地下室の
「どこに隠れてやがる、このクソ野郎があっ!!」
「ぶっ殺してやる! 出てこいっ!!」
血走った目で怒鳴り散らしながら、生き残りの二人が薄暗い部屋へと雪崩れ込んでくる。その手には、黒光りする本物の拳銃がしっかりと握られていた。
俺は部屋の最奥、ガラクタの陰に座りながら、彼らの様子を静かに観察する。
突入の勢いは良かった。だが、彼らが威勢よく怒鳴れたのは、最初の数秒だけだった。
「がっ……!? なんだ、息が……っ」
「けほっ、ごほぉっ!! め、目が痛ええっ……息ができねえぞ!?」
男たちは突如として喉を掻きむしり、持っていた拳銃を取り落とした。
そのまま床に転げ回り、肺からヒューヒューと嫌な音を立てて
彼らは気づいていないが、この地下室は現在、極めて濃度の高い
市販の漂白剤と酸性のトイレ用洗剤。スラムの裏市で数百ペソで買えるありふれた日用品だが、正しい知識で混ぜ合わせ、換気を止めた密閉空間に充満させれば、立派な致死性の化学兵器の完成だ。
「……ふう。ちゃんと隙間風もテープで塞いでおいた甲斐があったな」
俺は口元を覆うお手製のガスマスク――半分に切ったペットボトルに、砕いた木炭と細かく割った活性炭を詰め込んだだけの代物――越しにくぐもった声で呟いた。
息をするたびに活性炭が微かに擦れる音がするが、呼吸のペースは一定のままだ。
俺はただ冷徹に、致死の空間でもがき苦しむ男たちを観察し続ける。
数分後。男たちの口から血混じりの泡が吹き出し、痙攣が完全に止まった。
念のため、俺は拾ったナイフを手に持ち、動かなくなった彼らの首筋へと淀みない動作で刃を突き立てる。
プシュッ、と微かな音を立てて血が噴き出すが、男たちはピクリとも動かない。完全な
「さて、お待ちかねのルート回収だ」
俺は毒ガスが充満する部屋の中で、死体のポケットや腰回りを手際よく探っていく。
今回の目玉は、なんと言っても彼らが持ち込んだ
拾い上げたのは、使い込まれて塗装のハゲた九ミリ口径の自動拳銃が二丁。さらに、予備の弾倉が三つと、ポケットに無造作に突っ込まれていたバラの弾丸が三十発ほど。
「素晴らしい。これで暴発の危険に怯えながら鉄パイプを撃たなくて済む」
ずしりと重い本物の銃の感触に、俺は思わず頬を緩めた。
前世の知識を使えば、手製の爆弾や毒ガスは作れる。しかし、とっさの乱戦やピンポイントでの射撃においては、やはり安定した工業製品の銃火器に勝るものはない。
これで俺の武力は、石器時代から一気に近代へとジャンプアップしたことになる。
「……さて。毒ガスが抜けるまで、俺はしばらくお出かけするとしようか」
俺は奪った拳銃の一丁をズボンのベルトにねじ込み、もう一丁の弾倉を確認してスライドを引いた。チャキリ、と小気味良い金属音が鳴り、薬室に初弾が装填される。
向かう先は、もちろん彼らギャングの根城である地下酒場だ。
親切な彼らがわざわざ五人も出向いてくれたおかげで、今の根城の防衛は手薄になっているはずだ。しかも、彼らは俺の
俺はガスマスクを被ったまま、静かに廃ビルを後にした。
足取りは軽く、これから始まる効率的な組織