科(化)学系チート持ち転生者のお話   作:金属粘性生命体

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転生後二十五の手 別から

 

 

 

 大西洋を越えた先にある、とある国の諜報機関(インテリジェンス)の本部。

 

 薄暗い分析室の大型モニターには、日本列島のマップと膨大なデータの波が投影されていた。

 

「……物流(ロジスティクス)のデータに、奇妙な『空白地帯』を発見しました」

 

 分析官の一人が、マップの一角を拡大しながら報告を上げる。

 

「過去数ヶ月間、このエリアに向けて、複数のダミー企業を経由した特殊な冷却装置や精密部品の配送が集中しています。総額にして数千万円規模。しかし、これだけの物資が流入しているにもかかわらず、このエリアから搬出される『製品』や『廃棄物』のデータが全くありません。入るばかりで出ていかない、まるでブラックホールです」

「機材の搬入だけで、何も生み出していないと? 地下に巨大なサーバーでも構築しているのか?」

 

 ベテランの指揮官が眉をひそめると、別のデスクから声が上がった。

 

「だとしたら、電力消費量のデータと矛盾します。該当エリアのスマートメーターの統計を弾き出しましたが、周囲の区画に比べて、なぜか電力の消費が()()()()()のです」

「少なすぎる? 巨大なサーバーや研究施設を稼働させているなら、莫大な電力を食うはずだろう」

「ええ。ですが、該当エリアの一角だけ、まるで系統電力に頼っていないかのように極端に消費グラフが落ち込んでいます。……考えられる仮説は一つ。ターゲットは既に、既存のインフラから切り離された未知の独立電源(オフグリッド)を自前で構築している可能性があります」

 

 分析室に、重苦しい沈黙が降りた。

 

 世界の技術バランスを単独で狂わせる正体不明の技術者が、自らの生活圏のエネルギーすら自給自足し始めている。

 もしそれが事実ならば、国家レベルのインフラ遮断や兵糧攻めすら、彼には一切通用しないということだ。

 

「……さらに、もう一つ妙な符号があります」

 

 沈黙を破り、情報解析班のチーフが新たな資料をモニターに転送した。

 

「ターゲットが以前、暗号化された掲示板の片隅で『ドイツ語の再テストが面倒くさい』と愚痴をこぼしていたのは記憶に新しいと思います。単なるフェイクの可能性もありましたが……」

「該当の物流空白地帯から半径十キロ圏内にある大学を洗い出したところ、ちょうど昨日、理系学部を対象とした『ドイツ語の再テスト』を実施した大学が一つだけ存在しました」

 

 室内の空気が、一気に張り詰める。

 

「……物流のブラックホール。異常な電力低下。そして、ドイツ語の再テスト」

「単なる偶然にしては出来すぎている。直ちに極東支部からエージェントを現地へ手配しろ。まずは該当大学の学生名簿と、周辺エリアの不審な家屋の洗い出しだ」

 

 世界トップクラスの情報網が、少しずつ、だが確実に。

 

 平和な日常を貪る『神』の足元へと、その包囲網を狭めつつあった。

 

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