科(化)学系チート持ち転生者のお話   作:金属粘性生命体

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転生後四十一の手

 

 

 

 深宇宙探査船のモデリングをあらかた終えた俺は、ふとサブモニターに視線を移した。

 

 そこには、赤道直下に建設中の宇宙開発拠点――通称『Kの島』に対して、世界中の国々が発している非難声明や軍事的な威嚇行動のデータがリアルタイムで表示されている。

 

「……なあ、ジャービス。俺、最近ちょっと真剣に悩んでることがあるんだよな」

『ボスの悩みですか。明日の朝食を和食にするか洋食にするか、といった類のものでしょうか』

「違うわ。もっとこう、地球規模の崇高な悩みだよ。……ぶっちゃけさ、ここまで来るといっそ()()()()()()()()()にしちゃった方が、世界的に平和で幸せなんじゃないか?」

 

 俺の言葉に、地下ラボの空気がわずかに冷えたような気がした。

 

『……詳細な意図をお伺いしても?』

「いやさ、俺がせっかく食糧問題とか解決してやったのに、こいつらまだ宇宙の利権だの領土だので争ってんじゃん。いくら環境を良くしても、中身の人間がアホなままだとキリがないなって」

 

 俺はため息をつき、空中に全人類の遺伝子構造のホログラムを浮かび上がらせた。

 

「黒川財閥の配給食に、特定のナノマシンを混ぜてさ。数世代かけて人類の遺伝子を改良して、知能レベルを底上げしつつ、闘争本能を完全に削ぎ落とす。そうすれば、無駄な争いのない完璧なユートピアが完成するだろ?」

『それはユートピアではなく、人類という種の()()()であり、倫理的な最終防衛線の完全な突破を意味します。ボスはついに、文字通りの神になるおつもりですか?』

「うっ……そう言われるとキツいな。俺だって元々は、新作ゲームを楽しみにするただの小市民だったんだぞ。全員が俺の言いなりになるお人形さんになっちゃったら、予測不能な面白いエンタメも生まれなくなりそうだし……うーん、でもいちいち反発されるのも面倒くさい……」

 

 神の視点で人類の遺伝子をいじくり回そうとする自分と、オタクとしての真っ当な倫理観が、脳内で激しく殴り合っている。

 

 葛藤すること数分。俺はホログラムをバシンと叩いて消滅させた。

 

「……やっぱやめた! 遺伝子いじって無理やりレベル上げるのは、ゲームで言うところのチートツールでNPCの好感度をMAXにするようなもんだ。そんなの虚無すぎるし、絶対に飽きる」

『賢明な判断です。ボスのわずかに残された人間性が機能して安心しました』

「一言余計だぞ。……でも、宇宙を攻略するのに、いちいち他国からミサイル撃たれたりスパイ送り込まれたりするのは鬱陶しい。妨害を物理的・法的に塞ぐための『盾』は必要だ」

 

 俺は悪巧みをする魔王のような笑みを浮かべ、キーボードを叩き始めた。

 

「とりあえず、日本政府を完全に傀儡化して俺の直轄ドメインにする。黒川財閥の保護国として、日本に世界の矢面を立たせよう」

『既に財閥の設立時点で半ば傀儡化していますが、さらに踏み込むと?』

「ああ。今までは『インフラを握って脅してる』状態だったけど、これからは『法制度から外交権まで全部俺の承認制』にする。アメリカや大陸の国が島に文句を言ってきたら、全部日本政府に外交のプロレスとして対応させるんだ。俺はその裏で、悠々と宇宙船を飛ばす」

 

 一国の政府を丸ごと防波堤として使い潰すという、さっきの遺伝子操作に負けず劣らずの極悪非道な思いつき。

 

「総理大臣には、俺の『広報担当』として死ぬ気で働いてもらおう。さっそく官邸のメインサーバーに、新しい雇用契約書を送りつけておけ。拒否権はもちろん無しだ」

『承知いたしました。……日本政府の胃薬の消費量が、また国家予算を圧迫しそうですね』

 

 ジャービスの呆れたような声をBGMに、俺は宇宙という新たな遊び場に向けた、完璧な引きこもり環境の構築を進めるのだった。

 






 少しずつ「吹っ切れ始めた主人公」どうなる事やら
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