Muvluv The New Order   作:不凍港

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交錯

第■■戦術演習場 模擬戦指揮統制棟

ソヴィエト連邦軍 臨時作戦会議室 8時

 

コンクリートの壁は……まだ夜の冷気を抱いていた。

折り畳み椅子が並ぶ会議室に、20名余りのソヴィエト軍人が詰め込まれている。革の匂い、コーヒーの湯気、眠れていない人間特有の酸味を帯びた緊張の匂い。天井の蛍光灯が一本だけ細かく点滅している。誰も直しに行かない。ラトロフは最後列の端に腰を下ろし、紙コップを両手で包みながら室内を眺めていた。

 

前列右端―――セルゲイ・グリゴリエヴィチ・マカロフ大尉。

 

私の直属の部下である、彼は、腕を膝の上で組み、スクリーンを静かに見ている。

 

右顎の筋肉がわずかに張っている。集中が外に漏れた形だ。その隣には静かに座っているダリア・オヴェーチキナ少尉は手帳を膝に置き、ペンをきつく握っていた。

 

そして……入室してから既に3度ページをめくっていた。彼女は相当緊張しているのだろう。

 

「―――気をつけ」

 

コンスタンチン・ミハイロヴィチ・アルヒポフ大佐が入室した。眉間の縦皺、右足をわずかに引く歩き方。

 

仕事をしに来た顔をしている。

 

―――バッ!

全員がコンスタンチン・ミハイロヴィチ・アルヒポフ上級大佐に向かい敬礼をする。いい音が部屋に響き渡りそれに笑顔で返し口を開く。

 

「―――着席。0800時―――演習前最終ブリーフィングを開始する」

 

「本日1000時より、統合多国籍戦術機甲格闘演習《INTACTS-01》を実施する。形式は模擬戦(ドッグファイト)。主に米軍が使用する統合仮想情報演習システム(JIVES)使用。機関砲と近接格闘刃のみ使用される。」

 

「そして勝利条件―――制限時間40分以内に相手チームの8機のうち6機以上の戦闘不能判定を取ること。6機に達しない場合は残存機数比較。同数なら累積損害率の低い側が勝利となる」

 

「次に―――本演習の最大の特徴を説明する」

 

大佐はスクリーンを切り替えた。

 

「本演習では、試合ごとにペア編制が変わる」

 

室内に小さなざわめきが走った。

 

「固定チームによる総当たりではない。各試合において、どの国の小隊とペアを組むかが変わる。4機の小隊2つで1チームを構成するのは同じ。―――しかし誰と組むかは、試合ごとに違う。理由は単純。作戦本番では異なる国の部隊がすぐ隣で戦う。初見の相手と連携できなければ意味がない。毎試合、初めて組む相手と戦術を合わせる能力を測る―――これが本演習の本質だ」

 

誰も何も言わなかった。

 

ラトロフは紙コップを一口飲んだ。

 

「―――参加する6小隊を発表する」

 

スクリーンに一覧が展開された。

 

「第1——ソヴィエト連邦軍選抜小隊」

 

「部隊名:チェルノーブ小隊。機体:Mig-27《アリゲートル》4機。小隊長:セルゲイ・グリゴリエヴィチ・マカロフ大尉」

 

セルゲイが、微かに動いた。スクリーンを注視している。

 

「第2―――大ゲルマン帝国軍選抜小隊」

 

「部隊名:アドラー小隊。機体:EW-45《ジークルート》4機。小隊長:カール・ハインツ・ヴァイス大尉」

 

壁際に腕を組んで立っていた人物―――深灰色の制服、鷲の帽章、鉄十字。大ゲルマン帝国選抜部隊の引率将校だ。

 

スクリーンに映し出されてるのは……

 

細面で眼鏡をかけていたあの男だ。

 

「第3——自由国家機構統合軍選抜小隊」

 

「部隊名:ジョーカー小隊。機体:F-15《初期生産型》4機。小隊長:セカンド・ルーテナント中尉」

 

「第4―――アメリカ合衆国軍選抜小隊」

 

「部隊名:ケイオス小隊。機体:F-15《先行量産型》4機。小隊長:アルフレッド・ウォーケン中尉」

 

後列から小声が漏れた。

 

「F-15……F-14が実戦配備されてからまだ1年もたってねぇのに……」

 

会議室にざわめきが立つ。

 

「第5―――大日本帝国軍選抜部隊」

 

「部隊名:御剣試験隊。機体―――八二式戦術歩行戦闘機《天海》3機、同《天海・弐型》1機。小隊長―――」

 

一拍。

 

「篠原命少尉」

 

室内の空気が歪んだ。

 

スクリーンに表示されてるのは無邪気な笑顔をし、ピースをしている少年だった。昨日の子だ。

「あの子が……」

 

ダリア・オヴェーチキナ少尉が小声で喋る。

そして20秒ほどか経過しだろうか、さっきまで騒がしかった会議室が上級大佐の一瞥で完全に静まった。

ラトロフはコーヒーを一口、飲んだ。

 

「第6―――大東亜共栄圏亜細亜統合軍選抜部隊」

 

「部隊名:大雨《バオユィ》試験小隊。機体:J-10《殲撃10型》4機。小隊長:雷嵐《レイ・ラン》中尉」

 

後列で誰かが小声で言った。

 

「J-10……知らない機体だな」

「帝国の天海を参考に作ったって話だ。中華も最近BETAによる侵攻が活発らしいからな。」

 

「試合ごとのペア編制と対戦スケジュールを発表する」

 

スクリーンに4試合分のリストが展開された。

 

 

第1試合

1000時[チェルノーブ(ソ連) + アドラー(独)] vs [ジョーカー(FNO) + ケイオス(米)]

 

第2試合

1130時[御剣試験隊(日) + 大雨試験小隊(中華)] vs [ジョーカー(FNO) + アドラー(独)]

 

第3試合

1300時[チェルノーブ(ソ連) + ケイオス(米)] vs [御剣試験隊(日) + 大雨試験小隊(東亜)]

 

第4試合―――

 

―――

 

―――

 

―――

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