【配信】Kの暇つぶしライブ:100層攻略遅すぎ問題【ハンバーグ待機】
ホログラムモニターが立ち上がり、視界の端で恐ろしい速度で滝のように流れるコメント欄を眺める。
俺はマイクのスイッチを入れ、深く椅子に腰掛けた。
「よお、無能な
──────
: きたああああああああああああああ!!
: 神降臨!
: 待ってたぞおおお
──────
「『Abstract Dungeon』、お前ら攻略遅すぎだろ。一週間経って最高到達が五十層って、お前らの脳細胞は四ビットで動いてんのか?」
俺は手元の空中でキーボードを軽く叩き、メインスクリーンに一つのグラフを表示させた。
「あまりに見てられなかったからさ、五十層攻略一番乗りの『相馬』とかいう奴の家に、さっき俺自作の
──────
: ファッ!?
: マジでお掃除ロボット来てるwww
: 相馬の部屋じゃんwww配信中だぞあいつww
: 窓から侵入してきて草
──────
「今、画面の隅にそいつの部屋の監視映像を映してやってるだろ。おい相馬、画面の前で腰抜かしてんじゃねえよ。数秒で部屋をピカピカにしてやったんだから感謝しろ」
呆然としている相馬の姿がワイプに映し出され、チャットの勢いがさらに加速する。
「ついでにその旧式PCの排熱ファン、俺がこの前公開した常温超伝導のレシピを基に組んだ特製ベアリングに換装しといたからな。今日から騒音ゼロで攻略に集中しろよ」
──────
: PC改造うらやましすぎる!!!
: 俺の部屋も掃除してくれ神!
──────
怯えきった相馬の映像をワイプに追いやり、俺は再びコメント欄に視線を戻した。
「これで百層行けなかったら、次はお前自身を
次々と書き込まれる要望を眺めながら、俺は鼻で笑う。
「お前ら、昨日放流した超伝導と光の壁はもう飽きただろ。次は何が欲しい? ワープ? 不老不死?
──────
: ワープ一択だろ!!
: 不老不死よりフルダイブ!!
: 光学迷彩で女湯……いやなんでもないです
: どこでもドアの設計図ください!
: 全部!!
──────
「まぁできてたとしても教えてやんねぇけどな?」
焦らす、飯の前でお座りする犬のごとく。
「『Kの未来の構想を聞かせてくれ』? ねぇよそんなもん。俺が今やりたいことを形にして、お前らがパニックになるのを見る」
モニターの端で点滅している赤い警告アラートを指で弾き飛ばし、俺は口角を上げた。
「楽しけりゃそれでいいんだよ。高尚な理念なんて、オムニ社みたいなデカい組織の広報にでも語らせとけ。俺の暇つぶしにお前らが付き合ってるだけだ」
──────
: 知ってた
: 神の暇つぶしに翻弄される世界線
──────
「あ、『国からなんか言われてないか』って? 当たり前に言われてるよ。各国の防衛省だの国連だのから、一日に百単位で対談の要請っていう名の脅迫状が届いてるわ」
裏で走り続けているファイアウォールのログをチラリと確認する。
「さっきもペンタゴンがしつこく回線繋ごうとしてきたから、あいつらの内部システムに俺自作の暗号化ツールを放り込んでやった。モニター全部で『テトリス』しか遊べないようにしてやったよ」
──────
: ペンタゴンでテトリスwwww
: 国家機密がブロックにww
: 怒られるぞマジで!!
: やばすぎるだろwww
──────
「今頃将軍どもが必死にブロック消してるはずだぞ。ああ、気付いた奴もいるか。さっき俺のサイトに、
コメント欄に、少しずつダウンロード成功の報告が混じり始める。
「それをインストールすれば、今日からお前らのスマホ、目で追うだけで操作できる。指でフリックするなんて原始的な動作はもう終わりだ。……おっと、もうこんな時間か」
──────
: レシピきたああああああ!!
: 目でスワイプできる!? マジだ!?
: 待って、行かないで神!
──────
一階から微かに響いてきた足音に、俺は素早く配信終了のコマンドを準備した。
「そろそろ夕飯の時間だから落ちるわ。今日はハンバーグらしいからな。母さんに呼ばれる前に下りないとバイクの鍵没収される。じゃあな無能ども! 生き延びたければ次の配信まで脳を鍛えとけよ!」