『アジアの兄弟姉妹よ。かつて我らは共に戦った。白人列強の支配から解放されるために。亜細亜は亜細亜人の手で―――その理想のために、血を流し、共に立ち上がった。そして今、より大きな敵が現れた。BETAは問わない。民族を問わない。言語を問わない。信仰を問わない。日本人も、中国人も、朝鮮人も、マレー人も、ビルマ人も、インド人も―――ただ等しく、奴らは踏み潰す。
奴らに交渉の余地などはない。奴らに慈悲等ない。奴らに、人類の命の価値など、塵ほどにも映らない。これは戦争ではない。これは、生存を懸けた抗いである。
昭和四十八年八月十四日、新疆【喀什】にBETAの、落着構造物が建造された。月は奴らの支配下に落ち、地球そのものが、今や最前線となった。
誰が亜細亜を守るのか?答えは一つだ。
我らが守る。共に守る。
大東亜共栄圏の子供達よ、我らが陸軍の精鋭戦車部隊、砲兵隊、航空隊は今この瞬間も、喀什の方角へ向けて展開している。鉄と炎と、そして不屈の意志をもって、奴らを押しとどめんとしている。
——我々がが今日も空へ飛び立つとき、その翼の下には諸君らの大地がある。朝鮮の工場労働者が徹夜で砲弾を削り出すとき、その手は前線の兄弟を支えている。満洲の農民が食糧を供出するとき、その汗は共栄圏全体の命脈となる。
一人の犠牲は、一億の命を繋ぐ。
搾取ではない。支配ではない。共に生き残るための、共闘である。帝國政府は宣言する。大東亜共栄圏内の全民族は、今次BETA対抗戦において平等に処遇される。食糧配給、医療支援、避難誘導―――帝國はその責務を全うする。しかし―――流言飛語を流す者は、共栄圏の敵として処断する。脱走・逃亡を図る者は、前線の同胞への裏切りとして断罪する。帝國放送協會以外の電波に耳を傾けることを、固く禁ずる。米國の放送が聞こえるかもしれない。ゲルマンの放送が聞こえるかもしれない。だが彼らの言葉は、亜細亜を分断するための毒だ。惑わされるな。
大東亜の同胞達よ、立ち上がれ。
日本人と共に立て。亜細亜人と共に立て。民族の違いを超え、言葉の壁を越え、ただ一つの意志で―――
BETAを、この星から叩き出せ。
亜細亜の空は、亜細亜人が守る。
大東亜共栄圏に栄光あれ。
大日本帝國万歳。
大日本帝國放送協會 昭和四十八年夏』
昭和四十八年夏。地球侵攻から十九日経過。
新疆西部上空
BETAによる地球侵攻が開始して、早くも19日が経過した。地上では戦車部隊と砲兵隊が苦戦を強いられていたが、普段空を戦場とする
それは正しいはずだった。
午前十一時十七分。第三航空団の無線に、異常な報告が断続的に入り始めた。
『何かが……光って―――』
前線上空に展開していた帝國空軍第三航空団の戦闘機が次々と迎撃されていく。いくら速く複雑な機動をしても、的確に、そして瞬時に。
それまで確認されていなかった新種の出現。
37機のパイロット達は何もわからぬまま全て無惨に迎撃された。
後に「光線属種」と区分されるBETAが、この日、人類から空を奪った。