さて、ここまで順調に言ってたが問題なのはこれだけの機械部品をどうやって中に仕舞うか、である。ぶっちゃけこれが一番の問題点と言えるだろう。というか何も考えてなかったことが露呈した……知識がある=頭がいい訳でもない証明になったな!ガハハ。
てことで何かしらの方法で運ぶ必要があるのだが事前に手持ちできるサイズの細かいパーツも発注済みであり、それで作り上げるのは皆さん大好きアークリアクターとアイアンマンスーツのMARK43である。自立行動ができるロボットとしても活用ができるので補助装置としては非常に扱い易い部類だ。今後の自分が成長した時の姿に合わせて作っているので今後の着用を想定している。
え、スーツの開発が飛びすぎだって?そんなもん完成系知ってたらすっ飛ばせるに決まってるでしょ……いや、作成に数週間かかったんだけどね?あまりにも細かいパーツに一緒に注文していたはんだごてで作業するなど子供の身ではあまりにも大変な作業だった。あと幼稚園児だからこその時間制限がキツかった、親からのしつこい心配の言葉を何とか説得して友人との遊びと誤魔化すのは心苦しかったが……今後のためだったので我慢した。
さて、そんな涙ぐましい努力の結晶であるこいつを……いっちょ動かしてみますかね。
深夜二時。両親が完全に寝静まったのを確認し、俺はベッドの上で魔改造スマホの画面をタップし、自作の簡易ヘッドマウントディスプレイを頭に被った。
「起動パス承認。……よし、繋がった」
ディスプレイの画面が切り替わり、暗視カメラ越しの映像が映し出される。視線の先には、運送業者が置き配していった巨大な段ボールや重厚な木箱の山。もちろん場所は、先日契約を済ませたあの山奥の作業場である。
今回作り上げたMARK43には、本家のような超優秀な
なので、操作は完全に俺のフルマニュアルである。スマホとディスプレイを介して、ゲームのコントローラー感覚でスーツの視覚と運動をリンクさせる。ぶっちゃけ
「さてと、まずは荷物の搬入からだな。……よいしょっと」
俺が手元の端末を操作すると、画面の向こうで重厚な金属音が響いた。
大人が数人がかりで運ぶような超々ジュラルミンのブロック(約二百キロ)を、MARK43の腕が軽々と持ち上げる。流石はアークリアクターの出力、発泡スチロールでも持っているのかってくらいに安定している。
作業場のシャッターをこじ開け、次々と資材を中に運び込んでいく。生身なら数日はかかる重労働だが、Mark43の圧倒的なパワーと機動力のおかげで、ものの数十分で搬入作業は完了した。
「よしよし、ここからが本番だ。マザーマシンの組み立て作業に入りますかね」
画面越しの視界を、作業用の精密モードに切り替える。
手のひらのリパルサー送信部を微出力のレーザー溶接機として代用し、発注していたチタン合金のシャフトや特殊な歯車、工業用モーターをミリ単位の精度で組み上げていく。
青白い火花が散り、強固なフレームが出来上がっていく。遠隔操作とはいえ、未来の知識と俺の機械工学を扱う技術者としての操作テクニックが合わされば、これくらい造作もない。
途中でちょっと配線を間違えそうになって冷や汗をかいたが、まあご愛嬌である。てかこれ、普通に一人でやる作業量じゃないんだよな。トニーだって優秀なアームロボットたちに手伝わせてただろ! 俺ボッチじゃん! 悲しくなってきたわ!
そんなくだらないセルフツッコミを入れながら、ひたすらに作業を続けること約三時間。
外の空気がうっすらと白み始めた頃、俺の視界の向こうで、そいつは完成の産声を上げた。
「……ふぅーっ。できた。マジで疲れた……」
画面の向こう側に鎮座するのは、高さ二メートルほどの、黒光りする無骨な機械の塊。
市販のパーツを無理やり継ぎ接ぎして作ったため、見た目はお世辞にもスタイリッシュとは言えない。配線も一部むき出しだ。
だが、こいつは紛れもなく、原子レベルで物質を操作・構築するための原始的なナノマシンの母機である。
現代の科学者が見たら泡を吹いて倒れるレベルの代物だが、未来の技術を知る俺からすればこれでもまだ『旧石器時代の石斧』程度の代物だ。
だが、この石斧さえあれば、次は鉄の剣が作れる。鉄の剣があれば、より高度で精密な文明がオートメーションで築けるというわけだ。
「とりあえず、これでようやくスタートラインだな。次はこいつを使って、俺の言うことを聞く極小の働きアリを増産しまくるぞー……」
とりあえず工場の中の特に誰にも見られないような場所にMark43を隠してスマホから手を離す。
徹夜の作業で限界を迎えていた五歳児の脳みそが、ゆっくりと強制シャットダウンしていくのを感じる。
スーツを待機モードに移行させ、俺はベッドに突っ伏した。明日の幼稚園のお遊戯会、絶対に寝ちまうなこれ……と呑気なことを考えながら、俺は深い泥のような眠りへと落ちていった。