この俺、うちは
俺には前世の記憶がある、と言っても、火の国の秘境に存在する忍者の隠れ里で特異な能力を継承するうちは一族の一員として生まれ落ち、凶刃と忍術が交差する戦乱の中を生き抜いた忍者としての記憶、——などではない。
平和な世界に生まれ、平凡な日常を謳歌し、ある日突然トラックに轢かれて死んだ。ただそれだけの普通の記憶だ。
しかしそんな普通にも例外が存在した。
死後、自称神様の不思議な存在に出迎えられ、くじ引きで転生特典を決められ、次の人生に記憶を引き継いで転生することとなった。
俺が引き当てたのはNARUTOに登場する三大瞳術——写輪眼、輪廻眼、白眼とあらゆる忍術を扱う才能だった、そして転生先は俺の知らない創作物の世界と聞かされた。
そうして俺は、うちは忍となった。
両親はごく普通の一般人で、家族の中で特別な力を持っているのは俺だけだった。神様から授かった三大瞳術は物心ついた時から自由に発動できたが、使いこなすにはそれなりの修行が必要だった。俺は一人で試行錯誤しながらその力を磨いてきた。
俺が転生したこの世界は、血で血を洗う戦乱の時代でも、水面下で調略を巡らす乱世でもない。表向きは至って平和な世界だ。
しかし、前世とは違うものがある。
呪霊、だ。
あとから教わったことだが、この世界では人間の負の感情が蓄積すると具現化し、怨念の塊として実体を持つようになるらしい。それが呪霊だ。そんなことも知らなかった俺は、修行と称してその存在を討伐して回っていた。
感知タイプの能力を磨くべく外で修業を行っていたある日、少し強めの呪霊の気配を察知した。
急いで向かうと、一人の女の子が呪霊に襲われていた。慌てて救出すると、彼女は自分を呪術師だと名乗り、呪霊を祓うことを生業としているのだという。そしてそのまま、俺に向かって勧誘をして来た。
非日常に強い興味を持っていた俺は、お試しとして呪術を学ぶ機関——呪術高専へと入学することに決めた。
俺が通う学校、京都府立呪術高等専門学校は学徒の数こそ少ないが、おもしろい人間ばかりで楽しい学校だ。
俺はこの場所で二度目の青春を謳歌していた。
一般家庭出身ゆえに呪術史や呪物学では赤点ばかりの俺の面倒をよく見てくれる、歌姫先生。
唯一の同級生で一番仲のいい、新田新。
補講仲間で同じく一般家庭出身の先輩、三輪霞先輩。
独学では困難だった絡繰り忍法の修行に付き合ってくれる天才絡繰り使い、
性癖は特殊だが義理堅く、戦闘技術を丁寧に教えてくれる東堂葵先輩。
ツンデレだが実は優しい、西園桃先輩。
厳粛で礼儀正しい、加茂憲紀先輩
そして、、、そして何より、禪院真衣先輩。
名前を思い浮かべるだけで、口元が緩む。
呪術の世界に引き込んだ張本人として責任を感じているのか、真衣さんは俺の指導役を自ら買って出てくれた。
任務も学院生活も、多くの場面で支え、教えてくれた。
そんな彼女と長い時間を共に過ごすうちに、自然と距離が縮まっていき——そして先日、俺は意を決して告白した。
「真衣先輩。俺と付き合ってください」
「……まあ、いいわよ」
真衣さんらしい返事だったが、拒否はされなかった。俺にとっては、それで最高に幸せだった。
今の俺は「我が世の春」という表現が誇張に聞こえないほどに、充実した毎日を送っている。
真衣さんとは登下校を共にし、一緒に任務に出て、時に修行まで付き合ってもらう。
真衣さんは呪術の実戦的な知識を与えてくれ、俺は娯楽物から輸入した知識を交えながら忍術や修行の体系を呪術に落とし込んだ技術を共有することで、お互いの視野が広がっている。
……これ以上の青春があるだろうか。いや、ない。
そんな幸せな日々の中、少しばかり緊張するイベントが発生した。
真衣さんの父親——禪院扇さんから、内密に呼び出しがあったのだ。
次回ドキドキ三者面談