科(化)学系チート持ち転生者のお話   作:金属粘性生命体

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転生後闇堕ちの三手

 

 

 

 ゴロツキ三人組から巻き上げた戦利品は、くしゃくしゃに丸まった紙幣と小汚い硬貨を合わせて、およそ三千ペソ。日本円にして八千円弱といったところだ。

 

 大の大人三人が徒党(ととう)を組んでこの程度の所持金なのだから、スラムの貧困っぷりは笑えない。だが、五歳の孤児(こじ)が握りしめる軍資金としては、これ以上ないほどの特大ボーナスである。

 

「よしよし、これで念願のお買い物タイムといこうか」

 

 俺は血と泥を洗い落とし、スラムの奥深くにある怪しげな裏市へと向かった。

 

 目的は、あのうるさくて腕の痛くなる鉄パイプ銃に代わる、スマートで()()な武器の素材集めだ。

 胡散臭いオヤジが店番をしている日用品店や、ジャンク品の山を漁り、俺は次々とアイテムを買い込んでいく。

 

 市販の風邪薬を大量に。それから漂白剤、農薬、農作業用のゴムチューブ。ついでに、画面の割れた旧式のスマートフォンと、配線が千切れた廃ラジオをいくつか。

 これで手持ちの三千ペソは綺麗にすっからかんだ。

 

「坊主、そんなガラクタと薬ばっか集めてどうすんだ? ラリるならもっといいクスリがあるぞ」

「ご親切にどうも。でも、俺は健康志向なんだ」

 

 黄色い歯を見せて笑う売人に適当な愛想笑いを返し、俺はそそくさと(ねぐら)である廃ビルの地下室へと帰還した。

 

 さあ、楽しい工作の時間の始まりだ。

 

 前世の知識と未来科学のデータベースを脳内で展開し、買ってきた風邪薬や農薬をすり潰して成分を抽出していく。

 目指すのは、音もなく標的を無力化できる『化学兵器』だ。

 

 漂白剤と特定の化学物質を、温度管理に気をつけながら慎重に混ぜ合わせる。少しでも配分を間違えれば俺の肺が焼け焦げてゲームオーバーだが、幸いにも俺の強固な自我と知識は、一滴の計量ミスすら許さない。

 

 数時間後。空き瓶の底には、空気に触れた瞬間に致死性の毒ガスへと変わる特製の液体と、一滴で象すら眠らせる即効性の麻酔薬が完成していた。

 

「うんうん、素晴らしい出来栄えだ。これでうるさい発砲音ともおさらばできる」

 

 麻酔薬は、ゴミ山で拾った注射針とゴムチューブを組み合わせた即席の吹き矢に塗布しておく。これなら五歳の肺活量でも、数メートル先の不審者を無音で処理できるだろう。

 

 武器のアップデートが完了したところで、次はこの塒のセキュリティ向上だ。

 俺はジャンク品のスマホから極小のカメラレンズと基板を引っこ抜き、廃ラジオの部品と再配線していく。

 

 スラムのあちこちに張り巡らされている違法な盗電ケーブルから、ちょこっとだけ電力を拝借し、ハッキングを仕掛ける。

 廃ビルの入り口や裏路地の死角に、お手製の動体検知センサー付き監視カメラを設置していった。

 

 映像は、地下室に持ち込んだノートパソコン(これもゴミ山からの拾い物で、修理に丸三日かかった)のモニターへ無線で飛ばす。

 ノイズだらけの荒い映像だが、侵入者の数を把握するには十分すぎる性能だ。

 

「ふふっ、これで引きこもり環境は完璧だな。誰が遊びに来ても、手厚く()()()()()してやれる」

 

 モニターの青白い光に照らされながら、俺は満足げに頷いた。

 知識さえあれば、ゴミ屑と市販品だけでも立派な要塞は作れるのだ。

 

 さて、あのゴロツキどもの仲間が復讐に来るのが先か、それとも俺がさらなる兵器を作るのが先か。

 俺は冷たいコンクリートの床に寝転がりながら、次の獲物が網にかかるのを心待ちにするのだった。

 






 なんかこっちの方が書きやすいのなんなんだろう……?
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