったくもう、こんなときに来客だなんて・・・」

 

 

数秒後。

 

 

「お嬢様。どうやら一条様のようで」

 

 

 

 

ずばばばばっっっ

 

 

 

しゅたっっっ

 

 

 

 

 

何枚も重ねていた掛け布団を吹き飛ばし、ベッドから飛び降りた橘。元気なときより明らかに身体能力が高い。

 

 

「なんですっt☆△〇◇□▽☆〇~!!??」

 

 

興奮のあまり何を言ってるのかよくわからない。

 

 

 

「・・・はあ・・・はあ・・・本当に楽様なの?」

 

 

「はい、インターホンで確認した後、直接の確認も行いましたので間違いないかと。」

 

 

「ちょっちょっちょっ・・・どうしましょう・・・こんな汗びっしょりで人に見せられない状態で・・・ましてや楽様に・・・どどど、どうしましょう・・・」

 

 

 

ピーンポーン

 

 

 

もう一度呼び鈴が鳴る。

 

 

「ああ、このままでは楽様を待たせてしまうわ・・・ええいままよ!」

 

 

ドアに向かい全力疾走する橘。

 

 

 

「・・・あれ・・・いねえのかな・・・まさか病院とか・・・?お粥が冷めないうちに食わせてやりてえんだけどな・・・」

 

 

「もう一回押すか・・・」

 

 

「・・・んー・・・出ないなー・・・どうしたものk」

 

 

どどどどど

 

 

ばんっっっ

 

 

ばきっっっ

 

 

「ごふっ!!??」

 

 

ごろごろごろっっっ

 

 

ごしゃっっっ

 

 

橘が思い切り開けたドアに吹き飛ばされる楽。

 

 

「!!きゃああ楽様!!!いったい誰がこんなことを!!」

 

 

「い、いや橘が開けたドアで・・・げふっ・・っていうかまず一旦落ち着いてくれ・・・」

 

 

瀕死のまま揺さぶられる楽。お粥が無事なのは奇跡である。

 

 

「・・・はっ!ごめんなさい!楽様!でもどうして・・・」

 

 

ようやく落ち着きを取り戻した橘。

 

 

「いや、どうしてって・・・おまえが風邪で休んだって聞いて・・・心配になってな。療養に差支えないようにお粥だけでも持って行こうかと・・・」

 

 

持って来たお粥を差し出す楽。

 

 

それを見てとてつもなくしあわせそうな表情を浮かべる万里花。瞳が輝いている。

 

 

「はわわわ・・・楽様・・・なんとお優しい・・・!!

 

ぜひ、ぜひ、お上がりになってくださいまし!」

 

 

「え、いいのか?」

 

 

「はい、もう、ぜひ!」

 

 

「じゃ、じゃあ・・・。」

 

 

 

こうして家に上がることになった楽。

 

 

「(橘の部屋に入るのは初めてだな・・・うおお緊張が・・・!)」

 

 

「楽様、こちらですわ!」

 

 

「うおお・・・!

 

(なんか良い匂いがする・・・ん、なんで橘の写真がたくさん・・・?・・・いやしかし他の部分はTHE☆女の子って感じで・・・や、やべえ、ドキドキが・・・)」

 

 

「(うう・・・楽様が来ると分かっていればこの100倍はきれいにしましたのに・・・いやでも楽様から来ていただけたのは千載一遇のチャンス・・・これを逃す訳には・・・!)」

 

 

腹を括る橘。

 

 

「では、こちらにお座りくださいまし♪」

 

 

「お、おう、ありがとう・・・

 

(めっちゃ良いソファだ・・・いくらするんだろうこれ・・・)

 

あ、そうだ、お粥なんだけどさ、出来たら冷めないうちに食ってみてほしいんだ。食欲あるか?」

 

 

「!!ありますわ!!楽様に作って頂いた料理とあらば無限に食べられます!!」

 

 

「お嬢様、先程食欲がないと・・・」

 

 

壁に掛けてある橘の写真の裏側から話しかける橘。構図がすごいことになっている。

 

 

「気のせいだったわ」

 

 

「(すごいな・・・)はあ・・・承知しました」

 

 

「(・・・誰と話してんだ橘は・・・?)お、おう、じゃあ早速・・・」

 

 

お粥を取り出す楽。

 

 

その瞬間橘の目が怪しく光る。

 

 

「(これは・・・チャンス!!)

 

・・・あの・・・楽様・・・せっかくのお粥ですので、あーんしてもらいたいのですが・・・」

 

 

「!?ばっ!いや、それはちょっと!」

 

 

顔を赤らめる楽。

 

 

「昨日私がやったように・・・だめですか?」

 

 

瞬間、楽の脳裏に橘の表情と言葉が浮かぶ。

 

 

『らっくん、おいしい・・・?』

 

 

ぼしゅっっ

 

 

楽の顔から湯気が噴き出す。

 

 

「(うおああああ!!!こ、これは、応じずにこのまま迫られたら、や、やばい!いや、なにがやばいのかわかんねえけど、とにかくやばい!

 

か、かくなる上は・・・)」

 

 

「しょうがねえなあ。ほれ、口開けて。」

 

 

楽がいざ橘にスプーンを差し伸べると、橘の顔が何やら赤くなっている。

 

 

「?・・・おい、橘、どうした・・・?」

 

 

「はひ、ひゃい!!?あ・・・あの・・・いざ楽様にやって頂けるとなると、その・・・心の準備といいますか・・・は、恥ずかしくなってしまって・・・」

 

 

急に照れ出し、楽の顔も見ることが出来なくなる橘。

 

 

それを見て一瞬フリーズする楽。

 

 

「(のおおおおお!!??ここにきてそんな風に照れるのかああああ!!攻めに弱いのかあああ・・・!!い、いかん、理性が・・・!耐えろ、たえろ、タエロ俺ええええ!!)」

 

ものすごい勢いで葛藤する楽。

 

 

呼吸を落ち着け、平静を装いながら

 

 

「はは、もう、こっちまで恥ずかしくなるだろ・・・?ほら、あーん」

 

 

目を閉じたまま頬張る橘。

 

 

ぱくっ

 

 

「・・・ん・・・おいし・・・」

 

 

恍惚とした表情を浮かべる橘。

 

 

 

ぶばっっっ

 

 

ぷしゃーーーーー

 

 

「!?楽様!?どうしましたの?」

 

 

「い、いや、なんでもない・・・」

 

 

鼻血を盛大に噴き出す楽。無理もない。

 

 

「(や、やばい、今のは・・・エロすぎるだろ・・・)」

 

 

「あ、あの、楽様・・・」

 

 

「ん、どうした・・・?」

 

 

鼻血を吹きながら応える楽。

 

 

「あの、今思ったより身体のだるさがひどくてですね、それで、できましたら、お粥の残りも食べさせて頂けますか・・・?」

 

 

「(    マ    ジ     か    。)」

 

 

数瞬の葛藤の後、楽は覚悟を決めた。

 

 

「おう、ま、任せとけってんだ!」

 

 

 

 

 

~20分後~

 

 

 

 

 

空になったお粥の器と、満足げな橘と、鼻血の出し過ぎにより橘より具合が悪そうな楽。

 

 

 

 

「楽様、ありがとうございます・・・♪おいしゅうございました♪ごちそうさまでした♪」

 

 

「お、おう・・・。」

 

 

度重なるときめきにより、心臓への多大なる負担と大量の出血が。もはや瀕死である。

 

 

「(な、なんつう嬉しい拷問だ・・・このままじゃ命がいくつあっても足りねえ・・・)」

 

 

「楽様から元気をたーくさん頂いたことですし、何かお茶でも入れますわね♪

 

よっ、と。では♪・・・あっ・・・」

 

 

ふらっっ

 

 

立ち上がった瞬間、ふらついて倒れ落ちる橘。

 

 

「あぶねえ!」

 

 

がしっ

 

 

どたどたっっ

 

 

橘を抱え、カーペットにしりもちを着いた楽。

 

 

「ふー、あぶなかっ・・・た・・・」

 

 

楽が橘を後ろから抱えるような体勢になっていたため、楽の目の前に橘のうなじが。

 

 

じっとり汗ばんでなんとも言えない艶っぽさを漂わせている上に、シャンプーの良い香りが楽の鼻腔をくすぐる。

 

 

「(やべ、橘のうなじ・・・汗ばんでて色っぽいな・・・それにすげえ良い匂いが・・・あ、頭が・・・くら・・・くら・・・する・・・)」

 

 

楽が呆けていると、橘が口を開いた。

 

 

「あの・・・楽様・・・ありがとうございます・・・

 

あの、わ、私・・・ま、まだ、心の準備ができていませんので・・・もう少しだけお時間を・・・」

 

 

後ろから見ても分かるほどに橘の顔が赤くなっている。

 

 

「・・・え?」

 

 

楽が自分の手が伸びている場所に目をやると・・・

 

 

楽の右手は橘の左胸を、左手は右胸を完全に掴んでいる。「触れた・触った」では済まされないレベルで掴んでいる。

 

 

「うおえええああお☆△〇◇□▽☆〇!??!?!?!!!??ご、ご、ご、ごめん!!!!」

 

 

慌てて凄まじい速さで手を放す楽。

 

 

それに対し橘は、ゆっくり振り返ると

 

 

 

 

「もう・・・別に嫌だなんて言ってませんわよ・・・らっくんたら・・・♪」

 

 

 

 

 

やばい

 

 

 

これは

 

 

 

やばい。

 

 

 

 

あまりの興奮により思わず鉤括弧が外れてしまう楽。

 

 

「(いいいいいいいかーーーーん!!!これは、まずい!!!)」

 

 

「ここここ、これ以上長居すると風邪長引かせちまうかもしれないから、そろそろお暇するわ!!ほらほら、安静にしな!な!?」

 

 

超速で橘をベッドに寝かしつけ、布団をかけ、濡れタオルをおでこに置く楽。何故これだけ急ぎながらも手際がやたらと良いのか。

 

 

「あ、楽様・・・」

 

 

「じゃ、じゃあな!お大事に!」

 

 

ばたばたと立ち去ろうとする楽。

 

 

しかし、一瞬立ち止まって再び喋り始めた。

 

 

「・・・あ、具合良くなって学校来れそうだったら、一言メール送ってくれるか?その方が俺が学校に行く楽しみが増えるから、さ。

 

 

そ、それじゃ、お邪魔しましたーーー!!」

 

 

びゅんっっ

 

 

がちゃっ

 

 

だだだだだだ・・・

 

 

 

ぽつんと残された橘。

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう、楽様ったら・・・。

 

 

紳士で、優しくて、

 

 

 

 

・・・少しだけ、意気地なし・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

たったったっ

 

 

帰り道、楽は急ぐ必要もないのにずっと走っていた。

 

 

「あぶねえ。あのままだったら絶対押し倒してた。ふーーよく耐えたな俺・・・

 

・・・何のために耐えたんだ、俺は・・・?

 

しかも最後のセリフ、ほとんど何にも考えずに言っちまったけど・・・なんで俺はあんなこと・・・

 

 

・・・俺は・・・」

 

 

自身の感情の変化に付いて行けないまま、二人の長いようで短い放課後は終わった。

 

 

 

続く。

 

 

 

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