ここからAI成分マシマシになります、気をつけてね。原文は自身で書いてるけどやっぱ読みやすい文章にするにはAIが強いンゴね。
売上の振込は来月末。
そのどうしようもなく生々しい現代の商習慣という壁を前にして、俺は数分ほど頭を抱えることになった。完全に忘れてた、そうだよな……普通に働いてても即金で金が手に入るわけないんだわ……
銀行のデータベースを直接ハッキングして残高の数字を弄り、口座のデータを改ざんすれば金なんざ幾らでも手に入る。だが、それをやると日銀や金融庁のシステムとの間で帳簿の不整合が起きる。足がつくような真似は極力避けたいし、何より手順として美しくない。
俺が今求めているのは、正当な理由があり、出処がハッキリしていて、なおかつ
今持っている手札といえば、無駄に高性能なシミュレート機能付きスマホ、無駄に面白いアプリゲーム、そして未来技術を構成する上で必要なプログラミング能力やハッキング能力くらいのものだ。
「……何か手はないか。ホワイトハッカー、仕事、っと」
スマホのブラウザを開き、検索窓に適当な単語を打ち込んでみる。
すると、すぐに目ぼしい情報が引っかかった。
「ほうほう……
これならいけるかもしれない。現代のIT業界には、自社のOSやサーバーの致命的なバグを発見し、報告してくれたホワイトハッカーに対して多額の報奨金を支払う制度があるらしい。
「適当になんかでかい案件になりそうなのないかね。特定の仲介サイトで公開してるのか。でも、世界的なシェアを持ってるでかいところは、独自で窓口を公開してんのか……」
俺は世界最大のシェアを持つ検索エンジンやクラウドサーバーの元締め、巨大IT企業『オムニ社』の公式サイトを開いた。
現代最高のエンジニアたちが束になって構築した、鉄壁の要塞とも呼べる巨大インフラだ。このオムニ社のシステムを標的にすれば、バグの規模も報奨金の額も桁違いになるはずだ。
「どれ……うっわ。知識を持つ前だと全然分からないはずの内容なんだが……未来科学の知識があると、めちゃくちゃ穴があるのがわかるぞこれ」
ユーザーたちから間借りしている莫大な演算領域をほんの少しだけスキャン処理へと回し、オムニ社の基幹システムを解析してみる。
すると、呆れるほどあっさりと、致命的な脆弱性がボロボロとこぼれ落ちてきた。
「なんだこれ。一定のルートを通れば、管理者権限の認証をフリーパスで抜けられるじゃねーか。それに、この謎のバックドア……これ、外部から誰かが継続的にデータを抜いてる痕跡があるぞ。あと、無駄に容量がデカすぎてサーバーを圧迫してる非効率な処理が多すぎる」
普通にヤバすぎるルートを見つけてしまった、これ未来知識とか関係なく普通にヤバすぎるでしょ……いやまぁ割と天文学的に近しい確率のルートだけどバックドアはやばすぎでしょ、これ普通の人なら気づかんわ。
俺は、認証をすり抜けるヤバすぎるバイパスルートと、長年放置されていたバックドアの報告、そして無駄な処理を削ってサーバー負荷を劇的に下げる修正案をまとめ、匿名回線を経由してオムニ社のセキュリティ担当窓口に送り付けることにした。
作りたての暗号資産用の口座の振込番号も、ご丁寧に添えて。
「ぶっちゃけ上記二つがヤバすぎるから、速攻で対応してくれると思うんだよねぇ。遅くとも一日、二日で反応してくれることを祈ろう。てか対応してくれんと金がないからな……頼んだぞオムニ社」
米国カリフォルニア州、シリコンバレー。
世界最大の巨大IT企業、オムニ社の本社キャンパス内にある中枢機関――セキュリティ・オペレーション・センター(SOC)。
そこは、世界中から絶え間なく押し寄せるサイバー攻撃を監視し、自社の強固なサーバー群を防衛するための最前線基地である。壁一面を覆う巨大なモニターには、地球規模のトラフィックや、リアルタイムで弾き落とされているマルウェアの攻撃ログが、幾千の光の線となって流れていた。
深夜二時。シフト制で監視を続ける夜勤チームのフロアは、キーボードを叩く乾いた音と、サーバーの冷却ファンの低い唸り声だけが支配する静寂に包まれていた。
SOCの統括責任者であるリチャードは、濃すぎるブラックコーヒーを胃に流し込みながら、疲労の溜まった目を擦った。彼の元には、日々何百件という
だが、その日の夜は違った。
リチャードの手元にある専用端末が、これまで聞いたこともないような甲高い警告音を鳴らしたのだ。
画面には「CRITICAL(致命的)」を示す真紅のポップアップが点滅している。送信元は完全な匿名回線。名前すら記載されていない、ただのテキストファイルとパッチデータ、そして
「……また質の悪いイタズラか。クロエ、一応サンドボックス環境でこのレポートの検証を回してくれ。タイトルは『認証基盤における特定ルートのパス・バイパス』だとさ」
「了解しました、ボス。……ええと、なになに?」
隣のデスクで作業していたシニア・アナリストのクロエが、気怠げにレポートのデータを読み込み始めた。彼女はこのSOCでもトップクラスの腕を持つ天才肌のエンジニアだ。
しかし、彼女の気怠げな態度は、レポートを読み進めてからわずか十秒で完全に消失した。
「……嘘でしょ。待って、これ……何?」
「どうした、クロエ」
「ボス、これ見てください。この報告者が提示してるバイパスルート……旧式のレガシーAPIの認証の隙間を突いて、ミリ秒単位の通信ラグを意図的に発生させて、ロードバランサーの処理順序を
クロエの指が信じられない速度でキーボードを叩く。検証用の隔離環境に、レポートに記載された通りの攻撃コードを打ち込んでいく。
数秒後、画面に「ACCESS GRANTED(アクセス許可)」という緑色の文字が無情にも表示された。
「……突破しました。嘘でしょ。オムニ社の基幹サーバーの管理者
「なんだと!?」
「こんな針の穴を通すような一定のルートとかいうヤバすぎるのを見つけるなよ! 設計した人間ですら、こんな奇跡みたいな確率のバグ、気づくわけないじゃないですか! 一体どこでこんなもの見つけたんだ……」
リチャードは椅子から跳ね起き、クロエのモニターを凝視した。
背筋に冷たい汗が伝うのを感じた。オムニの全サービスを裏側から操れる管理者権限へのフリーパス。これがもし、悪意ある国家のハッカー集団にでも渡っていれば、世界のインフラは明日にも崩壊していただろう。
「……落ち着け。これだけでも数十万ドル規模の発見だ。すぐに対応チームを……」
「ボス、待ってください。レポートはこれで終わりじゃありません。……第二項があります。こっちは……『不要なバックドアの報告』……?」
クロエの顔から、一瞬にして血の気が引いていくのがわかった。
彼女は震える手で画面をスクロールさせた。
「バックドア……? 我々のシステムにそんなものがあるわけないだろう。ソースコードは常に厳重な監査を……」
「あります。……これ、システム負荷を軽減するためのガベージコレクション(不要データ削除)プロセスの中に、巧妙に偽装されて組み込まれてます。特定の文字列をクエリに混ぜるだけで、外部から任意のコードを実行できる仕様になってます……」
「馬鹿な。いつからだ。いつからそんなものが仕込まれていた!?」
「わかりません。少なくとも私が配属される前からです。……ボス、今すぐ過去のアクセス
フロアの空気が一変した。
ただの脆弱性報告ではない。もしこれが事実なら、社内の人間が意図的に仕込んだか、あるいは極めて高度なサプライチェーン攻撃によって混入させられた悪意の塊だ。
SOC内のサーバーが唸りを上げ、ペタバイト級の莫大なアクセス履歴の海から、該当する不審な通信ログをサルベージし始める。
数分後。検索が完了したモニターの画面は、おびただしい数の「実行履歴」を示す真紅のテキストで埋め尽くされていた。
「ボス……ヤバいです。バックドアヤバすぎる。履歴みたらめちゃくちゃ使われてる……!?」
「なんだと……!? 被害規模は!?」
「分かりません。暗号化された通信で、断続的に、何ヶ月にもわたって何者かが少しずつデータを抜いていた形跡があります。相手のIPも完全に
リチャードは目眩を覚えた。
終わった。オムニ社の威信に関わる、歴史的な大失態だ。この報告者がいなければ、あと何年この状態でデータを抜かれ続けていたか分からない。
「……報告者からのメッセージの最後に、『無駄に容量がデカすぎてサーバーを圧迫してた部分を削った修正案』が添付されています」
絶望に沈むリチャードの耳に、クロエのひどく呆然とした声が届いた。
彼女は、添付されていた
「どういうことだ。パッチだと? バックドアを塞ぐためのパッチか?」
「いえ、違います。……塞ぐどころか、該当するシステムのアーキテクチャそのものを根本から書き換えてます。……なんだこれ。どうやったらこんな思考回路になるの……?」
「クロエ、どうした! 説明しろ!」
「ボス、見てくださいよこれ。めちゃくちゃコードがシンプルで見やすくなったんです……! 私たちが何千行も書いて無理やり安定させていた分散処理のアルゴリズムが、たった数十行の、見たこともないような数式みたいなロジックに置き換わってます」
「なんだと……?」
「このパッチを当てれば、バックドアが消滅するだけじゃありません。サーバーの物理的な負荷が、冗談抜きで三〇パーセントは削減されます。意味がわからない……これを作った人間は、現代のプログラミング言語の限界を、全く別の次元から見下ろしてる……まるで、未来から来た人間が書いたみたいなコードです」
リチャードは息を呑んだ。
針の穴を通すような致命的なバグの発見。
誰も気づかなかった長年のバックドアの看破。
そして、自社のトップエンジニアたちですら理解が追いつかないほど洗練され、無駄を削ぎ落とした神がかり的な修正パッチ。
これを送りつけてきた「匿名」の相手は、ただのホワイト
オムニの巨大なシステムを児戯のように扱い、片手間で最適化まで施してしまう、文字通りの
「……ボス。この報告者、指定した暗号資産口座に報奨金を振り込めとだけ書いてます。どうしますか。上に報告を……」
「報告なんて悠長なことをしている場合か! 今すぐ役員全員の緊急ホットラインを叩き起こせ!」
リチャードは吠えた。
この「神」の機嫌を損ねてはならない。もし彼がこの情報を世間に公開するか、あるいはブラックマーケットにでも流せば、会社は物理的に崩壊する。
「要求額は書かれていない。なら、我々が出せる最高額……いや、特別枠の決裁を通させて、即座に、今すぐこのウォレットに数百万ドルを叩き込め! 同時にこのパッチを全サーバーに適用するテストラインを立ち上げろ! 一秒でも早く、この得体の知れない化け物に誠意を見せるんだ!」
深夜のSOCは、一個人の送りつけたわずか数キロバイトのテキストファイルによって、かつてないパニックと熱狂の渦に飲み込まれていった。
それから、わずか三十分後のことである。
「おっ、マジで振り込まれてる」
自室のベッドに寝転がっていた俺のスマホに、ウォレットアプリからの心地よい通知音が響いた。
画面を確認すると、指定した暗号資産の口座に、日本円にしておよそ五億円相当のビットコインが着金していた。
「流石は巨大IT企業、オムニ社。対応が早いし太っ腹だねぇ。まあ、あの規模のバグと解決策を考えれば、これでも安い方かもしれないけど」
俺は満足げに頷きながら、手に入れた莫大な暗号資産を、追跡不可能なルートで複数のダミー口座に分散させ、法定通貨へとロンダリングしていく処理を開始した。
これで、即金の問題は完全にクリアされた。
手元には使い切れないほどの潤沢な資金があり、すでにリアルタイムの映像修正ソフトも完成している。あとは、この金を使ってネット経由で目当ての不動産を購入し、マザーマシンを設置するための拠点を手に入れるだけだ。
「よーし、早速オンライン内見の予約でも入れますかね。顔出しのビデオ通話が必須らしいけど、俺の作ったディープフェイクの前では無力だってことを教えてやろう」
幼稚園児という物理的な肉体の縛りを抱えながらも、俺は未来の技術力と現代のシステムの穴を突き、着実に計画を進めていくのだった。